特殊相対論、ホーキング放射、ダークマター、ブラックホールなど

・時間について特殊相対論からの考察
・プランクスケールの原始ブラックホールがダークマターの正体であるという主張
 

7-5・「時間の遅れはお互い様」は実験的に確認可能なのか?

2023-12-31 01:17:28 | 日記

前のページでは

『つまりは「ランダウ、リフシッツが示している時間遅れの実験」というのは行われた事が無い、実際には「実現不可能な方法である」という事になりそうです。

そうであればその方法を解析した結果出てくる「時間の遅れはお互い様」という主張は「確かめようがないもの」という事になります。』

と書きましたが、これに関連して議論を進めます。

 

「ハーフェレとキーティングの時間遅れの測定実験」は原子時計と飛行機を使って時間の遅れを実測したのでした。

そうであれば宇宙空間に出る事で「ランダウ、リフシッツが示している時間遅れの実験」は現在の技術水準でも実現可能となります。

さてしかしながらその実験結果、測定された数値は「ランダウ、リフシッツが主張している数値」にはなるのですが、その結果を解釈して「ほら、だから時間の遅れはお互い様なのだ」という「ランダウ、リフシッツの主張」は成立していません。

その主張は「LLの一般解の導出」によって既に却下されています。(注1)

そうであれば「ランダウ、リフシッツ タイプの時間遅れ測定実験」では「時間の遅れはお互い様」は確認できない事になります。

 

さてそれで次は「時刻合わせをした2つの時計を使うタイプの実験」です。

このタイプの実験では一つを静止しておいて一つを運動させる、そうして再びその2つの時計を同じ場所に持ってきて同時に見比べるのです。(注2)

このタイプの実験で「時間の遅れはお互い様」は確認できるのでしょうか?

さてこのタイプの実験の場合には起こりうる結果は以下の2つの状況の内のどちらか一つになります。

つまりは

・両方の時計は同じ時刻を示していた

あるいは

・一方の時計が他方の時計より時刻が遅れていた。

のどちらかの状態しか起こらないのです。

つまりはこの時に「時間の遅れはお互い様」が主張する様な

・一方の時計は他方の時計に対して「進んでいた」のと同時に「遅れていた」

などという事はありえないのです。

さてそうであれば「時刻合わせをした2つの時計を使った時間遅れの測定」では「時間の遅れはお互い様」は検出できない事になります。

 

以上のタイプの実験の変型判として「円運動しているミュー粒子の寿命の延びの測定実験」を上げる事が出来ます。

この場合は観測者は円運動の外側、実験室系に立っていて、そこを静止系として設定し実験を解釈する事になります。

そうであれば「静止系に対して円運動しているミュー粒子の寿命は延びる」のです。

この時に観測者とミュー粒子の立場を入れ替えて「円運動している観測者が静止系にあるミュー粒子の寿命を観測したらどうなるのか?」と問う事ができます。

つまりは「立場を入れ替えてみた」のですね。

この時には「時間の遅れはお互い様」論者によれば「この場合でも観測者が静止していてミュー粒子が観測者のまわりを回っている」と(少々強引ではありますが)その様に主張する事になります。

そうであれば「観測者の時計で計ればミュー粒子の寿命は延びて観測される」となります。

さてしかしながら実験事実は「円運動している観測者の時間が遅れる」のです。

そうなりますと「ミュー粒子の寿命は静止しているミュー粒子の寿命よりも短く観測される」という事になり、「時間の遅れはお互い様」論者の主張は却下される事になります。

 

さて最後は横ドップラー測定を使うタイプのものです。

このタイプの実験では「時間の遅れはお互い様」が直接検証される事になります。

つまりは「すれ違う2つの慣性系に属するそれぞれの観測者が相手の慣性系に置かれた基準光源からの光を観測し合う」のです。

その結果が「お互いの観測者が両方ともに赤方偏移を観測した」のであれば「確かに時間の遅れはお互い様」となっています。

他方で「一方が赤方偏移を観測し他方が青方偏移を観測した」のであれば「時間の遅れは一方的」であって「お互い様ではない」という事になります。

今の所はこのような「W横ドップラー測定実験」は行われてはいません。

しかしながらこれを別々に行った2つの横ドップラーの測定は行われています。

その結果は

・観測者が静止ししていて光源が動いている場合は赤方偏移が観測された。

・光源が静止ししていて観測者が動いている場合は青方偏移が観測された。

のでした。

この2つの横ドップラーの測定実験結果を組み合わせますと「W横ドップラー測定実験」では「一方が赤方偏移を観測したのであれば他方は青方偏移を観測することになる。」が結論として出てきます。

 

さて、以上の様に見てきますと「時間の遅れはお互い様」を確認できる実験で残っているものは「W横ドップラーの測定実験」という事になります。

しかしながらその結果については「『時間の遅れはお互い様』という主張を否定するものになるであろう」という事は「ほぼ確定している」と言えます。

 

注1:この件、内容詳細については以下のページを参照願います。

:  ・ランダウ・リフシッツが間違えた事 :

: ・「時間の遅れはお互い様」は成立するのか? :

注2:この場合「一つの時計を静止させておく」という条件はマストではありません。

2つの時計の間に速度差があれば時間の遅れは検出できるからです。

しかしながら「話を単純にする為には一方を静止させておく」方が良いのです。

 

