ビタミンP

苦心惨憺して書いている作品を少しでも褒めてもらうと、急に元気づく。それをトーマス・マンはビタミンPと呼んだ。

身につけるものは自分の考えに合ったものにしたい

2021年07月22日 09時33分09秒 | Weblog

靴にも脱炭素の波、「緑の消費者」が生む新市場

(2021年7月22日 0:00 (2021年7月22日 5:05更新) 日本経済新聞WEB)

 

 大量生産、大量消費によって生み出される豊かさへの疑問が世界で広がりつつある。価格だけで選ばず、少しでも環境負荷の軽い商品を好む。そんな「緑の消費者」が生む新市場が企業の商品・マーケティング戦略に変化をもたらしている。
 若者向けのカフェやアパレル店が立ち並ぶニューヨーク、マンハッタンのソーホー地区。スニーカー店「オールバーズ」の旗艦店には20~30代の男女が集まる。飲食店勤務のヘンリー・アベリーさん(27)は、友人が履いているのを見て気になり、来店した。
 米オールバーズは環境に配慮したものづくりで若者を中心に支持を集め、いま最も注目を集めるブランドの一つ。靴や衣類にニュージーランド産の羊毛やサトウキビなどの天然素材を使用し、生産にかかる二酸化炭素(CO2)排出量を商品タグに明記している。
 アベリーさんもこうした取り組みに共感する。「身につけるものは自分の考えに合ったものにしたい」。オールバーズのスニーカーはミレニアル世代のアイコンとなり、2016年の創業ながら企業価値10億ドル(約1100億円)を見込むユニコーン企業に育った。

■欧米の動き速く

「ファッション産業は世界で排出される温暖化ガスの8%を占める」。スイスの環境コンサルティング会社クアンティスは18年、欧州全体とほぼ同等のCO2排出量をファッション業界が出していると指摘した。
 欧米の動きは速い。仏シャネルや米ナイキなどが19年に立ちあげた「ファッション協定」。使う電力の再生可能エネルギーへの転換を25年に50%、30年に100%にする目標などを掲げ、加盟ブランド全体のCO2排出量を19~20年に35万~45万トン減らした。
 ナイロン製のバッグや小物などで有名な伊プラダは21年末までに商品の全てを無限にリサイクルできる再生ナイロンに切り替える。
 一方で、トレンドに合わせて安価な商品を大量供給するファストファッションの代表格だった米フォーエバー21が19年に破綻するなど、環境負荷が重いとされるビジネスモデルが消費者の支持を得られなくなってきているとの見方もある。
 脱炭素の動きは排出量の多い発電や重工業に限らず消費者の生活に及び始めている。米ボストン・コンサルティング・グループ(BCG)が今年、日本で実施した調査では「2~3割の消費者は値段が高くても環境負荷の低い商品を選ぶ」との結果が明らかになった。
 世界ではこの傾向がより顕著だ。スウェーデンの首都ストックホルム。地元食品ブランドのフェリックスは、脱炭素を意識したユニークな試験店舗を20年10月に開いた。

■排出量で値付け

 野菜など、並ぶ品は普通のスーパーと変わらない。違うのは値付けの方法だ。商品の値段はCO2の排出量に応じて決まる。顧客は1人当たりの排出上限を定められており、排出が少ない商品ならたくさん買える。
「気候変動の理由のうち4分の1は食料が占めるのに、どの商品が影響しているかを消費者が知るのは難しかった」。フェリックスは店舗開設の経緯をこう明かす。輸送などで多くのCO2を使う商品は高くなるため日々の買い物を通じて、消費者が排出量を意識でき、温暖化対策につながるとの期待がある。
 スーパーの商品の産地や廃棄物などを5段階で評価した「グリーン・コンシューマー・ガイド」が英国で出版されたのは1988年。「『グリーン』に対する消費者の意識はこれからさらに高まる」とBCGの森田章マネージング・ディレクターは話す。グリーントランスフォーメーション(GX=緑転)への消費者の視線を企業は無視できなくなっている。

 


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