特殊相対論、ホーキング放射、ダークマター、ブラックホールなど

・時間について特殊相対論からの考察
・プランクスケールの原始ブラックホールがダークマターの正体であるという主張
 

その2・ 横ドップラー効果の件

2022-06-29 06:52:15 | 日記

以下、横ドップラーについての英文のういきを参照します。

「相対論的ドップラー効果」
https://en-m-wikipedia-org.translate.goog/wiki/Relativistic_Doppler_effect?_x_tr_sl=en&_x_tr_tl=ja&_x_tr_hl=ja&_x_tr_pto=sc

「横ドップラー効果」の章
・ソースとレシーバーは最も近いアプローチのポイントにあります

図2のbは基準慣性系に対して観測者が速度Vで移動しながら光源を見ている状況を示しています。

それで、この状況では観測者の時計が遅れる為に光源からの光はブルーシフト(周波数が高い方にシフト)すると見えます。

そうして
・受信者は、ソースが最も近いポイントにあると見なします

図3では基準慣性系に対して光源が速度Vで移動しています。

このために光源の時間は遅れて、観測者はレッドシフトを観測する事になります。


それで今、基準慣性系がどこにあるのかわからない状況でアリスとボブが接近しつつあり、距離 R だけ離れてすれ違う、とします。

距離 R が無視できるほどに遠く離れた状況でのアリスとボブの相対速度を V とし、それでアリスとボブがすれ違う時にお互いが相手に光をだし、それをまたお互いが観測する、とします。

その場合は確かに「横ドップラー効果をお互いが観測する」という事になります。

それで、基準慣性系が存在するならばアリスがレッドシフトを観測した場合は、ボブはブルーシフトを観測する事になります。

そうしてアリスがブルーシフトを観測すればボブはレッドシフトを観測します。


それでこの場合、従来の特殊相対論の解釈に立てばこうなります。
お互いが相手の時計の遅れを観測する」と。

つまりアリスもボブもレッドシフトを観測する事になる、と。

つまり従来解釈では「横ドップラーシフトにはレッドシフトのみが起こるのであってブルーシフトは起らない」という事になります


しかしながら実験事実はそうはなってはいません。

「光源が地球慣性系に対して運動している場合」はレッドシフトが観測され「観測者が地球慣性系に対して運動している場合」はブルーシフトが観測されるのです。

その状況については
・1つのオブジェクトが他のオブジェクトの周りを円を描くように動いている

図5の(a)と(b)で確認する事が出来るのです。

そうであれば英文ういきの「相対論的ドップラー効果」の説明においては暗に「基準慣性系の存在=地球が基準慣性系である」と認めている事になります。


追伸
アリスとボブが基準慣性系に対して同じ速度で運動している時は両者の時計の遅れは同等となりレッドシフトもブルーシフトも観測される事はありません

それは上記ういきの中では
・共通の中心の周りを円を描くように動くソースとレシーバー

図6で説明されている状況になります。

この場合は光源の時間の遅れと観測者の時間の遅れが同等になるためにドップラーシフトは観測される事はありません。

ちなみにこの場合「光源と観察者の相対運動がないからドップラーシフトが観察されないのだ」という解釈は誤りです。

地球慣性系に対して円運動する光源、あるいは観察者の時間が遅れる事は図5の(a)と(b)で説明されているからです


追伸の2
特殊相対論の従来の解釈、「運動と言うのは相対的」であって従って「速度 V で接近しつつある光源と観測者はどちらが静止していてどちらが移動しているのかは自由に設定し計算する事が出来る」と主張します。

