http://www.shijyukukai.jp/useful/interview/201202/
生徒と共に「学び、未来を変えよう」
株式会社 栄光 関田 美三男 社長
今年1月1日付けで、栄光グループの中核を成す株式会社栄光の社長に就任した関田美三男氏。昨年までの役職は株式会社エデュケーショナルネットワークの社長だ。
新社長としての抱負、今後の課題などについて聞いてみた。
震災時に適確な行動を示してくれた宮城の職員
─ 栄光の社長の就任、おめでとうございます。昨年は東日本大震災という日本中を震撼させた大地震がありましたが、宮城県には栄光の教室もたくさんありますね。
宮城には23教室ありましたが、震災の影響で5つ閉鎖し、今は18教室になっています。
─ 相当大きな被害を受けたのでしょうね。
職員と生徒は全員無事でしたが、卒塾生が3名亡くなりました。
震災時の職員の対応は本当にすばらしいものでした。宮城の職員は震災後すぐに仙台駅近くの教室(ナビオ仙台)に集まり、現地で緊急対策本部を立ち上げました。そこで安否確認からその後の対応まで、マニュアルにはない動きをしてくれました。塾の生徒でなくても避難してきた子どもたちを助け、機敏に対応いたしました。
こちらからは連絡もとれないような状況でしたが、適確で勇敢な行動を示してくれて、本当に感謝しております。
震災後も避難所で理科実験をやったり、地元の中学に出向いて補習授業を行ったりと、教育面での復興支援活動は今も続けています。復興に向けて地域のお役に立つことがあれば、今後もやっていきたいと思っています。
教育を取り巻く変化を敏感に察知し、学習指導に活かしたい
─ 社長になられたお気持ちを率直に語っていただけますか。
教室を運営し、人を育てるという面ではノウハウも蓄積されて平準化、マニュアル化していますので、それは私どもの強みだと思っています。しかし一方、教育環境の変化などをいち早く察知し、それを指導の現場に活かしたり、集客に結びつけたりする力をより強化する必要があるとも感じています。
例えば本年度から中学で新学習指導要領に移行し、学習内容が大幅に変更・増加します。その機会をすばやく捉え、正確に保護者にお伝えして、新規顧客の開拓、塾生の通塾継続に結びつけることが、もっとできるはずです。
要するに、従来の教室運営や学習指導に加え、子どもたちを取り巻く環境変化を敏感に感じ取り、それを今日、明日、さらに来年の指導に活かせるような進化し続ける塾作りをしていきたいと考えています。そのような視点から職員一人ひとりの成長を促せば、生徒や保護者に学習指導面で一層ご満足いただける塾になるのではないでしょうか。子どもたちの5年後、10年後に必要な力は何なのか。現在教育を取り巻いている状況から想像することは非常に困難ではありますが、それを考えていくことが私たちの企業理念、PROVIDA~学び、未来を変えよう~だと思うのです。
─ そのほかには何かありますか。
システム面で申し上げますと、現在、基幹システムの見直しを行っています。特に顧客管理システムはご家庭とのコミュニケーションを深めるツールとしても活用できるよう、その見直しを図っています。システムに委ねられるところを委ねれば、教室職員はフェイス・トゥー・フェイスで時間をじっくりかけて、生徒・保護者との絆を深めることができます。もう少し時間はかかりますが、順次進めていくつもりです。
Z会の通信添削の強みを教科指導に活かす
─ Z会と資本・業務提携をされていますが、具体的にはどのようなことをやっていますか。
Z会さんにはなんといっても通信添削という、ご家庭で時間に縛られずできる学習ツールがあります。例えば小学生の非受験クラスは通塾日数から国語と算数が中心です。理科・社会を含めて総合的な力を身につける機会をご家庭に提供するために、Z会さんの通信添削との併用のご案内を、2011年から始めました。国語と算数は塾で学び、家庭では通信添削で理科・社会を学ぶというスタイルです。対面指導と通信指導を組み合わせた新たなハイブリッド学習と言えます。
またZ会さんの通信添削には、自分の考えを論理的に文章で説明する力を養う、公立中高一貫校受検対策に役立つ講座もあります。公立中高一貫校を目指す生徒たちに、Z会さんの作文講座を受けてもらっており、大きな成果を挙げています。
