あまでうす日記

あなたのために毎日お届けする映画、本、音楽、短歌、俳句、狂歌、美術、ふぁっちょん、詩とエッセイの花束です。

桐野夏生著「インドラネット」を読んで

2022-04-08 09:26:22 | Weblog

照る日曇る日第1732回

抜群のストーリーテラー、桐野選手が放つ、所謂ひとつの超娯楽推理小説?ずら。

 

日本でくすぶっていた若者が、行方不明になった幼馴染の超イケメンと美人姉妹をカンボジアくんだりまで謎の人物に頼まれて探しに行くという国際的な物語で、序奏部は良く出来ていると思う。

 

しかし、中間部で彼らの正体がカンボジア人と知れてくるあたりから、ほんまかいな、としらけてきて、最後は在カンの日本人顔役なぞが暗躍してようやっと巡り合えた幼馴染がイケメンどころか生けるしかばねと化しているコーダ部では、いったいこの小説ってなんじゃら日、というドッチラケ気分になってくるから、読者って我儘だねえ。

 

というのも、そもそも本作を起動しているはずの「少年時代の幼な同士の憧憬」が嘘臭いからだね。

 

この人は、時折時節の社会的な問題なんかを物語の背後で伴奏させたりするのが得意で、今回もなんやらカンボジアの暗黒政治問題を絡ませているが、とってつけたようで、あんまり成功しているとは思えない。いずれにせよ芸術とは異なる文藝界を遊泳する作家ずら。

 

    道理無き戦を続ける独裁者よお前の後生はさぞや悪かろ 蝶人

 

コメント
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