特殊相対論、ホーキング放射、ダークマター、ブラックホールなど

・時間について特殊相対論からの考察
・プランクスケールの原始ブラックホールがダークマターの正体であるという主張
 

9-11・ミュオン異常磁気モーメント測定

2024-03-28 04:41:51 | 日記

前のページからまずは引用します。

「ミューオンg − 2/EDM実験」: https://www.jahep.org/hepnews/2012/12-3-5-g-2-Mibe.pdf :より以下、引用です。

静電磁場中でのミューオンとスピンの運動について考える。一様磁場中では,ミューオンは円運動(サイクロトロン運動)する。ミューオンのスピンはミューオンの運動量に追随するように同様に磁場中で回転する。

g 因子が正確に 2 であれば,磁場に対するスピンの回転周波数はサイクロトロン運動の周波数と完全に一致する。しかし実際には g は 2 より大きいため,スピンは運動量に対してわずかに早く回転する。
この運動量に対するスピンの回転は,g 因子の 2 からの「ズレ」によって生じていて,異常歳差運動と呼ぶ。異常歳差運動の角速度 ωa は aµ,磁場 (B" ),電場 (E" ) および速度ベクトル β",ローレンツ γ 因子を用いて,以下のように表すことができる。

ωa = − e/mµ[aµ*B" −(aµ − 1/(γ^2 − 1))*( β" × E")/c] ・・・(1)式 

ここでmµはミュー粒子の質量、eは素電荷

第 1 項は磁場による回転(注:サイクロトロン運動),第 2 項は相対論的に運動しているミューオンが実験室系の電場を見たときに感じる有効磁場による回転である。
前述のように, aµ ∼ α/(2π) ∼ 0.00116 であるので(注:最低次近似),γ が γ = 29.4 である時は第 2 項が無視できるようになり,以下の単純な式になる。

ωa = − e/mµ[aµ*B"] ・・・(2)式 

つまり,"ωa と B" を精度よく測定すれば,aµ を決めることができる。このときのミューオンの運動量(p=3.094 GeV/c) はマジック運動量と呼ばれている。

BNL の実験ではマジック運動量のミューオンビームを用いて g − 2 の測定を行った。

このときミューオンビームは,パイオンの崩壊で生成されるものを直接用いたので,非常にエミッタンスが大きいビームであった。一方,測定のためにはミューオンを蓄積しておく必要があり,このために収束電場が用いられた。BNL の実験がマジック運動量で測定した理由は,この収束電場により,測定が(1)式  第 2 項の影響を受けないようにするためであった。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

BNLの実験のときにこのγがいくつに設定されていたかを確認します。

BNLでのより詳細な実験報告(ドクター論文)として

「μ粒子の寿命測定」: https://www.sas.upenn.edu/~tqian/thesis.pdf :2006年8月

最初のページに『γ=29.314 β=0.9994C』の記述があります。

但しγ=29.314を信用すると

1/29.314=sqrt(1-x^2)

ウルフラムを呼んで

https://ja.wolframalpha.com/input?i=1%2F29.314%3Dsqrt%281-x%5E2%29

答えは

β=0.999418C

ちなみに前のページで出したγは29.3034でした。

 

といわけで「実験の際にγをいくつにするのか?」あるいは「実際にγはいくつになっていたのか?」ということは重要な問題です。

で、同上BNLレポートによれば

P103にランごとの粒子が一周するのにかかった時間一覧

P110にはそれをサイクロトロン周波数に直した一覧

そうしてP128の6.7表にはいろいろと修正したあとのγ換算一覧がのっています。

そのγを見てみますと以下の様に「ランごとに結構なばらつきがある」のです。

29.30889~29.31547

 

で一応その平均をとって冒頭のγ=29.314が出てきている様です。

ちなみにこのγの有効桁数は7ケタです。

でその様なデータを使って出したaμの有効桁数は

aμ(exp:実験)=116 592 089(63)×10^−11

と9ケタに到達しているのも不思議な事です。(もっとも9ケタ到達は精度向上させたフェルミ研のものですから妥当であるとは思いますが、、、。)

 

さてそれで「何が言いたいのか?」といいますれば「γのバラツキはどうしても生じる」のです。

という事は「マジック運動量に設定した」と一応は言うのですがそこからのずれはどうしても生じている。

そうして「そのずれ」は静電四重極でかかっている電場の影響が「うねうねの周波数=ωaに出る」という事を示しています。(注1

しかしながらそのずれ分は考量されていないのです。

 

さてそれで、上記では「実験のランごとにγの値がばらつく」という話をしました。

で次は (aµ − 1/(γ^2 − 1)) の項をゼロにする為に「マジック運動量を使う」=所定の粒子の速度にしたミュー粒子をつかう、というのですが、そのマジック運動量を決める時のaµの値は「真のaµの値になってはいない」という事が指摘できます。

何となれば「真のaµの値」というのは「これから実験をして確かめるもの」であって「実験が終わって初めて明らかになる値」でありますから「その値を実験をする前に決める」という事は「原理的にできない」のです。

