特殊相対論、ホーキング放射、ダークマター、ブラックホールなど

・時間について特殊相対論からの考察
・プランクスケールの原始ブラックホールがダークマターの正体であるという主張
 

2-26・時間遅れの測定:光学原子時計を使った実験の3

2023-11-29 03:05:46 | 日記

1、「単振動させたイオンの時間遅れの測定について」の前書き

さてもともと原子時計は精密機械ですから「振動はいや」なはずです。

従って「くみあがった原子時計を上下に単振動させながら時間をはかる」などという「時計の振動耐久試験をかねたような時間測定」は考えられません。

しかしながら「単原子時計ならそれができる」と気が付いた所がこの実験のポイントでした。

というのも「時計はもともと一個の原子である」という所がミソですね。

そうしてその一個の原子から遷移周波数情報を取り出す為のレーザーやらエレクトロ二クスがその周りを取り囲んでいます。

そうやってようやく「人間が使える時計のできあがり」となるのでした。

しかしながらこの「単原子時計は元は」といえばやっぱり「原子一個がもっている遷移周波数」なのです。

 

さてそれで通常はポールトラップの中心でイオンをトラップして「動かないようにしておく事」が時計としては大事な事でした。

このイオントラップの時にイオンがトラップの中心からずれるとトラップ電場の周波数で振動をし始める。

そうすると前ページで紹介した図1の「遷移周波数測定カーブが横に広がる」のです。

それは「時計としては望ましくない事=周波数測定の精度が落ちる事」ですから「イオンをなるべく振動させないようにすることが大事」でした。

しかしながらその状況をよく考えてみますと「振動しているイオンの時間平均の周波数ずれが観測出来るのでは?」という事に気が付きました。

 

もちろんこの時にプローブレーザー光は振動するイオンの振動方向とは直交する様に当てなくてはなりません。

そうしてプローブレーザーの周波数を固定する為にはもう一つの「振動させていない原子時計が必要」になります。

しかしながら「状況をその様に準備できる」ならば「振動しているイオンの時間平均の周波数ずれが観測出来る」のです。

そうして実際にやってみた、というのがこの報告になっています。

 

さて、最初に述べましたように「くみあがった原子時計のセットを単振動させながら時間遅れを測定する」という事は「不可能な事」です。

しかしながら「一個の原子を単振動させてその時に単振動している原子に発生している時間遅れの平均値であるならば測定が可能である」という事に気が付いたのがこの実験の重要なポイントでした。

そうしてまた「単振動による時間遅れの精密測定」というのは「この実験が初めてである」といってよいでしょう。

 

さらに言うならば「単振動している原子がプローブレーザー光を吸収する=電子のエネルギーレベルが上昇する=電子が上のバンドにシフトした」という事をイベントとして観測対象にしています。

その場合単振動しているイオン原子は振動面に直交する方向から来る光を観測している事になります。(注1)

さてそれで「その時の状況は」といいますとまさに「横ドップラーシフトの測定そのもの」になっている事が分かります。

しかも「観測者が静止していて光源が運動する」という「今まで行われてきた横ドップラーの測定」に対してここでは「光源が静止していて観測者が運動する」と言う条件になっています。

 

さて「そのような、観測者を動かす横ドップラーの測定」というのは「難しいだろうなあ」と言うのがこれまでの感想でした。(注2)

しかしながら単原子イオン時計を使う事で「観測者が動いた場合の横ドップラーが測定できていた」という事は特筆すべき成果です。

そうして「その結果は」といいますれば「観測者は青方偏移を観測した」のです。

さてこれは「横ドップラーは常に赤方偏移を観測する」という「通説の主張を否定するもの」であり「アインシュタインが提示した通りの結果」でありました。

その結果は「W横ドップラー測定では一方が赤方偏移を観測したならば、他方は青方偏移を観測する」という事です。

そうしてまたそれは「時間のおくれはお互い様ではなく一方的である」という事について「また一つ実験的な証拠が増えた」という事にもなります。

それはつまりは「静止系は客観的な存在である」と言う事の証明でもあります。

 

注1:原子が光を吸収してエネルギーレベルを上げる、その瞬間が「原子が光を観測したタイミング」になります。

注2:確かに回転するローターを使った「円運動する観測者と回転中心にある静止した光源を使った時間遅れの測定実験」はありました。

そうしてその場合も「円運動する観測者の時間は遅れる」ので「中心からの光は青方偏移して観測される」のでした。

 

追記:この 「Chou氏ら研究チームの報告」では単振動させた原子の周波数シフトについては「相当に簡略化しての報告」になっています。

したがって「単に表面上を読んだだけ」ではなかなかその実験の本質を理解する事は難しくただ単に「単振動させると時間が遅れる」という「通り一遍の理解に留まってしまう」のです。(ちなみにそうなってしまう事は当方が自分自身で経験した内容でもあります。)

まあその場合でも「単振動すると時間が遅れる」しかもそれは「特殊相対論の予測通りに遅れるらしい」という事はレポートから分かります。

そうして「その事だけでも初めて実験で確かめられた事」であり「報告するに値する内容」になっています。

しかしながら「相当な部分を追加して状況を理解するならば実験の全貌が見える」のであり「そうするとこの実験の本質が横ドップラー効果の測定である」という事が明確になるのです。

そうしてまた「Chou氏ら研究チームの報告」では『今回の実験は、相対性理論の証明というよりは、原子時計の驚異的な精度の方に意味がある、とChou氏は説明している。』と述べられている様に「実験を行った本人たちもこの実験のもつ本当の意味の重要さを認識していない」という所が「興味深い所」であります。

ちなみに「単振動させた原子に発生していた時間の遅れ」は特殊相対論の計算と一致していました。

その結果はつまりはこの実験は「縦方向のGは時間の遅れを発生させない」という事の「もう一つの確認実験になっていた」という事になります。

追記の2:単原子イオンの光時計であるからこのような実験が可能となりました。

これが「日本発の光格子時計」となりますと「このような実験は難しい」という事になります。

まあ「時計にはそれぞれ得手不得手がある」という事になりますか。

 

PS:相対論・ダークマターの事など 記事一覧

https://archive.md/KdJTG

https://archive.md/gOxIR

 


2-25・時間遅れの測定:光学原子時計を使った実験の2

2023-11-23 01:44:37 | 日記

光学時計と相対性理論
C. W. Chou,* D. B. Hume, T. Rosenband, D. J. Wineland

24 SEPTEMBER 2010 VOL 329 SCIENCE (原典は: https://zenodo.org/records/1230910 :からDL可)

こちらは英文のサイエンスに載った記事

24 SEPTEMBER 2010 VOL 329 SCIENCE
https://tsapps.nist.gov/publication/get_pdf.cfm?pub_id=905055

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

『要約

相対的な運動や異なる重力ポテンシャルにある観測者は異なる時計の速度を測定します。これらの相対性理論の予測は以前、高速で動く原子時計や標高の大きく変わる場所で観測されてきました。私たちは、光学原子時計を使って光ファイバーで接続された2つの時計を比較することにより、速さが10メートル/秒未満の相対速度からの時間の遅れを観測しました。また、地球の表面近くでの高さの変化による時間の遅れも1メートル未満で検出できるようになりました。この技術は、測地学の分野に拡張され、地球物理学や水文学だけでなく、基本物理学の宇宙ベースの試験にも応用できる可能性があります。』

