
音楽千夜一夜第395回
1981年に87歳で亡くなったベーム王、じゃなくて翁の最晩年の演奏を聴いてみました。
オーケストラはチャイコフスキーの4,5,6がロンドン響、シューベルトのグレートがシュターツカペレ・ドレスデンで、残りはすべてウイーン・フィルですが、やはりウイーン・フィルとのワーグナーやベートーヴェンの「合唱付き」や「ミサソレ」、ブルックナーの7、8番、ハイドンの88から92番の交響曲などが、悠揚迫らぬドイツ正統派の格調高い演奏です。
とりわけモザールの交響曲29、35、38,39、40,41と「レクイエム」は最大の聴きもの。全盛時代のベルリンフィルとの演奏に比べるとやや弛緩が見受けられるとはいえ、非常に遅いテンポでありながら非常な緊張と充実をはらんだ男性的なモザールの演奏は、もはや世界中のオケと指揮者から引き出せなくなった珠玉の名品といえましょう。
これはつまりこういう意味かと文語体を口語短歌に翻訳して読んでいる私 蝶人