そうであれば「仮にaµの値を決めた」で、その値に対応するγを計算して粒子の速度を決めたのです。

そうであれば「ここで行っている実験は一次近似にすぎない」という事になります。

 

最初に行った実験は「仮に設定したaµの値で実行した」のでした。

そうやって得られたaµ(実験1)の値を使って実験2のγの値を再設定する必要があります。

そうやって2回目の実験を行う。

そうするとaµ(実験2)が得られる。

そうやって繰り返し実験をおこなってaµ(実験 N):n回めの実験でaµの値が落ち着いたのであれば「それをもって実験で得られたaµの値である」とするべきでしょう。

そうであればこの実験のやり方では「初回の実験のみで『正しいaµの値が得られた』と主張する事はできない」と思われます。(注2

さてそのような事もありますのでフェルミ研では「ちょっと速度を上げた実験」と「ちょっと速度を落とした実験」を行う計画がある様です。

 

注1:γのバラツキによって無視できない影響がωaに出る事。

ωa = − e/mµ[aµ*B" −(aµ − 1/(γ^2 − 1))*( β" × E")/c] ・・・(1)式

(aµ − 1/(γ^2 − 1))の部分をゼロにしたいのですが、実際にはそれはゼロになっていません。

そうなりますと静電四重極の電場E"の影響:( β" × E")/c をミュー粒子は受ける事になるのです。

注2:仮設定のaµの値をつかってγをだしてそれをもって「静電四重極の電場E"の影響:( β" × E")/c をミュー粒子は受ける事はない」という主張は1次近似です。

で、そのような「近似をつかわない」とした場合は次のような式をつかって実験結果からaµの値を求める、という事になります。

(1)式より

ω=-e/(mμ)[ aμ*B-(aμ-(1/(γ^2-1)))*(β X E)/C ]

これをaμについて解きます。

ω*((mμ)/-e)=[ aμ*B-(aμ-(1/(γ^2-1)))*(β X E)/C ]

から(1/(γ^2-1))*(β X E)/Cのみを移項して

ω*((mμ)/-e)-(1/(γ^2-1))*(β X E)/C=aμ*B-(aμ*(β X E)/C)

aμでくくって

ω*((mμ)/-e)-(1/(γ^2-1))*(β X E)/C=aμ*(B-(β X E)/C))

両辺を(B-(β X E)/C))で割ると

[ω*((mμ)/-e)-(1/(γ^2-1))*(β X E)/C]/(B-(β X E)/C))=aμ  ・・・(3)式

(3)式を使えば電場、磁場、粒子の電場に対する通過位置、その時の粒子速度、ωを測定する事で「aμの値を仮定すること」なく実験によってaμの値を決定できます。

ただし(β X E)の項を精度よく計算する事、あるいは実験で決める事は至難の業」となるのでしょう。

なんとなれば電場は一様電場ではなく、したがって粒子が電場のどの位置をどれほどの速度で通過したのかがわからないと(β X E)の項は計算できないのです。

おまけにミュー粒子のビームは真空パイプの中を縦横に振動しながらほぼ半径7mで周回しています。

そうであれば「つねに同じ場所をビームは通過しているのではない、パイプの断面に対してビームの通過位置はダイナミックに動いている」のです。

したがって「次善の策」として「仮にaμの値を設定」する事で「(β X E)の項を精度よく計算するor測定する事=ほとんど不可能な事」をさけたのでした。

そうしてこれがセルンのベルさんが始めた方法の弱点でもありました。

 

追記:以上の内容は「客観的に存在する静止系の話」とは直接的な関係はありませんが「ストレージリングをつかったベル方式の実験での注意点の指摘」となっています。

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PS:相対論・ダークマターの事など 記事一覧

https://archive.md/3MZ5e

 


9-10・ミュオン異常磁気モーメント測定

2024-03-24 00:41:11 | 日記

さてようやく舞台の説明が終わったようです。

で問題のωaの測定の話に入れるというものです。

「ミューオンg − 2/EDM実験」: https://www.jahep.org/hepnews/2012/12-3-5-g-2-Mibe.pdf :より以下、引用です。

静電磁場中でのミューオンとスピンの運動について考える。一様磁場中では,ミューオンは円運動(サイクロトロン運動)する。ミューオンのスピンはミューオンの運動量に追随するように同様に磁場中で回転する。

g 因子が正確に 2 であれば,磁場に対するスピンの回転周波数はサイクロトロン運動の周波数と完全に一致する。しかし実際には g は 2 より大きいため,スピンは運動量に対してわずかに早く回転する。
この運動量に対するスピンの回転は,g 因子の 2 からの「ズレ」によって生じていて,異常歳差運動と呼ぶ。異常歳差運動の角速度 ωa は aµ,磁場 (B" ),電場 (E" ) および速度ベクトル β",ローレンツ γ 因子を用いて,以下のように表すことができる。

