「ANA枠」はわずか5席 ピーチとのコードシェア、その中身とは❓
ANAとピーチは27日から、成田と札幌・福岡・沖縄、中部と札幌・沖縄を結ぶ路線でコードシェアを始める。消費者目線での、ANA便として利用する最大のメリットは、ピーチ運航便への搭乗でもANAのマイルがたまる点だ。ANAの上級会員は搭乗時に空港ラウンジを使うこともできる。ピーチ便として利用する際は運賃形態によって手荷物の預け入れが別料金になるが、ANA便として利用すれば無料で1つ預けられる。
逆に言うと、メリットはそれくらいだ。座席と座席の間隔はANA運航便に比べると狭く、無料のドリンクサービスもない。事前に予約・購入・座席指定を済ませ、預け入れ手荷物がない場合は直接保安検査場に向かうことができる「スキップサービス」も使えず、空港でピーチの自動チェックイン機を使い、搭乗手続きをする必要がある。
かつてピーチの森健明CEO(最高経営責任者)はANAとのコードシェアについて「ANAで航空券を買ったらたまたまピーチ運航便で、席も狭いしお茶も出ない、というのに納得してもらえるのか」と話していた。この点はANAも相当気を使っている。
ANAの公式サイトの予約画面を見てみると、ピーチとのコードシェア便には「APJ(ピーチ)運航便」と明記されている。この文字をクリックするとピーチ運航便とANA運航便のサービスの違いなどを説明するページに飛ぶ。コードシェア便の予約を進めようとすると「このフライトはPeach運航便を含みます」との表示が現れる。公式サイトから予約する分には、ANA運航便だと勘違いしてピーチ運航便を予約してしまう事態は避けられそうだ。
ANA運航便とピーチ運航便に価格面の違いはあるのか。現在ANAは成田発着の国内線を全便運休している。ANA運航便とピーチ運航便が混在する中部─札幌線の8月27日の運賃を8月5日時点で比較してみた。
27日の中部発便は計6便ある。うち4便がANA運航便で1便がピーチ運航便、もう1便はAIRDO運航便だ。価格を比べるとフレックス(普通運賃)は全便横並びで4万5310円。「バリュー」「スーパーバリュー」と呼ばれる早期購入による割引運賃は便によって価格が異なるが、一部のANA運航便はピーチ運航便より安価に設定されている。
割引運賃は運航時間や売れ行きなどを考慮に入れながら便ごとに需要を分析し、価格を変動させている。ANAによると、ピーチ運航便の航空券は、同時刻にANA運航便を設定する場合に比べて価格を安く設定しているという。
ピーチ便として予約する場合と比べるとどうだろうか。ピーチの公式サイトから価格を調べると、ANAとコードシェアしている27日の中部発札幌行きの便は、手荷物を1個無料で預けられる「バリューピーチ」の価格が1万3690円だった。この便をANA便として予約する場合、最安値は2万6910円だ。
ピーチは需要動向によってANA以上に価格を上下させる傾向がある。28日の同条件の便を比べると、価格差は約7000円に縮小した。2000~3000円ほどしか差がない日もある。ただし、ピーチ便として予約する場合は手荷物の預け入れが別料金となる「シンプルピーチ」という運賃形態があり、便によってはかなり価格を下げて販売している。
ANAとピーチのコードシェア便を利用する際は、手荷物の有無や価格差などを考慮に入れながら、ANA便として予約してマイルをためられるなどのメリットを享受するか、ピーチ便として予約して価格面のメリットを取るかを検討した方がよさそうだ。
ANAHDがANAとピーチ間のコードシェアで得られる現状のメリットは、航空券の価格をあまり気にしない出張客などに、マイルがたまるという利点を示しながらピーチ運航便の座席をピーチ便としてよりも高く売れること。うまくはまればグループとしての収益を最大化できる。
だが、そのメリットもどこまで大きいものなのか。そんな疑問符が付くのはANA便として販売する座席数が少ないからだ。
ANA便を予約する際、サイト上では残席数の目安を確認できる。特に表示がない便は30以上の残席があり、「▲」と記されている便は残り10~29席だ。数字が表示されている場合はその数が残席数となるが、ピーチ運航便はどの便を見ても残席数が5以下だった。
ピーチの公式サイトからピーチ便として予約する場合も、便ごとに「残り8席」というような形で残席数が分かる。見比べてみると、ピーチ便としては残席数が多くあってもANA便としては残席数が5以下しかない、逆にピーチ便としては1~2席しか残っていないにもかかわらずANA便としては5席余っている便もあった。