 

『アルバート・アインシュタインの相対性理論は、現実の概念を変えざるを得なくしました。その理論の中で特に驚くべき結果の一つは、同時性の概念を捨てなければならないことです。これはいわゆる双子のパラドックス(1)に現れており、高速で移動するロケット船に乗る双子の兄弟が他の双子よりも若返って帰還するというものです。この「時間の遅れ」は、旅行者と静止した観測者と一緒に同行する同一の時計の時間を刻む速度を比較することで定量化できます。アインシュタインの理論のもう一つの結果は、時計が巨大な物体の近くでより遅く動くというものです。日常生活で遭遇する速度と長さの範囲では、相対論的な効果は非常に小さいです。例えば、地球の表面付近で高さが1 kmだけ異なる同一の時計がある場合、上の時計は百万年で下の時計よりも約3秒多く時間を刻みます。これらの相対論的な時間の遅れの効果は、いくつかの重要な実験で確認されています(2–6)。

そして、これらの相対論的な影響は、衛星ベースの航法システムで日常的に考慮されています(7)。歴史的に最も正確な測定は、光速に近い速度(8)および標高の変化が10^4から10^7 mの範囲にわたります(3、4)。以前は、小さな相対論的なシフト(<10^−16)は、γ線メウスバウア分光法(5、9)および原子干渉法(6)を使用して短距離でのみ観測できました。しかし、十分に高い感度を持つ時計、例えば光学領域で動作する正確な原子時計、つまり「光学時計」を使用すれば、これらの影響が長距離で検出できる可能性があります。ここでは、27Al+イオンを基にした2つの光学時計を比較することにより、数メートル/秒の速度および33センチの高さの変化による相対論的な時間の遅れの検出を報告しています。

 

ペタヘルツ(1 PHz = 10^15 Hz)の周波数帯域で動作し、自然の線幅がミリヘルツのレベルである光学時計は、現在のマイクロ波時刻および周波数標準に比べて安定性と精度が大幅に向上しています(10)。我々は、個々の捕獲されたAl+イオンを基にした2つの光学原子時計を比較しました。これらは報告されたシステマティック周波数の不確かさが8.6 × 10^−18(11)および2.3 × 10^−17(12)である。比較のために、Cs噴水時計の最も低い報告された周波数の不確かさは3.4 × 10^−16(13)です。これらのAl+光学時計の正確性と関連する感度により、相対論的な効果による時計の周波数変動が10^−16以下で観測できます。

27Al+においては、効率的なレーザー冷却および状態検出のためのアクセス可能な光学遷移が存在しないため、これらのイオンの精密分光は量子情報科学で開発された技術を使用しています。ここでは、Al+イオンは、同じ線形RF(ラジオ周波数)ポールトラップ内で同時に保持される補助の「ロジック」イオンとのクーロン相互作用を介して共感度冷却されます(14)(注1)。ロジックイオンはまた、Al+イオンの内部状態を量子論のプロトコルを介して準備および検出するのに役立ちます。(注2

この研究では、2つのAl+時計はそれぞれベリリウム(9Be+)イオン(14)およびマグネシウム(25Mg+)イオン(11)をロジックイオンとして使用しました。周波数f0が約1.121 PHzのAl+ 1S0↔3P0クロック遷移は(注3)、Δf = 8 mHzの狭い自然線幅と、対応する固有の品質(Q)因子f0/Δf = 1.4 × 10^17を持ち(注4)、小さな周波数シフト効果を検出するための高い感度を可能にします。ただし、クロック遷移の観測される線幅はプローブレーザーの線幅によって制限されています。我々はクロック遷移を、高いフィネスの光学空洞に基づく、サブヘルツの線幅を持つレーザーを用いて調査しました(15)。アルミニウム-マグネシウムクロックでは、300ミリ秒のプローブ期間で、狭く、フーリエ変換により限られた線幅を得て、Qファクターは4.2 × 10^14で、ほぼ80%のコントラストを実現しました(図1)。この高いQ値は、高い安定性のクロック操作と小さな周波数シフトへの感度の基盤となります。』

図1. Al+の1S0↔3P0遷移。300 msのプローブパルスで観測されました。各データ点(青い点)は、9または10の個々のプローブの平均で構成され、プローブレーザーの周波数ドリフトによる歪み効果を排除するためにプローブ周波数の順序がランダム化されました。このデータに対するローレンツフィット(注5)(図には表示されていません)は、2.30 ± 0.51 Hz(不確実性は1 SDに対応)の線幅[ハーフマックス全幅(FWHM)]を生成します。ローレンツ線幅は、プローブパルスの四角い時間波形の結果であるフーリエ変換限界スペクトル(滑らかな適合赤曲線)よりも狭くなっています。ここで使用されたプローブ時間に対して、フーリエ制限は2.7 Hzの線幅(FWHM)とQファクター4.2 × 10^14に対応し、これを達成した値としています。黄色い影のあるバンドは、量子プロジェクションノイズ(注6)に起因するデータの予想されるばらつきを示しています(34)。』

翻訳はチャットGPT3.5+修正は当方

図1については原典を参照されたい。

ここではテストの要約と今までの経緯、それから使った光時計についての説明になっています。

 

・図1の解釈について

青のドット一つが「継続時間300 msのプローブパルスで観測された」9~10個の測定値のアベレージを示す。

横軸がそのプローブレーザーの周波数であり、これは指定された値に固定されている模様。

全部で21個の周波数が±7Hzの範囲で均等分割されて指定されている。

それで縦軸が遷移確率になっている。

これはつまり「一個のAl+イオンがプローブレーザー光にどの程度の確率で共鳴したか」を示している模様。

で、プローブレーザーを時間間隔300 ms照射中にAl+イオンが共鳴すればポイント1、しなければポイント0でそれを一つの指定周波数で連続10回繰り返す、のではなくて21個の分割された周波数点をランダムに選んで、そうして一つの測定周波数については合計で10回になるまで繰り返す。

その様にランダム化する理由は「プローブレーザーの周波数ドリフトをキャンセルする為」らしい。

さてそうすると「一つの指定された周波数でAl+イオンが共鳴した遷移確率が計算できる」となる。(10回中何回共鳴したか、というだけの話です。)

そうしてまたこの場合に実際にそうやって測定した典型的なデータを一つ例示したものが図1らしい。

つまりは図1は「実験を始めるにあたってこの程度の精度の光時計を使いました。」を示したものと思われる。

それで図1の様なデータが得られた場合は近似曲線(赤色)をつかって「ー0.6Hzの周波数シフトである」とする模様。(「ー0.6Hzの周波数シフト」は当方の図1の目視よみ。)

