ブログ「かわやん」

森羅万象気の向くままに。

日曜新聞読書欄簡単レビュー

2009年01月25日 10時42分40秒 | Weblog
恒例の日曜新聞読書欄簡単レビューです。毎日、朝日、日経の3紙から。オバマ本の紹介をしている朝日から。(敬称略)
   
 朝日ではオバマ大統領を紹介した。出色のできと評価しているのが渡辺将人『オバマのアメリカ』(幻冬舎新書、819円)。アメリカ在住の若手研究者である渡辺は「民主党のリベラル再生の物語」とみている。越智道雄『誰がオバマを大統領に選んだのか』(NTT出版、1680円)はアメリカ史をさかのぼり、アメリカの地殻変動を解明する。「絶対的アウトサイダーであるゆえにインサイダー・ゲームを熟知していた」のがオバマと説く。越智はアメリカ多元主義を研究してきた人。表紙買いしてほしい?と薦めているのが「タイム」誌特別編集『オバマ ホワイトハウスへの道』(ディスカヴァー・トゥエンティワン、1050円)だ。ベテランカメラマンに納められた写真が飾る。荒このみ編訳『アメリカの黒人演説集』(岩波文庫)は上院時代のオバマの演説も収録されている。

 オバマ政権の今後の舵取りを経済面から最近の論考を日経が特集を組んでいる。松井彰彦による紹介だが、ユルゲン・ハーバマースが米国を社会的不公正から批評しているのが『世界』2月号に掲載されている。金持ちを豊かにすることで、Sのおこぼれが、貧しい人々に回る「トリクル・ダウン説」という考えG阿部異国の中心テーゼという、その韓G苗が間違っていたと断じて「醜い社会的不公正」としている。『現代思想』1月号ではプリンストン大のポール・クルーグマンはオバマ新大統領が富裕層の重税、中産階級への租税優遇措置という政策綱領を掲げた以上、いかなる反対があろうと貫けと説く。日本の改革だが、既得権益を打破する改革を説くのが斉藤誠の『世界』2月号の論文。保護主義の台頭を警戒するのが米戦略国際問題研究所日本部長アマイケル・グルーンの『フォーサイト』2月号の論文。

 日経が紹介した三田村雅子『記憶の中の源氏物語』(新潮社、3800円)は2008年源氏物語千年紀の最大の収穫ともいわれる本だ。天皇制イデオロギーを機軸として、さらに多様な資料を駆使して通時的読み解き、物語世界を俯瞰する(評者伊井春樹)。

 中谷巌『資本主義はなぜ自壊したのか』(集英社インターナショナル、1785円)―朝日―は、小渕内閣当時の「経済戦略会議」議長代理であった新自由主義の構造改革で旗振り役だった著者の転向の書だ。評者天児慧によれば3点の特長をもつ。まず経済学からグルーバル資本主義の欠陥を指摘、巨大なバブル崩壊後に市場至上主義は大量の貧困層を生み出すと断じる。しかしそんなこと経済学者に言われなくても素人の私でもわかるはなしだ。第1、構造改革の旗振り役がいまごろなぜと疑問を呈してしまう。そこのところは本を読んでいないので納得いく説明をえたいところ。日本の伝統的な哲学が未来を切り開くとも書いている。そこも梅原猛らにより以前から語られていた内容ではないのか。3つ目は貧困層の減少のための税制改革を断行するとの提言だ。「還付金付き消費税」方式の導入だ。これは是非著者の論を追いたい。構造改革を推進してきた人が読むべきだとは評者は薦めているが、もっと根本的提言の本の方がいいのではないかと思うのだが。

哲学書ではないが、哲学者の半生記が毎日に紹介されている。木田元の二書だ。『なにもかも小林秀雄に教わった』(文春新書、788円)と『哲学は人生の役に立つのか』(PHP新書、777円)である。木田のエッセーを読んだことがあるが、なぜこれだけ厳しい人なのかと思ったことがあるが、この二書に書かれた半生を知るとなるほどとうなずいてしまう。あくなき知的好奇心に加えて粘着力というか、粘り強さは33年かかりハイデッカーの研究書を書き上げる。とにかくその知的な関心を深さとねばり強さを二書から読者は知るだろう。生半可な学問への関心ではない。哲学は英語はもとより、ドイツ語、ラテン語、フランス語は当然読まねばならない。独学で短期期間でマスターしていく。さらに雑学である。やわなインテリの世界ではない。たくましい生活者でもある。私は現象学者としての木田しか知らなかったが、半生記を知ることで粘着力の恐ろしさの源泉は何かを知りたくなった(評者井波律子)。


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