Bankの秘密基地

個人日記兼つれづれなるままに

サトー(6287)株主総会

2011年06月25日 | 銘柄研究
 場所は東京ミッドタウン ミッドタウン・イーストのホールAで開催。10時スタート。大江戸線から直結と書いてあるので行くと、六本木駅だけ他の大江戸線の駅と異なってなんかおしゃれな作りになっている。六本木はハイソすぎていかないなあ。住みたい街ではないな。会場は結構広い場所を押さえているものの、参加者はまばら。会場入り口ではサトーの製品が展示されていて係員が待機している。近づくと説明をしてくれる。結構親切だな。会場手前でお土産を配っていて見てみるととらやのようかんとボールペンが入っている。ようかんはともかく、ボールペンをいれてくるあたり気配りが細かい。会場は机があってメモが取りやすいようになっている。大企業では株主が多すぎてこういうことはできない。さらに机の上にはミネラルウォーターのボトルがそれぞれの席においてある。フリードリンクコーナーよりもこっちの方が好きだ。なかなか気配りしているじゃないか。お土産の袋にアンケート用紙が入っていて、帰り際にアンケートを渡すと図書カードが貰える仕組みになっている。つまり書かないと貰えない。考えてるじゃないか。



 開始とともに社長の業績報告。スライドを使いながら説明していく。プレゼンはうまいとは言えないが、ポイントは押さえているので悪くない。説明の後で質疑応答。結構まともな質問が多かった。というより、普段会えない偉い人をいびる機会だと思っているような意地悪な株主はいなかった。素直に会社のことを知ろうとする真摯な態度の株主が多かった印象がある。質疑応答で気になったものとして、今期の業績予想(営業利益48億円)と中期計画(来期が最終年度)の予想(60億円)にかい離がありすぎるという指摘だ。実は同じような質問が異なる2人の株主から質問されたが、社長の答えは中期計画の売上はともかく、マージンに関しては達成していくという意気込みが示されたが、あまり納得はできなかった。総会終了後に事業に関する質問会があり、そこでもさらに質問されると思ったのだが、用事があるので参加しなかった。そこで明らかになったのだろうか。



 株価のパフォーマンスは横ばいが続いている。バリュエーションは予想PERで13.9倍、連結PBRで0.96倍、配当利回り3.25%、時価総額は333億円。バリュエーションは安い。「バーコードのサトー」というのが有名だが、バーコードを利用するアプリケーションは幅広く、製造業、非製造業を問わず多くの業種で利用されており、物流には欠かせないものとなっている。業績は堅調と言いたいところだが、はっきりいって回復途上がせいぜいか。


 売上高は直近業績で見ると8年3月期をピークに減少しており、営業利益は2009年3月期に景気後退の影響と為替の影響で大幅な減益となった。当期利益のグラフを載せていないが、2010年3月期の税引き後利益は35%の大幅な減益となった。減益の理由は23億円の特別損失を計上した厚生年金基金脱退拠出金23億円が大きく影響している。この脱退拠出金が何故損失になるのかということだが、サトーはサラリーマンの上乗せ年金である厚生年金基金を単独で設立せずに総合型基金と呼ばれる年金に加入していた。年金関係に詳しくないと分からないので少しだけ説明すると、年金は基礎年金、厚生年金という2階構造になっており、さらにそれに企業独自が上乗せして年金を支給する厚生年金基金というのがある。厚生年金と厚生年金基金は別ものなので間際らしく年金システムが理解されない一つの要因となっている。つまり、企業に勤めるサラリーマンの場合、年金は3階建てになっている。

 但し、零細企業はないと思っていい。大企業の場合、単独で厚生年金基金を設立するケースが多い(例えばNEC、ソニー、東芝などは自社の年金基金がある)、一方で中堅・中小の場合には規模が小さいので掛け金が少ないので有効なポートフォリオを作ることができない。十分に分散されたポートフォリオを構築する場合にはやはり100億円以上の資金が望ましい。そこで複数の企業で基金を作る。総合型基金というのがそれだ。サトーは総合型から脱退するために23億円の手切れ金を支払ったということだ。どうしてこんなことが起こるかと言えば、それは加入していた総合型基金の年金設計が甘いからだ。企業年金というのは国の年金と違って世代間扶養という思想がない。従業員と企業が年金の掛け金を半分ずつ負担して、リタイアしたら年金を払う。だからちゃんと制度設計していれば、企業年金は破たんしないようになっている。