追記:ローレンツ変換から導出される「時間の遅れ合成則」は「優先される慣性系が存在する」と主張しています。

そうであればローレンツ変換は結局は「時間の遅れは一方的である」と主張している事になります。

そうしてまた実験事実としても「時間の遅れはお互い様ではなく一方的である」となっています。

さてこの2つを合わせますと、つまりは「理論と実験結果の両方から導き出される主張」は「静止系は客観的に存在し、それが優先される慣性系である」となります。

ちなみに「時間の遅れはお互い様」は「特殊相対性原理の主張:全ての慣性系は平等である」から出てきています。

さてそうなりますとこの結末は「特殊相対性原理は成立していない」という事につながるのです。

 

PS:相対論・ダークマターの事など 記事一覧

https://archive.md/CoVgO

 


7-4・静止系が客観的な存在だと何が困るのか?(時間遅れの測定方法)

2023-12-27 02:04:35 | 日記

§4.時間遅れの測定方法

2つのすれ違う慣性系があった場合、どちらの時間が遅れているのか、それを測定するのは難しい、という話は以前しました。(注1

それは結局「2つ+1つの時計を使うランダウ、リフシッツの時間遅れの実験方法」についての詳細な検討結果からは「その方法によってはどちらの慣性系の時間が遅れているのか、判別できない」という結論になります。

そうしてまたそれに呼応する様に「2つ+1つの時計を使った時間遅れの測定実験」と言うものも現実に行われた事はありません。

その一方で「時間遅れの測定方法の思考実験」としては「ランダウ、リフシッツの実験方法」はよく取り上げられる様です。

その理由は「MN図による説明がやりやすい」という所にもあると思われます。

 

さらには「時間遅れの説明の為にアインシュタインが説明につかった」とされる「光時計を用いた実験」も行われていません。

これもまた「思考実験どまりのアイデア」の様です。

 

他方で実際に時間遅れの測定実験は行われており、その結果は常に特殊相対論の計算に一致した結果を得ています。(注2

そうして実際に行われた時間遅れの測定実験は以下の3つのタイプに分類する事が可能です。

 

1、μ粒子の寿命による崩壊を使うもの(ミュー粒子の生成~崩壊までの時間をタイマーとして使うもの

ミュー粒子が生成されてから崩壊するまでの寿命を時計の代わりにタイマー(=所定の固有時間が経過するとサインを出して知らせるもの)として使うタイプの実験。

この実験の特徴は「ミュー粒子生成後、生存しているミュー粒子の走行距離とミュー粒子の数を観測する」という所にあります。

つまり「時計の時間遅れを直接比較測定している訳ではない」のです。

そうであれば「時刻合わせをする必要がない」のです。

1-1、宇宙線由来のミュー粒子をつかったもの

この場合、μ粒子と地球はそれぞれが独立した等速直線運動する2つのすれ違う慣性系と見ることが出来ます。そうであればこの状況はまれに見る「2つのすれ違う慣性系でどちらの時間が遅れていたのか」を測定したものになっています。

Rossi と Hoag、Physical Review 57、pg 461 (1940)。
ロッシとホール、『フィジカル・レビュー』59、223ページ(1941年)。

この測定では「ミュー粒子の寿命が延びる事で地表まで宇宙線で生成されたミュー粒子が到達している」という事実を観測によって示したもの。

そうであれば「あらわにはミュー粒子の時間の遅れを時計を使って測定した」と言うものになってはいない事に注意が必要です。

そうではなくで「地球慣性系から見た時に、寿命が尽きるまでのミュー粒子の走行距離が伸びた事」を観測・検証しているのです。

1-2、円運動するミュー粒子の寿命を測定したもの

Bailey et al.、「円軌道における正および負のミューオンの相対論的時間拡張の測定」、Nature 268 (1977 年 7 月 28 日)、301 ページ。
Bailey et al.、Nuclear Physics B 150 pg 1–79 (1979)。

この場合は「運動しているミュー粒子の寿命の延びを運動していないミュー粒子の寿命と比較している」のです。

しかしながらこの場合でも「寿命が尽きるまでのミュー粒子の走行距離が伸びた事を観測している」ととらえる事も可能です。

 

2、横ドップラー効果を使った「時間の遅れの測定」(原子あるいは原子核が出す光を基準光源として使うもの

電離させた水素ガスが発する基準光の周波数(=波長)が時間遅れが発生する事で基準光の値から変化する事を使ったもの。

これもまた「時計の時間遅れを測定した」のではない実験です。

従って「時刻合わせをする必要がない」のです。

2-1、一般には『HE Ives と GR Stilwell、「移動原子時計の速度に関する実験的研究」、J. Opt.社会午前。28ページ 215–226 (1938)。JOSA 31ページ 369–374 (1941)。
この古典的な実験では、移動する原子の横方向のドップラー効果を測定しました。』とされていますが、この実験は「横ドップラーの実験」ではなく「W縦ドップラーの実験である」という事は前に説明した通りです。

従って本来の意味での横ドップラー効果を使った「時間の遅れの測定」は

ハッセルカンプら、Z. Physik A289 (1989)、151ページ。
実験室では実際に90度の測定値が得られます。SRと数パーセントの精度で一致します。

ちなみにこの場合は赤方偏移を検出しています。

2-2、円運動と横ドップラーを組み合わせたもの

この場合は原子が出す光ではなく原子核が出す光を基準光源として使います。

Kündig (1963) は、メスバウアー吸収体が中央のメスバウアーエミッターの周りで高速の円形経路で回転する実験について説明しました。以下で説明するように、この実験的な配置により、クンディッヒによる青方偏移の測定が行われました。(注3)

