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元祖・東京きっぷる堂 (gooブログ版)

あっしは、kippleってぇケチな野郎っす! 基本、自作小説と、Twitterまとめ投稿っす!

音楽室5号 第21章

2021-07-08 06:43:11 | 音楽室5号

 


第21章
(むく様は美男子)



 町の真ん中にぐるりを灌木で囲われた、いつも埃立っている処刑場がありました。

 今日も精神病患者が一人、ギャッヴィの発明したカミソリ式絞死刑台の餌食となり、両目に特大安全カミソリの刃を突き立てた生首が受け皿の上にキチンとキウィのデザートの様に置かれていました。

 執行人でもあるギャッヴィの仕事熱心のおかげです。生首


「おーい、ギャッヴィ。

 又、患者をめっけてきたでぇ~。

 こいつ、この寒いのに旅行中なんだとさ。

 それに、この年で。」


 その旅行者は、どう見ても初老のスナフキンみたいです。


「おお市長さん、そりゃ異常だわ。

 ちょうどいい。今、こいつ(カミソリ式絞死刑台)がワシに腹減ったと催促しておってなぁ。

 分身のワシ(ドッペルゲンシュタイナー)を喰わしてやろうかと思っていただよ。

 ハハ。」


 と言ってギャッヴィは横2メートル縦3メートル高さ4メートルの黒い立方体を、なめるように見上げました。

 最上部にキラキラ輝く黒塗りの安全カミソリが、その不気味な箱の内側に向かってたくさん並んでいました。


「まぁ市長さん。

 寒かろぅ、早くこっち来てあったまんしゃい、茶でも飲んだらよかぁ。」


 「すんまへんなぁ、ギャッヴィ。」


 市長さんは旅行者の首輪をしっかりと握ったまま、小さな死刑囚待ち合い室に入ってきました。

 もちろんギャッヴィも瞳をエメラルドの様に光らせて。


 室内には瞳を夜明けの金星の様に輝かして何かをじっと待ち続けているキーホーがいました。

 キーホーはギャッヴィと市長さんと旅人が、のっそりと湯気のように現れると、彼らに向かって尋ねてみました。


「あのぅ、出口は?。」


 すると三人は、まるで今そこで、目の前でビッグ・バン(宇宙の誕生)が起きたのを目撃したかのように、アゴをムンクの叫びの様に、ずり落として驚愕と病的なおびえの表情を作りました。


 そして、三人は揃ってまわれ右をしてキーホーを無視しました。

 キーホーが何を言って何をしても、三人は何も見えず何も聞こえない、という態度をとり始めたのです。


 もちろんキーホーは、あのカラス女の時のように心底“ほっと”しました。

 そして三人が直立不動のまま茶をすすり、話を始めるのを黙って聞いていました。


 市長さんが、ニコニコしながら首輪を嵌められた死刑囚の旅人に向かって言いました。


「君は死刑だ。」


 すると旅人は、


「はい。」


 と、にこにこして返事をしました。

 そこへ、うつろな目を光らせている死刑執行人のギャッヴィが話に加わりました。


「まぁまぁ。旅人さん。

 いくらあなたが気狂いだからといっても、こちらだって慈悲の用意ぐらいはあるんだよ。

 話によっちゃ情状酌量の余地もありうる。

 ま、死刑はまぬがれんがね。ふふ。

 死肉を赤犬に喰わしてやる事くらいは、してあげるよ。」


 旅人は直立不動のまま体を曲げて、深々とおじぎをすると煮えたぎったお茶を、ギャッヴィの顔面にぶっかけました。

 ギャッヴィは熱湯でジュージューと赤らんでいく顔を奇妙に歪ませ、フフフフフと笑って舌なめずりをしました。

 市長さんは自ら、チンチンいっているお茶を頭からぶっかけて、湯気を立ち上らせながら、アッカンベーをしました。


 驚いたキーホーは思わず、


「ハイヨー!シルバー!。」


 と叫んでしまいました。※。


 とたんに三人は険悪な表情になり、まるで吐瀉物でも見るようにキーホーを横目でグサリと睨みました。

 もちろんですよ、キーホーは、もう心底震えちゃっていましたね。


 しばらく沈黙の空気風船が続き、それを両手でパンッと市長さんが破きまして、


「さぁ、話してごらん。」


 と旅人をうながしたのです。


 旅人は星空の彼方から声を引っぱり出しました。


「はい。」




 ※注。
  何の意味も無い。又、意味の無い事を書いてしまった。
  「とっかーん、すすめ~」でも別によかった。

 



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音楽室5号 第20章

2021-07-07 07:04:10 | 音楽室5号

 


第20章
(カット! カット! 全てをカット!。きっとリョーカイ! リョーカイ!)



