森かずとしのワイワイ談話室

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ドイツ視察報告その10 ローザ・ルクセンブルク財団との意見交換 その1

2012-03-09 14:58:04 | 議員活動
 本会議での質問戦を週明けに控え、市当局は答弁打ち合わせに精を出しているだろう。議会は、基本条例制定特別委員会が会合を持ち、第1章、第2章の条文についての議論を行った。対案が二種類委員から提案された。内容議論にはまだまだ相当の時間がかかる。しかし、重要な議論だ。

 さて、ドイツ視察報告もいよいよ最終段階に来た。2月17日金曜日は、国鉄のSバーンに乗って、ベルリン市内のローザ・ルクセンブルク財団の事務所を訪ねた。ここでは、午前、午後に亘って視察テーマである脱原発と再生エネルギー政策、「記憶・責任・未来」基金に代表される
ドイツ戦後補償政策に関する意見交換をじっくりと行うことができた。以下は、意見交換の概要だ。

◆ローザ・ルクセンブルク財団

 ローザ・ルクセンブルク財団は、ポーランド出身のドイツ社会主義革命の指導者ローザ・ルクセンブルクの思想を支柱にするドイツ左翼党の政治教育団体だ。ドイツ左翼党は、旧東ドイツの社会主義統一党の流れをくむ旧PDSとドイツ社民党左派が合流して結成され、ブランデンブルク州では、社民党との連立政権を樹立している。因みに、ベルリン市は社民党とキリスト教民主同盟の連立政権だ。
 
 我々を迎えてくれた財団関係者は、対外関係部長      ウィルフリート・テルカマー
                 エネルギー問題担当   ディーター・クライム
                 社会分析専門家     ルッツ・ブランシュ
                             ヨロン・シュッツルンフ
                 対外アジア担当     リンク
                 対外EU、OECD担当 キッツ
           特別ゲストとして 旧東独最後の首相 ハンス・モドロウ

【政治教育機関とは】
 順序が逆だが、昼食時にレクチャーされたドイツ特有の政治教育団体制度の概要とローザ・ルクセンブルク財団の対外活動の組織体制について記しておく。
 政治教育制度とは、政府が国費で国民の政治教育を行う制度だ。それは連邦議会議員の数に応じて、政党を通じ、格差が出ないように配分される。金額は、4回の改選の平均議員数で算出される。16年間の政治勢力の変化を反映させるためだ。規制二大政党のウエートが下がっているので、新たな政党に多く配分されるようになっている。それで、支持が伸びてきた左翼党には資金が増加しており、ローザ・ルクセンブルク財団の資金は潤沢だ。
 各政党が政治教育団体をもっている。社会民主党はハインリッヒ・エーベルト財団、キリスト教民主同盟はアデナウアー財団、というように、6つの政党がそれぞれ財団をもっている。
 ローザ・ルクセンブルク財団は独立した団体だ。他国の左翼関係団体とも連携している。そこでは新たな社会のあり方を研究している。フクシマ3.11以降は、情報収集分析、脱原発政策、世論の論点などについて研究成果を左翼党に提供している。また、財団は、関係する政党に情報提供するだけではなく、直接市民に政治的、社会的情報を提供し、政治的素養の醸成に貢献する。
 各政党の政治理念、政策意思がこのように世論形成に直接アプローチすることを財政上も保障する制度は日本にはない。政党政治の社会的な地位の高さを感じさせられる。

 財団は、各運動領域毎に専任スタッフを置いている。特に国際的活動のための体制を充実しようとしている。国際的な事務所を設置し、駐在員を置いて情報収集する。カリブを含むメキシコ代表部、南アフリカではヨハネスブルク、北京、ハノイ、ニューデリー、ベルリンには最もトルコ人移民が多いことから、トルコにも事務所を設置する予定だ。また国連との関係からニューヨークには支所、モスクワにも進出を考えている。EU、OECD担当は、発展途上国の経済開発に関する問題にとりくんでいる。アジアとの関係も重視している。日本の皆さんの活動とも連携したい。