エミッターであるコバルトの放射性同位元素57Coの主な崩壊モードはベータ崩壊で、それに伴ってガンマ線が放出されます。具体的には、57Coはベータ粒子(電子)を放出して57Feに変わり、同時にガンマ線も放射線として放出されます。

メスバウアー吸収体は57Feで、これが回転中心から放射されてくるガンマ線を共鳴吸収します。

そうするとメスバウアー吸収体の後ろに設置されているガンマ線カウンターの検出数がへる、これでガンマ線を共鳴吸収した時のメスバウアー吸収体に発生している時間遅れを検出します。(注4)

 

2-3、光学原子時計を構成しているAl+イオンを単振動させた時の時間の遅れを使ったもの

この場合は原子が出す光を基準光源として使っています。

これは観測者が動いている場合の横ドップラー効果の測定になっている

ちなみにこの場合は青方偏移を検出しています。

アルミニウムイオンを電場をつかって振動させた時計のほうが、静止していた時計よりも時間の進み方が遅かった。: https://archive.md/lDxfq :(注5)

 

3、実際に2つの時計の時間経過を比較した「時間遅れの測定」(時刻合わせをした時計を使うもの

ハーフェレとキーティング、Nature 227 (1970)、270 ページ (提案)。
サイエンス Vol. 177ページ 166–170 (1972) (実験)。

原子時計を飛行機に積んで世界一周させて、それを地上に設置された時計の経過時間と比較したもの。

この実験では「時計の経過時間を比較する為に時刻合わせをした」のです。

ちなみにこの実験が後日に至りてGPS衛星の時間遅れの修正方法に結びつく事になります。

 

さてこれらを使っている運動の種類から以上の3つのタイプに分類する事も出来ます。

・等速直線運動を使った時間遅れの測定

1-1、宇宙線由来のミュー粒子をつかったもの

2-1、横ドップラー効果を使った「時間の遅れの測定」:ハッセルカンプら:赤方偏移の検出

 

・等速ではない直線運動=単振動を使った時間遅れの測定

2-3、光学原子時計を構成しているAl+イオンを単振動させた時の時間の遅れを使ったもの:青方偏移の検出

 

・円運動をつかった時間遅れの測定

1-2、円運動するミュー粒子の寿命を測定したもの:Bailey et al. Nature

2-2、円運動と横ドップラーを組み合わせたもの:Kündig (1963):青方偏移の測定

3、実際に2つの時計の時間経過を比較した「ハーフェレとキーティングの時間遅れの測定」

 

 

注1:詳細は以下の「・時間の遅れを測定するのは難しい」シリーズにてご確認願います。

 ・時間の遅れを測定するのは難しい

 ・その2・ 時間の遅れを測定するのは難しい

 ・その3・ 時間の遅れを測定するのは難しい

 ・その4・ 時間の遅れを測定するのは難しい

注2:「4. 時間遅延と横ドップラー効果のテスト」: https://math-ucr-edu.translate.goog/home/baez/physics/Relativity/SR/experiments.html?_x_tr_sl=en&_x_tr_tl=ja&_x_tr_hl=ja&_x_tr_pto=sc#Recent_Tests :

: https://archive.md/G2GFO :

注3:「相対論的ドップラー効果」: https://archive.md/6dO3g :

注4:「加速されたシステムにおける横ドップラー効果の測定」: https://archive.md/68MQG :この実験内容については後日、もう少し詳細にレビューすることと致します。

「メスバウアー効果」: https://archive.md/rMApu :

注5:原論文 サイエンス掲載2010年:Optical Clocks and Relativity Creators Chou, C. W.etc

: https://zenodo.org/records/1230910 : https://archive.md/jqfM3 :

 

追記:特筆すべきは「実際に時刻合わせをした時計の時間経過を比較して時間遅れを観測した」と言う実験が一つしかない、「ハーフェレとキーティングの時間遅れの測定実験のみである」という所にあります。

そうしてこの「時計を使った実験」も実験の主旨としては「時刻合わせをした2つの時計の一つを静止したままで、もう一つを円運動させた」というものになっています。

つまりは「ランダウ、リフシッツが示している時間遅れの実験」というのは行われた事が無い、実際には「実現不可能な方法である」という事になりそうです。

そうであればその方法を解析した結果出てくる「時間の遅れはお互い様」という主張は「確かめようがないもの」という事になります。

 

さて「時刻合わせをした2つの時計を使って、「運動している方の時間が遅れる」を確認する為には「円運動を使う」か「往復運動を使う(=双子のパラドックスでの運動を使う)」か、いずれかの方法によって「とにかく運動している方の時計を静止させていた時計の方に戻すしかない」のです。

そうしてこのやり方で「運動していた方の時計が遅れていた」ならば「時間のおくれは確かに存在していて、それは一方的である」となるのです。

この時に「時間の遅れはお互い様」論者の反論する為の根拠とされるものは「運動に従って横Gや縦Gが発生していて、それが時間の遅れを引き起こしたのだ」と言うものがあります。

しかしながら「運動に従って発生する横Gや縦Gは時間の遅れを引き起こさない」というのが実験から確認されている事実なのであります。(注6)

さてそうなりますと「いったい何が時間の遅れを引き起こすのか?」という話になります。

答えは「ミンコフスキー空間での走行距離が時間の遅れを引き起こす」となります。

「ん、ミンコフスキー空間?なにそれ?」

はい、それは「客観的に存在する静止系、別名を真空」と言います。

 