さてそうであれば「測定精度を上げる為=統計的に有効と判断できる為」には上記の様な測定を千回ほど繰り返すことが必要になるのです。

というのも「測定そのものが量子力学の測定」になっていて、つまりは「確率の測定になっているから」ですね。

 

ちなみに「周波数f0が約1.121 PHzのAl+ 1S0↔3P0クロック遷移」は

1,121,000,000,000,000.Hzである。(1121兆Hz)

それに対して0.4~0.5Hzほどの周波数シフトを読み取れる、というのだから「驚き」である。

なおういきによれば

750 THz–30 PHz (電磁波)紫外線(波長400–10 nm)

との事。

 

注1:チャットGPT3.5によれば

『この文は、質量数27のアルミニウムイオン(Al+イオン)が、同じ線形RF(ラジオ周波数)ポールトラップ内で同時に保持される補助の「ロジック」イオンとのクーロン相互作用を介して共感度冷却されると述べています。これを解説します:

アルミニウムイオン (Al+イオン): これは特定の種類のイオンで、アルミニウム原子が1つの電子を失った状態を指します。

線形RFポールトラップ: これは、電場勾配を利用してイオンを捕捉するための装置です。(追補1)RFはラジオ周波数を指し、線形RFポールトラップはその電場が線形な構造を持つものです。これにより、イオンが特定の位置に保持されます。

補助の「ロジック」イオン: アルミニウムイオンと同時に保持されている、補助的なイオンです。ここでは「ロジック」と呼ばれていますが、これは共感度冷却プロセスにおいてアルミニウムイオンの制御や測定に役立つ役割を果たしています。

クーロン相互作用: クーロン相互作用は電荷の間の相互作用を指し、正の電荷と負の電荷の間には引力が働きます。アルミニウムイオンとロジックイオンの間でのクーロン相互作用は、彼らがトラップ内で相互作用し、共感度冷却プロセスを可能にします。

共感度冷却: 共感度冷却は、2つ以上の系が互いに熱平衡にある場合、一方の系の温度を冷却するプロセスです。ここでは、アルミニウムイオンが共感度冷却され、補助のロジックイオンがこのプロセスにおいて役立つとされています。

総じて、この文はアルミニウムイオンが共感度冷却によって冷却されるプロセスにおいて、同時に保持される補助のロジックイオンが役立っていることを述べています。』

追補1:「ポールトラップ」についての説明は: https://www.toray-sf.or.jp/aboutus/pdf/62-h24_2.pdf :の28Pにあります。

現物は「世界的「光原子時計」の研究者が日本に初集結」: https://archive.md/gz4wU :

単一イオンを閉じ込めるポールトラップの現物写真が確認できます。

追補の2:共感度冷却については「 サイドバンド冷却」として: https://www.nict.go.jp/publication/shuppan/kihou-journal/houkoku63-1/book/pdf/67.pdf :で説明されています。

注2:チャットGPT3.5によれば

『この文は、「ロジックイオンはまた、Al+イオンの内部状態を量子論のプロトコルを介して準備および検出するのに役立ちます」と述べています。これを詳しく説明します:

ロジックイオン: これはアルミニウムイオン(Al+イオン)と同時に保持されている補助的なイオンで、共感度冷却プロセスにおいて役立っています。

アルミニウムイオンの内部状態: アルミニウムイオンが持つエネルギー準位や量子状態のことを指します。これは通常、アルミニウムイオンの電子がどのエネルギー準位にあるかを表します。

量子論のプロトコル: これは量子論の原則や手法に基づいた手続きや手順のことを指します。ここでは、アルミニウムイオンの内部状態を制御、準備、および検出するための手順やプロセスが含まれます。

準備および検出: アルミニウムイオンの内部状態を特定の状態に準備することと、その状態を検出することを指します。これは、例えば特定のエネルギー準位にイオンを導入し、後でその状態を読み取るプロセスを含みます。

総じて、この文は、補助のロジックイオンがアルミニウムイオンの内部状態を量子論のプロトコルを使用して制御し、準備し、検出するのに役立っていることを述べています。これは、アルミニウムイオンを操作し、量子的なプロセスを制御するための技術的な手法を指しています。』

追補の3:イオン量子系の極限計測と極限制御については: https://www.nict.go.jp/publication/shuppan/kihou-journal/houkoku63-1/book/pdf/67.pdf :も参照願います。

注3:チャットGPT3.5によれば

『この文は、Al+(アルミニウムイオン)の1S0↔3P0クロック遷移の周波数 f0  が約1.121 PHz(ペタヘルツ)であることを述べています。クロック遷移とは、原子やイオンのエネルギー準位の変化に伴う電磁放射の周波数の特定の変換を指します。この場合、Al+イオンのクロック遷移は、1S0から3P0のエネルギー準位への変換に関連しているようです。そして、その周波数が約1.121ペタヘルツであると述べられています。

 

1S0は、原子やイオンの電子のエネルギー準位を表す記号です。この記号にはいくつかの要素が含まれています:

主量子数 (n): 1S0の"1"は主量子数を示しています。主量子数は、電子がとることができるエネルギー準位の大まかな大きさを表します。主量子数が1の場合、それは最も内側のエネルギー準位を示します。

軌道角運動量 (S): Sは軌道角運動量を表します。Sが0の場合、それはs軌道を示します。s軌道は球対称であり、最も内側の電子軌道として知られています。

したがって、1S0は主量子数が1で、軌道角運動量が0で、s軌道に属する電子のエネルギー準位を指します。これは通常、最も基本的で内側の電子軌道を表します。

 

3P0も、原子やイオンの電子のエネルギー準位を表す記号です。この記号にもいくつかの要素が含まれています:

主量子数 (n): 3P0の"3"は主量子数を示しています。主量子数は、電子がとることができるエネルギー準位の大まかな大きさを表します。主量子数が3の場合、それは比較的外側のエネルギー準位を示します。

軌道角運動量 (P): Pは軌道角運動量を表します。Pが1の場合、それはp軌道を示します。p軌道は球対称ではなく、主に3つの軸に沿った軌道を持ちます。数字0は、この軌道が軌道角運動量のz成分が0であることを示しています。

したがって、3P0は主量子数が3で、軌道角運動量がP(p軌道)で、軌道角運動量のz成分が0である電子のエネルギー準位を指します。これは、相対的に外側で、複雑な形状を持つ電子の軌道を表します。』

注4:チャットGPT3.5によれば

『この文は、「Δf = 8 mHzの狭い自然線幅と、対応する固有の品質(Q)因子 
f0/Δf=1.4×10^17  を持ち」と述べています。以下にそれぞれの用語の説明をします:

・Δf = 8 mHzの狭い自然線幅:

 Δf: クロック遷移の周波数の変化を指します。ここでは8 mHz(ミリヘルツ)で、非常に小さな周波数変化を表します。

 狭い自然線幅: クロック遷移のスペクトル線の広がりを示し、この場合は非常に狭いことを指します。自然線幅は、エネルギー準位の寿命や不確定性に関連しています。(追補の4

・対応する固有の品質(Q)因子 f0/Δf=1.4×10^17  を持ち

f0/Δf: クロック遷移の周波数 f0  と自然線幅 Δf の比率を表します。

固有の品質(Q)因子: クロックの安定性や精度を示す指標であり、f0/Δf の大きな値ほど高い品質因子を持つことを意味します。ここでは 1.4×10^17と非常に高い品質因子を示しています。
総じて、この文はアルミニウムイオンのクロック遷移が非常に狭い自然線幅(8 mHz)を持ち、その品質因子 f0/Δf  が 1.4×10^17  と非常に高いことを示しています。これらの特性は、高い安定性と精度を持つ光時計やクロックとしての特性を反映しています。』

追補の4:「自然線幅」(あるいは自然幅)についての説明は: https://www.toray-sf.or.jp/aboutus/pdf/62-h24_2.pdf :の26P~30P、図7~図11にあります。

『「自然線幅」は理想的な条件~計算上で求められる理論値である』とチャットGPT3.5は言ってますが、さて、、、。

注5:チャットGPT3.5によれば

『「ローレンツフィット」は、データや観測値がローレンツ曲線に適合するように行われる統計的なフィッティング(適合)手法を指します。ローレンツ曲線は、数学的にはローレンツ関数とも呼ばれ、広がりのあるピークを表現するために使用されます。

広がりやばらつきのあるデータセットに対してローレンツフィットを行うことで、データの特性やピークの位置、幅、高さなどを詳細に把握することができます。この手法は、さまざまな科学分野で広く使用されています。特に、スペクトル解析やスペクトルラインの形状分析、物理学や化学の実験データの処理などでよく利用されます。

文脈によっては、「ローレンツフィット」が具体的にどのような手法やアルゴリズムを指しているかが異なる場合があります。一般的には、観測データに適したローレンツ関数が使われ、そのパラメーターをデータに最も適合するように調整する手法を指します。』

注6:チャットGPT3.5によれば

『「量子プロジェクションノイズ」は、量子力学において特定の状態にある系を測定する際に生じる不確実性やノイズのことを指します。これは、ハイゼンベルクの不確定性原理に基づいています。

具体的には、ある物理量(例: 位置や運動量)が特定の状態において確定的に測定されることができないという原理があります。そのため、ある物理量を測定すると、測定結果が確率的であるという性質が現れます。

「プロジェクション」は、量子状態を別の基底に射影することを指します。量子系の状態を測定すると、測定結果に基づいて系の状態が新しい基底に射影され、それに伴って不確定性が生じるのが量子プロジェクションノイズです。

具体的な実験や計算において、このノイズは量子系の特性を理解し、測定結果の解釈に影響を与えることがあります。』

 

追記:使っているイオンの電子が上方にあるバンドに遷移する際に吸収する光の周波数の読み取り、決定が「光時計のキモ」であるらしい。

そのあたり「単一40Ca+イオン光周波数標準器: https://www.jstage.jst.go.jp/article/lsj/38/7/38_517/_pdf :の「3.1 時計遷移の観測」を参照されたい。

また: https://www.toray-sf.or.jp/aboutus/pdf/62-h24_2.pdf :の36Pに次のような記述がある。

『青白く光っているのが、レ ーザー冷却されているストロンチウム原子です。光を当ててレーザー冷却して光格子の中 に入れ、暗くした一瞬に分光し、それを何回 も繰り返していくことによって、より正確な 周波数を求めます。』

ちなみに「青白く光っているのが、レ ーザー冷却されているストロンチウム原子」の現物写真は: https://archive.md/gz4wU :にあります。

 

PS:相対論・ダークマターの事など 記事一覧

https://archive.md/EG2Eh

 

 


2-24・時間遅れの測定:光学原子時計を使った実験の1

2023-11-19 04:00:48 | 日記

「日常生活レベルの移動速度でも光学原子時計を使って時間の遅れが観測できた」という話があります。

これは前のページで紹介した「ハーフェレ・キーティングの実験」をさらに精密化したものになっています。(注1

概要については「相対性理論「時間の遅れ」、日常世界で実証」: https://archive.md/lDxfq :で紹介されています。

以下そこからの一部引用。

『・・・『Science』誌の2010年9月24日号に発表された今回の研究は、コロラド州ボールダーにある米国立標準技術研究所(NIST)で行なわれたものだ。

NISTの物理学者James Chin-wen Chou氏ら研究チームは、2つの光学原子時計を、それぞれ近接した研究室の鋼鉄製の台の上に設置した。2つの時計はいずれも電荷を帯びたアルミニウム原子、すなわちアルミニウムイオンを用いており、それが2つのエネルギーレベルの間を1秒に1000兆回以上も振動する。この2つの時計を、長さ75メートルの光ケーブルで接続し、それぞれの時間の進み方を比較できるようにした。

最初の実験でChou氏らは、油圧ジャッキを使って、一方の時計を設置した台を33センチメートル持ち上げた。すると予想通り、低い位置にある時計のほうが、持ち上げられた時計よりも時間の進み方が遅かった。その遅れは、79年間で「1秒の900億分の1」程度だ。

2度目の実験では、一方の時計のアルミニウムイオンを、電場を用いて振動させた。これも予想通り、イオンを運動させた時計のほうが、静止していた時計よりも時間の進み方が遅かった。

今回の実験は、相対性理論の証明というよりは、原子時計の驚異的な精度の方に意味がある、とChou氏は説明している。

[超高精度の原子時計に更に改良が加えられれば、物理測地学の分野で、地球の重力場を極めて高い精度で計測できるようになると期待されている]』

 

最初のテストは重力ポテンシャルの違いによる時間遅れの測定実験。

これは「ハーフェレ・キーティングの実験」でも検出されていた重力による時間遅れの現象を、その部分だけ取り出してさらに精密測定したものになっています。

 

そうしてポイントは2つ目の実験。

この実験ではアルミニウムイオン一個を単振動させ、その時のアルミニウムイオンに生じている時間遅れを検出したものになっています。

そうしてこれは「ラックに組み上げられた光学原子時計全体を上下に振動させた」のではなくて「光学原子時計の中心部=一個のアルミニウムイオン」を「上下に振動させたもの」なのでした。

 

さてこの話はほとんど量子力学の実験になっていて「時計全体を上下に振動させた」のではない為、「ハーフェレ・キーティングの実験」の様に「高速で移動している時計の時間は遅れる」という「特殊相対論の時間遅れの予測の検出実験」ほどには分かりやすいものにはなってはいません。

