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あっしは、kippleってぇケチな野郎っす! 基本、自作小説と、Twitterまとめ投稿っす!

もの思うkipple -サガン少女-:kipple

2007-10-01 00:31:00 | kipple小説

     もの思うkipple -サガン少女-


サガン少女と題しても、別にサガンを論じようという訳じゃなく、サガンの小説について何か書こうという訳でもない。

先日、夕方の駅のプラットフォームの端っこで、“スリップノット”を大音量で聴きながら、ボケぇっと向かいのプラットフォームの端っこを見ておると、制服姿の少女が一人、ポツネンと風に揺らめくようにカバンを前に突き出して、スカートを“クルン、ふわっ!クルン、ふわっ!”とはためかせ、得体の知れぬ動きをしておる。
顔を、クイッと夕空方面に何やら凛々しく向けており、長い髪も、“クルン、ふわっ!”、の動きに合わせて優雅に踊ってらぁ!
遠くて良くは見えぬのだが、その目つきは何だか真剣そうだ!
中学生だろなァ、と思って何と無く、夕方の駅のプラットフォームの端っこで一人で珍妙なダンスをしておる、その光景が面白く、暫く鑑賞させていただいた。
が、すぐに電車がやって来て、あっしは乗り込みガタンガタン。
向かいのプラットフォームにも電車は、やって来て、夕暮れ珍妙ダンス少女の事など、すぐ忘れた。

しかし、しばらく電車に揺られていると、“あれっ?”・・・何だ?胸の奥底から湧いてくる、この切ない気分は何なのだぁ?
何だか変テコな気分に包まれて、電車を降り駅ビルから自宅へ向かう帰り道、あっ!
思い出した!
それは中学生の時の同級生の女の子。
あれだ!スカート、“クルン、ふわっ!クルン、ふわっ!”

何十年も前。30年?いや33年?そのくらいの過去。一度も思い出したことも無い。考えた事も無かった。何だ、この変テコリンな気分は?あっしは、ますますヤキが回ったかぁ!

家に帰って夜、思い出して来た、妙に色々と。
さっきの珍妙夕暮れダンスの女の子、似てるんだ、あの“クルン、ふわっ!”
同級生の女の子もやってたよ。放課後の教室で皆が “こっくりさん” やってる最中に一人でカーテン閉めた窓際で。

一人ぽつねんと細く開いたカーテンの隙間から真剣そうに空を見つめる、あの眼差しもそっくりだぁ!
あっしは、その子と中1の時と中3の時、同じクラスだった。
その子は帰国子女で、たしかブラジルか?英語、喋るのはペラペラで、先生顔負け、でも筆記テストはダメだったな。
今になって思えば彼女、いつも一人でポツンとしてたような気もする。

あっしは、その子と特に仲が良かったわけではないが、まあごく普通に喋ったり一緒に掃除当番やったりしたな。
けっこう気が合ったように思う。ただ一つ他の子とちょっと違うのは、からかいにくかったんだぁ!
口の中で唾でシャボン玉を作って、“ぷっ!”っと顔に吹き付けて、“キャ~何するの!がぁ~kippleうんち臭ぇ~あっち行け~!”
ってなノリにはなりそうもなくて、要するに彼女、大人っぽかったんだ。

あっしは中学の時は陸上部。最初のウチはけっこう部活出てたけど、映画やロックや文学にヤられて、学校終わるとすぐ新宿・銀座にすっ飛んで行くようになって、中2頃からあんまり部活にゃ顔出さなくなっちゃった。
そんで中1の三学期の始め頃かな?あっしがゲーテとか机の上でひっくり返って読んでると、彼女、“何、読んでるの?”と嬉しそうに聞いてきた。
彼女、そう言えば机にいる時はいつも文庫本読んでるな。ってんで、たまに二人きりになったりすると、いつも本の話になったな、しかも文学。けっこう熱の入った話になった覚えもあるな。

そんで、いつ頃だったっけな?中3の初夏頃かな、喧嘩みたくなっちゃったんだ!
その時だけじゃなくて、けっこう前から好みの違いで、言い合ってたりしたんだけどな。その時は何でかな2人とも、マジっぽくなって、それ以来、挨拶程度であんまり話とかしなくなっちまった。
そうなると、もっと何と無く気まずい度は増し、卒業式の日にすれ違っても目配せしただけ。それ以来、一度も会ってない、勿論話もしてない、33年間忘れてた。

彼女、卒業式の時に妊娠してた。誰が見てもすぐ分かる。お腹ぽっこり大きかった。

あっしは、それ以来、一度だけ、高校時代に、彼女のその後の情報を、中学時代の同級生のダチに教わった。
彼女、中学の時の体育教師と結婚するとか。
なるほど腹の子はアイツの子か。その体育教師、あっしが入ってた陸上部の顧問。爽やかな新人先生だった。
でも、あっし知ってたんだ。彼女、あっしと話、しなくなった後、どっかの高校の2才くらい年上の奴とベッチャリ付き合ってたの、あっし、商店街の真ん中ら辺にあった茶店で、思いっきりイチャツイテんの見てんだよ。
彼女どうなってたんだろか?いったい、どうなってたのだ?全然、分らぬ。

そうそう、あっしと彼女の喧嘩。
彼女、外国文学ばっかり読んでるんで、何で日本文学は読まないの?って、そこらへんの話。その手の言い合い。

決定的に喧嘩みたくなった放課後の階段の踊り場でのあの日・・・思い出した。
彼女が、
“うん、そうねぇ~、じゃ、何が良いの?”
と、あっしに聴くので、あっしは、その頃、必殺にハマっており、待ってましたとばかり!
“池波正太郎(イケナミショウタロウ)!ほら!必殺仕掛人!まずは、「仕掛人・藤枝梅安」!次に「殺しの四人」!「梅安蟻地獄」!「梅安最合傘」!「梅安針供養」!「梅安乱れ雲」!「梅安影法師」!「梅安冬時雨」!”
っと、口にするだけでも胸踊り、思わず嬉しくなっちまってる、そんな、あっしに返ってきたのは、
“げぇ~それ時代劇じゃん!ダセぇ~信じられな~い!絶対に、読みたくない!”
へ?あっしは目が点(*_*)だ。
“冗談じぁねぇよ!この白人カブレ!気どってんじゃねぇよ!池波だぞ池波!バカにしやがってヤボテンめ!この間なぁ、こっくりさんに、お前が一年後どこの高校行ってるか聞いたんだぜ、俺。何て返ってきたと思う? “シ”・・・“ヌ”だぁ! お前、高校行ってねぇってよ!死ぬってよ!”
あたぁ・・・口からデマカセ、思わず変な事言っちまった。
“あ!今のウソ―!他人の事なんて聞かないよぉ~!”
と言ったが彼女、一瞬、マジ、真剣な目になって、階段ズダダダダ~!って超光速で降りてった。


その時、彼女が持ってた文庫本―フランソワーズ・サガン―「悲しみよこんにちは」。
強烈に思い出した。その時、彼女が読んでいた。
一番リアルに記憶の中から浮び上がってきたのは、その時、彼女が持ってた文庫本。
フランソワーズ・サガン  『悲しみよこんにちは』

赤い夕焼け空の下、今日も舞うよ珍妙夕暮れダンス少女。あれは、サガン少女だ。
33年の時を経て、『悲しみよこんにちは』 (⌒-⌒)





                おわり


This novel was written by kipple
(これはエッセイなり。フィクションではない。妄想じゃない。)



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