注6:「円軌道上の正および負のミュオンの相対論的時間遅延の測定」: https://archive.md/i5aGs :『CERNミュオンストレージリングで、正のおよび負の相対論的な(γ = 29.33)ミューオンの寿命が測定され、結果は以下の通りです:τ+ = 64.419 (58) µs、τ- = 64.368 (29) µsです。正のミューオンの値は特殊相対性理論および静止状態での測定寿命と一致しています。アインシュタインの時間拡張因子は、95%信頼区間で2×10^-3の相対誤差で実験と一致しています。特殊相対性理論を仮定すると、μ-の平均固有寿命はτ0- = 2.1948(10) µsとされ、これはこれまでに報告された中で最も正確な値です。この値が以前のτ0+の測定値と一致することは、ミューオン崩壊における弱い相互作用におけるCPT不変性を確認しています。』<--円運動速度で計算したミュー粒子の時間の遅れ=寿命の延びと観測値が一致した。したがって「円運動に伴ってミュー粒子に作用している横Gは寿命の延びに影響を与えていない」という結論になります。

「σ ±寿命と縦加速度」: https://archive.md/SisVS :『11T 水素バブルチャンバー HYBUC 内部での 420 ~ 500 Me V/c K- の相互作用を利用して、飛行中に 120,000 σ +/-崩壊のサンプルが生成されました1,2。粒子の寿命について崩壊を使用して 0.5 ~ 5.0 × 10^15G の縦方向加速度の影響を調査する方法について説明します。加速度が寿命に及ぼす影響が観察されれば、ローレンツ変換および/または粒子崩壊のダイナミクスが加速度に敏感であることが示されます。これらのデータは、ローレンツ因子を変化させ、相対論的な素粒子時計を静止状態に戻す加速は、寿命に観察可能な変化を残さないことこのヌル結果は、ミューオンに対する横加速度の影響に関する以前の測定結果を補完します13。』<--縦Gも粒子の寿命の延びに影響を与えない、と言っています。

 

PS:相対論・ダークマターの事など 記事一覧

https://archive.md/doQvd

 


2-30・時間遅れの測定:光学原子時計を使った実験の7

2023-12-23 01:26:44 | 日記

光学時計と相対性理論
C. W. Chou,* D. B. Hume, T. Rosenband, D. J. Wineland

24 SEPTEMBER 2010 VOL 329 SCIENCE (原典は: https://zenodo.org/records/1230910 :からDL可)

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

3、光時計による標高差(33センチ)の検出実験についての説明

『重力ポテンシャルの違いは、2つの時計のティックレートを比較することで検出できます。地球表面の高さの小さな変化に対して、高さがΔhだけ異なる時計は、次のように速くなります。

δf/f0=gΔh/c^2 ・・・(2)式
 
ここで、g≈9.80m/s^2  は重力による地元の加速度です(4)。重力変位は、高さの変化1メートルあたり約1.1×10^−16 のクロックシフトに対応します。このシフトを観測するために、最初に2つのAl+イオン時計の周波数を元の高さ差Δh=h(Mg-Al)−h(Be-Al)=−17cmで比較しました(これはレーザーレベルで測定されました)(注1)。その後、Mg-Al時計が載せられた光学テーブルを支えるプラットフォームを使用して高さを33 cm増加させ、再び周波数を比較しました。これらの2つの測定には約100,000秒の低い高さでのデータと40,000秒の高い高さでのデータが含まれており、時計は約4.1×10^−17 の分数周波数変化を示しています。(Fig. 3)。このシフトをAl-Mg時計の高さ変化の測定として解釈すると、37 ± 15 cmという結果は、33 cmという既知の値とよく一致しています。

理想的には⟨ν||⟩=0ですが、トラップ内の絶縁材料の遅い電気充電などの効果により、Al+イオンの小さな直線速度が発生することがあります。式(1)から、クロックの周波数(つまり、移動するイオンのクロック遷移にロックされたプローブレーザーの周波数)は、

δf/f0≈⟨ν||⟩/c ・・・(3)式

  という分数周波数シフトを示します。もしAl+イオンがプローブレーザービームの伝播方向に平均速度⟨ν||⟩で移動している場合、比較測定ではドップラー効果が注意深く制約され、互いに逆向きに伝播するプローブレーザービームを交互に使用することで行われました(11)。イオンの任意の運動は、2つのレーザービームによって測定される遷移周波数の差として検出されます。Al-Mg時計では、2つのプローブ方向の間に(1.2 ± 0.7) × 10^{-17}の分数周波数の差を観測しました。これは、実験室フレームでのイオンの速度が(1.8 ± 1.1) nm/sであることに対応しています。ただし、この大きさの速度によるクロックレートへの影響はほとんどないため、これは派生した2つの逆向きのレーザープローブ方向の平均からなる。

ここで報告されている小規模な相対論的効果は、前例のない精度と正確さを持つ光学原子時計で観測されました。向上した精度により、光学時計の感度が微小な重力ポテンシャルの変動に対して応用される可能性があり、測地測量(19, 20)、水文学(21)、および宇宙における基本物理学の試験(22)で利用されるかもしれません。クロックベースの測地測量の基本要素は、ここで2つの正確なAl+光学時計を75 mのノイズキャンセルファイバーを介して比較し、高さに依存するクロックシフトを測定することによって実証されました。クロックベースの測地測量(23, 24)では、正確な光学時計は「陸上潮汐ゲージ」(25)のネットワークに接続されるでしょう。このネットワークは、地球の表面から地球の重力場の等ポテンシャル面である「ジオイド」までの距離を測定するものであり、これは地球の平均海面に一致します。このようなネットワークは、クロックの場所で高い時間的(日次)および地理的分解能で動作できる可能性があります。したがって、通常の測地水準ネットワーク(更新期間が通常10年以上かかる)および2週間ごとの衛星生成の地球のジオイドマップを補完するでしょう。