ωa = − e/mµ[aµ*B" −(aµ − 1/(γ^2 − 1))*( β" × E")/c] ・・・(1)式 (注1

ここでmµはミュー粒子の質量、eは素電荷

第 1 項は磁場による回転(注:サイクロトロン運動),第 2 項は相対論的に運動しているミューオンが実験室系の電場を見たときに感じる有効磁場による回転である。
前述のように, aµ ∼ α/(2π) ∼ 0.00116 であるので(注:最低次近似),γ が γ = 29.4 である時は第 2 項が無視できるようになり,以下の単純な式になる。

ωa = − e/mµ[aµ*B"] ・・・(2)式 (注2

つまり,"ωa と B" を精度よく測定すれば,aµ を決めることができる。このときのミューオンの運動量(p=3.094 GeV/c) はマジック運動量と呼ばれている。

BNL の実験ではマジック運動量のミューオンビームを用いて g − 2 の測定を行った。

このときミューオンビームは,パイオンの崩壊で生成されるものを直接用いたので,非常にエミッタンスが大きいビームであった。一方,測定のためにはミューオンを蓄積しておく必要があり,このために収束電場が用いられた。BNL の実験がマジック運動量で測定した理由は,この収束電場により,測定が(1)式  第 2 項の影響を受けないようにするためであった。

 

さてそれで

前述のように, aµ ∼ α/(2π) ∼ 0.00116 であるので(注:最低次近似の場合),γ が γ = 29.4 である時は第 2 項が無視できるようになり,以下の単純な式になる。の部分、確認しておきましょう。

前出資料「9-6」によれば

aμ(SM:標準模型)=116 591 810(43)×10^−11.

aμ(exp:実験)=116 592 089(63)×10^−11,

つまり

aµ≒0.00116592・・・

までは「四捨五入」で同じといえます。

そうして(1)式より

(aµ − 1/(γ^2 − 1))の部分をγを調整する事で「ゼロにする」というのが「マジック運動量=マジックγの役目」です。

さてそうであれば

0.00116592=1/(γ^2 − 1)

を解けばよい、で

0.00116592=1/(x^2 − 1) としてウルフラムを呼びます。

https://ja.wolframalpha.com/input?i=0.00116592%EF%BC%9D1%2F%28x%5E2+%E2%88%92+1%29

答えは

29.3034

上記レポート中の29.4とは少し違っていて29.3の方が近い様です。

で29.4にしろ29.3にしろいずれにせよ「ミュー粒子がストレージリング内を一定の速度βで回っていてその時のγが29.3になる様にしている」とレポートは主張しているのです。(注3

そうであれば(1)式の第2項はゼロにできている。

つまりは「静電四重極を使ってミュー粒子が上下方向にばらけないようにしている」「そのために電場Eを加えている」のだが「マジック運動量を使う事でその電場がミュー粒子のスピン歳差運動に影響を与えるのを防いでいる」と主張しているのです。

もちろん「静電四重極がない場所」=「円周のほぼ50%程度」においては「電場はかかっていない」のですから(1)式は自動的に(2)式になるのです。

なんとなれば( β" × E")/cの項がE"=0によってゼロになるので

(aµ − 1/(γ^2 − 1))*( β" × E")/c)=(aµ − 1/(γ^2 − 1))*( β" × 0)/c)

=0

従って(1)式は自動的に(2)式になるのです。

しかしながら「静電四重極がある場所」=「円周のほぼ50%程度」においては「電場はかかっている」のですから(1)式の第2項はそのままではE"≠0で生きている。

従って(aµ − 1/(γ^2 − 1))の部分でゼロにする必要があったのです。

そのようにできればストレージリング全周に於いて(1)式は(2)式になるのです。(・・・とレポートは、あるいはセルンのベルさんは主張しているのです。)

 

さてそれでγ=29.3034の時のβ:粒子の速度はどのくらいでしょうか?

sqrt(1-x^2)=1/29.3034

ウルフラムを呼んで

https://ja.wolframalpha.com/input?i=sqrt%281-x%5E2%29%3D1%2F29.3034

答えは(数直線上のドットにカーソルをあてて読み取ると)

0.999418

まあほぼ光速ですね。

 

さてそのようにして測定したωaの値ですがフェルミ研のレポートによれば次のようになっています。

「Measurement of the anomalous precession frequency of the muon in the Fermilab Muon g − 2 Experiment」: https://journals.aps.org/prd/pdf/10.1103/PhysRevD.103.072002 :

27P:TABLE VIII. Frequencies and periods which characterize the g − 2 storage ring が最後のまとめの様になっていますが桁数が3ケタです。

でそのまえの26P:TABLE VII. The combination result for each dataset when using a staged approach. が有効数字6桁はありそうな感じです。

そこに4つのωaの数値が載っていますがとりあえず平均を出します。

229 081.122

27P:TABLE VIII.をみますとωaの周波数は0.229MHz

従って平均値は

0.229 081 122MHz という事になります。

そうしてTABLE VIII.によればその数値は

e/(2πm)*aμ*B

従って

aμ=0.229 081 122MHz/(e*B)*(2πm)