 音楽室三号の室内に入ったキーホーは、回りを灌木で囲われて何万年も前から埃が溜まっているような広場の真ん中に立っているのに気づきました。

 ここも音楽室ではありませんでした。

 しかし、キーホーが今し方入ってきた板戸の出口を振り返って探しましたところ何も無いのです。

 出口は消え失せてしまったのです。

 


無


「無(ゼロ)  + 無限の図」

出口は無し。

 仕方がないのでキーホーは広場の片隅に薄汚れた外套(マッキントッシュ)の様に建っている木造の納屋に入っていきました。

 狭い納屋の奥にランプの燈し火が見えたのです。

 キーホーは、ぼんやりとしてランプの燈された丸い傷だらけの机に腰掛けました。

 そして待ちました。

 だって、そこは待ち合い室だったのですから。

 納屋の開かれた扉には、こう書かれていました。


『死刑囚待ち合い室』



 キーホーは一度、皆の前でおどけた事がありました。

 その時のキーホーを軽く扱う眼差し。

 過ぎた後、キーホーを襲った激しい羞恥。

 キーホーは二度と、あんなミスは犯すまい、うんざりだと思って、死人の様に生きようと思いました。

 誰もキーホーに目を向けさせない全く生気の無い、物の様な人間になろうとしました。

 しかし、失敗でした。

 だってキーホーは美男子だったんですもの。

 比類無き・・・・・・・・・・・・・。


 キーホーは黄色いランプの光を見つめて何かが始まり、出口を見つけ出してくれるのを、そうして自己と他者との関わりの歴史を振り返りながら待っているのです。

笑い仮面

笑い仮面






KIPPLE

音楽室5号 第19章

2021-07-06 06:59:35 | 音楽室5号

 


第19章
(ハイ。バビビブルー!。ダーメ。バ・バブブブブルー!、ハーイ。ブブ・・・ブブルー!)



 キーホーは確かに二号室の板戸を開けたはずなのですが、どうでしょう。

 キーホーは、いつの間にか、さっきの一号室の板戸の前に立って、さっきと同じ様に室内の薄暗い円形劇場で、白い仮面を被った役者たちが繰り広げる奇妙なバカバカしい演劇を覗いているのでした。


 円形のつやつやした黒い舞台に静止像のように立っている、黒マントを頭からスッポリと指人形の様に身につけた笑い仮面が、どうやら、覗いているキーホーの姿に気づいたようです。

 彼は、竜巻のように斜めに回転しながら板戸口に向かって、すっ飛んで来ました。

 そして、キーホーの顔に板戸口を境にぴったりと、笑い顔をくっつけますと、その役者は黄金色のフル・スペクトルを内部から輝かせて、言葉をこぼしました。

 ご飯粒のようにです。

 彼の仮面の奥で光る眼は、黒曜石のように重なってしんみりとしています。

 笑い仮面がしゃべります。

   パチッ。

 

笑い仮面
「若い人、若い人よ。私は老いた。

私は若くなりたい。若くなりたい。若くなりたいんだ!

若くなって一杯冒険がしたい。パッションだ!情熱的な恋がしたい。

ああ、私の肉はもう若くないのだ。

肉体が老朽化すれば心も老朽化すると思うか!?。否!

貪欲な心は余計に若さを欲するのだ。」


 キーホーは板戸を閉じようとしました。

 だってキーホーは二号室の板戸を開けたはずでしたのに、一号室にはもう用はありませんし、それにその笑い仮面の役者の乾燥して今にも吹き飛びそうな悲鳴にもウンザリしてしまったのです。

 ところが、どうしたことか、板戸は笑い仮面にぶち当たり、その白い陶器のような表面に無数の亀裂を走らせてしまいました。

 笑い仮面の役者は、狼のように遠吠えをすると、体を真っ直ぐにしたまま背後に吸い込まれるように倒れてしまいました。


 キーホーが首を少し伸ばして見ると、笑い仮面は、すっかりバラバラに砕けて、崩れた顔の隙間から本物の顔を出現させていました。

 本物の顔は、おかしな皺(しわ)で一杯になっていました。

 その皺は、まるでたくさんのデタラメな文字を何重にも重ねて書きなぐったようでした。


 キーホーは、その文字をいくつか読んでみました。

 その間に年老いた笑い仮面の役者は死んでしまったようです。

 すでに死後硬直が始まったらしく、ぎっしりと皮膚に刻まれていた様々な文字が空中にスポンスポンと飛び出していたからです。

 文字は宙を羽の様に舞い、円形ドームを真っ白に包みました。


   それでは、文字を読みます!