とはいえ「単振動による時間遅れの発生を現実に測定できた」のであれば、その意味はとても大きなものでありますから、「少々手間取っても理解するべき実験である」と言えます。

 

という訳で、まずは「原子時計とは何か」という所からレビューする事になります。

1、ういき「原子時計」: https://archive.md/Uj78x :を参照

『原理​

原子や分子はスペクトル吸収線・輝線(決まった周波数の電磁波を吸収・放射する性質もしくはその周波数)を持ち、水晶振動子などよりも高精度な周波数標準となる。周波数は時間の逆数であるから、時間を高精度で測定できる。SI秒の定義もこの性質を利用している。

原子時計は、このような周波数標準器と超高精度の水晶振動子によるクォーツ時計とを組み合わせ、その水晶振動子の発振周波数を常に調整・修正する仕組みによって実現される。』

『種類

マイクロ波時計 (例)セシウム原子時計(現在の秒の定義となっている。)

光原子時計
 単一イオン時計   (例)ストロンチウムイオン時計、イッテルビウムイオン時計

 中性原子光時計
  旧型(自由空間のもの) (例)カルシウム時計、マグネシウム時計
  新型(束縛されている)  (例)ストロンチウム光格子時計、イッテルビウム光格子時計』

「ハーフェレ・キーティングの実験」では「セシウム原子時計」が使われました。

そうしてここで紹介している実験では「単一イオン時計」が使われています。

それぞれの時計についての説明は上記ういきの記事を参照願います。

 

2、『科学全体に重要な意味を持つ「時計」開発の世界』: https://archive.md/4Rsz0 :

2種類の「光時計」についてのわかりやすい説明がされています。

 

3、「時空の歪みを探る時計」: https://www.toray-sf.or.jp/aboutus/pdf/62-h24_2.pdf : 香取秀俊.

少々ながいのですが基礎から光学時計の今後の展望まで丁寧に説明されています。(注2

 

注1:「ハーフェレ・キーティングの実験」では「理論は、セシウムビーム時計が典型的なジェット機の速度で世界一周飛行した場合に、検出可能な効果を予測しています。」と予測できたので、それを実際に確認したのでした。

そうしてこの時に使われた原子時計はセシウムビーム時計でした。

注2:香取さんは「光格子時計を世界で最初に組みあげた人=発明した人」です。

「300億年に1秒の差を測る究極の時計 世界標準へ:香取秀俊」: https://www.nikkei-science.com/201101_010.html : https://archive.md/grr2a :

「ERATO香取創造時空間プロジェクト」: https://archive.md/4DGm5 :

 

追記:こんな記事・論文もありますよ、というもの。

「世界的「光原子時計」の研究者が日本に初集結」: https://archive.md/gz4wU :

単一イオンを閉じ込めるポールトラップの現物写真が確認できます。

くわえてレーザーで作られた光格子にトラップされたSr原子の状況も確認できます。

「単一40Ca+イオン光周波数標準器」: https://www.jstage.jst.go.jp/article/lsj/38/7/38_517/_pdf :

ご参考までに

 

PS:相対論・ダークマターの事など 記事一覧

https://archive.md/8tZI5

 

 


2-23・時間遅れの測定:ハーフェレ・キーティングの実験の2

2023-11-15 01:17:23 | 日記

 https://web-archive-org.translate.goog/web/20170331121014/http://www.personal.psu.edu/rq9/HOW/Atomic_Clocks_Predictions.pdf?_x_tr_sl=en&_x_tr_tl=ja&_x_tr_hl=ja&_x_tr_pto=sc :

サイエンスに掲載された元記事はこれ。

記事は2つあり、前ページで訳したのは最初のもの。

と言う事で、2つ目のものを訳出しておきます。

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「世界一周セシウムビーム時計:観測された相対論的時間の獲得」

Around-the-World Atomic Clocks:Observed Relativistic Time Gains

『要約: 1971年10月、商業ジェット便で世界中を飛行した4つのセシウムビーム時計は、1回東方向と1回西方向に飛行し、方向に依存した時間差を記録しました。これらの時間差は、従来の相対性理論の予測と良好な一致を示しています。アメリカ海軍観測所の原子時計スケールに対して、飛行時計は東方向の飛行中に59 ± 10ナノ秒の損失を記録し、西方向の飛行中に273 ± 7ナノ秒の増加を記録しました。ここでの誤差はそれぞれの標準偏差です。これらの結果は、有名な時計の「逆説」をマクロの観点から明確に解決する実験的な証拠を提供します。

科学において、関連性のある実験的事実は理論的な議論を優先します。アインシュタインの一般相対性理論の従来の解釈(J)に従って、マクロの時計が時間を記録するかどうかについて実証的な情報を提供しようと、セシウムビーム原子時計4台を商業ジェット便で世界中を飛行させました。最初に東方向、次に西方向への飛行を行い、それから各旅行中に記録された時間をアメリカ海軍観測所の基準原子時計スケールであるUSNO(2)の対応する時間と比較しました。理論的な予測(1)から予想されていた通り、飛行時計は東方向の旅行中に時間を失い(遅くなる)、西方向の旅行中に時間を得ました(速くなる)。さらに、時間の差の大きさは予測値と合理的に一致し、それについては以前の報告(1)で議論されていました。この2回目の報告では、飛行アンサンブルの時間差データを提供し、相対論的な時間差がどのように抽出されたかを説明します。コンパクトで携帯可能なセシウムビーム原子時計の開発(3)により、相対性の陸上試験が可能になりました。

飛行中の時計による理論。時間間隔の基本単位である秒は、現在、定義上、"理想的な"セシウムビーム周波数標準(2、3)の原子遷移の周波数の累積期間が9,192,631,770であるとされています。これらの時計は、自然の原子遷移の周波数によって規制されているため、特に133Cs原子の基底状態のハイパーファイン遷移が非常に明確に定義されています。

相対性理論の理想的な標準時計に近づこうとするものの、実際のセシウムビーム時計2台は、通常、同じ時間を正確に保たない。実験室内にあっても、一般的には1秒あたり1/t秒の大きな時間差として現れる、系統的な速度(または周波数)の違いがある。実験で期待される相対性の時間差は通常、1日あたり0.1秒角のオーダーであり(1, 4)、そのような時間差(または速度の違い)は考慮する必要がある。

さらに、セシウムビーム時計の相対速度は厳密に一定ではないというより深刻な複雑性がある。ビーム管内のショットノイズに主に起因する速度の短期的な変動に加えて、セシウムビーム時計は速度の小さなが、よりまたは少なくとも比較的明確な準恒久的な変化を示す。これらの速度変化が通常は優れた時計では2日または3日以上離れて発生する。一部の時計は実験室で速度の変化なしに数ヶ月間動作したことも観察されている。

