Bankの秘密基地

個人日記兼つれづれなるままに

日本リテールファンド(8953)

2010年05月27日 | 国内上場REIT


 ラサールジャパンとの合併を3月1日付けで行ったので今回の決算は合併前の数字に
なっている。従って合併に伴う影響などの分析は困難だ。従って今回は合併ポート
フォリオについて検討してみたい。今回の合併によって当法人は72億円の負ののれん
代が発生し、コアとして受け入れた商業用不動産意外は全て売却する予定である。コア
アセットとして受け入れたのが上記の図にある3資産でイオンモールむさし村山ミュー、
イオンモール神戸北、ラ・ポルト青山の3つで鑑定評価ベースで556億円の資産取得
を行ったわけだ。一方で受け入れた資産878億円から差し引いた残りの資産に関して
は売却することになる。



 まず鑑定評価に関してはいくつかのことが指摘されるが、最初に指摘すると
すれば、ラサールの鑑定評価が10月末に対して、合併に伴う資産の再鑑定評価
は12月1日現在を基準としている。これが何を意味しているかというと11月
のわずか1ヶ月間で鑑定評価が17%、金額にして184億円下落したことだ。
なんでこんなことがおきたかといえば実はからくりがあって、鑑定評価人が変わっ
たことがその理由だ。

 もう一度表をみてみるとラサールで利用されていた不動産投資研究所、中央不
動産鑑定所、大和不動産鑑定、CBリチャードエリスの4社が利用されていたが、
CBリチャードエリスを除く3社が外れ、谷澤総合鑑定所の2社で鑑定評価が
行われている。資産の大部分をCBリチャードエリスが鑑定し、谷澤が鑑定した
のはラ・ポルト青山、西野ビル、リーフコンフォート新小岩の3件のみだ。CB
リチャードエリスが従来から鑑定していたのはイオンモールむさし村山ミュー
とイオンモール神戸北の2つでこれらの鑑定評価は変化がない。流石に1ヶ月で
鑑定評価を大幅には下げられなかったんだろうが、それにしても一物多価にも
ほどがあるんじゃないかというほど変化している。



鑑定価格が大きく下がった理由としてはリテールファンド側が商業施設を除いて
基本的に全部売却するからだろう。CBリチャードエリスの方がより保守的に
評価したとは到底思えない。むしろ、顧客の希望に合わせて鑑定評価を売却可能
時価に近づけたんじゃないかという疑念が強く残る。でなければJRFで鑑定
評価している大和不動産鑑定を排除する理由がわからないし、JRFが最もよく
利用している日本不動産研究所を使わなかった理由もよくわからない。大和を
使わなかったのは、数字が変わらないからで、日本不動産研究所を使わなかった
のも数字がほとんど変わらないものになると困るから?

 ここからは推測の域をでないが、JRFは合併対価として152億円の新株
を発行し、簿価ベースで1199億円、鑑定評価前純資産ベースで540億円
を得る。買い叩いたと批判を免れるためにのれん代を小さくしておくとか、ま
たは10月鑑定価格を受け入れて仮に負ののれん代が増えても売却するさいに
損失が大きくでて、経常利益ベースでマイナスになったりするのは見栄えが悪
いと思ったのか。受け入れた帳簿価格が高ければ負ののれん代が大きく出てネット
ベースでは変化はないがやはり営業・経常段階のマイナスはかっこ悪い。
一番有力なのは時価ベースで受け入れて損失が出ないようにして負ののれん代に
関しては既存の含み損対策に利用する。説明会動画でもそんなことを言っている
ので恐らくそれなんだろう。

 ふと考えるのだが、鑑定評価を市場価格に近づけるのは個人的に意味ある
ものと思うが、いままでそれをしてこなかったばかりか、既に保有している資産
のマークダウンはせずに受入れ資産だけを近づけるのは何故だ。簿価が高くても
負ののれん代が増加するだけで売却と同時にオフセットされるだけじゃないのか
とも思えるのだが。どちらにせよ「鑑定評価」なるものの経済合理性が問われる
んじゃないかと思える事象だが、特に誰も疑問に思わないのは何故だろうか。

 以前にも鑑定評価に関する疑問を投げかけたが(オリックス投資法人のコメント
参照)、このように鑑定評価自体が安定しない。指標性としての信頼性を欠くと
いろいろと都合の悪いことが起こる。第一にREITが発表している鑑定価格と
帳簿価格との差である「含み益」の信頼性だ。



合併によって顕在化した鑑定価格の摩訶不思議さだが、海外の鑑定価格のほうが
より現実に近いんじゃないかとも思える。鑑定評価機関の問題なのかそれとも鑑定
を依頼する顧客サイドであるJREIT側の問題なのかは分からないが、公正な
時価(といって市場価格ではない)は長期的にはその価値に収斂するとの主張は
一定の理があるとしても投資活動や経済活動に役に立たない価値測定は本当に必要
なんだろうか。どちらにせよ合併後の決算でどんな数字や戦略がでてくるのか注目。

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