 ひとつ。

“月にボッと照らされた無限の荒野を心の底に感じた事、ありませんか?。

 心は安息のうちに・・・・・・・・・。”



 ふたつ。

“怠惰から生まれ出づる恨み節、それはニヒリズムと言うのでしょうか?”
 


 みっつ。

“気違いの人々が笑い、僕は息を殺して街を歩いています。

 明朝への厚い期待、そして厚いカーテン。

 海と空が、笑う。

 水が細かく降り注ぎ人々の口を濡らし、目玉を溶かし耳を塞ぐ。

 又、火!。火※だ。

 粘っこい時を喰らい目を細めて光を探す。

 空中の襞は巧みに隠してしまい、闇雲に黙る僕。

 カランと蓋が落ちて固い道路を風が転がしました。

 カラコロカラコロ。

 昔の伯父さんが見ていました。

 字が、字が違う!・・・・・・・。”
 


 キーホーは、アキアキしてしまい本当は二号室のはずなのに一号室の板戸を、ぴっちりと閉めました。

 そして再び、キーホーは二号室の板戸の前に立ち、今度こそはと、注意深く、ゆっくりと二号室の板戸を開いたのです。


 キーホーは、ポカンとしました。

 二号室の板戸を今、確かに開いたのですが、室内はやっぱり一号室だったのです。

 まだ、文字たちが花びらみたいに舞っていました。

 


 よっつ。

“季節には各々の思い出の香りが含まれ、過去からひたひたと押し寄せて皆を、街を、世界を包み、今が過去になって未来が今になって次々と新しい香りが新しく新しく新しく、作られ消えてゆきます・・・・・・・・”
 


 キーホーは再び板戸をピッチリと閉じました。

 すると、やはりキーホーは二号室ではなく一号室の板戸の前に立っているのでありました。


 キーホーは良い事を思いつきました。

 彼はスタスタと二号室の前を通り過ぎると、三号室の板戸を開いたのです。

 そして二号室にアッカンベーをすると、するんと三号室の中に体を滑り込ませていきました。

 その後、二号室はガラス窓や板戸や壁をぷくっとふくらませて、知らんぷりされた事に腹を立てているのでした。


 しばらくして、爆音が起こりました。

 音楽室二号が内部で核爆弾を爆発させ、自殺を遂げたのです。

 理由は謎に包まれたままでした。

 その後、ずっと。



 注。
 ヘラクレイトスは、全ての源であり全ては、やがてに戻るという。
 彼の言うは全てであり全ては永久ループを行うの中に存在しているという。
 ・・・と。

 デジャヴかな?

 以前どこかで同じように注釈を入れたような気がする。

 あなたは、そんな気はしませんか?

 どこかで・・ループしている。

 そんな・・気が・・・。


 



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音楽室5号 第18章

2021-07-05 07:05:52 | 音楽室5号

 


第18章

(僕は死ぬでしょう。今、世界中で次々と人々が死んでゆくように、ソーダの泡のように、車の流れのように、読み終えた本の記憶のように。)


 キーホーは、がっかりしました。

 何故ならば、そこは音楽室ではなく、円形劇場だったからです。

 ずっと遠く、漆黒の闇の奥から青白い照明ライトが、舞台の上の白い仮面をガブッた役者たちを照らしていました。


創作劇

   「持続しない意志」

       登場人物。
 

煙草

 男。

 女。

 天上からの神聖なヴォイス。


 劇が始まりました。


 (男と女は、どこかのラブ・ホテルのふかふかベッドの上で交わり合っている。)


