闇にまぎれてtyojin cine-archives vol.2578~87
江波杏子は私が60年代の終わりごろに、明治神宮外苑の代々木口傍のガード下のあばら小屋で住み込みの家庭教師をしていた頃、そのすぐ近くの「大関」という飲み屋の女将をしていたが、そんな彼女の姿を実際に見かけたことはない。
江波杏子はこの「女賭博師シリーズ」を跳躍台として、その後も映画と芝居を舞台に息の長い女優生活を続け、とりわけ衛星放送の源孝志演出「京都人の密かな愉しみ」では枯淡の境地に達した晩年の名演をみせたが、2018年10月27日に76年の生涯を閉じた。

1)田中重雄監督の「女の賭場」
1966年、江波杏子主演の女賭博師シリーズの記念すべき第1作であるが素晴らしい。
2)弓削太郎監督の「女賭博師」
1967年のシリーズ第2作。江波杏子の魅力爆発。懐かしの川口小枝子も出ているぞ。
3)弓削太郎監督の「女賭博荒し」
1967年のシリーズ第3作ではOLの江波杏子が「昇り龍のお銀」になって高千穂ひづる、成田三樹夫と共演。アップに堪える江波の艶姿ずら。
4)田中重雄監督の「三匹の女賭博師」
ラストでは安田道代の窮地を救った江波杏子が三条魔子と対決するのだが、いずれも美女で蟹じゃないのだから、三匹はちょっと困る。1967年のシリーズ第4作ずら。
5)井上芳夫監督の「関東女賭博師」
1968年のシリーズ第5作。見えなくなった眼を捨てて耳と心眼で最後の戦いに勝利する銀子の姿は美しい。
6)田中重雄監督の「女賭博師乗り込む」
1968年のシリーズ第6作。芸者と賭博師姿をみせる江波杏子。ここでも第4作に登場した安田道代と三条魔子が銀子とセットで出てくるが、三条魔子というのはどうも私の趣味ではないな。
7)井上芳夫監督の「女賭博師鉄火場破り」
1968年のシリーズ第7作では、いわくつきの原知佐子が立ちふさがるが所詮お銀の敵ではない。大友柳太郎がいい味を出している。
8)田中重雄監督の「女賭博師尼寺開帳」
1968年のシリーズ第8作では、お銀の父親役の大辻志郎がイカサマばくちに夢中になり、その結果お銀が迷惑を蒙るが、最後は順当勝ちで三条魔子をまかすのである。
9)井上芳夫監督の「女賭博師絶縁状」
シリーズ9作目では昇り龍のお銀が島田正吾の教えをうけて成田三樹夫をやっつける。
10)井上芳夫監督の「女賭博師奥ノ院開帳」
1968年のシリーズ第10作は伴淳三郎が登場して圧巻の出来栄え。
11)田中重雄監督の「女賭博師みだれ壺」
1968年のシリーズ第11作。えろい安田道代の他に浪花千栄子、長門勇、川津祐介、小松方正、柳永二郎などがドカドカ出てきて楽しめる。
12)井上芳夫監督の「女賭博師さいころ化粧」
1969年のシリーズ第12作。本作では素敵な洋装の江波選手がバーの歌手になって「眠られぬ夜のために」という歌をハスキーな声で唄っている。賭博では久保菜穂子が片肌を脱いで活躍するずら。
13)田中重雄監督の「女賭博師十番勝負」
69年製作のシリーズ第13弾。高千穂ひづるがエロイ。このシリーズでの田中作品は本作で終了。やはり井上選手の敵ではなかったずら。
14)井上芳夫監督の「女賭博師丁半旅」
天井からライトを当てるいかさまを見破ったお銀が最後の大勝負に勝利するが今回のキャメラは冴えないずら。シリーズ第14弾。
15)井上芳夫監督の「女賭博師花の切り札」
69年の製作でシリーズ第15弾だが、江波杏子の歌が聞けます。耳を傷めたお銀だがラストでは胸のすくような逆転勝ちを収めるのでしたあ。
16)井上芳夫監督の「女賭博師壺くらべ」
70年製作のシリーズ第16作では刺されていきなり海に投げ込まれる江波杏子。死んじまったのかよと心配したが、どっこい無事に復活して親の仇を討つのである。今回初登場の丸山明宏がさすがの存在感ずら。
17)三隅研二監督の「新女賭博師壺ぐれ肌」
71年の製作でタイトルに「新」がついたが中身は徹底的にダサくて「旧」。江波杏子や安田道代が本郷功次郎と一緒にドス振り回して敵を切りまくるなんてまるでヤクザ映画だ。三隅のこのバカバカしい演出が本シリーズの止めを刺す最終作となり果てた。馬鹿野郎めが。
人はみな風にそよげる葦にして邪教と知りつつ教えに縋る 蝶人