日本の家電業界は、テレビ事業の崩壊で“絶滅寸前”です。
現象面を見る限り、その通りです。
しかし、そこに“救い”はないのでしょうか。
国内大手家電メーカー8社の、第3四半期の決算が出そろいました。
通期最終損益見通しでは、パナソニック、ソニー、
NEC、シャープと、4社が赤字の見込みです。
なかでもパナソニックは、7800億円の赤字と、
過去最悪の当期純損益を計上する見通しを発表しました。
電機メーカー各社の不振の理由としてあげられるのが、
デジタル機器、とくにテレビの、グローバル市場での売り負けです。
デジタルテレビはコモディティ化が進んだうえ、
各社が一斉に設備投資に走った結果、
生産能力過剰に陥り、価格下落に歯止めがかかりません。
グローバル市場では、日本メーカーのテレビは、
体力のある韓国のサムスンやLG電子のテレビにかなわないのです。
パナソニック社長の大坪文雄氏は、決算発表の席上、
「テレビ生産を、自前主義ですべてやろうとした」ために、
4期連続のテレビ事業の赤字見通しにつながったと、反省を語りました。
日本の主なテレビメーカーは、テレビに変わる主力商品を、
いまだ見いだせずにいます。
日立は違います。赤字の各社を後目に、
前年同期比16%減ながら、今期2000億円の黒字と、
大手8社のなかで最高の当期純利益をあげる見通しです。
11年度の第3四半期は、自動車関連、ITサービスが堅調で、
営業利益は、計画を若干上回りました。
第4四半期も、自動車部品や電装品の需要から営業増益を見込みます。
しかし、振り返ってみれば、
日立は、08年9月に起きたリーマン・ショック後、
大手8社中最悪の、7873億円という大赤字に陥りました。
いまのパナソニックの巨額な赤字とほぼ同じです。
大赤字を契機に、日立は液晶、プラズマパネル生産からの撤退をはじめ、
家電部門のリストラを断行し、合理化を図りました。
その結果、どうなったか。インフラ輸出のほか、
ITや自動車関連事業に集中しました。「選択と集中」です。
ダイナミックに事業戦略を転換したのです。
だから、現在の日立の黒字があるのです。
日立の例からわかるのは、パナソニックの現状から、
「V字回復は不可能だ」とはいえないということです。
パナソニックはいま、テレビ部門の縮小など、
単品売り切り型のビジネスから、太陽電池、エコの白物家電、
“家まるごと”のスマートハウス構想に代表される
ソリューションビジネスなど、
大胆に経営の舵を切ろうとしています。
果たしてこれが、日立の再現となるか。
問うべきは3年後、2015年のパナソニックの姿だと思います。
いや、「もっと早く、V字回復を目指す」と、
大坪社長は思っているのではないでしょうか。