┌───今日の注目の人───────────────────────┐
「会社はなぜ自分を雇ったか?」
岸良裕司(ゴールドラット・コンサルティング日本代表)
『致知』2012年9月号
連載「20代をどう生きるか」より
└─────────────────────────────────┘
努力の甲斐あってそこそこ職場の戦力にもなってきた頃だった。
先輩が何気なく口にした一言に、
僕は大変なショックを受けることになる。
「京セラは所詮、他の企業に言われたものをつくっている請負会社だ。
“請負”って漢字で書いてみろ。請けて負ける、と書くだろう?
最初から負けている業界なんだよ、うちは」
せっかく軌道に乗ってきたと思っていた矢先、
僕の気持ちは完全にへし折られてしまい、
そのショックは根深く残ることとなった。
当時の京セラのビジネスは確かに部品が中心、
完成品はほんの僅かだった。
しかし、だからといって希望に燃えた新入社員を
こんな気持ちにさせていいものだろうか。
この時に僕は、自分は絶対そういう先輩社員には
ならないと決意した。
そして、なぜ会社が
自分を雇ったのかを考えるようになった。
もし京セラになんの問題もなく、
いまの状態のまま満足していたとすればどうだろう。
新しく人を雇おうとするだろうか。
あれをしたいこれをしたい、
将来こんなことをしてみたいが、いまのままじゃやれない……、
だからこそ人を雇うんじゃないだろうか。
そう思い至った時、僕が一刻も早く先輩たちの戦力に
なりたいと願っていたのは間違いで、
本当は一刻も早く「先輩たちができなかったこと」を
やらなければいけなかったのだと気がついた。
つまりそれまでは雇われる側の立場からばかり考えていたが、
初めて、雇う側の立場になって考えることができたのである。
そして先輩たちの手の届かなかったこととは
なんだろうと考えてみた結果、
京セラの部品シェアがゼロだった米国のA社のビジネスを、
ナンバーワンのシェアにしようと決意した。
入社からまだ間もない25、6歳でのことだった。
※その後、岸良氏はいかに改革に挑み、
成果を挙げていったのか。
詳しくはP96~98をご覧ください。
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