でMKS単位系で

e= 1.602176634×10^-19 [クーロン]

m=ミュー粒子の質量=1.883531594×10^−28 [Kg]

B=1.45T

従って

aμ=0.229 081 122×10^6/(e*B)*(2πm)

=0.001166980

前出の実験値が

aμ(exp:実験)=116 592 089(63)×10^−11

でしたので「上記の大筋の計算は間違ってはいない」という事になります。(注3

 

以上の様にして一応セルン~BNL~フェルミ研で行われてきた実験の状況が理解できました。

そうしてこうやって実験で求めたaμ(exp:実験)の値とaμ(SM:標準模型)の値の間のギャップが5σに到達するほどある、と言うのが現在の状況となります。

 

注1:この式は前述のセルンのベルさんが「ミュー粒子の実験をどのようにセルンで行うのか」を考えた時につかった式=Thomas-BMT 方程式から必要な項目だけを抜き出したものになっています。

Thomas-BMT 方程式については「Foundation of Electron Accelerator」: https://accel.hiroshima-u.ac.jp/files/2022/Lecture/2019TextBook.pdf :のP42に説明が載っています。(ちなみに日本語の文献です。)

それからThomas-BMT 方程式を英語表示すると

Thomas-Bargmann-Michel-Telegdi Equation

となります。

ちなみにこのThomas-BMT 方程式の正しい使い方の例としてはたとえば

「スピン偏極電子」: https://archive.md/XNGve :というものがあります。ご参考までに。

注2:従ってaµは

aµ=ωa*(-mµ/(e*B"))

でサイクロトロン周波数ωcは

ωc=-(e*B")/mµ

だから

aµ=ωa/ωc

はい、一見定義の通りになりました。この件修正は後程。

注3:測定されたωaの数値をどのように決めたか、という事になります。

つまりは「実際は単なる平均を使ったのではない」という事になります。

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PS:相対論・ダークマターの事など 記事一覧

https://archive.md/d0CAy

 


9-9・ミュオン異常磁気モーメント測定

2024-03-20 01:23:05 | 日記

さて装置の概要を見ておきましょう。

資料1: https://slidesplayer.net/slide/11232933/#google_vignette :のP19に「建設中のBNLのストレージリングの写真」があります。

そうしてそれが出来上がった状態=運転状態では:資料2: https://www.sas.upenn.edu/~tqian/thesis.pdf :P48のように「リングを作っている超伝導マグネットが断熱材でカバーされている」のが分かります。

それでこのストレージリングにミュー粒子を打ち込む装置の全体図は:資料2:P44の様になっています。

BNLでは前のページで示した様にAGS (the Alternating Gradient Synchrotron)から取出された陽子ビームを 原子核標的に打ち込んでパイオン(注1)を生成し,そのパイオン崩壊で生成したミュオンをビームとして用いたのです。

 

それでストレージリングですが上から見るとこんな感じです。:資料2:P47.

半径7mのリング状になった真空チューブのそれぞれの場所に各種装置が取り付けられています。

No1~24まで番号が振られたのが「ミュー粒子が陽電子とニュートリノに崩壊する、その時に出た陽電子を検出する装置」です。

そうしてここで注目すべきは円周上の4か所に水色でしめされたQuadrupole(=四重極)の存在です。

この静電四重極はビームが縦方向に広がるのを防ぐように動作します。(注2

その静電四重極部分の断面図はP52にあります。

Top plateとかかれた上部電極と同じ形状の下部電極は厚さが3ミリのアルミ製です。

でSide Plateとかかれた横電極は厚さが0.5ミリのアルミ製。(注3

Side Plateが薄い、その理由は「ミュー粒子崩壊で生じた陽電子がアルミ製の電極を通過してリングの内周に置かれた検出器にエネルギーロスがなく到達できる様にする為」との事。

一つの四重極がもつ円周角度は39度でそれが4つあるのでリング全体の内の43%がこの四重極部分に占められている事になります。

ちなみにその断面図ではリングの中心は左側になります。

そうしてその断面図の四重極で囲まれた部分に書かれた円、その円の中をミュー粒子の一団が走る様です。

つまりは「結構太いビームで測定している」のです。(注4

 

で「どれくらい太いのか?」といいますれば:資料3: https://journals-aps-org.translate.goog/prd/abstract/10.1103/PhysRevD.73.072003?_x_tr_sl=en&_x_tr_tl=ja&_x_tr_hl=ja&_x_tr_pto=nui,sc :の右側2番目のイラストをクリックしてください。

半径が44ミリの円の中をミュー粒子が走っている事が分かります。

ちなみにその時のミュー粒子の円運動半径は7.112mである事も分かります。

 

そうしてまた左下にあるイラストをクリックすれば「四重極以外の場所でのリングの断面形状が分かる」のでした。

 

注1:パイオン(=パイ中間子): https://archive.md/mEnEn :