 和やかな昼食会を挟んで、熱心に交わされた午前午後の意見交換会は次の通りだ。

【脱原発政策について】ーウィルフリート・テルカマーよりー
 政府が脱原発の方針を出したが、これは社会の激しい動きの結果であり、四大電力資本との対決という意味がある。各政党はそれに努力している。国際的な電力資本の相互参入の現実からして、運動も国際的である必要がある。
 チェルノブイリ原発事故以降、原子力技術にある問題が明らかになった。そして福島の事故が大きな反響を与えた。ドイツでもフランスでも事故は発生しうると理解している。フランスの原発は、フェッセンハイムのように、市民の反対を避けるためにドイツとの国境付近に立地させている。そしてそこからも電力がドイツに送られている。
 ドイツでは、1974年の原発建設計画が中止になって以降、原発建設は進んでいない。風力なのか原発なのかの論争があった。ヨーロッパの中心部バーゼンでの地震記録が見つかり、ライン川が津波をもたらすだろうと言われている。ドイツでもあと20年は原発が動く。稼働から40年を超えるものも出てくる!老朽化してしまっているものがだ!フランスでは、ノルマンディ原発など寿命60年!の議論がある。
 フクシマは、世界的な問題だ。ドイツの脱原発はこれにより決定づけられた。しかし、具体は進んでいない。

【脱原発に到る論争をどう乗り越えてきたか】
 1975年、私は西ドイツで反原発のたたかいに参加した経験がある。原発建設反対運動だ。北ドイツでの最初の最新の原発計画だった。青年たちが中となって闘いに立ち上がった。
 チェルノブイリ原発事故は、技術面での克服が可能なのかどうかの論争を呼び起こした。科学者たちはパラメーターを肯定的に発表していた。被災については、800人程度の死者に過ぎないとされたが、20万人に影響を及ぼしているとの見解が出されている。風が西へ吹いて、ドイツでは牛乳が危険にさらされたが、フランスは安全だと言う。リトアニアではぶどうへの影響はないというが、一方では汚染地図がつくられ、イノシシが影響を受けていると発表されている。
 このように様々な議論があった。技術を巡る問題、代替エネルギーの問題、また倫理観より地域の利害関係が優先されるということもあった。ハンブルクでの原発建設反対運動に南の人々が列車でやってきた。各個人の意識が動いたのだ。政治が何かしたというものではない。
 そんなときに、環境問題と南北問題を中心にとりくむ緑の党が結成された。その主張を各政党も受け入れていった。政治的な意識変化が起こったのだ。
【ドイツ左翼党の立場】
 政党には共通点と異なる部分があるが、左翼党は原発に反対だ。現在、左翼党所属のドロテア連邦議会議員が昨年夏に引き続いて福島県に行っている。市民団体と交流し、連携するためだ。原発問題だけではなく、ヒロシマ・ナガサキにも行って、核、被爆・被曝問題全般を学ぼうとしている。ドロテア議員は皆さんによろしくと言っていた。

【ドイツにおける原発反対運動」】
 焦点は、中間貯蔵施設の問題だ。毎年フランスからゴアレーベンの中間貯蔵施設に搬入される処理済み使用済み核燃料を阻止が激しく闘われている。ニーダーザクセン州は保守的な政権の下で、住民運動、社民党、緑の党が闘ってきたが、地域住民の意識が十分にあったのかは疑問がある。
 1998年に緑の党の躍進があり、社民党との連立政権が誕生した。2000年に脱原発の方針が出されたが、電力会社との妥協で、原発の寿命は平均して32年間としてしまった。これは環境グループが批判した。原発の存在を認めてしまったからだ。そして2009年に今の保守政権が誕生して、この原発期限すらが延長されてしまった。しかし、これによって、全国で反原発のデモが広がって、政権の支持率が下がった。こうしたときに昨年の3月11日の福島の原発事故が発生した。事故の可能性が明らかになった恐怖感から、政府は脱原発を改めて決定(方針の再確認)した。
 この後に州議会の選挙が行われた。チェルノブイリ事故の実態が明らかになったことも重なり、脱原発のスケジュールが争点になった。左翼党は、環境グループと連携し、2014年での全廃を主張した。グリンピースは2015年、緑の党は2017年、社民党は2020年を主張した。結局政府は、2022年での全廃方針を決定した。

 現在の最大の課題は、脱原発をどのように実行していくのかだ。3~4年の内に脱原発は実現させるべきだが、電力業界は2022年でも早すぎると不満を持っている。我々は連邦基本法に禁止条項を入れるべきと主張している。社民党、緑の党は方針には賛成しているが、連邦議会では反対に回った。