速度の予測不可能な変化が、実験結果における主要な不確実性を生み出す。しかし、これらの変化の性質のため、観測された時間差に対するその影響はデータ分析においてかなり取り除かれる。通常の条件下では、相対速度の変化は独立して発生し、つまり、1つの時計の速度変化と別の時計の速度変化の間に既知の系統的な相関はない。したがって、同じ方向に同じ量だけ速度を変える2台以上の時計が同時に発生する可能性は非常に低い。

これらの速度変化のランダムで独立した性格のため、時計のアンサンブルの長期平均速度は個々のメンバーの速度よりも安定している。1971年9月25日の0h U.T.から始まり、データ期間中には5000以上の時間差を記録した。図1は、データ期間全体にわたるMEAN(USNO)に対する時間差データを示しており、データ期間は636時間続いた。図1のラベルは対応する時計のシリアル番号であり、トレースは対応する時計とMEAN(USNO)の時間差を示しています。もちろん、飛行中にMEAN(USNO)との比較は不可能でした。すべての時間間隔の比較には、まったく同じ電子的な配置が使用されました。・・・』

翻訳担当 主にチャットGPT3.5

なお表およびグラフは原論文を参照されたい。

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前のページとこのページの結果は英語版ういき「ハーフェレ・キーティングの実験: https://archive.md/cEK7X :にまとまっています。

前のレポートは「どうやって相対論を使って遅れ時間を計算したか」であり、上記のレポートは「どうやって実際に測定したか」になっています。

それで一応ういきから結果を引用しておきます。

 

   ナノ秒の獲得、予測           実測  差分σ

   重力      運動学的な  予測合計 測定値 
  (一般相対性理論) (特殊相対性理論)
東回り  +144±14   −184±18    −40±23  −59±10  0.76σ
西回り  +179±18   +96±10    +275±21  +273±7  0.09σ

単位 ナノ秒 (マイナスが時間の遅れをしめす。プラスは時間の進み。)

 

重力の効果を見る限り「西回りの航路の方が24%程飛行時間が長かった」様に見えます。

しかしながら『東回りの飛行は1971年10月4日に19時30分 U.T.で開始し、65.4時間続き、そのうち41.2時間が飛行時間でした。

西回りの飛行は翌週の10月13日に19時40分 U.T.で開始し、続いて80.3時間かかり、そのうち飛行時間は48.6時間でした。』

これは前のページからの引用ですが、これによると実際は西回り飛行時間は18%ほど東回りよりもかかった様です。

そうなると西回りの重力による効果のオーバー分6%は「東回りに比べて西回りの方が平均高度が高かった」という事になります。

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地球そのものが西から東に向かって自転しています。そうであれば「太陽は東から上る」のです。

さてそれで、注目すべきは「運動している原子時計の時間の遅れが実際に測定できた」という所にあります。

つまり「特殊相対論が主張している」様にsqrt(1-V^2)の割合で「静止系にある時計よりも運動している時計は遅れる」のです。

とはいえ「西回りの時計は進んで」います。

さてこれはどうやら『最初に東方向、次に西方向への飛行を行い、それから各旅行中に記録された時間をアメリカ海軍観測所の基準原子時計スケールであるUSNO(2)の対応する時間と比較しました。』にありますように「アメリカ海軍観測所の基準原子時計スケールであるUSNO」を基準にしているためだと思われます。

つまりは「地上に設置された原子時計は静止系に対して地球の自転運動で生じる分だけ時間が遅れている」のです。

従ってその「地上に置かれた時計基準」でみますと「地球の自転を打ち消す方向=西回りに飛行する」と静止系に対しては時計の運動の速度が落ちる、従って西回りの時間の遅れは少なくなるのです。

この為に「地上に設置された時計」に対しては「西回りの時計は時間が進むように見える」のです。

 

まあ話はそういう訳なのですが、さて「ここで登場している静止系」と言うのは一体なんでしょうか?

前のページの記述によると「地球の中心が静止慣性系にある」という前提で予測計算がされています。

とはいえその報告の最後には次のような記述がありました。

『実際、地球-月系の重心が太陽の周りを自由落下しており、中心が地球ではないため、より正確な計算にはこの効果を含めるべきです。ただし、我々の実験の精度では、式4で保持された支配的な効果以外の効果を検出することは不可能である可能性が高いです(10, 11)。』

つまりは「地球が宇宙の中心である」という「天動説」に基づいて理論計算をしているが、「もちろんこの前提は成り立ってはいない」と認めているのです。

そうして「少なくとも太陽を静止慣性系に取った理論計算が必要だ」としています。

まあしかしながら「太陽が宇宙の中心」でもありません。

そうしてまた「銀河系が宇宙の中心でもない」のです。

さてそうなりますとここで登場する静止慣性系に一番ふさわしいのは「CMBレストフレーム=観測可能な宇宙に存在する恒星系の平均位置が基準慣性系である」という事にするのが妥当な所となります。

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「ハーフェレ・キーティングの実験」の意味は「実物の時計を使った特殊相対論の検証」という所にあります。

つまり「実物の時計をつかっても時間遅れは測定できる」のであってそれはつまり「時間の遅れは客観的な事実である」という事になります。

とはいえ「円運動を使っている」ので「円運動の中心にある時計に対してその周りをまわっている時計は時間が遅れるという事を証明した実験である」となります。

そうしてこの円運動については「時間の遅れはお互い様」ではなくて「時間の遅れは一方的」なのです。

さてこの事は実は「時間の遅れはお互い様」論者には一つの不利な実験結果であるといえます。

なんとなれば「円運動の半径をどれほど大きくしても中心の周りをまわっている時計の時間は遅れるから」です。

そうしてこの関係は反転する事はないのです。

それはまた「時間のおくれは主観的な現象=ただそのように見えるだけ、とは違う」という事の証明でもあります。

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PS:相対論・ダークマターの事など 記事一覧

https://archive.md/IUtaz

 


2-22・時間遅れの測定:ハーフェレ・キーティングの実験の1

2023-11-11 00:44:01 | 日記

1、ハーフェレ・キーティングの実験

『ハーフェレ・キーティングの実験は相対性理論のテストでした。1971 年[1] 物理学者のジョセフ C. ハーフェレと天文学者のリチャード E. キーティングは、民間旅客機に4 台のセシウムビーム原子時計を持ち込みました。彼らは世界一周を 2 回飛行し、最初は東方向、次に西方向に飛行し、その時計を米国海軍天文台に残っている他の時計と比較しました。再び結合すると、3 組の時計が互いに一致しないことが判明し、その差異は特殊相対性理論および一般相対性理論の予測と一致しました。』(注1

元論文は(1972 年 7 月 14 日)。「世界一周原子時計: 相対論的時間の増加の予測」(PDF)。科学。177(4044): 166–168。

 Hafele, J. C.; Keating, R. E. (July 14, 1972). "Around-the-World Atomic Clocks: Predicted Relativistic Time Gains" (PDF). Science. 177 (4044): 166–168 (注2

