2回にわたってバランスシートの内容を吟味してみると今回の合併によって取りあえず危機を
脱し、9月にくると考えられる財務的な山場についても恐らく乗り越えることは可能だろう。そ
ういう意味で現在の株価の現状はまだ投資家が危機モードを維持しているという点では割安感は
残るかもしれない。但し、それは表面的にみた場合で、今後の成長力を考慮すると予断を許さな
い状況が続いていることには変わりがないということに留意する必要がある。
合併による売却でポートフォリオは33%減少し、4月1日現在では777億円まで資産が縮
小。借入金は確かに減少し、有利子負債残高は35%も減少した。9月末までにさらに資産売却を
すればポートフォリオはまた縮むことになり、成長戦略が描きにくくなることは間違いない。な
んのことはない、LCPと東京グロースが合併してできた会社はLCPとさしてサイズの変わらない
REITができただけ。というかREITがひとつ分消滅してしまったということだ。
3月までの売却後のポートフォリオで見ても、20億円以上の大型物件は10件あり、返済に困る
という状況でもないことは確か。但し、中身を見ると都心物件が多く、ポートフォリオを崩すよ
りも維持した方が今後のために良い気もする。また、鑑定評価も低下しており、実際の売却時に
どの程度の損失がでるかも不明。都心物件であればそれなりの値段はつくとは思うが、今までの
売却実績で利益がでていないわけだから、あまり期待するもの困難だ。さらに今回の資産売却で
借入金を減らしても売却損の発生、負ののれん代で相殺する形なのでLTVは全く下がらない。
従ってファンダメンタルズは改善というより状況が悪化したと評価されても反論できないだろ
う。ここは金融機関との交渉で何とかするしかないだろう。
どのような形で生き残るにせよ、資産成長なくして投資家を惹きつける事はできない。まして
や縮小するだけのビジネスにお金を投じる人は少ない。あまり無責任な事は言いたくもないが、
ウルトラCを使うというのも手かもしれない。現在のように単に金融機関の食い物になっている
よりは幾分かましかもしれない。さらに別のREITを吸収する方法もあるが、資産のデューデリジ
ェンスをしっかりしないとババをつかむことにもなりかねない。どちらにせよ、現状の継続とい
うのもあまり良いシナリオでないことも事実だ。
金融機関との関係という点でみると良くなっているのかそうでないのか良くわからないとい
うのが正直なところだ。プレスリリースを追っていくと、融資のロールオーバーには応じて
もらっているようだが、延長幅が1ヶ月とか3ヶ月とかとにかく短い。新生信託分に関しては
4ヶ月延長だから長くはなったが、200bpコストが上昇したことを考えると素直に喜べる
処置とはいえない。むしろ、新生信託分を最大限返済させて既存融資残高を維持して貰った
方がよほどありがたかったはずだが、どうにもそうなっていないことが当法人の現在のポジ
ションを物語っているのかもしれない。下の図を見てみるとわかるがアレンジャーが
あおぞらとか新生銀行だと金利がえぐい。まあ、当法人の格付けに応じたものかもしれない
が、タームローンDの場合、アレンジャーが中央三井だと条件がこんなに違うのは一体
なぜなんだろう。ひとつだけいえることはあおぞら銀行がアレンジャーであった借入金は
旧LCPから引き継いだものでそれだけLCPが困っていたと言えなくもない。
以前、東京グロースの投資主総会に行ったとき、執行役員は金融機関から借入れなんかしない
でいっそのこと無借金でやりたいみたいなぼやきをしていたが、確かに今の金融機関の融資態度
を見るとそういうぼやきをしたくなるのも良くわかる。誰かが冗談でいったことをいまでも覚え
ているが、今の金融機関で融資現場の主役を担っているのは20年位前に入行してきた人たちだ
が、彼らの大半はバブル崩壊後世代で住専処理から始まる地獄のような融資回収現場を渡り歩い
てきた人たちで、そんな人間が融資判断をしているわけだから、少しでも風向きが変わるとすぐ
回収となるのは当たり前なのだと.....
笑えない冗談だが、実際の銀行の融資態度や行動を見ると確かにそうなんじゃないかと思わせる
ことがある。REITという商品のストラクチャではなく、スポンサーのクレジットや担保で評価し
ている現状をみれば、それはうなずける話だ。そんな彼らが20年後に銀行の経営陣やトップに
上り詰めたとき、日本にどのような影響を与えるのかと考えるととても憂鬱になる。
どうも結論らしいことを導くことは今回できなかった。期待した人ごめんなさい。
(終わり)