goo blog サービス終了のお知らせ 

あまでうす日記

あなたのために毎日お届けする映画、本、音楽、短歌、俳句、狂歌、美術、ふぁっちょん、詩とエッセイの花束です。

永田和宏著「あの胸が岬のように遠かった」を読んで

2022-07-18 09:04:50 | Weblog

照る日曇る日第1765回

 

前半は永田選手の半生記から始まるので、いささか意外の感もあったが、なるほど琵琶湖の西岸に生を享けたからこその、悠揚迫らぬあの人柄と納得がいった。

 

本書には「河野裕子との青春」という副題が付いている。2人の出会い以降のその熱烈な恋愛振りは、予想した通りであったが、初性交後の中絶、2人共々の自殺未遂!等々、尋常ならざる波乱万丈の青春回想記なので驚いてしまった。

 

もう随分昔の話なのに、奇跡的に保存されていた御両人の手紙をたっぷり引用し、お互いの短歌を引用しながら縷々語りだされる運命的な大恋愛物語は、ご本人には失礼ながら、まさしく小説より面白く、近来稀なスリリングな読み物であった。

 

「これは私の青春の証である。他にも生き方があったのではなく、このようにしか私には生きられなかったのである。悔いだらけの青春ではあるけれども、もういちど生まれて来がても、今日まで生きて来たのと同じ青春を選び取ろう」という「あとがき」の言葉が、この1冊をあざやかに切り取っている。

 

   生きているそのこと自体が楽しくてぐるぐる回るメダカ8匹 蝶人