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「運とツキの法則」
『致知』2011年3月号 特集「運とツキの法則」総リードより
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人生に運とツキというものは確かにある。
しかし、運もツキも棚ぼた式に落ちてくるものではない。
『安岡正篤一日一言』に
「傳家寳(でんかほう)」と題する一文がある。
ここに説かれている訓えは全篇これ、
運とツキを招き寄せる心得といえるが、
その最後を安岡師は、
「永久の計は一念の微にあり」
と記している。
人生はかすかな一念の積み重ねによって決まる、
というのである。
松下幸之助氏は二十歳の時、
十九歳のむめのさんと結婚した。
幸之助氏が独立したのは二十二歳。
以来、勤勉努力し大松下王国を創り上げるのだが、
独立当時は日々の食費にも事欠き、
夫人は密かに質屋通いをした。
そんな若き日をむめの夫人はこう語っている。
「苦労と難儀とは、私は別のものだと思っています。
“苦労”というのは心のもちようで感じるものだと思うのです。
ものがない、お金がないというのが
苦労だといわれておりますが、
私はこれは“難儀”だと解しています。
常に希望を持っていましたから、
私は苦労という感じは少しも持たなかったのです。
難儀するのは自分の働きが足りないからだと
思っていたふしもありました」
難儀を苦労と受け止めない。
若き日のむめの夫人はすでに、
一念の微の大事さを感得していたことがうかがえる。