女。

「アアン。アッ。アッ。イ・イイ。イイワァ。ア。モウチョット。ア。イイ。イク。イクワ。

 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・タバコ・・イヤヨ。

 ・・・・・・・・・・・オワッタトキ、タバコスウヒト・・・イヤ・・・ケムクテ、クルシクテ・・・・・シンデシマイソウ。

 ・・・・・・・・・コノ・ジダイニ・・・・・・・・・・タバコ、ヤメテヨ・・・。」


男。

「そう簡単にはいきませんよ。私だって何度、禁煙を試してみたことか。

 でも、やめられませんねぇ。もう超中毒なのです。

 どうせいつか死ぬのだし、一日、百本吸ってピンピンしているジイさんだっていますしね。」


女。

「ソウ。アア、カラダニワルイコトヨ。シヌノハアンタヨ。

 アア、ケムイ。アタシニモ、エイキョウガアルノヨ。

 アタシマデシヌカモシレナイワ。・・・・・アンタ、コウシテミルト、チットモヨクナイワネェ。

 ヤサシカッタラ、アタシノタメ、タバコ、ヤメラレルワヨネェ。」


男。

「やめられませんよ。

 いやいやいや、男がいちいち女に言われて好きな事止められますか。

 あなただって、その派手な服装と化粧やめたらどぉです。

 一緒に歩いててケバイやら幼女趣味で、情けないです。もう、あなた、三十歳ですよ。

 アホみたいですよ。

 煙草でも吸ってみたらいいんですよ。」


女。

「ナニイッテンノヨ。ナンデ、アタシガ、タバコスワナキャナラナイノヨ。

 ソレニ、ナニヨ、コノマエハ、トッテモニアウ、ワカワカシクテ、カッコイイ、ホレボレシチャウ、ナンテイッテタジャナイ。

 フクノシュミト、タバコト、ドンナカンケーアンノヨ。」


男。

「あほですね。大人になれという事ですよ。」


女。

「ヘェーッ。タバコスッタラ、オトナニナレルノ。

 ヘェーッ。ジャァ、ガキニ、スワセリャ、ジカントビコエテ、オトナニ、ナッチャウノ。

 ソラタイヘンナコトネェー。バーカ。」


「なんですと。このアマ!糞袋!少しばかり美形だからって中身はドブじゃありませんか。

 他人への礼儀が、気遣いが欠けています。

 このマン・カス女め。親しき仲にもって言うではないですか。

 慎みも品もありません!黙って私に任せておけばよいのです。」


女。

「アーア。モウ、アキタワ。ウンザリヨ。アンタニモ。

 アンタノ、オトコ、オトコッテ、ダンソンジョヒノカンガエ。

 コマーシャリズムニノッタ、ニンキモノニシカ、キョーミノナイ、ゾクブツ!

 クサレチンポ!サイナラ。」


男。

「おい。待ちなさい。私は俗物じゃありませんぞ。

 ドフトエフスキーだって読みましたぞ。スメルジャコフとヴェルシーロフのファンですぞ。

 煙草だってマイルドセブンじゃなくてチェリーですぞ。野球だって審判ファンですぞ。

 プロレスだって小人プロレスのファンですぞ。」


女。

「ソウ。シラナカッタワ。ソウナノ?

 アラ、ハッ、アタシ、テッキリ、アンタ、ヘイヘイボンボン、カッコツケ、カッコヘノウヌボレダケ・・ミナノヤルコトバカリ・・・・

 99バンメノサル・・・・ハヤリモノバカリ、ヨロコンデヤッテ、シゴトシテ、ネルダケノ、ギュウニュウノ、ヒマク、ミタイナ、オトコダトオモッテタワ。」


男。

「へ?え。え! そうなんだ!・・・・・じゃぁないんだ。ええい、気が変わりました。煙草やめます。」



(男は煙草の残り、十二本を一本づつ丁寧に揉み潰して捨てる。)


   ★


(場面が変わり、男は女と別れ、自動販売機の前に、震えながら突っ立っている。)



天上からの神聖なヴォイス。

「情けない男よ。時が少し進む。

 そして、お前は気づいた時には、すでにチェリーを買い、くわえ煙草に火を点け、プカプカ吸っているのだ。

 そしてすぐさま、決意を思い出し、残りの十九本をグチョグチョにねじ曲げて道端の排水孔に捨てる。

 お前は家に帰り、机に向かうと息苦しい。

 無性にいらつく。

 無気力になる。

 ちょっと外へ空気を吸いに、と外出すると足は自動販売機へ向かい、手には、がっちりと百円玉二個と十円玉三個、握りしめている。

 気づくとチェリーが手の中にある。

 ゆっくりと、お前の頭の後ろから叱咤の意識波がやってくる。

 空しく。虚脱。忍耐力へのプライドが、ボロボロと・・・・・・・・・。

 仕方無く一本吸った。ああ、うまい。

 しかし、お前は、すぐに嫌な気分、惨めな気分に落ちてゆく。

 家に帰り、残りの十九本を二つに折って、ゴミ箱へ。

 それから、お前はロックを聴く。

 パティ・スミスにドアーズにベルベッド・アンダーグラウンド。

 う~ん、何かが足りない。

 そう思い、お前は、「そう!タバコだ!」

 と気がつき、二つに折った煙草をゴミ箱から掻き集め、セロテープを張り付け修繕し、ひょっとこみたいな顔をして、吸いまくる。

煙草もくもく

 その夜、お前は折った煙草を全てセロテープで再生して、最後の一本まで吸い続けるのだ。

 そして、無くなると、お前の足は再び、煙草を求めて彷徨い始める。」



(男は爆発して、素粒子に混じって消滅してしまう。ひきつった笑い声と共に。) 