に記載された。

以下それの暫定和訳です。

『「要旨:1971年10月、商業ジェット便を利用して、4つのセシウムビーム原子時計が世界を2周し、東回りと西回りの2回の飛行を行い、アインシュタインの一般相対性理論を巨視的な時計で検証しました。各飛行の実際の飛行経路から、理論的には、飛行時計は、米国海軍天文台の基準時計と比較して、東回りの飛行では40 ± 23ナノ秒の損失が予測され、西回りの飛行では275 ± 21ナノ秒の増加が予測されます。観測された時間差は、この要旨の後に続く報告書で提示されています。」

今世紀における最も持続的な科学的論争の一つは、相対論的な時計の「逆説」(1)または問題(2)であり、これは元々、往復の後に旅行時計と基準時計の予測された時間差における論理的な矛盾があるとされたものから発生しました。

この理論的な論争は、最近再び活発になった(2, 3)ばかりか、解決すべきである巨視的な時計による説得力のある実験的解決を求めています。これらの時計の前例のない安定性を実現したため、携帯用の原子時計を使用した時計の問題の単純かつ直接の実験的テストが現在可能です(4)。

この2つの報告書の最初では、最近の世界一周飛行時計実験の飛行データから計算された相対論的な時間差を示します。理論は、セシウムビーム時計が典型的なジェット機の速度で世界一周飛行した場合に、検出可能な効果を予測しています(4)。さらに、それは周回の方向に応じて、飛行時計と地上基準時計の時間差に興味深い非対称性を予測しています(4)。予測される時間差は、以下の報告書で、予測された時間差と観測された時間差を比較します。

この理論の要点を簡単に説明することが適切です、特にこのような実験が意味のある結果を生み出す能力についてのいくつかの混乱があるため(5)。特殊相対性理論は、動く標準時計が、慣性基準空間で静止している(実際または仮想の)座標時計と比較して、記録する時間が少なくなることを予測しています。低い座標速度(u^2 << c^2)の場合、移動座標時計と基準座標時計によって記録された時間の比率は、(1 - u^2/2c^2)に簡約されます。(注3)ここで、cは光速です。

地球が回転しているため、地表に静止して配置された標準時計は、非回転の(慣性の)空間の座標時計の候補としてこの場合には適していません。それにもかかわらず、地球上の時計の相対的な時刻の振る舞いは、基礎となる非回転(慣性)空間の仮想的な座標時計を参照することによって評価できます(6)。

この目的のために、北極点から遠く離れた場所から見下ろす非回転(慣性)空間の観察者が地球(回転している)を見た場合を考えてみましょう。赤道上の地表に固定された時計は、非回転空間に対して速度RΩを持ち、したがってこの空間の仮想的な座標時計に対して1 - R^2*Ω^2/2c^2の比率で遅れています。一方、赤道面近くで地球を周回する飛行時計は、地上速度vを持ち、したがって対応する時間比率1 - (RΩ + v)^2/2c^2で遅れています。

したがって、τとτ0は完全な周回中に飛行時計と地上基準時計によって記録された対応する時刻であり、それらの時間の差は、一次の近似では次のように表されます。

τ - τ0 = (2RΩv + v^2) τ0 / 2c^2 ・・・(1)

したがって、地球の回転方向(東向き、v > 0)での周回は時間の損失を生じ、地球の回転方向に逆らって(西向き、v < 0)の周回は飛行時計に時間の利益をもたらすべきです(|v| ~ RΩ)。

一般相対性理論は、飛行時計と地上基準時計の間の重力ポテンシャルの差に比例する別の効果を予測しています(弱い重力場の場合)。重力加速度の表面値がgで周回の高度がh << Rである場合、ポテンシャルの差はghで、方程式1は次のようになります。

τ - τ0 = [gh/c^2- (2RΩv + v^2)/2c^2]τ0 ・・・ (2)

gh/c^2項は、重力の「赤方偏移」と関連しており、周回の方向に関係なく飛行時計に時間の利益を予測します。典型的な航空機の速度と高度では、方程式2の重力と運動の項は絶対値で比較可能であり、v^2/2c^2はRΩv/c^2と比較して小さいです。西向きの周回(v < 0)では、両方の項が正であり、合算して大きな時間の利益をもたらしますが、東向きの周回(v > 0)ではそれらは相殺され、ネットの時間差を生じる傾向があります。

予測される時間差は、飛行の詳細に依存して正または負である可能性があることに注意してください。我々は予測された時間差を検出の閾値と比較できます。もし周回飛行が一気に行われる場合、一次近似では、旅行時間τ0 = 2πR/lvlとなります。これを式2に代入すると、次のようになります。(訳注:lvl=abs(v))

τ - τ0 =2πR/c^2 [g/lvl - RΩv/lvl - lvl/2] ・・・(3)

この関係は、興味のある地上速度と高度の範囲にわたり、図1でグラフィカルに表現されています。図1の斜線で囲まれた領域は、携帯用セシウムビーム時計を用いた過去の経験から推定された検出の閾値を下回っています(7)。ラベル付けされたポイントは、示された航空機の巡航高度と地上速度に対応しています(8)。図1は、ジェット機の速度でのセシウムビーム時計による周回飛行が測定可能な相対論的な時間差を生じるべきであることを示しています。さらに、観測された時間差には確定的な東西方向の非対称性が存在するだけで、式2の運動項の妥当性を強力に証明します。

赤道周回飛行に関するこれらの予測は、実際の飛行に対してわずかに修正されるでしょう。商業の世界一周ジェット飛行は、もちろん赤道の経路に従うわけではありませんし、高度、地上速度、または緯度を一定に保ちません。ただし、この場合、実際の飛行経路に沿って式2の適切な微分形式を積分する必要があります。

τ - τ0 =積分[gh/c^2 - (2RΩvcosΘcosλ + v^2)/2c^2] dr ・・・(4)

この式にはわずかに変更された方向依存性の項が含まれており、非赤道飛行の場合、地上速度の東向き成分、v * cosΘ、および緯度のcos λに比例する(4、9)。実験では最低次の相対論的な時間差しか検出できないため、計算された予測には最低次の項のみが含まれる必要があり、この近似の次数では、式4においてτまたはτ0の微分時間を使用するかどうかは無関係です。

東回りの飛行は1971年10月4日に19時30分 U.T.で開始し、65.4時間続き、そのうち41.2時間が飛行時間でした。

西回りの飛行は翌週の10月13日に19時40分 U.T.で開始し、続いて80.3時間かかり、そのうち飛行時間は48.6時間でした。

式4の数値評価に必要な飛行データは、さまざまな飛行機長によって提供されました。ほとんどの場合、彼らは適切な飛行マップに飛行経路を描き、飛行経路に沿ったさまざまなナビゲーションチェックポイントでの時刻と航空機の地上速度と高度を記録しました。この情報により、東回りの飛行は125の区間に、西回りの飛行は108の区間に分割されます。各チェックポイントの緯度と経度は、飛行マップから直接読み取り、各チェックポイントでの時刻(U.T.)と組み合わせることにより、各区間の平均地上速度、緯度、および東方向の方位を計算できます。各区間の平均高度は、エンドポイントの高度の平均値としました。この情報を使用して、式4の積分の数値評価が可能になります。表Iは、これらの計算から得られた予測された時間差を示しています。

