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my耳袋#4「動く真っ黒」:kipple

2010-08-11 00:39:00 | kipple小説

my耳袋#4「動く真っ黒」


これも小学生の時の事です。

どうも、子供の頃の方が変な体験の思い出が多いようです。それも、思い出そうとすれば、けっこうあるもので。

しかも、かなり鮮明な記憶として残っています。

大人になってからも、けっこうあったと思うのですが・・・何故か余り思い出せないのです。

どうしてでしょうかねぇ。やはり子供の頃の方が感受性が鋭いからなのでしょうかねぇ。

年を取るにつれ、色々な事が反復感覚になって、世界は新鮮さを失い、肉体的にも衰え、感性も鈍くなり、何か変だなぁ~と思っても、たいして気にしなくなり、すぐに忘れてしまう様ですねぇ。

ま、ボケてくる、と!

いやですねー!いや、それでいいのかもねぇ。鋭敏な子供の感性のままで長く生きてゆくのって、たぶん無理なんだと思います。人間。衰えて経験の積み重ねで鈍くなりボケてこそ、発狂せずに、・・・いや、ま、たまに発狂したりするか・・・、でも、まあ、だいたい余り発狂もせずに生きてゆけると。

あっと!話が長くなるっス!今宵は短めにしようと思った矢先に。。。

これは、作り話では無いのでね。

あまり長々と書いてゆくと、どうしても妄想が膨らんで、実際に体験した事なのに、ついつい細部を今・現在のオツムに広がる妄想で着色している自分に気づいたりする訳でありまして。

淡々と憶えてる事だけを短く書こうぞ、my耳袋!

何だか前置きが長くなっちまいやしたが、私がアレを見たのは、1971年の2月だったと思います。

まだ、小学校5年生でした。前の年、1970年に大阪万博に行き、三島由紀夫が市ヶ谷で割腹自殺したりと、色々あった後の年明けの事なので、よく憶えてます。

1971年2月の朝の事です。

私の一家は文京区目白台というところで、一軒家を借りて暮しておりました。田中角栄の御殿のすぐ近くでした。

平屋ではなく、おまけみたいに二階(八畳間が一つだけ)がありましたが、ほとんど二階は使わず物置状態になっておりました。

一階は台所と、六畳間が2つ、洋間が一つ、あとはトイレと風呂と玄関って感じでした。

台所と六畳間が模様の付いたガラス戸で仕切られていて、そのガラスの引き戸を閉めてしまうと、台所からも六畳間の方からも双方よく見えない状態になりました。

私と両親は、その台所とガラスの引き戸で仕切られた六畳間で一緒に寝起きしておりました。その六畳間のさらに奥に又、襖で仕切られた六畳間があり、そこは縁側に続いておりました。

窮屈な時は私たち子供は、その奥の六畳間に追いやられ、そこで寝ていました。

その日は、台所の隣の六畳間で両親と共に寝ていました。

私は、まだ薄暗い朝方に、ふと目覚めてしまい、布団の中でモゾモゾしておりました。

両親はまだ熟睡しており、二人に挟まれたまま何となく布団から顔を出してボンヤリとあたりを見回していました。

だんだんと日が昇って、朝陽が入ってきて、家の中が明るくなっていく様を眺めておりました。

ふと、ガラスの引き戸の向こう側、即ち、台所に何か黒っぽいものが見えました。

模様の入ったガラスの引き戸は、きちんと閉じられていて、向こう側の台所はハッキリと見えないのですが、私には人の影が動いているように思えました。

とても、静かでした。全ての音が何かに吸い込まれて消えてしまっている、そんな感じでした。

しかし、微かな音が台所の方から聞こえます。

やはり、誰かいる。と思いました。

最初、私は、泥棒かと思い、両親を起こそうかと思いました。

でも、父親はイビキをかきながら気持ち良さそうに寝てますし、母親も静かに熟睡していまして、下手に起こしたら半殺しにされそうな気がしまして、何か戦うものはないかと、玄関に置いてあるバットを思い浮かべました。

しかし、もう一度、台所を模様つきのガラス引き戸越しに見てみると、何だか変なのです。

よく見ると、黒っぽい影はひとつだけじゃありませんでした。3つ動いていました。

それも、大きくなったり小さくなったりしてるんです。

音も何だか変な感じで、鉋屑の上を猫かなんかが、そぉっと歩いているような、聞き取れない程、小さいのですが、やけに耳障りで、辺りが静まり返っているせいもあってか、音そのものが生きもののように私の耳から直接脳味噌に入り込んで頭の中で鳴っているようでした。