 キーホーは退屈し、あくびを二度して、伸びを一度すると、パチリと一号室の板戸を閉じて、しずしずと小刻みに廊下を進みゆき、次にひかえる二号室の板戸を心を込めて開きました。

 



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音楽室5号 第17章

2021-07-04 07:16:35 | 音楽室5号

 


第17章

(僕の友達は、缶ジュースを飲み終えると、飲み口の二等辺三角形的な穴を“おぉ寒けがする”と言って、セロテープで、ぴっちり塞いでしまい、路上にポィッと捨てて、ニコッとします)

 向こうから今度は音楽教師が地球儀を、肩に担いでやってきました。

 キーホーは喜び、ぴょんとはねると聞いてみました。

「あの。音楽室は?。」

 音楽教師は、むっとした表情で黙って天井を指差しました。

    音楽教師

 キーホーは深々と御辞儀をし、チンチロリンと御礼を言うと、その音楽教師は、小さく頷いて、地球儀を軽やかに地平線の向こうまで蹴飛ばすと、爪先立ちになってクルクル舞いながら、つむじ風の様に去っていきました。


 キーホーの心は輝やきました。

 さっそく、キーホーはエスカレーターを逆さに駆け上がって上の階へ行きますと、音楽室を探し始めました。


 ありました。

 あった。

 ありました。


 けれども、キーホーの目には、音楽室が五つ並んでいるのが映ったのです。

 こちらから順番に、戸口に白いプラスティックボードに黒いマジックで、


音楽室一号

音楽室二号

音楽室三号

音楽室四号

音楽室五号



 と書かれておりました。


 キーホーは迷わず、一号室の板戸を、からからと開いて中に入って行きました。


 



KIPPLE


音楽室5号 第16章

2021-07-03 07:24:29 | 音楽室5号

 


第16章
(アデランスは愛の不毛に使えます)



 キーホーは、暗い、シンとした廊下で用務員のおじさんと擦れ違いました。

youmuin
“あれぇ?”

 おじさんは黄色いガムテープを巻き付けた杖を振り回しながら一度、くしゃみをすると完全に消えてしまいました。

youmuin

 その後、おじさんは二度と、復元されませんでした。


 ザラ味のガラス戸の内側で小さな影が、戯れていました。

 キーホーは床で死んでるチョークを拾ってガラス戸に投げつけてやりました。

 そうすると、割れたガラスの中から、涎をあやとりの箒のように垂らした猛犬が飛び出してきて、爽やかに笑うと、鳥の様に手足をハバタかせて大空へ滑空していきました。

 目と口を大きく開いて見ていましたら後ろから数億のクラクション・ノイズの波が押し寄せてきましたのでキーホーは仕方なく前進する事にしました。

 しかし、なかなか抜けられません。

 犬が羨ましく思われ、誰か自分のザラ味のガラス戸を割ってくれはしないだろうかと、チラと考えましたが、ああ、なんて非現実的で可能性の無い、他愛無い、バカな事をと、又、女や猫に言われそうで、すぐに頭から、振り散らせて、正常にして、のろのろと再び動き始めたのです。

 



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音楽室5号 第15章

2021-07-02 07:21:50 | 音楽室5号

 


第15章
( 今、瑞々しさは、白々しさに似ているし、今、虚構TVは、冷たい外の人の頭ん中にだけ生きている)


houkai

 プチッ!。さて、キーホーは??。

    こっちよ!。

 キーホーは、

『列車に乗って涼しい風を受けているうちに刻々と、林檎を囓り、子供を憎み、足を痺れさせ、隣人を殺したく思い、頭を抱え、皿を叩き割る映像を思い浮かべ、大きな口を開いて身体中の空気を吐き出し、外の世界を全部、自分から追放しようとしたけど涼しい風が吹き付けてきて、思わず、爽やかになってしまい、外を見ると大っきな山と畑が、延々とあって、何だか気抜けして、それチャンスだとばかり、煙草に火を点け煙を力無く吹き出し、自分対世界の人々を考えると再び皿が浮かび、涼しい風を発する窓に向かって飛び込んだら、引っ張られる様に列車から身体は引き離され、川原の尖った石にあたって粉微塵に砕けてしまいまして、その時、走り去る列車の窓に、ライターの火を凝視しているリリカルな少女の情景が映し出されまして、少女のまわりは薄闇でしたので、ランプが下がってるといいナ、と思いましたけど、自分の破片には早くも、さわ蟹が群がってまいりました。』

