KIMISTEVA@DEEP

新たな「現実」を構成するサブカルチャー研究者kimistevaのブログ

どうする余剰博士:水月昭道『高学歴ワーキングプア-「フリーター生産工場」としての大学院』

2007-12-17 11:55:39 | 
わたしは、言わずとしれた高学歴ワーキングプア予備軍なので、
『高学歴ワーキングプア―「フリーター生産工場」としての大学院』を読みました。

高学歴ワーキングプアの不安を抱く、わたしのような大学院博士過程在学院生には、スカッと胸のすくようなことを言ってくれる本ですし、
これまでネット上ではさまざまなところで話題になりながら、その複雑な政治的事情もあってなかなか世に出せなかった内容を出したという功績はすばらしいと思います。

ですが、どうしても、パブリックな場での議論が浅い分、関連資料も少ないわけです。そういうこともあって、本全体での議論の荒さ・・・というか偏りが目立ちました。


一番問題なのは、水月さんが文系大学院出身の方なので、主に文系の大学院生の実態が中心に報告されているにもかかわらず、それが博士卒一般の傾向として語られてしまっていること。

2ちゃんねるの「ピペド」(=ピペット土方)関係スレでも、「分子生物系」と「農学系」「遺伝系」ではで事情が違うことが話題にされたりしますよね。(前の記事で我が町には研究職の契約・派遣の職が多い・・・ってなこと書きましたが、こういう事情があったのか・・・と思ったり思わなかったりします。)

当然、文系と理系では事情が異なるし、
さらに言えば、文系の中にも理系と同様、さまざまな分野があるわけで、たとえば今どこの大学も規模縮小に走っている「日本文学」と、教育系の分野とではまったく事情が異なるようです。
「文学系」のある先生がカラカラと笑いながら、自分の研究室のことを「ブロイラー以下」と言っていたのを聞いたことがあります。その研究室では12畳くらいの院生室に50人近くの院生・ポスドクの人を抱えているのですが、「ブロイラーは行き先があるけど、あの子たちは行き先がないからねぇ」と言ってました。
・・・恐ろしい!
何が一番恐ろしいって、先生がそういう意識なのが一番恐ろしい!
もし本当にそう思っているなら、毎年20人近く入学者を採用する今のシステムをどうにかすべきだと思います。
そういうことを、しようとすらしないところが恐ろしい。

わたしの研究室の先生方であれば、思いつきもしないようなことを平気で言うことに驚愕しました。
こういう先生方こそ、「学生を飯の種くらいにしか思っていない」と非難されてもしかたがないと思います。


そういう意味でこの問題は、社会構造全体の問題として論じられなければいけない一方で、分野ごとの実態にも目を向けなければならない問題であると思っています。


そんなことをだらだら思ってネットを見ていたら、こんなサイトを見つけました。
博士(はくし)が100人いる村


分野ごとの実態云々言っておいて恐縮ですが、
ここまで単純化して見せられるとかえって爽快です。
「富士山のふもと」という設定が最後になって伏線として生きてくるのも、なかなか、ブラック。
しかし笑いごとではありません。
なにしろ、国の政策課題として挙げられるほどの大問題ですから。


一般企業においても、研究職においても、
わたしたち、「ロストジェネレーション」(現在、25歳から35歳の人々)は不幸の波を被り続けているようです。
いったい敵は誰なのか。
なぜ、これほどまでに不幸な世代が作られてしまったのか。
「ロストジェネレーション」に属するわたしたちは、他の世代とは異なるかたちで自分の幸せのかたちを追求しなければいけない時期にきたのではないか、と、ここ最近の論調を見ながら考えます。


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