【或る着物生活者の一生】
あう!朝のお空もピッカピカ~!今日も昨日も一昨日もなんだか連日ピっカピっカだよ、おっかさん!
トイレの窓からもピッカピカの朝の日差しだよ~ん。爽やかサワデ~!ワシのトイレは期間限定品のキティちゃんの桜の香りのサワデ―じゃ~!
かなり減っとるがまだ香ってま
【或る着物生活者の一生】
昨日は朝方はまだまだ肌寒さはあったものの気温がグングン上昇していくのがアリアリと分かるのでお花模様の黒ステテコ一丁に薄めの黒の長襦袢纏い其の上にジーンズ着物をだらしなく着て兵児帯を寝っ転がりながら雑に結び、そのままだらだら素足に下駄履きで病院へ出掛けた。
【或る着物生活者の一生】
病院に着くとまだ開いたばかりなのに異様に混んでおった。御老人ばかりが目立つ。普段こんなに混んでない。天気が良く暖かいので皆繰り出してきよったか。
皆チンチクリンなみすぼらしい南蛮衣装だ。そして窮屈そうな南蛮靴。足腰痛いだろに何故そげな窮屈な衣装好むのか?
【或る着物生活者の一生】
だいたい定年で退職し自由の身になれた方々なのだろうから、あの窮屈でうざってぇ南蛮奴隷服から解放されたく思わんのだろか?あちこち身体にガタが来て苦しいから病院来てるのだろうに、まだ南蛮服で自らの肉体を拘束しあの閉ざされた足の牢獄と言える南蛮靴を履いてる…
【或る着物生活者の一生】
せっかく一生懸命働いて自由な老後を迎えたのだからそんな閉鎖病棟みてぇな南蛮衣装から自分の肉体を解放すりゃいいのによ。
何てぇんだっけ、あれ、背広?スーツ?それにあの最悪の首輪はネクタイとか言ったな。せっかく会社等の奴隷南蛮衣装の強制性から解放されたのによ
【或る着物生活者の一生】
その拘束着を脱ぎ去り、日本人の身体に最もフィットした解放溢れる着物に着替えスカぁぁぁ~~~っと閉塞感(少なくとも身体的)から解き放れたら良いのによ。
ま、身についた習慣はなかなか変えられぬか。ジーパンやスニーカーの御老人も多いがアレももってのほかだな。
【或る着物生活者の一生】
ま背広だのスーツだの言う南蛮衣装にしろジーパンやスニーカーといった南蛮窮屈カジュアルにしろ、
この着物と下駄履き暮しの、空も海も山も大地も全部、大自然、地球全体に開かれた肌身で感じる解放感軽快感爽快感極楽感とは全く比較にもならぬ訳じゃが。
【或る着物生活者の一生】
まそんな見てるだけでこっちまで鬱鬱してきそうな南蛮衣装だらけの御老人たちの中、延々と二時間くれぇ待たされた。
座る場所もなくウロウロしとると、ワシが少々ビッコ気味であるせいか御老人たち、わざわざ席を詰めてワシが座るスペースを作ってくれよった。申し訳ねぇス
【或る着物生活者の一生】
両隣に御老人。背中丸めて大人しくちょこんと座って憂鬱そうに診察順番待っとる。右隣りの無表情な御老人に其の隣りの奥さんらしき人が時折声をかけとる。
「痛い?苦しい?少し立つ?」等々
してワシの右隣りの俯いた無表情な爺さんがポツリ。
「痛い。いつまで痛いか」
【或る着物生活者の一生】
すると其の奥さんらしき人がこう言った。
「死ぬまで痛いのよ」
そして右隣りの無表情な爺さんは少し顔を上げ、虚ろな感じで
「そうか…死ぬまでか…」
と言うと、ゆっくりと立ち上り、すぐに又、ゆっくりと座った。
何だか其の奥さんらしき人の言葉が残忍に思えた。
【或る着物生活者の一生】
その様にして、こちとらも足腰の痛みに耐えながら何となく周囲の御老人達を観察したりして、やっと順番が来て診察が終り外に出ると、真夏や。
真夏じみた日差しの中、歩いとるだけで暑い暑い。汗ばんできたが待ち時間と診察で思いきりはだけた着物から入る風が心地良かった
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