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あまでうす日記

あなたのために毎日お届けする映画、本、音楽、短歌、俳句、狂歌、美術、ふぁっちょん、詩とエッセイの花束です。

柳田國男原作・京極夏彦文・伊野孝行絵「おしらさま」を読んで 

2024-04-18 11:14:32 | Weblog

 

照る日曇る日 第2038回

 

柳田國男の佐々木喜善からの聞き書きである「遠野物語」を絵本にした「えほん遠野物語」シリーズの1冊である。

 

原本の「69」の項には、確かに馬と結ばれた娘の悲劇を主題としたオシラサマの伝承が書かれており、父親が桑の木の下で切り落とした馬の首に乗って、娘が天に昇ったと記されている。

 

さりながら、オシラサマが地上に残した父親のために遣わした虫が蚕であり、だから蚕は馬の首の形をしているとか、父親が蚕を桑の葉で育てたところ、蚕の繭から糸が取れたのが養蚕のはじまりだ、などというのは京極夏彦の空想の産物に過ぎない。

 

馬を吊るした桑の木から造られたのがオシラサマであるとするのは間違いないが、原本では絵本では娘の像なのに、この絵本では勝手に男女のお雛様のような一対に仕立て上げている。

 

原本ではオシラサマのある家では、必ずオクナエサマも常備されているとあるので、これを勝手に一対のオシラサマに仕立て上げたのかもしれない。

 

絵本に限らず、映画や芝居でも素材を原作に採りながら、それを自由自在に脚色することはよくあることだが、本作では伊野孝行の絵が素晴らしいので、そのぶん現代作家の奔放なる空想にいささかシラケてしまった。

 

「神の声に非ず」といいながら天使の声で唄いしナット・キング・コール 蝶人