 一方で企業年金の掛け金はどうやって決められるかと言えば、従業員・企業の支払う掛け金額と支払うまでの運用利回りを加えた予想される金額を割引いて決める。例えば、年金基金に100万円の資産があり、運用収益が年間10%で回る場合と年間1%しか回らない場合、20年後の資産総額は大きく異なる。高い利回りで運用できるなら従業員・企業の支払う掛け金は少なくても資産は大きくなる。一方、運用収益が低いと予想される場合、掛け金を大きくしないと予定された年金額を支給できない。企業が負担する分はコストであるから、当然損益に反映される。運用収益が低いと掛け金が大きくなり困る企業経営者は多い。従って総合型のような中堅・中小企業の集まる年金基金は運用収益は高くなると「信じて」掛け金を低くする(予想運用利回りは逆に高い)。ところが現実が後から追ってきて、実際の年金資産は予定を大きく下回る。この場合には何が起こるかと言えば、不足分を企業から徴収する。一度で済めば御の字だが、掛け金を低くしたまま、また時間がたつと再度、現実が追ってくる。不足分の徴収->時間の経過->不足分の徴収...........予定利率を改定しない限り永遠に繰り返す。では変更したらどうか。業績が苦しくてこれ以上、掛け金を増やせない。人員削減も限界だ。...ではしばらく今の予定利率で様子を見ましょうということになり、また地獄がめぐるまでの煉獄の日々を過ごす。企業年金の問題とは簡単にいえばこんな感じ。なお、大企業の単独型の年金はそのようなことはないかと言えば、そうでもない。実際、NTTの年金訴訟に見られるように、にっちもさっちもいかなくなって最後に年金減額となってしまうのは年金の設計に無理があり、それを是正しなかったツケが回ってきた証拠だ。サトーの場合、このまま今の総合型基金に加入し続けていると企業業績に多大な影響を被ると判断してペナルティを払ってでも脱退を決断したようだ。ペナルティすらも払えず、相場の上昇を祈り続ける中堅・中小の経営者は多いだろう。今後、年金受給者が増加して、いきなり業績下方修正という企業が出てくる可能性は高い。

 あんまり関係ない話を続けるのもあれなんで、もとに戻すと、サトーは大企業ではないが、結構グローバルに事業を展開していて海外子会社は30社ある。セグメントで見ると国内売上が76%、海外が24%となっている。



 投資家としては海外の展開に期待したいところだが、これがうまくいっていない。終わった期でみれば、米州、欧州、アジアの売り上げは60億円前後とほとんど同じような売上になっているが、セグメント利益でみると米州が1.25億円、欧州が▲2.9億円、アジアが5.0億円となっている。海外の利益がどの程度の水準で推移しているのか、サトーのプレゼン資料から抜粋しようと思ったら、アナリスト説明会は開いているようだが、プレゼン資料アップロードされてなく、かろうじてアナリスト協会での説明要旨(文章)だけがアップされていた。いかんな。過去の投資家への説明資料はアーカイブすべきだろう。ないので短信ベースで作ってみた。


 短信から単に数字を抜いただけだが、地域別のセグメント利益を見ると終わった期では米州以外は改善している。特に国内とアジアでのマージンの回復と欧州の損失の縮小が見られている。これだけで見るとよくやったと言いたいところだが、もう少し時系列でみた場合、違う風景が見えてくる。例えば、利益面で言えば国内の2007年3月期の営業利益は53億72百万円だった。(比較対象として2007年3月を選んでいるのは直近の利益のピークだから) しかも売上は2010年3月期も2007年3月期もほぼ同じ。即ち、利益率が落ちている。しかも大幅に。海外で言えば、同じく北米の2007年3月期の利益率は6.34億円。欧州は問題含みで儲かっていた2007年3月期の段階でさえ、営業損失が1.73億円。また海外の売上を見ると同じ期間での比較では北米が94億円から61.9億円、欧州が108億円から62億円と両地域とも売上を大きく下げている。海外事業は固定費を回収するためにはやはりある程度の売上を確保しなくてはならず、今後も不採算受注を回避しながら売上の拡大といったかなり難しい目標に挑戦しなくてはならない。

 今期の予想はともかく、やはり来期の計画(営業利益60億円)の達成は無理なんじゃないかと思うが。どうなんだろう。今回の議案書に関しては特に問題がありそうなものはなかったのだが、少し気になったのは社外取締役の選任案に関してだ。社外取締役は5名いるが、5年以上就任している人が4名いる。取締役会の牽制機能が期待される社外取締役で長期にわたり役職についているのはいささか疑問だ。大学教授の小野隆彦氏が12年、鈴木賢氏が9年、弁護士の山田秀雄氏が7年、よくテレビに出ている大学教授の田中優子氏が7年。5年以上も社外取締役に就任しているとすでに社内といっていいほどの長さではないのか? という感想を持った。


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