ごみ処理・野菜販売、1台で。ミダックと平野工業が移動車
堆肥に再生、農家に提供。浜松で食の循環目指す
(2021年7月21日 1:49 日本経済新聞WEB)
産業廃棄物処理のミダックや自動車部品製造の平野工業製作所(浜松市)は、移動しながら生ごみを発酵処理し、野菜などを販売できるリサイクルカーを開発し、実験運用を始めた。スーパーや飲食店から食品残さなどを回収し、堆肥化して農家に販売。野菜の直売にも活用してもらうモデルで、浜松市から取り組みを広げたい考えだ。
設備保守などのNTTフィールドテクノ(大阪市)が手掛ける食品のリサイクル事業「地域食品資源循環ソリューション」の一環として展開する。同事業の標準モデルではスーパーや食品工場などに発酵処理装置を設置するのに対し、ミダックなどは車で移動しながら処理する「浜松モデル」を展開する。
リサイクルカーは平野工業が受託開発した。車両はトヨタ自動車のワンボックスカー「ハイエース」を採用。リチウムイオン電池を6基搭載したほか、天井に太陽光パネルを設置して電力を確保する省エネ対応とした。
車内には環境事業のウエルクリエイト(北九州市)が開発した、食品残さなどの発酵分解装置を搭載した。1日に40~50キログラムを24時間かけて一次発酵処理できる。その後、リサイクル施設に運んでさらに発酵させ堆肥化したうえで農家に提供、販売する。
車両の後部には野菜などを陳列するスペースを設け、リサイクル堆肥で生産した農産物の移動販売もできるようにした。装置を設けた空間は外に臭いが漏れないよう密閉した。後部のスペースには断熱材を使い、暑さで野菜が傷まないようにした。
浜松市では食品工場やスーパー、飲食店などの事業所から、古くなった食品や野菜の切れ端など年間約3万6000トンの生ごみが出る。多くはリサイクルされずに一般ごみとして焼却処分される。ただ、環境意識の高まりとともに再利用の機運は高まっている。浜松モデルでは、店舗側が処理装置の場所確保などを気にせず、適当な時間に回収してもらえるメリットもある。
ミダックなどは今春、リサイクルカーを使った実証実験を浜松市内で行った。遠鉄ストアから回収した生ごみを移動中に発酵処理した。臭いが漏れるなどの問題が起きないことを確認した上で、農業法人の青空農園(同市)が堆肥を使って生産した野菜を車両で販売した。「リサイクルを体現する車」として、市内の小学校で環境問題についての訪問授業も実施した。
実証実験は終了したが、ミダックは生ごみなどの廃棄物を再生利用できるよう浜松市に申請する方針だ。市から指定を受けることで、小口の生ごみを回収・再生利用できるようにする。「リサイクルカーの事業性について検討したい」(ミダック事業管理グループの国弘彩グループ長)
一般的に生ごみは焼却処理よりもリサイクルする方が処理コストがかかるため、国弘グループ長は「リサイクルしながらコストを下げる方法を探りたい」と話す。
ミダックは東証1部・名証1部上場企業。2021年3月期の売上高は57億円だった。平野工業は1980年設立で、自動車のカスタム部品を主に手掛ける。社員は18人。21年3月期の売上高は約2億円だった。