そうであれば「動いているのは光源である」とした人は「観測者は横ドップラー効果によるレッドシフトを見る」と主張します。

他方で「動いているのは観測者である」とする人は「観測者は横ドップラー効果によるブルーシフトを見る」と主張します。

しかしながら実際にこの宇宙で起きる事は上記の二つの場合が同時に起きる事はなく、どちらか一方の場合のみが起こるのです。

そうであれば特殊相対論の従来解釈「時間の遅れはお互い様」という理解は変更されるべきでありましょう。

・・・というよりも「横ドップラー効果が存在する」とした時点で「時間の遅れはお互い様」という理解は成立していない事になります

PS:相対論の事など 記事一覧

https://archive.fo/Q4aAC

 

 


横ドップラー効果の件

2022-06-27 03:31:55 | 日記

ういき「ドップラー効果」: https://archive.fo/MNLxG :の中の「光のドップラー効果」の章にその記述があります。

それによれば光の場合はドップラーシフトは次のように計算されます。

光源Sが観測者Oから見て角度Θ の方向に速さ V で運動している場合、Oでの光の振動数 f は、
f=f₀*sqrt(1-β^2)/(1-β*CosΘ) ・・・①式
となる。
ここで、f₀ : 光源の出す光の振動数、V: 観測者から見た光源の速さ、C : 光速、Θ : 観測者から見た光源の動く方向( Θ=0 :観測者に向かってくる場合)、β=V/C

そうして横ドップラーシフトはΘ=90度の時、つまりCosΘ=0で f は
f=f₀*sqrt(1-β^2) ・・・②式
となります。

この場合はういきの記事にある様に
『また、光の場合は波源が運動していると、特殊相対論的な効果によって波源上での時間の進み方が遅れて観測される。これにより、波源から出る光の振動数が小さく観測される効果が付け加わる。』
であり、
『特に90度の位置に光源が来た時には視線方向の速度を持っていない場合(Θ=90°)でも光の振動数が変化して見えることである。これを横ドップラー効果という。』
という事になります。

つまり「横ドップラー効果」は「速度 V で移動する事による時間の遅れの効果そのものを見ている」という事であり、上記のΘ=90度の時のドップラーシフトの式もその事を裏づけています。(注2)

・・・と、まあここまではいいのですが、問題は次の様になります。

横ドップラー効果を測定する観測者は光源が移動する直線上にはおらず、その直線から一定の距離を置いた場所で移動する光源を観察し、光源からの光の周波数を測定する、のでした。

そうして観測者に対して真横に来たとき(Θ=90度の時)には観測者に対する相対速度はゼロになります。

これはういきの説明では「(観測者の)視線方向の速度を持っていない時」と説明されています。

そうして特殊相対論のロジックでは「相対速度はあくまで観測者の視線方向で定義されているもの」でありますから、「観測者の視線方向の相対速度がゼロでは時間の遅れは発生しない」という事になります。(注1

しかしながら「実験事実としては確かに横ドップラーシフトはその式が示すように発生している」のでした。

そう言う訳でこれもまた特殊相対論が持つもう一つのパラドックスの様に見えます。


注1:相対論電卓で時間の遅れを計算する場合に入力する相対速度は「観測者の視線方向の相対速度」です。

そうして「観測者の視線方向の相対速度」=0ならば相対論電卓がいう様に「時間の遅れは発生しない」のです。

そうしてこれが特殊相対論のロジックなのです。


追記:双子のパラドックス(加速度運動あり)についてのういきの説明の件・相対論 :http://fsci.4rm.jp/modules/d3forum/index.php?post_id=27347 :では「アリスとボブの間には相対速度があったのに時間の遅れは発生しませんでした。」

そうして横ドップラー効果では「相対速度がゼロで時間の遅れが発生しています。」

以上の事から言えます事は「観測者に対する相対速度によって時間の遅れが発生するのではない」という事です。

そうではなくて「基準慣性系に対する相対運動=相対速度の発生が時間の遅れを発生させる」ととらえるのが妥当なのであります。


注2:このういきの説明は大筋では良いのですが詳細に見るとどうでしょうか。

横ドップラー効果を観測する観察者と光源が移動する直線との距離を D とします。

観測者と光源との距離 L が L>>> D である時には 距離 D の事はほとんど無視できて、観測者の視線方向にみた光源との相対速度はういきの説明の様に V とする事ができます。