ネットワークが有用であるためには、クロックの精度を10 ^−18  またはそれ以上に向上させる必要があります(26–28)。これにより、1 cmの不確実性を持つ高さの測定が可能になります。Al+時計では、イオンの運動の不確実性を減少させるためにイオンの運動を改善する必要があり、信頼性の問題も対処されなければなりません。これにより、時計は長期間無人で運転できるようになります。また、光学時計を接続するためには高品質のリンクが必要です。この研究で使用されたリンクと同様の通信ファイバーを使用した現実的なリンクデモンストレーションでは、光学周波数が不正確性が10 ^−18  以下で250 kmまで伝送できることが示されており(29–31)、大陸規模のデモンストレーションが進行中です(30)。ただし、大陸間リンクでは、光学キャリア周波数を大気を通して衛星に忠実に伝送する必要があり、これは未解決の問題であり、現在積極的に調査されています(32, 33)。』

 

『図3. 日常生活の尺度における重力時間の遅れ。 (A) 時計の1つが上昇すると、その速度はより深い重力ポテンシャルの時計の速度と比較して増加します。 (B) 異なる高さにある2つのAl+光学時計の周波数の分数差。 Al-Mg時計は最初にAl-Be時計よりも17 cm低い位置にあり、その後、データポイント14から33 cm高くなりました。高さの増加による純粋な相対シフトは、(4.1 ± 1.6) × 10^−17と測定されています。垂直のエラーバーは統計的な不確実性を示しています(縮小χ^2 = 0.87)。緑の線と黄色の影付きのバンドは、それぞれ最初の13データポイント(青いシンボル)および残りの5データポイント(赤いシンボル)の平均と統計的な不確実性を示しています。各データポイントは、約8000秒の時計比較データを表しています。』

翻訳はチャットGPT3.5+修正は当方

図3については原典を参照されたい。

光時計による標高差の検出実験についての説明になっています。

 

Fig3.で示されたデータを取るためには

>これらの2つの測定には約100,000秒の低い高さでのデータと40,000秒の高い高さでのデータが含まれており、時計は約4.1×10^−17 の分数周波数変化を示しています。(Fig. 3)。

>最初の13データポイント(青いシンボル)および残りの5データポイント(赤いシンボル)

>各データポイントは、約8000秒の時計比較データを表しています。

8000秒は2.2時間、

従って

(青いシンボル)は13ポイント=28.9時間=1.2日

(赤いシンボル)は5ポイント=11.1時間≒0.5日

要するに「単原子イオン光学時計は精度は良い」ものの「その精度を出す為には長時間の安定した稼働が必要」という事になっているのです。

ちなみに「日本発の光格子光学時計」は「短時間で単原子イオン光学時計と同等以上の精度を出す事」を目標としている様です。

 

注1:最初に17センチ低く設定された単原子イオン時計の13個の測定データの内の一つが「測定例としてFig.1で示されたもの」と思われる。

そのデータを見る限り「確かに周波数がマイナス側にシフトしている」のが分かります。

ちなみに実験の順序は「最初にこの高低差検出実験」が行われ、その後「イオンを単振動させる実験」が行われたのです。

まあこれは当然、この順序になります。

というのも「イオンを単振動させる実験」は光学時計の時計としての安定性をわざと崩す実験であるからです。

 

追記:以前に投稿した文章ですが、関係がありますのでここにも再掲示しておきます。

『「馴染みのある速さ(10 m/s = 36 km/h )における相対論的な時間の遅れの検出」という主張について。

時速36 km/hはアルミニウムイオンの単振動の実効値ですので、ピーク速度は51 km/hぐらいにはなります。

とはいえ「自動車の通常の運行速度で発生している時間の遅れを検出できた」のですから「これはもう『単一原子の光学時計』は大したもの」と言えます。

さてそれはコトバを変えますと「地球のこちら側とあちら側に置かれた光学原子時計の時間の進み方はずれる」という事になります。

何故ならば「地球は基準慣性系=客観的に存在している静止系に対してドリフトしながら自転しているから」です。

そうであれば「赤道上に置かれた時計と地球をはさんでその時計の反対側に置かれた時計のたとえば1時間の経過時間を比較するとずれが生じている」のです。(注4)

はい、その状況はまさに「ドリフトしながら円運動する2つの時計は静止系に対する相対速度が回転による時計の位置によって異なるから」です。

そうしてそれが検出できれば「静止系は客観的な存在である」の直接的な証明になります。(それはまさに「アインシュタインを超えた実験」と言われる事になるでしょう。)

しかしながら「精度のよい時計はつくれた」のですが「その2つの時計を地球をはさんで光ファイバーで接続して時間の経過をリアルタイムで比較する事」は「現状では至難の業」の様に見えますがさて、、、。

注4:今のセシウム標準時計を超える精度の2つの時計のずれの検出に「セシウム時計と電波を使った同時というタイミング設定」は使う事ができません。

そのあたり「ニュートリノは光速を超えた」という判断ミスを犯した「GPS時計を使ったタイミング設定に依存した実験からの教訓」になります。

さてそうであればどうしてもこの実験の様に「2つの時計は光ファイバーでつなぐことが必要」となるのです。

 

