南町の独り言

様々な旅人たちが、日ごと行きかふ南町。
月日は百代の過客、今日もまた旅人が…。

最後の茶摘

2011-05-15 19:12:53 | Weblog
二人用の茶刈り機を親父と使う。
昨年より親父の歩くスピードが落ちている。
そのスピードにあわせながら、ゆっくりとお茶を刈る。
今年最初で最後の手伝いだ。

親父もお袋も80代半ばでもう限界、今年を限りにお茶作りを止める。
昨年体調を崩して茶畑の世話が充分にできず、満足のいくお茶ができなかったことが心残りの様子であった。
ゆっくりと親父と茶刈りをしながら子ども時代のことを思い出す。

父を早くに亡くした親父は、結婚前からずいぶんと苦労したらしい。
爺さんが事業に失敗してほとんどの財産を失ったため、家を立て直すために必死に働いてきた親父。
荒地を開墾して畑を作り、朝から晩まで働き詰めで山や田んぼを広げ、今でいうところの非正規社員として働きながら農業を続けた。
弟の世話をするために私は保育園に行かなかった。
だから幼かったときの思い出といえば、山で両親と食べたメンパ飯や、一生懸命働いている両親の姿だ。

おそらく親父の正直な気持ちは、こうして広げ守ってきた畑を、なんとかして私に継いで欲しいということだろう。
しかしそれが適わないことも承知しているから、毎年毎年少しずつ大変なところから手離しをしてきた。
そしていよいよ今年のお茶刈りが最後となった。
親父のスピードが落ちているのは、単に体力が落ちたからではないのかもしれない。
親父と二人でゆっくりと歩く。
休憩しているときの親父の一言。
「やはり今が一番いい止め時かもしれないな…」

ちょっぴり心が痛みました。

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