南町の独り言

様々な旅人たちが、日ごと行きかふ南町。
月日は百代の過客、今日もまた旅人が…。

21世紀の歴史

2009-07-26 20:51:32 | 読書
フランスのサルコジ大統領がこれを読んで感銘を受け、仏大統領の諮問委員会として「アタリ政策委員会」を設けたことで一躍有名になった本です。
著者のジャック・アタリ氏は1943年生まれで、わずか38歳のときにミッテラン大統領の特別補佐官を務めたほどの切れ者です。

この本では2050年の世界を想定しながら、そこから歴史を振り返るという手法を用いています。
アタリ氏は3つの波(超帝国・超紛争・超民主主義)が21世紀の歴史を決定するといいます。
まず現状を市場の力が世界を覆っており、マネーの威力が強まって個人主義が勝利した姿であると分析しました。
そしてその金銭欲が台頭し、行き着く先は国家も含め、障害となるすべてのものに対して、マネーで決着をつける世界(彼はこの世界を超帝国と名づけた)が出現するとしました。
(この本は今回の世界金融危機を予見した書としても有名になりました)
〈超帝国〉は商業的富の創造主であり、新たな狂気を生み出し、極度の富と貧困の元凶となります。
こうした狂気や悲観的な未来にひるみ、暴力によってグローバル化を押しとどめようとすると、人類は勃発する残虐行為や破滅的な戦いに陥ってしまいます。
人類を滅亡へと導きかねないこの戦いを彼は〈超紛争〉と呼びました。
そして最後に、グローバル化を拒否するのではなく、規制できるのであれば、また、市場を葬り去るのではなく、市場の活動範囲を限定できるのであれば、そして、民主主義が具体性を持ちつつ地球規模に広がるのであれば、さらには1国による世界の支配に終止符が打たれるのであれば、自由・責任・尊厳・超越・他者への尊敬などに関して新たな境地が開かれるであろうとしています。
そうした境地を〈超民主主義〉と呼んでいます。

ご多分にもれず難しい本でしたが、結論からいえば我が国資本主義の父といわれた渋沢栄一氏の「道徳経済合一説」のほうが分かり易いと思いました。
日本の経営者や政治家のみなさんもジャック・アタリ氏と合わせて、大先輩の「道徳経済合一説」を読み取っていただきたいと切望します。

21世紀の歴史――未来の人類から見た世界
ジャック・アタリ
作品社

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