上記に関連した情報: https://archive.md/ghvZd :2011年頃のレポートの様です。

『今回小金井-大手町間のNICTが運用する光ネットワークテストベッドJGN2plus(現JGN-X)を利用したNICT-東大間のファイバ長60kmにおいては約400THzの光周波数を積算時間1秒で標準偏差1Hz以下の伝送精度で伝送する能力があることをまず確認しました。 ただし日本ではファイバ線が空中に宙づりされたり鉄道の近傍に敷設される等雑音環境が劣悪な場合が多く、今回この精度は天候が穏やかな真夜中という好条件においてのみ得られたものです。欧州では静かな地中に敷設されたファイバによって伝送距離1,000㎞のリンクも実証されており、今後世界一の伝送能力を実証するにはファイバの敷設環境を改善することが必要不可欠になります。』

『・・・NICTの時計の周波数が3~4Hz東大側より高いことが明瞭に観測され、両地点の光格子時計が同じ周波数を生成していないことが分かります。しかし、この周波数差は主にNICT、東大の56mの標高差に起因しており較正することが可能です。NICTに比べて標高が低く重力が大きい東大では一般相対性理論が示唆するように時の流れが遅くなっていますので同一時間で比較すると周波数が小さくなります。従って2地点の標高差からこのシフト量は不確かさ0.1Hz以下で計算できます。

そして最終的にNICTと東大の時計の較正不可能な原因不明の周波数差は430THzのうちわずか0.04±0.31Hz(6,500万年に1秒)となりました。』

さてこの「原因不明の周波数差」のうち、どれくらいが「緯度経度の違いによる時間のずれに起因している」のでしょうか?

興味はありますが、「緯度経度情報が不明」ですので計算できませんね。』

 

・参考資料

「ジオイドとは」: https://archive.md/7dXJn :

「ジオイド 重力」: https://archive.md/0eMJR :

「NICT-東大間のファイバ長60kmにおいて光格子時計の周波数比較」: https://archive.md/ghvZd :

「時空の歪を探る時計」: https://www.toray-sf.or.jp/aboutus/pdf/62-h24_2.pdf :の19ページ~

「相対論的ジオイド: 重力ポテンシャルと相対論的効果」: https://archive.md/BAAo0 :

「Fundamental Notions in Relativistic Geodesy - physics of a timelike Killing vector field」: https://presentations.copernicus.org/EGU2020/EGU2020-16528_presentation.pdf :

 

PS:相対論・ダークマターの事など 記事一覧

https://archive.md/cdZFn

 


「時間反転した横ドップラー効果の測定」についての考察

2023-12-19 01:27:29 | 日記

1,「横ドップラー効果の測定で赤方偏移が観測された」という事実そのものが「横ドップラー効果の測定で青方偏移が観測される条件がある事を示している」という事について。

それは「横ドップラー効果の測定で赤方偏移が観測された」という状況を「時間反転して再解釈すること」で明らかになりました。

それでそのような認識はこれまでやってきた「光学時計による単振動の時間遅れの測定」の報告を吟味し解読した事に触発されて気が付いたものです。

 

さて横ドップラー効果を使った「時間の遅れの測定」では「原子あるいは原子核が出す光を基準光源として使う事」になります。

その理由は「周波数がわかっている光を使わないと時間遅れの測定ができないから」ですね。

さてそれで歴史的には「電離させた水素ガスが発する基準光の周波数(=波長)が時間遅れが発生する事で基準光の値から変化する事を使ったもの」が最初に登場しました。

そうしてこれはアインシュタインが「運動しているものは時間が遅れる」という事を検証する為に提案した実験でもありました。

 

1-1、歴史的な経緯としては一般には

『HE Ives と GR Stilwell、「移動原子時計の速度に関する実験的研究」、J. Opt.社会午前。28ページ 215–226 (1938)。JOSA 31ページ 369–374 (1941)。
この古典的な実験では、移動する原子の横方向のドップラー効果を測定しました。』(注1)

とされていますが、この実験は「横ドップラーの実験」ではなく「W縦ドップラーの実験である」という事はすでに説明した通りです。

従って本来の意味での横ドップラー効果で確認できる「時間の遅れの測定」は

『ハッセルカンプら、Z. Physik A289 (1989)、151ページ。
実験室では実際に90度の測定値が得られます。SRと数パーセントの精度で一致します。』(注1)になります。

 

それで「ハッセルカンプが行った横ドップラー効果の測定」の状況は例えば: https://archive.md/wq23K :の「受信機はソースが最も近い点にあると見なします」にある図3に示されている様なものです。

まずは

・基準光源が左から右へ速度Vで移動しています。

・観測者は静止していて90度真上を見ています。

・その観測者の真上に基準光源が達したときに出した光が光源の真下にある観測者に届きます。

・そうしたときに観測者は基準光源の本来の色、それは黄色で示されているのですが、その光を赤色と認識します。

・つまり「光は赤方偏移した事になる」のです。

・それで注意しなくてはならないことは「観測者が静止していて光源が観測者に対して移動している」ので「光源側の時間が遅れる」、その時に「光源と同じ速度で移動している観測者にはその光源が出す光の色は黄色のまま」なのですが「静止している観測者にとってはその光の色は赤色になる」というところにあります。

そのことはつまり「光源側の観測者からみれば静止系の観測者の時間は進んでいる」という事になります。

それで図3では空間を進む光の色は黄色で描かれていますが、それはあくまで光源側の観測者の認識です。

静止系から見るならば「光源から空間に出た光の色はすでに赤色になっている」という所がポイントです。

 