荷電π中間子の質量は約139 MeV/c2、寿命が2.6 × 10−8 秒。 主な崩壊モードでは反ミュー粒子とミューニュートリノに崩壊する。

π+ーー>μ+ + ミューニュートリノ

でこのμ+をビームラインでストレージリングまで持って行ってInflectorを使ってリングに入れたのです。

注2:横方向への広がりは垂直にかかっている磁場によって制限されています。

しかしながら縦方向への広がりの制限がそのままではない事になります。

で、そのままですとミュー粒子のビームは縦方向に拡散して真空容器の壁に衝突して消えてしまう=ビームロスの発生、ということになってしまい、ωaの測定ができないのです。

したがって「縦方向への運動を抑える事が必要になる」、その装置が「静電四重極」という事になります。

注3:ミュー粒子はプラスにチャージしていますからトップーボトムプレートにはプラスの電圧、そうして両サイドプレートにはマイナスの電圧をかける事になります。

注4:示された円の内側いっぱいにミュー粒子が広がって走っている、と言うよりは「その円の中に納まるようないろいろな軌道を持ったミュー粒子の一団が走っている」というイメージでしょうか。

たぶんビームは上下にも左右にも振動しながら、つまりは「きれいな円周上をビームが走る」のではなくて「いろいろな動きをしながら、それでもその円の中に納まる様に運動している」と見るべきでしょう。

ちなみに垂直方向にかかっている磁場の強さBは1.45Tとの事。

 

追記:ビームをぐるぐると円運動させる、まあコトバで言うとそれだけなのですがこれがけっこう難しい、という話の参考までに。

「加速器のビーム調整」: http://accwww2.kek.jp/oho/oho20/F/lecture/OHO_beam_tuning_1.pdf :

「ベータトロン振動」: https://www.rri.kyoto-u.ac.jp/beam_physics_lab/thesises/2009_takashima.pdf :

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PS:相対論・ダークマターの事など 記事一覧

https://archive.md/r6me3

 


9-8・ミュオン異常磁気モーメント測定

2024-03-16 01:39:28 | 日記

さて前のページで示した様に「レプトンの異常磁気モーメントを測定する」為には

1、一様な磁場Bの中に荷電粒子を打ち込むこと。

2、その荷電粒子がサイクロトロン運動をする周波数ωcを決める事=外部磁場Bの値を測定する事。

3、荷電粒子が持つスピンが磁場Bに応じて歳差運動する周波数ωsを測定する事。

以上の事が出来れば

ωa=ωs-ωc

a(異常磁気モーメント)=ωa/ωc

でa(異常磁気モーメント)を実験的に決める事が出来ます。

 

それで電子についてはほぼこのストーリーでaeを決める事が出来ている様です。

しかしながらミュー粒子については

1、ミュー粒子が寿命をもつ事

2、ミュー粒子のωs:スピン振動数はこのミュー粒子の崩壊現象を使って測定している事

3、従って測定には多くのミュー粒子を集団として準備して磁場Bの中に打ち込むことが必要となる事。

と言う様に「電子の異常磁気モーメント測定」よりも複雑で大掛かりな準備が必要になっています。

でセルンにいたベルさんが「セルンの装置でミュー粒子の異常磁気モーメントを測定する事が出来るのでは」と思いついて始めたのが「ミュー粒子についての異常磁気モーメント測定の始まり」となりました。(1961~1976)

その様にして始まったセルンでのやり方がその後に続いたBNL~フェルミ研で行われてきた実験に精度向上を伴いながら引き継がれていったのでした。

 

でその「セルンメソッド」なんですが

1、「準備したミュー粒子の集団の特性があまり良くない」のです。

理想的には「同じ速度と同じ方向性をもった、つまりはレーザービームの様なコヒーレントの高いミュー粒子集団が欲しい」のですがなかなかそうはできなかった。

それでいろいろと工夫が必要になっているのです。

そのあたりの事は「ミュオン異常磁気能率g–2の超精密測定」: https://www.jstage.jst.go.jp/article/jccj/19/3/19_2020-0025/_pdf :の「4 :g − 2の精密測定」で次のように述べられています。

『BNL実験では,AGS (the Alternating Gradient Synchrotron)から取出された陽子ビームを 原子核標的に打ち込んでパイオンを生成し,そのパイオン崩壊で生成したミュオンをビームとして用いたため,非常にエミッタンス(注1)が大きいビームであった.

そこで,このミュオンを収束させて蓄積しておくために収束電場が必要となった.この収束電場による式(2)第2項の影響を測定が受けないようにするために,魔法運動量で測定を行なったのである.