しかしながら、光源が観測者に近づくにつれて 距離 D の影響が現れてきて、視線方向にみた光源との相対速度はういきの説明の様に V とする事はできなくなり、光源が真横に来た時には相対速度はゼロになります。

そうでありますから、①式に代入する速度 V の値は光源の移動する直線から 距離 D だけ離れた観測者が観測する相対速度ではなく、常に光源が移動する直線上にいる観測者によって観測された値である、という事になります。

そうして横ドップラー効果を表す②式に代入される速度 V もこの値であり、当の横ドップラー効果を観測している観測者に対する相対速度ではない、という事になります。

そうであれば①式及び②式は、横ドップラー効果を観測する観測者のほかに光源の相対速度を観測しているもう一人の観測者を暗黙のうちに想定している、という事になります。


ちなみに特殊相対論が主張する「時間の遅れ」効果が存在しない場合は縦方向のドップラー効果は確認できますが、横ドップラー効果は存在しない事になります。

追伸
横ドップラー効果を観測する場合は、特殊相対論のロジックに従って、
1、まずは光源の移動する直線上の観察者がその光源を常時観察する事によって光源の時間が遅れている事を確定させる

2、次にその直線から距離D だけ離れた場所にいる、直線上にいる観察者に対しては静止している観察者が光源の横ドップラー効果を観察する
という手順を踏むことになります。

まずは手順1が必要ですね。

そうでなく手順2から始めると横ドップラー効果は観察できなくなる、と言うのが特殊相対論の「観察対象との間の相対速度が時間の遅れを規定する」という計算ルールが主張する内容になります。

光源が観察者の真横に来ると観察者に対する光源の相対速度がゼロになるからですね。


ふーむ、これはまるで量子力学の観察問題の様であります。

しかし実際は1、の手順は不要で2、の手順から始めても横ドップラー効果は観察できるのです。

さてそうなると「観察対象との間の相対速度が時間の遅れを規定する」という計算ルールはどこにいったのでしょうか??

あるいは手順1、の代わりに移動する光源を観測し時間の遅れを決めているものは何でしょうか??


答えは「それは空間の働きそのものであり、その様にできる空間が基準慣性系である」という事になります。

あるいは「空間そのものが観察者である」と言うように表現する事も出来そうです。

観察者の存在は、観測装置の存在は横ドップラー効果が存在する為の条件にはなってはいない、という事になります。

それはまたこの宇宙で起きている事が「あなたと私」という「相対的な関係」ではなく「あなたと空間と私」という客観的な関係に変わる、という事でもあります。

そうしてその状況は「双子のパラドックス(加速度運動あり)についてのういきの説明の件・相対論」: http://fsci.4rm.jp/modules/d3forum/index.php?post_id=27347 :で議論した 「地球を真ん中にして左右に飛び立ったアリスとボブの物語で起きていた状況と同じもの」です。


追伸の2
こうして地球、あるいは空間、あるいは基準慣性系の存在が「タキオン反電話が行っている計算手順=時間の遅れを計算する中で自由に計算の主体を入れ替えて計算を行う事=アリスの立場で計算を始めて途中でボブの立場に計算を切り替える事」を禁止しており、その結果として「タキオン反電話が主張している事=タキオンが存在したら過去に情報を送る事が可能である」という主張を成り立たなくさせているのです。

つまり「タキオン通信機があっても因果律は破壊されない」のです。

ちなみに「タキオン反電話が主張する計算手順」については :http://fsci.4rm.jp/modules/d3forum/index.php?topic_id=3742#post_id26518 :を参照願います。


