元祖・東京きっぷる堂 (gooブログ版)

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音楽室5号 第28章

2021-07-15 07:06:09 | 音楽室5号

 


第28章
(金は人間の心の再創造の宇宙だ)



 キーホーは黙って音楽室五号の板戸を開けて廊下に出て行きました。

 自動人形になった気分です。


 静かに板戸を閉めて振り向くとキーホーは蟻のように青ざめてしまいました。


 廊下の端から端まで窓を背に、ずらりと、人々が整列して、まるで汚いゾウキンでも見るように薄目を開けて冷ややかにキーホーを見つめているのです。


 皆、ちゃんとそろっていました。

 バイオ・プロレスラーみたいなサラリーマンに、切符切りに、りょう子さんに、ペロペロキャンディの少女に、小説家に、奇型的美男子に、透明な少女に、処女を失ったおばあさんに、カラス女の夜子に、行李を背負った税理士に、車掌さんに、蟹に喰われたもう一人のキーホーに、復元されないはずだった用務員のおじさんに、地球儀を肩に乗せた音楽教師に、男と女に、笑い仮面に、市長さんに、ギャッヴィに、旅人に、旅の娘に、バカの患者に、僕に、優しいネズミに、LOGOSに、あごらほぉびあの人たちに、ウルフに、美男美女に、ショパンを弾く天使の少女に、エキストラに・・・その他たくさん。



 キーホーは呆然と突っ立ったまま、彼らの視線の集中砲火を浴びていました。




ハート




 どのくらいたったでしょうか、外でウグイスが鳴いていました。

 校舎の裏で子供が変質者に殺されていました。


 遠くで汽笛が響きますと、キーホーの前の人々は、くっと顔の筋肉に力を込めて、一拍おくと一斉に、ふんっと口をすぼめて横を向きました。

 波がたったようでした。


 そうして知らんぷりをしたまま静止している人々の前を肩をがっくりと落として、とぼとぼとキーホーは帰路につきました。

 歩く足が、なんだかプカリプカリと浮きあがっていくようです。

cry!


 BYE BYE 役立たず。


 



KIPPLE



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