 のを、どこだかわからない木造りの校舎の四階の窓から眺めていたのです。

kani
ほら、蟹→


 キーホーは、バラバラになった自分が赤い小さな蟹たちに喰われるのを見ていて、しゅんとなると同時に、とても重大な事に気づいて、ガランとした教室を、振り返りました。


「音楽室だ!」

 

 キーホーは、ミシリミシリと教室の床板を踏みしめながら戸口に向かって歩き出しました。

 



KIPPLE


音楽室5号 第14章

2021-07-01 07:27:35 | 音楽室5号

 


第14章
(・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・)


 キーホーは呆れ果ててしまいました。

 なんという、いい加減な小説でしょう。

 キーホーは、かぁっ!として再びガリ版本から目を離し、小説家を税理士の忘れていったダンビラで切り刻んでやろうとしたところ、すでに小説家は、この前の駅で、声と共に降りてしまっていた事に気づくのでした。


 あたりは薄闇が広がり、音無しで列車は走り続けます。

 キーホーは、おごそかに立ち上がり、

ざけんじゃねぇよ!

 と、つぶやきますと、窓から本を投げ捨てました。

 本は“じゃ、またね”と言ってパタパタと羽ばたいて森の中に、すっ飛んで行きました。


 現実が、どうやら正体を現わし始めたようでした。

 乃ち、目玉と口の位置が入れ替わる様な、ちょっとした崩壊が始まっていたようです。

houkai

 



KIPPLE



音楽室5号 第13章

2021-06-30 18:35:54 | 音楽室5号

 


第13章
(                          )


ほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほうほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほうほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほうほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほうほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほうほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほうほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほうほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほうほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほうほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほうほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほうほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほうほほほほほほ


 

KIPPLE


音楽室5号 第12.3章

2021-06-30 06:58:10 | 音楽室5号

 


第12.3章
(クルベムゲイル)


 列車が止まり、あたりが一斉にばたつき始めましたので、キーホーがガリ版刷りから顔を上げますと、さっきの親戚を名乗る小説家は、すでに姿を消し、青いビロード張りの座席には小さな声が影のように這っているではありませんか。

 声は波が月光にゆらめく様にするすると窓ガラスの底からプラットフォームに降りてゆきました。

 こうです。

 

 

 



 三十秒ほど過ぎると列車の中には、まるで砂浜に打ち上げられた巻き貝の内側にいる様な、吸い込まれる様な、透んだ静けさが立ちこめていました。

 キーホーが再び、ガリ版刷りの小説に目を落とすと、列車は、前進しているのか?後退しているのか?それとも、動いているのか?動いていないのか?も、わからないくらいに、ソロソロゆっくりと揺れ始めました。

 

gatan

 


 超宇宙的な、その美青年に引きつられて洞穴に入って行った僕は、この鍾乳洞の構造が極端に、上昇志向と下降志向のアンヴィヴァレンツな心理作用を与える事に気づいた。

 登ったかと思うと、側面には、ぽっかりと深い口を開けた小さな穴が無数に下降している。

 その中から針の先の様な光がチラチラと、と、とっ、とっとっとっと。

 さぁて、これから奇型的美男子は、主人公の僕に、実は、この世、この宇宙は、卵の殻の表面の様なもので裏面の死界とピッタリ重なっているという事を説明し、裏側に迷い込んでしまったプロクシマ星系からやってきた宇宙一の美女、シャングリ星のリュィッテを助け出して行くのであるが、詳しくは、私の小説「クルベムゲイル・サガ」断片五十一の長編小説「遙か彼方のラブピース・ターボ」に描かれている。

 続きと、断片五十一を読みたければ、この小説にノーベル塵芥川賞を与えたまえ。

 与えるまで、この物語はここまでしか公開しない。

 地下室の巨大な押入れの奥深くに眠らせる。

 さよなら。


   ズンチャカチャ。


      ズンチャッチャ!




 

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