泥棒ではない、と思いました。そして、人間でもない、と思いました。

じゃぁいったい、アレは何だ?と、私は訳の分からない恐怖に、ゾォッォォ~っとして布団を頭からかぶって、しばらくジッとしていました。

けっこう長い間、布団をかぶって、ジッとしていたと思います。

もう、そろそろ大丈夫だろう。あれは何かの錯覚だ、見間違いだ、と言い聞かせ、布団をちょっと上げて、隙間から台所の方を見ようとした、その時です。

いきなり台所と六畳間を隔てたガラス戸の隙間から、真っ黒な影が、スーッと入ってきて、布団から覗いてる私の真ん前にやってきました。

私は怖くて動けませんでした。

布団の隙間から、ただただ、目の前にいる、その真っ黒い影を見ていました。

いや、それは影ではありませんでした。何て言うか、人間の両手両足を取って胴体と頭だけがくっついてるような感じで真っ黒そのものなのです。

その真っ黒が目の前にいるのです。とてもくっきりとしていて、それでいて何だか不定形なんです。

朝の空気の中で、その真っ黒い何かは、ハッキリと見えました。

私は怖くて動けず、ずっと布団の中から覗いてる状態でしたが、次第に、その真っ黒の上の部分、たぶん顔に相当するところだと思うのですが、それが下がってくるのです。

そして、布団の中から覗いてる私の目の前に、その真っ黒の顔が下りてきました。

布団の中の私の顔の、ほんの数センチのところに真っ黒の顔がありました。

・・・・・・・見つめ合っている、という状態ですね。

何だか私は生きている心地がしなくなり、このままでは自分が消えてしまいそうな気がしたもので、思い切って布団から出て、両親を起こそうと思いました。

が、やはり怖くて、起き上がる力が湧いてこないのです。

そうやって、布団の中で1人もがいてるうちに、急に目の前の真っ黒が天井まで届くくらいデッカクなったかと思うと、天井に向かって縮んでゆき、今度は天井からぶら下がるようにして、スルスルと動いていきました。

真っ黒は細く小さくなって、天井を水みたいに、スルスルと移動していき、六畳間を出て玄関の方に向かっていきました。

私は何故か急に起き上がる事ができて、すぐに、その後を追いかけました。

ガラス戸を開けて台所に行きますと、台所に、やはり、同じような2つの真っ黒がおりました。

しかし、私が台所で見つけるや否や、その2つの真っ黒も、先に玄関に向かった、さっきの真っ黒を追いかけるようにして、身を細くして、スルスルと流れるようにすばやく動き始めました。

私は、さっきのも、その2つのも、何とか正体を見定めてやろうと、一生懸命に追いかけて玄関口に出ました。

すると、真っ黒たちは、スルスルと玄関の扉の下から、流れるように外に出て行ってしまいました。

私は、玄関の扉を開いて、外に出ました。

真っ白でした。外は、ピッカピカでした。

雪が降っていたんです。もう、けっこう積もっていました。

そして、すっかり夜は明けていて、とても眩しかったです。

しばらく目が変でしたが、治ってくると、さっきの真っ黒は何処へ行ったのだろうと思い、玄関先の雪の上を歩いて路地に出ました。

真っ黒たちが、どこに行ったか、もう分かりませんでした。

私は、しばらくジッとしていたと思います。

それから、家に帰りました。そして家の玄関に入る時、積もっている雪の上に、ミシン目のような小さな点々があるのを見つけました。

真っ黒たちの足跡?だったのでしょうか?

それも、すぐに降り積もる雪に埋もれて消えてしまいました。

私は、うう、寒いと今さらながら寒さを感じ、家の中に戻り、鍵を閉め、再び、布団にもぐり込みました。

母親が起きたので、私は、今、台所に変なのがいたと言いました。

“ばか、何を朝から寝ぼけてんの、ああ、寒いわねー!”

と、全く相手にされませんでした。



・・・いったい、アレは何だったのでしょうか・・・




                   


This novel was written by kipple
(これは実体験なり。フィクションではない。・・・が、妄想かもしれない。)



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