 

さてそれで、ここで主張したい内容は「この物理現象は時間に対して反転可能である」という事です。(注2)

つまり「ハッセルカンプが行った横ドップラー効果の測定の状況」は「そのまま時間反転して考えても良い」ということになります。

さてそうなりますと図3で時間反転した場合は次のような説明になります。

・「光源」が右から左に移動しています。

・その「光源」が「静止している観測者の真上にくる少し前」に「静止している観測者から赤い光が真上に発射されます。」

・この「赤い光」は「光源」が観測者の真上に来た時に「光源」に吸収されます。

・この時に注意すべきは「時間反転によって光が進む方向は逆転する」のですが「光の色(=赤色)そのものは時間反転しても変わらない」という所にあります。

 

さてそれで通常は「光を出すほう」を「光源」と呼びます。

そうして「光を吸収する側」を「観測者」と呼びます。

そうすると上記の説明はこの置き換えによって次のようになります。

 

・「観測者」が右から左に移動しています。

・その「観測者」が「静止している光源の真上にくる少し前」に「静止している光源から赤い光が真上に発射されます。」

・この「赤い光」は「観測者」が光源の真上に来た時に「観測者」に吸収されます。

 

さてこの時に「赤い光を吸収した観測者」とは何でしょうか?

「ハッセルカンプが行った実験」に戻るならば「基底状態にある水素原子」ということになります。

その水素原子が「赤い光を吸収」して「励起状態に遷移した」のです。

そうしてこの水素原子は本来は黄色の光を吸収する事で励起状態に遷移する」のですが「移動している水素原子は空間を伝わってくる赤色の光を『これは黄色の光である』と認識し、その光を吸収して励起状態に遷移した」のです。

さてなぜ水素原子は「赤色の光を黄色である』」と認識したのでしょうか?

それは特殊相対論が言うように「静止系に対して移動している水素原子は時間が遅れていたから」ですね。

そうであれば「移動している水素原子」にとっては「空間を伝わってくる赤色の光は黄色に見えた」のでした。

これはつまり「観測者が移動している場合の横ドップラー効果では観測者は青方偏移を観測する」という事を示しています。

 

以上より横ドップラー効果の測定において「光源が移動している場合に赤方偏移を観測した」という実験事実の存在そのものが「観測者が移動している場合の横ドップラー効果では青方偏移を観測するという事を保証しているのです。(Q.E.D)

 

さて、以上のような「時間反転した横ドップラー効果の測定」についての認識が「光学時計による単振動の時間遅れの測定の報告」がなされる前に指摘できていれば「さすがである」となるのですが、「実験事実が先行した」のですから「まあ悪くはないね」程度のものとなりますか。

 

注1:「4. 時間遅延と横ドップラー効果のテスト」: https://math-ucr-edu.translate.goog/home/baez/physics/Relativity/SR/experiments.html?_x_tr_sl=en&_x_tr_tl=ja&_x_tr_hl=ja&_x_tr_pto=sc#Recent_Tests :

: https://archive.md/G2GFO :

注2:物理現象でもエントロピーがらみで「時間反転が必ず起きる」とは限らない現象もあります。

しかしながら「原子による光の放出と吸収の過程」については「時間反転が可能である」=「可逆反応である」として良いかと思われます。

 

追記:以上の考察によって「W横ドップラーの測定では何が観測されるのか」が明確になりました。

それはつまり「W横ドップラーの測定では一方が赤方偏移を観測した」のであれば「他方は必ず青方偏移を観測する」が答えになります。

そうしてそれは「時間の遅れはお互い様」が「我々の宇宙では成立していない事」をしめしています。

その代わりに成立している法則は「時間の遅れは一方的」です。

それはまた「客観的な存在としての静止系の証明になっている」という事になります。(Q.E.D)

おっと、以上の結論についてはすでに: 2-26・時間遅れの測定:光学原子時計を使った実験の3 :で到達していたものでした。

さてこのシリーズ「静止系が客観的な存在だと何が困るのか?」の第2章で取り上げたテーマ「W横ドップラーテスト」の結着について、それについては「その実験はむつかしくてなかなか実行できないだろう」と想定されていたものでしたが「実はすでに実行されていた」、そうしてその結論は「W横ドップラーの測定では一方が赤方偏移を観測した」のであれば「他方は必ず青方偏移を観測する」が答えでありました。

さてこの結末(=W横ドップラーテストの結果を示す実験結果の存在)は当初は予想だにしていないものでしたが当方にとっては「うれしい誤算」となったのであります。

 

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PS:相対論・ダークマターの事など 記事一覧

https://archive.md/yh4Y9

https://archive.md/IIDeA

 

 


2-29・時間遅れの測定:光学原子時計を使った実験の6

2023-12-15 01:24:53 | 日記

1、「レポートで提示されている時間遅れの式」についての検証

速度が日常生活レベルで単振動している時計の時間平均の時間の遅れを計算しておきます。

それはつまり

『この動きからの時間の遅れは、動く時計の分数周波数シフトを導きます(17)。
δf/f0=1/⟨γ(1−ν||/c)⟩−1 ・・・式(1)

v/c<<1 の場合、式(1)は δf/f0 ≈−⟨ν^2⟩/2c^2と近似できます。』

『ここで⟨ν^2⟩は振動速度の実効値=(Vrms=sqrt⟨V^2⟩)  (rms、root mean square)である』

とレポートは主張していますが、それがどの程度正しいのか、の確認になります。

 

