第3章 白い大粒の砂に左足を奪われたキーホーは右足を忘れていました。 でも砂はキーホーの力には、かなわなかったので左足は余裕シャクシャクと大粒の砂を蹴散らしてやったのです。
空には何も無かったのです。 空は全体をボォゥッと青白く光らせ、アルコール液内の死人の肌の様に魅惑的でした。 その時、キーホーは右足を思い出し、歩ける事を知りました。 しかし、淋しさは、ぬぐいきれません。 相変わらず。
キーホーは、どうしてか恥ずかしくて顔を桜色に染め、伏せ目がちに近付いて行きました。 透明な少女は、膝をついて白く大きな、がらぁんとした画用紙に指で絵を描いていました。 キーホーは勇気を出して、その美しい透明な少女の近くへ行き、こう言いました。 「明日は明日の風が吹く?」 少女は黙っています。 たぶんヴィヴィアン・リーに気持ちが伝わらないからでしょう。 スカーレット・オハラはタラの広野にテレポーティションしたんですよ。 だって、消しゴムが口を消すより井戸に落ちたシルクハットなんだから。※ ※注。この部分に意味は無い。私、作者は、もう、これ以上、意味のない事をつらつら書かない事を、ここで宣言します。よろしくね。 それでは、もう一度、キーホーが少女に話しかけるトコロから。
「何の絵?」 すると 「あなた、私が見えますの?」
そのようでした。 キーホーにも誰にも少女の姿は見えないのでした。 でも画用紙は見えました。 そこには美しい少女の絵が描かれておりました。 その絵の中の少女は透明な少女に色が付いたんだという事は、キーホーには、ちゃぁーんと、わかっていましたさ。 (そうだよ。僕も少女も誰もかも、こんな事、十年も前から、わかっていた様な気がするよ。 ほら、わかるだろう。 僕は、十年前に祖父の書斎で燈っていた、小さなランプの灯りが、軒下の防火用水桶の水面に、ゆらゆら揺れているのを、さめざめと降り続ける雨の中で、偶然に見つけた様な気持ちなんだ。 胸の奥で何かが遠のいて、遠のいて、キューッと侘びしくなる)
瞬く間に黒い燃え滓と化した少女の絵は、かろうじて、まだ、その原形を保っており、キーホーに向かって何かを伝えようと蠢いている様でありました。
小さな声が聞こえました。 “押し入れ事件がありましてね。ついに指を、噛み砕いて血でボードに「鳥」って書いてしまいましたよ” 風は海に消え、灰も飛沫に混じりました。 透明な少女は誰にも見えないのですから、いないも同じです。
音楽室へ。
でも、透明だもん、しょうがないやって、少し自分をごまかしました。
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