今月1日、ソニー副社長の平井一夫氏が、
4月1日付で、社長兼CEOに就任する人事が発表されました。
就任前後には、「新しい中期経営計画を発表したい」といいます。
果たして、どのようなソニーの将来像を描くのか、注目されます。
ソニー復活を語るとき、
多くの評論家やエコノミストたちが、異口同音に、
「“高付加価値”商品を生み出せるか」
「“夢のある”商品をつくれるか」と、発言しています。
しかし、いまのソニーにとっては、
無理な相談、ないものねだりだと、私は思います。
「夢のある商品」と、無責任にお題目だけかかげても、何も生まれない。
今日、「夢のある商品」を生み出す企業といえば、
いずれも“オーナー企業”です。これが共通項です。
先日までスティーブ・ジョブズが引っ張っていたアップルをはじめ、
グーグル、マイクロソフト、フェイスブックはその典型です。
また、今をときめくサムスン、LG電子もオーナー企業です。
みな、創業者がいまだに強い求心力をもつ企業です。
これらの企業ならば、創業者の思い、志を込められた
「夢のある商品」がポンと出てくるわけです。
それは、たいてい創業者の独断と偏見にみちたアイデアによるものです。
でも、創業者であれば、誰が何といおうと、
実現に向かって突っ走ることが可能です。
ソニーもかつて、そうでした。
しかし、創業者亡き後、約13年もの時を経たソニーは、もはや、
企業がもつ磁力というか、熱量というか、エネルギーが違っています。
いまのソニーには、天才技術者、井深大もいなければ、
マーケティングの天才、盛田昭夫もいません。
平井氏は、サラリーマン社長です。創業者にはなれません。
しかも、いまのソニーの社員たちは、
ベンチャー気質溢れる、挑戦者としてのソニーではなく、
大企業で安定した収入を得られるソニーに入社してきた人が大半です。
そんな企業から、一発逆転の「夢のある商品」が生まれ、
業績がV字回復することなどは、ハッキリいって、
望むべくもないのではないでしょうか。
では、ソニーの再建は、どうすればかなうのか。
平井氏が記者会見で語っている通り、
「はっきりいって奇策はない」と思います。
地道なことを、一つひとつ積み上げ、改善を重ねる。
大胆に事業戦略を転換する。一人の天才に頼るのではなく、
組織の力で持ち直していくしかないのではないか。
組織力の強化が望まれます。
私は、かつて『ソニーの法則』(小学館文庫)という本を書きましたが、
ソニーには、“ソニーの法則”があります。
ソニーがソニーたる所以ともいえる法則です。
ウォークマンの開発にも、“ソニーの法則”が貫かれています。
それを、一つひとつ取り戻すべく、地道に努力するしかありません。
そこから、新しい「偉大なソニー物語」が生まれれば、
復活の可能性が出てくると思います。
ソニーには、その底力がまだ残っているはずです。
私はそう思います。
その“ソニーの法則”について、来週、触れたいと思います。