第26章 室内は、がらんとして広くて白くて壁にぐるっと甲虫(かぶとむし)の様にヴァイオリンが取り巻いてて、中央に黒いグランドピアノが大口を開けて白い歯を見せているのでした。 音楽室です。 間違いありません。 キーホーはソーダ水の泡が全身を駆け巡っているような気分で、もう、はちきれんばかりに安心して快地良さそうに涎を垂らして、うつら、うつらと室内を見渡していました。
「キャッ。」 と言って一瞬、目を丸くしてキーホーを見ましたが、すぐに再びノクターンの続きを弾き始めました。
(ブゥォォォオンと広い部屋にエコー。) 両手で、しっかりと握りしめて自分の目玉に突き刺しました。
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