蓄積リングとして一体型の超伝導コイルを用いることで安定かつ一様な磁場を実現し,直径14 m蓄積領域の平均磁場を0.17 ppmの精度で測定した.現在,BNLからFermilabへ蓄積磁石を移設し,さらにデータを取得する実験 [16] が始まっている.2020年の時点でBNL先行実験を超えるデータの取得を終えており,近々最初の結果が公開される予定である.』

でこの「出来の悪いミュー粒子ビームを基本的な所から改善して実験しよう」というのが「J-PARCで準備中の追試の内容となる」のです。

そうするとBNL~フェルミ研で必要だった収束四重極電場が無用になり、したがって「魔法運動量で測定を行う必要もなくなる」という事になります。(注2

 

さてその「魔法運動量の話」に行く前に「できの悪いミュー粒子ビームをBNLではどうやって使いこなしたか」という話をしましょう。

まずは魔法運動量ですがこれはγ=29.3の粒子速度を言っています。

ここでもちろんγ=1/sqrt(1-v^2) です。

で速度がバラバラなミュー粒子ビームをストレージリングの所定の軌道に送り込むための偏向マグネット(=超伝導コイル使用)を特注した。

そうしてまたストレージリング内に打ち込まれたミュー粒子のひとかたまり、これはほぼγ=29.3近傍になってはいるのですが厳密にγ=29.3にはそろってはいない。

でどうしたか?

何、単に測定データとして採用する前にそのビームの一団を200回ほどストレージリング内を回転させたのです。

でそうすると「速度が速い粒子」はγ=29.3の粒子が回っている軌道より外側にはじき出される。

「速度が遅い粒子」は逆に所定の軌道より内側に入り込むのです。

そうやって「外側に」あるいは「内側に動いたミュー粒子」は「ストレージリングで真空を保っている円環状のチューブ:その中でミュー粒子が円周運動をしているのですが:そのチューブの内壁に衝突して消え去る」のでした。

つまりは「ストレージリングそのものがγ=29.3の粒子のみが安定して周回できるような設計になっている」のです。(注3

でそうやって「いらない粒子を追い出した後」で「測定されたデータを使ってωaを決定した」のでした。(注4

 

さてBNLの実験に先行していたのはセルンの実験です。

そうしてそのセルンの実験にいろいろな改良を施して始まったのがBNLの実験でした。

そのあたりの具体的な内容は「ミュオン磁気能率測定は標準理論の破れを検出したか?」: https://www.jstage.jst.go.jp/article/butsuri1946/56/11/56_11_848/_pdf/-char/ja :にて詳細に述べられています。よい資料ですのでぜひともご一読を。

なおほぼ同じ内容ですが写真が鮮明なのは: http://meson.riken.jp/g-2/g-2_mac/old/g-2-JPS/%E5%AD%A6%E4%BC%9A%E8%AA%8Cver3.pdf :の方になります。

そうしてまたこの資料によれば「より積極的にγ=29.3の粒子のみを選び出す為にビームのスクラッピング(scraping=そぎ落とし)を行っている」という事が説明されています。

 

ちなみに上記説明で登場するBNLの実験設備のイラストや説明については「BNLでのE821ミュオン異常磁気モーメント測定の最終報告書」: https://journals-aps-org.translate.goog/prd/abstract/10.1103/PhysRevD.73.072003?_x_tr_sl=en&_x_tr_tl=ja&_x_tr_hl=ja&_x_tr_pto=nui,sc :2006 年 4 月 7 日発行:に掲載されているイラストやグラフが参考になります。イラストをクリックすると拡大表示され、説明文も現れます。

あるいは「μ粒子の寿命測定」: https://www.sas.upenn.edu/~tqian/thesis.pdf :2006年8月:にも参考になるイラストや説明があります。

これらの説明はBNLの実験を引き継いだフェルミ研の実験でも同じように成立していますので、その意味においても重要なものであります。

 

注1:「エミッタンス測定」: http://accwww2.kek.jp/oho/OHOtxt/OHO-2020/07_Fukuda_Masafumi.pdf :最初のページにでてくるイラストが全てを現しています。あとのページは「その状況をどうやって指数化するのか」という話です。

注2:この部分がJ-PARCでの実験がBNL~フェルミ研での実験と大きく異なっているので「J-PARCでの実験がBNL~フェルミ研での実験とは独立した検証実験になる」という話になっています。

そうしてまたこの部分が「静止系が客観的に存在する場合」には「魔法運動量での測定だ」と実験者が思っていたものが「実はその魔法が十分には効いていなかった」という話につながるのでした。

で詳細はページを改める事になります。

注3:光速にちかい速度で一様磁場内を円運動する荷電粒子の円運動の半径は次のようにして決まります。: http://fnorio.com/0162relativistic_dynamics/relativistic_dynamics.html#4-3 :

最後に導出された式を見れば分かります様に「円運動の軌道半径は粒子の持つ相対論的な運動量に比例する」のです。

したがって「ストレージリングにかかっている一様磁場のおおきさBとストレージリングの半径rがγ=29.3に一致する様にセットする」とそのストレージリング内を安定して周回運動できる粒子はほぼγ=29.3だけになるのです。

(フェルミ研のレポートによれば『この実験は、p0(=マジック運動量) の周囲で0.15%の狭い運動量分散を持つミュオンビームを受け入れて保存するように設計されています。』となっています。)

