6月21日(日)、沼津のプラサヴェルデにおいて、国指定史跡長浜城跡開園記念トークイベント「沼津の海とつわものたち」が開催され、参加してきました。
沼津市内浦にある国指定史跡の長浜城跡は、北条水軍の海城として知られていますが、この程史跡整備が完了し、5月24日(日)に現地でオープニングのイベントが催されましたが、今回のイベントはそれを記念してのシンポジウム的な催しでした。
トークイベントは、当会の名誉顧問でもある静岡大学名誉教授の小和田哲男先生の「北条水軍と武田水軍」という講演で始まりました。先生の講演は、北条水軍と武田水軍の成立過程と北条氏の長浜城、武田氏の三枚橋城の位置付け、天正8年(1580)の駿河湾海戦の模様などについて、いつものように大変わかりやすいお話でした。
次に、長浜城跡総合調査委員会の委員長で九州大学名誉教授の服部英雄先生から、「長浜城跡総合調査の概要-保存整備までの足取り-」と題して講演がありました。先生の講演は、30年前の昭和60年(1985)度から始まった同城の発掘調査をはじめとする総合調査の過程、整備にあたっての苦心談などを交えたお話でした。
昼休みをはさんで午後の一つ目の講演は、長浜城跡総合調査委員会副委員長で元奈良国立文化財研究所の高瀬要一先生の「長浜城跡整備の成果と課題」という講演で、同城の整備の成果・特色とその課題について、実際の映像を交えてお話がありました。整備事業としては一応完了した同城ですが、歩道や周辺施設等の面でまだ課題は残されているようです。
講演の最後は、小田原城天守閣館長の諏訪間順先生による「小田原城の調査と整備」という講演で、北条氏の本城である小田原城の特徴や今までの発掘調査の成果、今後の整備計画についてお話がありました。
その後、会場の参加者が質問用紙に書いた質問に、講演を行った先生方が答える形式で討論があり、トークイベントは盛会のうちに幕を閉じました。
会場前のロビーでは、長浜城の他に、三枚橋城、興国寺城の調査成果についての展示があり、参加者の皆様は休憩時間などの間に熱心に見入っておりました。
長浜城跡には、5月24日のオープニングイベントに行けなかったため後日行ってきましたが、写真のように曲輪は建物跡は柱穴の跡を立体的に復元して示し、土塁・堀も芝生により保護・整備されて大変見やすくなっておりました。第二曲輪から第一曲輪(本曲輪)に向かう虎口の部分には、1年以上前から櫓状の建物が建っていますが、本来の姿はともあれ、展望施設としては唯一あのような建物が建てられても止むを得ないのではないかと思います。
また、城跡西側の重須側のガイダンス施設には、安宅船の実際の大きさを板材を並べて表示したスペースがあり、当時の安宅船の規模を体感することができるようになっています。同城跡は、今後「海城」整備のパイオニア的な事例として注目され、多くの人々が訪れる城跡になって欲しいものです。