南町の独り言

様々な旅人たちが、日ごと行きかふ南町。
月日は百代の過客、今日もまた旅人が…。

カミハテ商店

2013-01-13 17:10:11 | 映画
満席でも50名という小さな劇場へ開演45分前に到着した私の順番は33番。
あやうく入れないところでしたが、シリアスなテーマの割に人気が高くてびっくりしました。
それにしても静かな静かな映画でした。

カミハテとは「上終(かみはて)」という地名です。
この小さな港町には自殺の名所となってしまった断崖絶壁があります。
その近くにある1軒の古びた商店が舞台です。
昔、子ども時代にはどこにもあったようなお店です。

お店番をするのは高橋恵子扮する孤独な初老の女性“千代”。
千代の焼いたパンと牛乳を最後に買って自殺していく客を、千代は黙って迎え黙って送り出します。
そして翌日になると千代は、断崖の上に残されている靴と牛乳瓶を黙って持ち帰ります。
この千代には子ども時代に辛すぎるような体験がありました。
なぜ千代は死のうとする人に救いの手を差し伸べないのか、なぜ千代は黙って靴を持ち帰り隠すのか、なぜ千代はひたすらパンを焼き続けるのか…。
セリフはありませんが、それらの理由が共演者らの演技と、隠岐の自然を背景にして明らかになってきます。

自閉症の牛乳配達の青年、ほとんど何もしゃべらないバスの運転手、都会で暮らすたったひとりの弟、すべての生き方が静かに絡み合ってストーリーは展開します。
ある事件がきっかけで商店もパン焼きも止めることを決意した千代ですが、最後に向かった断崖で牛乳配達の青年の自殺を思いとどめさせます。
しかし千代のこれからの生き方も、弟や自閉症の青年の人生も、最後はどうなるのか映画は示さないまま終わります。
それは観客の想像の中にあるとでもいうような映画でした。








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