片山修のずだぶくろ Ⅰ

経済ジャーナリスト 片山修のオフィシャルブログ。2009年5月~2014年6月

日本の“産業の米”半導体は生き残れるか

2012-02-08 18:06:02 | 社会・経済

ルネサスエレクトロニクス、パナソニック、富士通の三社が、
半導体の主力、
システムLSI(大規模集積回路)事業を切り出し、
統合する方向で交渉を開始しました。
産業革新機構が出資して半導体設計の専門会社を設立するといいます。

少し振り返ってみましょう。
もともと、
米国が得意とした半導体事業
1980年代のはじめ、私がシリコンバレーを取材で訪ねた当時は、
日本のシェアは5%にも達していませんでした。
その後、80年代のうちに
日本が台頭し、あれよあれよという間に、
世界シェアトップに躍り出ました。
一時は、シェアは90%を超えたはずです。
しかし、
90年代に入ると韓国企業が急伸し、日本は追い抜かれます。
2000
年代に入ると、
サムスン電子とハイニックス半導体
韓国メーカーが、
世界の頂点に立ちます。
日本企業は、
韓国企業の背中が見えないほど
引き離されて
しまいました。

さて、今回、三社が統合交渉を進めている
システムLSI(大規模集積回路)とは、
大量の情報を演算処理したり、データを保存したりする機能を
一つのチップにまとめた半導体で、
自動車やデジタル機器、家電などに使われます。
日本では、もともと
日立、三菱、NEC、富士通、パナソニック、
東芝
の6社が手掛けていましたが、日立と三菱が半導体部門を併合し、
ルネサステクノロジを設立しました。
そうしないと、2社とも立ち行かなくなったからです。

さらに、
ルネサスエテクノロジと、NECエレクトロニクスが合併して、
ルネサスエレクトロニクスになりました。
今回、その
ルネサスエレクトロニクスと、
富士通、パナソニック
が事業統合するというわけで、
すべては
生き残るための合従連衡です。
結果、
日本でシステムLSIを手掛けるのは、
この
新会社と東芝だけになります。

大型の設備投資が必要な半導体事業は、テレビと同様、
いまや、
体力勝負になれば、韓国のサムスンにかないません。
したがって、日本の半導体メーカーは、生き残りをかけて
再編を進めざるを得ない
わけです。
パソコン用のメモリなどに用いられる
DRAMについても、
日立、三菱、NECが手掛けていましたが、
1999
年に統合し、
エルピーダメモリとして、
国内唯一のDRAMメーカー
になりました。
その
エルピーダも、業績が悪化し、現在、
米マイクロンと資本・業務提携を交渉中です。
世界的に再編が進んでいるといえます。

昨日触れた、
家電業界もさることながら、
“産業の米”とまでいわれた半導体も、
いまや
国内企業は“存亡の危機”です。
半導体には、もともと
「シリコンサイクル」といわれる需要の波があります。
よくいわれることですが、
日本企業需要が落ち込むと投資を控える。
しかし、韓国企業落ち込んだときこそ投資のチャンスと、
果敢に半導体に投資することで、急成長しました。
“逆張り経営”です

いくら再編して、
大きな会社をつくっても、
こうした、
投資に対する姿勢が変わらなければ、
日本の半導体メーカーが生きのびることは、
できない
のではないでしょうか。
なにしろ、
半導体工場には1000億~2000億円もかかります。
いずれにしろ、
規模を大きくすれば生き残れるというほど、
半導体ビジネスは甘くないからです。