旅とエッセイ 胡蝶の夢

横浜在住。世界、50ヵ国以上は行った。最近は、日本の南の島々に興味がある。

オバQな世界

2018年08月03日 00時02分07秒 | エッセイ
オバQな世界

 ボックはお化けのQ~太郎~。藤子不二雄氏の人気マンガも、今では忘れ去られた。オバQを知っている人はよほどのマニアか、或いは相当年がいっている。自分は別にオバQが特に好きなわけではない。ただあの貫頭衣のようなダボダボの白服を、中東の男性が着ている服に例えた奴がいた。「あのオバQ達は----」

オバケのQ太郎をくっきりとイメージ出来る自分は、何のことを言っているのか直ぐに分かった。自分は彼らの服を着たことはない。ターバンは、高校生の時に親父が従兄弟?の新聞記者から貰い、それを譲り受けた。それが気に入った自分は、大学に入って発掘のアルバイトの時に被った。

 夏場の日よけによい。砂ぼこりも、口を覆って避けられる。発掘現場(弥生後期の集落)は、関東ローム層の表土を取り去り、地べたすれすれで作業するので、砂ぼこりがすごいのだ。目は大きめの樹脂製のゴーグルでプロテクトするとよい。話しがずれた。

 ずれついでにもう少し。中東のダボダボ服を着たことはないが、印度では白いダボダボ服、ピジャマを買って着た。着てみると実に快適だ。ズボンにベルト、アンダーシャツにボタンのシャツ、そして靴下に靴。それをゴムサンダルとピジャマに代えると、ズーンと解放される。暑さが違う。締め付けが一切なくて超ー楽になる。それで何とかしんどい印度の旅を続けられるぜ。

 カルカッタ(現コルカタ)では、まとわりつく乞食が15人から7-8人に減った。金を持っていなそうに見えるのかな。服を代えるとカモがスズメに見えるらしい。人が3人は入りそうなダボダボズボン。上もゆったりした長そで。風を受けてユラユラするピジャマは、暑さを溜めない。

 あっターバンで思い出したが、彼ら(印度人ではない中東の人)はたいてい短髪で、ターバンの長い布地をかぶる前に、頭にピッタリとはまるナイトキャップか水泳帽のようなものをギュッとかぶる。色は白い。そのキャップの上にターバンを巻き、輪っかできっちりと留めるから少々の振動や風では揺るがない。

 では、印度のシーク教徒のターバンの中は?これは凄いことになっている。でも今回は省略。中世を通してアラブ人、トルコ人、ベルベル人等はゆったりした服にターバン姿。湾曲した半月刀で戦っていた。ヨーロッパの騎士が鎧兜、或いは鎖帷子を身に付けているのと好対照だ。かなり不利なように思えるが、実戦では10中7-8回は欧州勢が負けている。
 
 数で勝ったのか、機動性が良かったのか。ただ攻城戦では服やターバンに火がつきやすく、苦戦を強いられた。守る側は、城壁に取りつくムスリム勢に、ドーナツ型に編んだ枯れ草に火を点けて投げおろすだけで効果を上げていた。

 ここまで服装のことばかり書いてきたが、オバQな世界は、服よりもその中身にある。
アッサラーム・アライクム(あなたの上に平安を)
アライクム・アッサラーム(あなたの上にこそ平安を)
この言葉はイスラム社会の挨拶だが、意外なことにユダヤ人のイエス・キリストが使っていたそうだ。

 同じムスリムでも、ペルシャ人(イラン人)とトルコ人はアラブとは人種が違う。エジプトも随分異色だ。第一エジプトにはキリスト教徒(コプト教)が多い。エジプト人は人なつっこくて陽気だ。中東のフィリピンて感じ?
 
 まあアラビア半島に限っても良いけれど、典型的なムスリム、象徴的なアラブって何?砂漠の青い民、ベドウィン族のこと?石油が出る以前は、アラビア半島など、つけ根と南端の港以外は見向きもされなかった。メッカのカーバ神殿には異教徒は入れない。地中海に面した部分を除いては、見るべき遺跡はない。

 戦略的にかなめの位置にあるイスタンブールを都にして、豊饒なるナイルのたまもの、エジプトを持つオスマン・トルコが中世~近代におけるイスラム世界の中心であった。それではオバQな世界、覗いてみよう。といっても自分は、たいした中東通ではない。延べで2~3週間サウジアラビアを中心にUAE、オマーン、イエメン等を商売で訪れただけだ。

 タイ人、ベトナム人、ベンガル人、クメール人、華人、フィリピン人、ビルマ人、朝鮮人ほど深い付き合いはない。それでも中東には、ラテン・アメリカと並んで強烈な印象を抱いた。うつろいゆく四季を持ち、雨がしとしと降る極東の緑の島国、日本とはおよそかけ離れた生き方、考えを持った人たちがいる。

 今、人達と言ったが、男限定だ。サウジで見る女は、全身を黒いチャドルで覆っていて、若いのかババアなのかさっぱり分からん。顔を見るのは、7つ位以下の子供、ホテルで働く清掃のフィリピン女性だけだ。あっあと一つ。空港に行けば、各国のCAが歩いている。

 ジェッダの空港で出発便を待っていた。周りはひげもじゃのオバQ達。ちらほら混じる黒いオバQ、頭からすっぽり布で覆われた女性はじっと座って、真昼のヤモリのように動かない。

 ひげの青年(パリっとしたオバQ服に、シャレた赤いチェックのターバン)が唐突に通路で止まった。固まっている。んっ何?何かあった?彼の視線の先は通常の空港の風景。乗客だけがちょい変。ひげ青年はなかなかハンサム、哲学的な風貌をしている。

 彼は青い目を見開き、瞬きを忘れている。おい、おい、呼吸忘れてるよ、兄ちゃん。と突然、哲学青年の鼻から血が噴き出した。ドッ、バ~~と言いたくなる勢いだ。実際にはそんなに大量ではないのだろうが、2回噴射されたそれは、通路と洗い晒しの白服に真っ赤な点々。

 ハっと我に返った青年の先を、マレーシア航空のCAたちが髪を結いあげ、背筋を伸ばして颯爽と歩き去った。その服装は?スカートは?短くないじゃん。膝下でしょ。げっ青年、ふくらはぎに欲情したのか。
お前、久米仙人なのか。

 まあ分からないでもない。サウジにはエロビデオ、エロ写真、エロ本が一切ない。どらえもんのしずかちゃんの入浴シーンは削られる。あの鼻血ドッバーは無理もない。俺自身、オマーンの空港で子供の土産に買ったディズニーの❝ダンボ❞のテープを取り上げられ、出発まで預かられた。

to be continued,


































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