追伸の3
横ドップラー効果の存在は少なくとも以下の事を示しています。

光源が移動する直線上にいない観測者が属する慣性系に対して静止している空間の中を運動する光源の時間は、その移動速度に応じて時間が遅れる。

ここでのポイントは次の通りです。

光源の時間の遅れは特殊相対論が主張する事=観測者に対する光源の移動速度=相対速度で決まるのではない。

そうではなくて、観測者が属する慣性系に対して静止している空間の中を移動する速度=慣性系に対する相対速度で決まる、と言うものです。

 


PS:相対論の事など 記事一覧

https://archive.fo/bpmku

 


その2・ 相対論的加算式のベクトル合成による理解の件

2022-06-25 04:32:39 | 日記

さてそれで人類が自力で作り出した最高速度は第2宇宙速度(地球の引力を振り切って別の天体に行くための速度)=11.2km/S 程度です。

ここではこの速度を例として取り上げましょう。

それで少しおまけして12km/S を達成できた、として、そこからさらに12km/Sを足し上げる事を考えます。



光速を30万キロ/Sとしますと、この速度は0.00004Cとなります。

これで速度の三角形を作りますと

狭角は179.9935177度

180度からの差分は0.00648227度

その時の対辺の長さは0.000079999999C

0.00008Cからの差分は1.27999Eー13*C

光速を元に戻すと

1.27999Eー13*C=秒速3.8399999ミクロン

これだけガリレイ変換、単純な速度の足し上げから少なくなっている事が分かります。



以上は前のページで述べた

「Θの取りうる値の範囲は180度 > Θ ≧ 60度 である」という事の180度側の実例になります。

そうして相対論によればΘは決して180度になることはない

どのような小さな速度の足し算であっても速度の三角形は作られて

Θ<180度 になる

という事になります。



まあ「だからどうした」というものでもありませんが、「以上、一応確認してみた」という事でした。

 

PS:相対論の事など 記事一覧

https://archive.fo/0V161

 


相対論的加算式のベクトル合成による理解の件

2022-06-23 02:53:15 | 日記

相対論を調べていくと「ラピディティ」: https://archive.fo/SIG4B というのが出てきます。

なにやら速度に関係したものらしいのですが、逆双曲正接関数 artanh という耳慣れない関数が出てきて嫌になります。

・・・というわけで、良く知っている三角関数CosΘの話にしようじゃないか、という話です。

それで「ラピディティ」も相対論的な速度の加法則から出てきたようです。

『・・・この式により、ラピディティの有用な特性である、加法性が確立される。つまり A, B, C を基準系とすると、次の式が成り立つ。

φAC=φAB+φBC

この式の単純さは、相対論的な速度の合成則(英語版)とは対照的である。・・・』

つまりうぃきは相対論的な速度の加法則

V=(V1+V2)/(1+V1*V2/C^2) ・・・①式

と言う式は「複雑である」と言っているのです。(注1)



さてこのうぃきの指摘は本当でしょうか?

ちなみに①式はCを単位系に用いる(V=V*C、V1=V1*C、V2=V2*Cを代入する)と式の中からCを消せます。

勿論その場合は1 ≧ V、V1、V2 ≧ ー1と変数が取れる数値範囲が変わります。

そうして①式は

V=(V1+V2)/(1+V1*V2) ・・・②式

に変わります。

それでガリレイ変換の世界、通常の我々の常識の世界では

V=(V1+V2)

が成立しています。(・・・の様に我々は認識しています。)

そうであれば当然(1+V1*V2)>1  によって

V(ガリレイ)=(V1+V2)>(V1+V2)/(1+V1*V2)=V(相対論)

であって

つまりは相対論は

V(相対論)<(V1+V2) ・・・③式

であると言っているのです。

そうしてガリレイ変換の世界ではV、V1、V2を速度ベクトルの加算として図にかけば、それは一直線上に並んだ3つのベクトルとなります。

しかしながら相対論の世界では③式のおかげで「一直線上に並んだ3つのベクトルの加算の絵」にはならず「Vベクトルの長さが足りない」ので、それでもベクトル加算の絵を書くと「1次元の絵」ではなく「2次元の絵のなる・ならざるを得ない」という事になります。