【ドイツのエネルギー政策に関する課題】ーディーター・クライムよりー
 ドイツでは原子力発電に関する法律で各原発毎に何年で廃止するのかが決められている。従って、電力の安定供給と温暖化防止を両立させなければならない。火力が動かなければ別の危機を招くことになる。
 代替エネルギーのシェアは現在 11.1%に過ぎない。内訳は、バイオマスが 8.1% という現状だ。
                               風力が    0.5%
                               水力が    0.8%
                               太陽光が   0.5%
                               地熱が    0.4%
 政府方針では、2020年に35%へ、2030年には50%へ、2050年には80%に高めることを目指している。
 現在電力会社は、火力発電に優越性をもたせるために、新技術による褐炭から放出される二酸化炭素を地下に埋設する計画をバッフェンハル原子力発電を経営するスウェーデン企業と連携して進めようとしている。これに対し、いつしか二酸化炭素が地上に吹き出す、地下水が汚染されると地元住民が反対の市民運動に立ち上がっている。企業がこうしたことでは、再生可能な代替エネルギー開発が遅れてしまう。我々は、政府に対し、そんな技術は認めないよう求めているところだ。

【脱原発・代替エネルギー政策の問題点】
 代替エネルギー確保の必要性から、代替エネルギー法にもとづくエネルギー開発が行われている。しかしながら、価格が高い。電力会社は長期に亘って買い取りを義務づけられている。そこで、大電力会社は代替エネルギー開発に4億ユーロの大型投資計画を策定している。ヨーロッパ20の電力会社がドイツ銀行を資本として北アフリカに太陽光と太陽熱発電の大規模プラントを建設しようとするものだ。
 ここで問題となるのは、脱原発・代替エネルギーを独占資本に中央集権的に委ねていくべきなのかという問題だ。我々は、より分権的、民主的なエネルギー体系こそが必要だと考えている。これには左翼党も社民党も共通している。原発廃止を早めるのは、代替エネルギーを促進しなければならない。消費の50%は個人だ。住宅の断熱は十分ではない。省エネが必要だ。
 松山市と姉妹提携しているフライブルク市では、太陽光の取り入れ方を考えて建物の向きや窓の配置を考えた住宅が建設されている。太陽光パネルの設置と電力簿備蓄システムで消費以上の電力を生産している村がある。年を通じて一定の質問を保つ住宅を建設するときには、補助金が給付される法律が施行されている。
 こうした制度は日本でも大きな成果を上げるのではないか。これならば、地場産業が受注し、手工業者の育成にもつながるだろう。
 我々の生活様式において、エネルギーの無駄使いがある。今の教育では人間生活に目が向かない。エネルギー革命とは、生活様式革命だろう。地域住民に利点を与えていくことが重要だ。
 ドイツでは造船の受注が減ってきた。そこで、風力発電施設を製造している。日本は海岸線が長いから、風力発電は有利ではないか。いずれにしても、独占に任せるのではなく、協同組合とか地場産業とか地域が主体になっていくことが重要だ。

 以下は、脱原発・エネルギー政策に関する質疑だ。
Q:フェルトハイムを視察し、エネルギーを生み出すとりくみを学んできたてきたが、あれはドイツのモデルなのか。
A:いやドイツ全土にある。ドイツ社民党が政権にあったときにマンシュアー氏が打ち出したものだ。
  20年前にはヨーロッパソーラー団体をつくり、日本の研究者も参加してモデルをつくり出した。そのモデル地域はホームページ上に公開  されている。メクレンブルクのトゥーネン研究所は、小規模、中規模の電力自給村を開発してきた。現在60か村になっている。これを5  0万人規模へと拡大しようとしている。
Q:風力発電では二つの問題が指摘されている。騒音問題と低周波公害問題だ。日本でも騒音については、羽根の小さな風力発電設備の実験が  行われているが・・。
A:ドイツでも問題になっている。35団体が騒音と送電網に係る環境問題として反対運動をしている。ブランデンブルク州でも対応に苦慮し  ている。当初からの住民参加、つまり民主的な手続きのあり方の問題でもある。話し合いを重ね、プロペラの大きさを変えていくで解決を  図る。或いは、逆に大規模化させて数を減らす方法もある。海岸や高速道路沿いのもともと騒音のあるところに立地させてはどうかとの考  えもある。
  低周波問題はドイツでは問題になっていないので、日本に学びたい。
Q:再生可能エネルギーを購入する市民の動機は、環境への意識か経済性か。
A:本来、原発電力に最終処分経費を含めると、コストが高いはずだ。それが除外されている。フクシマ以降、エコ電力のみを使おうという人  は増えているだろう。それが大電力会社の代替エネルギーシフトを促している。しかし、地域分散で小規模な発電システムにしていかねば  ならない。本来は安くて安全なエネルギーだけを求める住民団体は、代替エネルギーだけに投資し、電力会社を通じて全国に売電してい   る。 




 この続きは、ローザ・ルクセンブルク財団との意見交換 その2として次のページに掲載する。

 






  
                         

 

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