静岡古城研究会会長:もっちーのブログ

静岡古城研究会会長:望月のブログです。主に静岡県内の中世城郭関係の情報を発信します。※当ブログはリンクフリーです。

横浜市歴史博物館の企画展「蒔田の吉良氏」に行ってきました

2014-08-31 17:10:21 | 報告、その他お知らせ

8月30日(土)、7月19日(土)~8月31日(日)まで横浜市歴史博物館で開催されていた企画展「蒔田の吉良氏」の見学と、関連の研究講座「吉良氏研究の最前線」(講師:東京大学大学院 谷口雄太氏)の聴講に行ってきました。

吉良氏は三河国吉良荘を出自とする足利氏の一族で、主に「京都吉良氏」と「武蔵吉良氏」の二つの流れがあります。

「京都吉良氏」は戦国時代には三河に戻り今川氏の従属下に入ったものの徳川家康の台頭で衰退し、江戸時代には高家となり、赤穂浪士の討ち入りでおなじみの吉良上野介義央を出す家です。それに比べると武蔵吉良氏はやや地味ですが、江戸城や世田谷城、ついで蒔田城を本拠として、後北条氏に従いつつもある程度独自の権力を維持した「国衆」で、江戸時代には旗本、元禄期以降は高家として存続する一族です。谷口氏の研究講座では、吉良氏は室町時代、石橋氏・渋川氏とともに「足利御三家」として絶大な権威を有し、武蔵吉良氏も鎌倉府の「公方-管領体制」のもとで権威ある存在として一目おかれ、後北条氏も同氏を重視して独自の支配権を認めていたようです。

企画展の展示では、蒔田城関係の資料の他に、世田谷城、喜多見陣屋出土遺物、武蔵吉良氏やその家臣の江戸氏・大平氏等に関する文献史料が展示されていました。伊豆に関係のある北条幻庵(氏綱の弟)や山木大方(吉良氏朝の母)の文書や、北条氏政が吉良氏家臣の大平氏に興国寺城の城版を命じた文書なども展示されており、案外静岡県にも関係ある史料が出ていたことは新鮮な驚きでした。

 

実はその前に、蒔田城の跡と吉良氏の供養塔がある勝国寺に行ってきましたが、蒔田城跡の大部分は横浜英和女学院の校地となっており、周辺にわずかに堀跡ではないかと思われる地形などが認められるだけでした。

  

勝国寺は写真のとおり閑静なたたずまいの寺院で、境内には古墳なのか、土塁の一部なのか、それとも後世のものなのかわからない、塚状の高まりがありました。吉良氏の供養塔は、全て近世の補修又は造立のものと思われましたが、向かって右から二番目の五輪塔は吉良政忠の供養塔といわれ、地輪に「文亀二年(1502)」の紀年銘が読み取れました。

    

静岡古城研究会では、9月21日(日)に三河の吉良氏関係の城郭の見学会に行きますが、それに先立っていい「予習」ができました。

 

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第31回 全国城郭研究者セミナーに参加しました

2014-08-05 00:33:35 | 報告、その他お知らせ

8月2日(土)・3日(日)の両日、福岡市の九州大学西新プラザにおいて「第31回 全国城郭研究者セミナー」が開催され、静岡古城研究会からは土屋比都司さんと望月が参加しました。

1日目は6本の調査・研究報告【「肥後相良領の近世城郭」(鶴嶋俊彦氏)、「豊前・小倉城発掘調査より」(中村修身氏)、「城郭パーツの組成と年代観」(山本浩之氏)、「『松浦型プラン』の研究視点」(林隆広氏)、「山寺の空間的変遷と城郭」(藤岡英礼氏)、「慶長20年一国一城令の発給と実際」(花岡興史氏)】と、今回のシンポジウムのテーマ「近世城郭をどう捉えるか」に伴う基調報告1本【「近世城郭における技術発展と規格化-城郭の完成と技術者の凋落-」(山上雅弘氏)】がありました。西日本の城郭の研究報告が大変新鮮に感じられた報告と、従来の認識の再検討を迫る報告などがあり、非常に刺激を受けました。

2日目はテーマに伴う3本の基調報告【「近世の社会と城郭観-伊達氏の事例を中心に-」(太田秀春氏)、「近世城郭の形成と大名権力」(中西義昌氏)、「近世城郭史料論」(千田嘉博氏)】が午前中にあり、午後は討論が行われました。2日目は帰りの時間の関係で残念ながら討論の途中で失礼せざるを得ませんでしたが、今まで中世城郭を主に見てきた者にとって、近世城郭研究の形成・確立の過程を勉強することは大いに参考になりました。また近世に確立した城郭の諸要素の視点から中世城郭を見つめ直すことも必要だということを痛感しました。

また例年のとおり書籍販売も行われましたが、静岡から遠く離れた九州が会場だったため『古城』をはじめとする当会の書籍は残念ながらあまり売れませんでした。ただ、『縄張図集成』に関心をもっている方がかなり多く、「次はいつ出るのか」と何人かの方に聞かれました。「遠江編」に期待している研究者の方が相当いらっしゃるようで、調査・縄張図作成を可能な限り早く進めて行かなければならない、と少々プレッシャーも感じました。

 

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