そうしてそこに現れるのはV、V1、V2をそれぞれの辺に持つ三角形の絵となります。

それでその絵を見ると分かるのですがVというのは「V1とV2という2つの辺が作る狭角Θの向かい側にある辺」であって、従って「第二余弦定理」:https://archive.fo/h8X6z によって

CosΘ=(V1^2+V2^2-V^2)/(2*V1*V2) ・・・④式

が成立しています。(注2)

つまり「加算する速度ベクトルV1とV2とは直線的に加算できず加算点で角度Θをもって折れ曲がる」という事をその絵は示しているのです。

これが実は「相対論的速度加算のしくみ」になります。

そうしてガリレイ変換の世界ではこの角度Θが常に180度であって、つまり「3つの速度ベクトルが作る三角形はつぶれて一直線になる」という訳です。



さてこの④式に今度は②式を代入しVを消します。

手計算でも良いし、ウルフラム : https://ja.wolframalpha.com/ :を使ってもいいのですが、最終的に次の式を得ます。

・・・あまりきれいになりませんでした。
②式を代入しただけの式が一番見通しがよさそうです。

CosΘ=(V1^2+V2^2-((V1+V2)/(1+V1*V2))^2)/(2*V1*V2) ・・・⑤式



さて相対論的加算式を上記のように理解した場合は、V1の速度がCの時、つまりV1=1の時にはΘの角度はいくつになるのでしょうか?

⑤式より

CosΘ=(1^2+V2^2-((1+V2)/(1+1*V2))^2)/(2*1*V2)=V2/2

V2がゼロの時はCosΘ=0 したがってΘ=90度

まあもっともV2がゼロでは三角形にはなりませんが、この時のVの値は1(V=C)ですので、「絵としては成立しています。」



V2が0.1の時は(V2=0.1C)、CosΘ=0.05 したがってΘ=87.13・・度

ちなみにこの時のVの値は1(V=C)であって、従って三角形は

V=V1=C

V2=0.1C

の二等辺三角形で底辺V2の両側の角度が87.13・・度、従って頂点の角度は5.74・度となります。



次にV1=V2=Cの時を見ます。

⑤式より

CosΘ=(1^2+1^2-((1+1)/(1+1*1))^2)/(2*1*1)=1/2 

したがってΘ=60度

はい、これは正三角形の事ですね。


以上の事よりΘの取りうる値の範囲は

180度 > Θ ≧ 60度 である、と言えます。
(但しV1あるいはV2がCである時は180度 ≧ Θ ≧ 60度)

そうしてまた、この三角形の面積Sの取りうる値の範囲は

sqrt(3)/4*C^2 ≧ S ≧ 0 である、と言えます。

ちなみにこの面積Sの値が大きいほど「2つの速度V1とV2の加算は相対論的である」と言えます。
(従ってガリレイ変換での速度加算では面積Sの値はゼロとなります。)


注1:V1,V2,Vの関係については「おにノート」: https://archive.fo/jydqn :の「問題設定」のイラストおよび「結論」を参照願います。

注2:「第二余弦定理」は三角形の面積を出す「ヘロンの公式」と同等であり、その形に変形する事が可能です。


追伸
その3・ 光速の測定と光速を使った測定・相対論 :http://fsci.4rm.jp/modules/d3forum/index.php?topic_id=3815#post_id26950
で示した様に「相対論的速度の加算式」はローレンツ変換を用いることなく導出する事が可能です。

つまり「同じように光の特性について考察した結果から得られる二つの式」ですが「相対論的速度の加算式が成立している理由とローレンツ変換が成立している理由は独立している」と見なす事が出来そうです。