この報告書を、これらの予測における不確実性についての言葉で結びます。可能な誤差は2つの要因から生じます:(i)飛行データの誤差および不備、(ii)式4の導出に使用される理論的な近似。数値積分後の式4の各項に対する飛行データの誤差からの最大の可能な分数的不確実性は、それぞれ10%未満と見積もります。この見積りには、飛行データの系統的およびランダムな誤差の両方が含まれます。これらの項からの誤差が平方和で加算されると仮定した場合、東回り周回の総値の最大の分数的不確実性は約60%であり、西回り周回の場合はわずか8%です。これらの不確実性は表1にリストされています。

高次の項(c-4、c-6、および...)を無視するにもかかわらず、高次の項(c-4、c-6など)を理論的な近似から無視することは、完全に正当化されていますが、小さながらも完全に無視できない一次の効果が、月と太陽の存在から生じる可能性があります。実際、地球-月系の重心が太陽の周りを自由落下しており、中心が地球ではないため、より正確な計算にはこの効果を含めるべきです。ただし、我々の実験の精度では、式4で保持された支配的な効果以外の効果を検出することは不可能である可能性が高いです(10, 11)。

J. C. HAFELE*
物理学部、ワシントン大学、セントルイス、ミズーリ州63130
RICHARD E. KEATING
アメリカ海軍天文台、ワシントンD.C. 20390 』

翻訳担当 主にチャットGPT3.5+修正は当方

なお表およびグラフは原論文を参照されたい。

加えて数式については原論文にて再確認をお願いします。

 

注1:英語版ういき「ハーフェレ・キーティングの実験: https://archive.md/cEK7X :の冒頭文からの引用

実験結果はこのういきのまとめで確認できますが、実際の数字については次ページに譲ります。

それを見ますと「東回りは時間が遅れ、西回りは時間が進んでいる」のです。

そうして計算の為の基準時計はどうやら北極点に置かれた仮想の時計ベースの様です。

この仮想基準時計は「地球の自転による時間の遅れの影響は受けないが、地球の重力場による時間の遅れは受ける」というしろものです。

その時計をつかって「米国海軍天文台に残っている時計」の時間を計算し、同様にして「東回りと西回りの時計の時間を相対論を使って計算した」のです。

そうして「世界一周した時計と米国海軍天文台に残っている時計との経過時間」について計算上での差分を出した。

同様にして「実際に観測されたデータから地球周回時計と地上に固定された時計の間の差分」を出した。

その両者を比較したら「良い一致が見られた」というものです。

ということは「相対論は現実に起きた現象を説明できている」という事になります。

 

さてそれでここで注意すべきは「回転運動に対しての時間の遅れの計算では客観的に存在する静止系がある」という事を「暗黙の前提としている」と言う所にあります。

それはつまり「地球が静止系(=宇宙)に対して回転している」のであって「地球が静止していて(=地球が静止系で)宇宙が地球中心で回転しているのではない」という事を認めている事になるのです。

さらにコトバを変えますと「回転運動は相対運動ではなく絶対運動である」となります。

ちなみに「回転運動が絶対運動である」と最初に指摘したのはニュートンであります。(「ニュートンのバケツ」: https://archive.md/ejDCq :を参照願います。)

そうしてそのニュートンの主張に対抗したのは「相対運動論の巨匠のマッハ」でした。

そうしてまたそのマッハの影響をうけて相対論を作り上げたのがアインシュタインとなります。(そういう流れが歴史上の事実です。)

 

さてそれで「回転運動だけに有効な静止系」というのはありえません。

静止系が存在するのであればそれは「静止慣性系」として存在するのです。

従って回転運動であれ等速直線運動であれ、あるいはどのような運動であれ「その静止系に対して運動する時計は特殊相対論が予想する通りに時間が遅れる事」になるのです。

しかしながら皆さんこの「世界一周した時計の時間遅れの話」のポイントが「客観的に存在する静止系がある」という所にある事をなかなか理解されないのであります。

注2: https://web-archive-org.translate.goog/web/20170331121014/http://www.personal.psu.edu/rq9/HOW/Atomic_Clocks_Predictions.pdf?_x_tr_sl=en&_x_tr_tl=ja&_x_tr_hl=ja&_x_tr_pto=sc :

サイエンスに掲載された元記事はこれ。

記事は2つあり、上記に訳出したのは最初のもの。

注3:「sqrt(1-x^2)」のx=0でのテーラー展開の2次の項までの近似式

https://ja.wolframalpha.com/input?i=sqrt%281-x%5E2%29

「x=0における級数展開」を参照のこと。

 

追記:ニュートンが「回転運動が絶対運動である」と言ったのは「回転運動に応じて発生する慣性力=遠心力の存在」をその理由としました。

しかしながらここで「回転運動が絶対運動である」と主張するのは「回転運動に伴って発生する時間の遅れ」をその根拠としています。

ちなみに「回転運動に応じて発生する慣性力=遠心力=横G」は時間の遅れに対しては影響を与えない事はすでに前ページに於いて示しました。→ういき: https://archive.md/UTWGG :の「時計仮説 - 加速の影響の欠如」の説明によれば

『Bailey et al. (1977) 粒子は最大約 10^18 Gの横加速度を受けました。結果は同じであったので、横加速度は時間の遅れに影響を与えないことが示された。』

さてそうなりますと「時間の遅れ」については「等速直線運動と円運動は同じに扱える」という事になります。

そうして「その様に扱ってもよい」と実験結果は示しているのです。

ちなみに「回転運動に伴って発生する時間の遅れ」をその根拠として「回転運動が絶対運動である」という主張に対してはさすがのマッハも抗弁する事はできないと思われます。

追記の2:「ハーフェレ・キーティングの実験」の上記の理論計算の部分は後日に行われる事になった「人工衛星の時間の遅れ計算の基礎になった」と見る事が出来ます。

人工衛星の時間の遅れ計算の例は以下のページを参照願います。

  ・人工衛星の時間の遅れと横ドップラー効果

  ・その2・ 人工衛星の時間の遅れと横ドップラー効果

ちなみに上記の人工衛星の計算例では「地上に固定された時計は南極にある」としています。

つまりは「地球の重力場の影響は受けるが、地球の自転による時間遅れの影響は受けない時計」が基準となっています。

その点「ハーフェレ・キーティングの実験」では「アメリカ海軍観測所の基準原子時計=地球の自転の影響を受ける時計」を基準にしていますのでその分話が複雑になっています。

 

PS:相対論・ダークマターの事など 記事一覧

https://archive.md/U0pNx