前の記事から『秒速36mはアルミニウムイオンの単振動の実効値ですので、ピーク速度は51m/sぐらいにはなります。』

従ってsqrt(1-(0.051/300000)^2)が時間遅れの最大値で、これは振幅がゼロの位置です。

他方で最大振幅の時には速度がゼロになりますから時間遅れは発生しません。

さてそれで振動速度をvとしますとC=30万キロ/秒として

v=(0.051/300000)*sin(x)

と表すことができます。

ウルフラムで状況を見ておきます。

https://ja.wolframalpha.com/input?i=%280.051%2F300000%29*sin%28x%29

よくある単振動のカーブです。

最大速度が1.7*10^-7 になります。

それでこれの時間平均をとればそれが実験で求めた『秒速36mはアルミニウムイオンの単振動の実効値ですので、ピーク速度は51m/sぐらいにはなります。』の時の時間遅れを表すことになります。

で、積分時間は0からπまでとします。

sqrt(1-((1.7*10^-7)*sin(x))^2)  を0<x<piの範囲で積分

https://ja.wolframalpha.com/input?i=sqrt%281-%28%281.7*10%5E-7%29*sin%28x%29%29%5E2%29+%E3%80%80%E3%82%920%3Cx%3Cpi%E3%81%AE%E7%AF%84%E5%9B%B2%E3%81%A7%E7%A9%8D%E5%88%86

答えは pi =π=3.1415926・・・

((1.7*10^-7)*sin(x))^2 の部分が小さすぎて

(1-((1.7*10^-7)*sin(x))^2)≒1 で

従ってsqrt(1-((1.7*10^-7)*sin(x))^2)≒1 で

1を「0<x<piの範囲で積分」すればπになる、とウルフラムはいっています。

 

それで「ここであきらめた」のでは「子供のつかい」になってしまいます。

そうであれば「じゃあこれを計算してみ」となります。

sqrt(1-(0.5*sin(x))^2)  を0<x<piの範囲で積分

https://ja.wolframalpha.com/input?i=sqrt%281-%280.5*sin%28x%29%29%5E2%29%E3%80%80%E3%80%80%E3%82%920%3Cx%3Cpi%E3%81%AE%E7%AF%84%E5%9B%B2%E3%81%A7%E7%A9%8D%E5%88%86

さてsin(x)の前が(1.7*10^-7)ではなくて0.5だと計算する様です。

答えは2.93492

右上にある「表示桁数を増やす」をポチると数字がいっぱい並びます。

まあこれだけ桁数があれば十分でしょう。

でこの時のポイントは 2*E(1/4) にあります。

「ここでE(m)はパラメータm=k^2をもつ第2種完全楕円積分です。」

の説明があります。

それでおもむろに

第2種完全楕円積分(0.25)

とウルフラムに入れます。

https://ja.wolframalpha.com/input?i=%E7%AC%AC%EF%BC%92%E7%A8%AE%E5%AE%8C%E5%85%A8%E6%A5%95%E5%86%86%E7%A9%8D%E5%88%86%280.25%29

答えは1.467462209・・・

さてウルフラムは

「sqrt(1-(0.5*sin(x))^2)  を0<x<piの範囲で積分」=2*E(1/4)

と言いました。

従って

「sqrt(1-(0.5*sin(x))^2)  を0<x<piの範囲で積分」

=2*E(1/4)

=2*1.467462209・・・

=2.934924・・・

はい、こうして積分が「第2種完全楕円積分」を使えば出来る事が分かりました。

さてそうすると

sqrt(1-((1.7*10^-7)*sin(x))^2)  を0<x<piの範囲で積分

=2*E((1.7*10^-7)^2)

となります。

https://ja.wolframalpha.com/input?i=%E7%AC%AC%EF%BC%92%E7%A8%AE%E5%AE%8C%E5%85%A8%E6%A5%95%E5%86%86%E7%A9%8D%E5%88%86%28%281.7*10%5E-7%29%5E2%29

答えは

1.570796326794885270・・・

従って

2*E((1.7*10^-7)^2)

=3.14159265358977054*10^-17

時間遅れが発生していない時の「0<x<piの範囲で積分」はπです。

従って

(3.14159265358977054*10^-17)-π

が時間間隔πでの合計時間遅れとなります。

で、これを時間間隔πで割れば「平均時間遅れが出る」のです。

さて

((3.14159265358977054*10^-17)-π)/ π

=-7.22514*10^-15

こうして

『ちなみに図2において近似式による理論カーブは横軸値37辺りで縦軸値が-7*10^-15を示しています。』

がそれなりの精度で「アルミニウムイオンの時間遅れの時間平均を計算出来ている事」が確認できるのでした。

 

ちなみに

「v/c<<1 の場合、式(1)は δf/f0 ≈−⟨ν^2⟩/2c^2と近似できます。」

を使った場合は⟨ν^2⟩=(秒速36m)^2を代入して

δf/f0 ≈−⟨ν^2⟩/2c^2

=-((0.036/300000)^2)/2

=-7.2*10^-15

近似式は2ケタ程度の精度である」となります。

あるいは「この実験の精度は2ケタ程度である」と言っても良いかと思われます。

つまりは「光速に比べれば本当に微少な速度で発生する時間の遅れを観測する事はできた」のではあるが「その観測精度は2ケタ程度である」のです。

まあしかしながら「2ケタ程度の精度であってもこの実験の意味は大きい」のであります。

 

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PS:相対論・ダークマターの事など 記事一覧

https://archive.md/yNk4f