進学会の教室展開ノウハウを活かした「リテラ」
─ 進学会とも資本・業務提携を昨年しましたが、こちらの方はいかがでしょうか。
進学会さんは優れた教室展開ノウハウをお持ちですので、そこを学ばせていただきたいと思っております。
私どもが今教室展開している地域は、首都圏以外ではごく限られています。京都にしても、宮城にしても、ご縁があってそこに教室を持つことができたわけですが、進学会さんは北海道から全国に積極的に展開されています。そこには教室展開のノウハウやデータがあると思います。ですから、その適正な教室立地の判断とか、地域にあった指導内容は何なのかとか、エリアを見定めた上での展開などを勉強させていただいております。
─ 例えばそういった教室はすでにありますでしょうか。
「栄光ゼミナール・リテラ」という教室を埼玉県内で三校始めました。地域密着で、地元の県立高校を目指す子どもたちを対象にしています。
県立高校入試に必要な五教科を週二日の通塾で学べることが特長です。また、比較的狭い商圏を設定しているため、地元中学の学習速度や内容に合った定期テスト対策が可能です。もちろん、栄光ゼミナールの「安心・安全」はリテラでも取り入れています。
立地も、従来は駅前に出校するのが私どものやり方でしたが、「リテラ」は住宅立地型です。私どもにとっては未経験のことですが、そこは進学会さんのノウハウを学ばせていただいています。
新たなものを生み出すのに必要なのは「人の交流」
小学校低学年から中学受験、大学受験まで、一貫してクオリティの高いZ会さんの知恵をどうやって身につけていくことができるか。一方、進学会さんの教室展開における豊富な経験をどのように身につけるか。相乗効果で、成果を得たいと思います。
塾は教えることが仕事ですが、顧客に支持され進化を続けるためには、塾としても学ぶことが大切です。Z会さん、進学会さんは私たちとは違う土俵で仕事をされ、洗練された方法論をお持ちです。異なるもの同士が互いに影響し合えば、何か新しいものを生み出すことができる。要するに化学反応なんですね。
私たちが大切にしているのは人の交流です。人が交流することで考え方や方法、様々な知恵が交換され、そこから新たなものが生まれてくると考えています。
─ お話を聞いていると、今後さらに面白い塾づくりができそうですね。
そうですね。塾は一定の立地面積を必要とするビジネスですが、教室を使っている時間は午後3~5時から10~11時で、一日の約三分の一です。その時間と空間の活用方法をもう少し上手にシェアできないかということも考えております。
今回、ソーシャル・シェアリング・サービスという会社を新たに合弁で立ち上げ、恵比寿ガーデンプレイスの中で時間ごとに教室空間をシェアするワンストップのサービスを始めます。栄光ゼミナールも入りますが、そこには習い事の教室もあれば、民間学童クラブもあります。シェーン英会話や、大人向けの資格取得の講座も用意します。もちろん習い事や塾にそれぞれ通うお子さんもいるでしょうが、民間学童クラブで放課後を過ごしながら、施設内の塾や習い事に通うお子さんもいるはずです。お子さんや保護者の満足をさらに高めながら、時間と空間を上手に活用していきたいと考えています。
─ そのほか、重要な課題があれば教えてください。
私もそうですが、塾はどうしても生徒に一方的に教え込む傾向があります。できるだけそういった指導から脱却し、自ら主体的に学ぶ生徒を育成する必要を感じています。そのためのシステムや環境づくりが急務だと考えております。
─ 最後に、塾業界の方々にアドバイスやメッセージがあれば、お願いいたします。
アドバイスなどおこがましいですが、多くの皆様に出会って、勉強したいと思っております。お互い交流を深め、子どもたち一人ひとりの夢の実現をサポートするという塾の使命を果たしたいと考えています。ご指導宜しくお願い申し上げます。
(注)「栄光ゼミナール」は主に小中学生を対象とする進学指導塾、「ナビオ」は現役高校生を対象とする学習塾、「ビザビ」は個別指導専門塾であります。
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