注4:フェルミ研での生データを見ますとそのあたりの状況がよく分かります。

『「フェルミ研究所ミュオンにおけるミュー粒子の異常歳差運動周波数の測定 g−2実験」: https://journals.aps.org/prd/abstract/10.1103/PhysRevD.103.072002 :2021 年 4 月 7 日発行

概要説明の下に7つの図が示されています。

左側の一番下にある図が「生データグラフ」になっています。

その部分をクリックすると拡大表示が現れます。』

そのデータを見ますと「最初の部分はずいぶんとノイズが大きい」という事がわかります。

でその部分が「γ=29.3の粒子のみを選択している部分」という事になります。

そうやって「うねうねパターンが落ち着いた所」でそのパターンにカーブフィットさせてωaを決定するのです。: https://indico.ipmu.jp/event/164/contributions/2417/attachments/2070/2499/dnomura-slides.pdf :のP51の左側のイラスト参照の事。

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PS:相対論・ダークマターの事など 記事一覧

https://archive.md/z1RFZ

 


9-7・ミュオン異常磁気モーメント測定

2024-03-12 03:02:52 | 日記

「ミュオン異常磁気モーメント」の歴史について少々

「g-2実験  量子電磁力学の精密テスト と 標準理論のかなた」: https://slidesplayer.net/slide/15404475/#google_vignette :

P1:歴史
1928年 Dirac は相対論的波動方程式を解き、電子のg-因子が丁度2になることを証明。

1947年 Schwinger はquantum electro dynamics (QED)を使ってg-因子が2からずれることを証明した。

1948年 Kuschは(注:電子について)g=2からのずれが、0.1%であることを発見した。(注1

それ以来, 多くの(g-2)実験が電子だけでなく陽電子、ミュー粒子、等で行われ、QEDや標準模型(Standard Model)の有効性の試金石とされてきました。』

P2:QEDの考え方、計算の仕方

P3:同上のイラスト

P10~12:電子の歴史

1976年  Dehmelt (Washington) ペニングトラップを用いてより正確な測定を行った。4Kに冷やしたペニングトラップに1個の電子を閉じ込めることに成功した。(注2

以下2001年現在でのミュー粒子の例と説明が続きます。

 

ミュー粒子の実験の歴史としては

「muon g-2 の理論」: https://indico.ipmu.jp/event/164/contributions/2417/attachments/2070/2499/dnomura-slides.pdf :

P19に先行実験の歴史がのっています。(1960年以降分)

それによればセルンでの実験(1961~1976)が円形加速器での実験の始まりであって、それを引き継いだのがBNLの実験(1997~2001)となります。

そうしてBNLで使った装置をフェルミ研まで運んで装置をブラシアップしての実験が始まりました。(2018年~2022年)

そのフェルミ研の最終報告によって理論と実験値の差が5σに到達した、という事になりました。

で、そのフェルミ研までの実験の追試として「新しいやり方でのミュオン異常磁気モーメント測定実験」がJ-PARCで予定されている、設備の建設が進んでいる、と言う状況ですね。

 

さてそれでセルン~BNL~フェルミ研で行われてきた実験、それは「円形のストレージリングを使ったもの」なのですが、それを始めた人がP20~21に紹介されているJohn Stewart Bell (1928-1990)となります。

それで今後話題にしてゆく事になる「Thomas-BMT 方程式」についてはこのベルさんのセルンでの業績が元になっている様です。(注3

“Polarized Particles for Accelerator Physicists”
by J. S. Bell
CERN preprint 75-11
Lectures given in Academic Training Program of CERN
1974-1975
(電磁場中での粒子の polarization の振る舞いを記述するThomas-BMT 方程式の解説、とくに magic momentum を使った CERN muon g-2 実験の原理の解説)

 

さてそれで「円形のストレージリングを使ったミュオン異常磁気モーメント測定」について「原理的な所からレビュー」していきましょう。

まずは理論上の計算では異常磁気モーメントaµは

aµ = (g − 2)/2

とされ、その値を近似計算の精度を上げながら求めているのでした。

それに対して同じaµなんですが実験においては

aµ=ωa/ωc

です。

ここでωaはアノーマリー振動数、ωcはサイクロトロン振動数です。

そうしてωsをスピン振動数とするならば

ωa=ωs-ωc

となります。

これはつまり「一様な磁場Bの中にミュー粒子を速度vで打ち込むとサイクロトロン運動を始めます。」(注4

これはミュー粒子が持つ電荷と外部磁場の相互作用(=ローレンツ力)で円運動(=サイクロトロン運動)を始めるを示しています。

と同時にミュー粒子はスピン(=自転??)をもっていますのでそれに応じた磁気モーメント(=小さな棒磁石としての特性)も持っています。

そうしてこの磁気モーメントと外部磁場の相互作用でミュー粒子のスピンが歳差運動(=コマの首ふり運動)をはじめるのです。

それでその歳差運動の周波数がωs:スピン振動数となる訳です。

 

それでこの時にωc:サイクロトロン振動数とωs:スピン振動数は同じ値になる、と計算したのがDirac方程式でした。

しかしながら実際はこの両者は一致せずに少しばかりωs:スピン振動数の方が大きいのでした。

さて2つの少しだけずれた振動数が存在してそれが合わさると「うなり」という現象が起きます。

そのうなりの周波数は2つの合わさった周波数の差分で表されます。

そうして「ミュオン異常磁気モーメント測定」の場合も「うなり」が生じます。

その「うなり」の事をωa:アノーマリー振動数と呼んでいます。

そうであれば当然

ωa=ωs-ωc

となるのです。

そうしてこのωaと異常磁気モーメントaµは

aµ=ωa/ωc

で結びついているのです。

さてそうであれば実験では

ωa:アノーマリー振動数、ωc:サイクロトロン振動数、ωs:スピン振動数

の内2つの周波数がわかれば異常磁気モーメントaµは計算できる事になります。

 

で、ストレージリングを使った実験では

ωa:アノーマリー振動数(=うねうねの振動数:注4)とωc:サイクロトロン振動数、

を検出して異常磁気モーメントaµを出しているのです。(注5

コトバで書けば以上の様になりますが、さて実際にこれを実行に移すのはそうたやすい事ではありませんでした。

 

注1:電子の磁気モーメント: https://journals.aps.org/pr/abstract/10.1103/PhysRev.74.250 :
P.クッシュとHMフォーリー
物理学。 Rev. 74、250 – 1948 年 8 月 1 日発行

ちなみにこれに関連して「ラムシフト」: https://archive.md/7YyAT :1947年のラム・ラザフォード実験

注2:ペニングトラップについては: https://slidesplayer.net/slide/11232933/#google_vignette :のP8に詳細なイラストが載っています。

あるいは: https://slideshowjp.com/doc/73350/ :のP5にもきれいなイラストが載っています。

注3:「Thomas-BMT 方程式」: https://archive.md/XNGve :

記事から『さて電子スピンを回転させる方法ですが、電場と磁場を使います。原理はいたって単純で走っている電子に磁場だけをかけた場合と、磁場に直行する電場を同時にかけた場合の比較の絵が下記の図です。

要するに電場をかけることで電子の軌道は保ちながら、スピンだけを磁場によって変えるのです。当然実際に実験をやるためにはスピンの変化率が分からないといけないわけですが、それはThomas-BMT方程式というもので表されます。

またこの式から実験で使用するおおよその電場、磁場の強さを決定し、コイルに流す電流値やかける電圧などを決定します。ちなみに参照資料はジャクソン「電磁気学(下)」です。』

注4:「サイクロトロン運動」: https://archive.md/eUdvE :

記事からωc:サイクロトロン振動数は

ωc=qB/m

で表される事が分かる。

ここでqは電荷、Bは磁束密度、mは粒子の質量です。

ただしこれは非相対論的な扱いであって、相対論的には次のようになります。

γ=1/sqrt(1-v^2)でvはcで規格化すみとする。

少々雑な言い方ではあるが速度vで運動する事で粒子の質量はγ倍になる。

そうであれば相対論的には

ωc=qB/(γm)

と書かれる事になります。

つまりは「速度が速くなるとωc:サイクロトロン振動数は落ちる」のです。

参考「相対論」: http://fnorio.com/0162relativistic_dynamics/relativistic_dynamics.html#4-3 :

より基本的な説明は「磁場中の荷電粒子の運動」: https://archive.md/RSjwR :にあります。

注4:ωa:アノーマリー振動数(=うねうねの振動数)

実験で得られた生データから抽出された「うねうねパターン」は例えば本文の資料「g-2実験  量子電磁力学の精密テスト と 標準理論のかなた」: https://slidesplayer.net/slide/15404475/#google_vignette :の17ページの様になります。

で実験で得られる生データについてはフェルミ研で行われた実験で得られた実際のうねうねカーブは以下の資料で確認できます。

「フェルミ研究所ミュオンにおけるミュー粒子の異常歳差運動周波数の測定 g−2実験」: https://journals.aps.org/prd/abstract/10.1103/PhysRevD.103.072002 :2021 年 4 月 7 日発行

概要説明の下に7つの図が示されています。

左側の一番下にある図が「生データグラフ」になっています。

その部分をクリックすると拡大表示が現れます。

ちなみに画面の右側に PDF の表示が現れているかと思います。

それをクリックすると、なんとその図が載っている原論文がDLできる様です。(フェルミ研 太っ腹!)

注5:実際は検出されたサイクロトロン振動数を使っているのではなくて、計算で求めた名目上のγ=1のサイクロトロン振動数をつかっています。

そうしてその計算に必要な重要な数値が外部磁場Bの測定値となっているのです。

従って「実験で求める測定値はωa:アノーマリー振動数と外部磁場Bの2つ」となります。

 

追記:歴史を振り返ってみるとDiracに始まったこの物語で電子とミュー粒子はほぼ同じような発展をしてきている事がよく分かります。

つまりは「電子とミュー粒子は良いライバル関係にある」と言えそうです。

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PS:相対論・ダークマターの事など 記事一覧

https://archive.md/DtwOF