追伸の2:2022/6:上記では「相対論的速度の加算式が成立している理由とローレンツ変換が成立している理由は独立していると見なす事が出来そうです。」と書きましたが、「光の速度は不変である」という条件からローレンツ変換も、そうしてまた相対論的速度の加算式も導出する事が可能である、というのが実状です。

したがって「この二つの関係は独立である」ということはなく「兄弟のようなものである」という所が正解の様に思われます。

 

PS:相対論の事など 記事一覧

https://archive.fo/nBrgf

 


その2・時間の遅れについての理論内部の不整合の件

2022-06-21 00:52:54 | 日記

まずは日本版ういきから引用します。: https://archive.fo/hCjKk

『時間(時刻の隔たり)の伸び

運動する観測者 A があり、A とは別の観測者 B が慣性運動し、A 側の座標系 (ct, x, y, z) にて B の位置が、x→(τ) = (ct(τ), x(τ), y(τ), z(τ))
と書けるとき、・・・

・・・A 側の固有時間 T が得られる。ここで V(t) は時刻 t における A と B の相対速度である。

V<C ゆえ、積分内は常に1未満であり、慣性系B側の時間 T′ との関係は次式となる:

T<T'

・・・特に観測者 A も慣性運動しているときは、相対速度V は常に一定であり、次式となる:

T=T’*SQRT(1-V^2/C^2) 』

これはつまり「慣性系アリスから慣性系ボブをみた時の時間の遅れはローレンツ係数 SQRT(1-V^2/C^2) だけ遅れて見える」=「実際にボブの内部時間は遅れる」という事を示しています。



さて前のページでの議論では

O君から見たアリスの時計は0.6掛けでO君の時計より遅れている

O君から見たボブの時計は0.4346掛けでO君の時計より遅れている

アリスから見たボブ号の相対速度V2=107,525.8km/s 

この相対速度V2でアリスがボブの時計の遅れを上の式で計算すると0.93347掛けで遅れている事になる。

だがしかしこの値はO君観察の値 0.4346÷0.6=0.72433 とは一致しない

と言うものでした。



これは明らかに「特殊相対論内部にある不整合」です。

特に特殊相対論が立つ「特別な慣性系はなく、すべての慣性系は平等である」という立場とは相いれない結果になっています。

と言うのも、上記の矛盾を解消するためには

1、V2の計算式=相対論的速度の加算式 を変更するか、それとも

2、相対論的速度の加算式と整合する様に 時間の遅れの式を変更する、あるいは

3、O君の立場を「特別なもの」と認め「優先慣性系」=「基準慣性系の存在を認める」

まあこの3つあたりしか解決策がない様です。

ちなみに3、の立場は「時間の遅れは基準慣性系に対する相対運動によって生じる」と言うものになります。

したがっていくらアリスから見たボブ号の相対速度が計算され、あるいはレーダーで検出されてもその値V2ではアリスから見たボブ号の時間の遅れは計算できない、という事になります。



さてそれで結論から言えば2、の立場はまず取り得ないでしょう。

そうすると残りは1、か3、という事になります。

それで1、を選択した場合にどうなるか見てみましょう。



基準慣性系にO君がいます。

そのO君に対してアリスはV1=0.8Cで離れていきます。

それと同時にボブがV=0.9Cで同じ方向に離れていきます。

アリスからボブをみた時の相対速度がV2です。

それで

O君観察の値 0.4346÷0.6=0.72433は一般式では

(SQRT(1-(V/C)^2))/(SQRT(1-(V1/C)^2))

となります。

アリスから見たボブ号の相対速度V2=107,525.8km/s 

この相対速度V2でアリスがボブの時計の遅れを上の式で計算すると0.93347掛けで遅れている事になる。・・・と言う部分は一般式では

sqrt(1-((V2)^2/C^2))

となります。

この二つの値が常に同じくなる、と言うのが必要十分条件ですから

sqrt(1-((V2)^2/C^2))ー(SQRT(1-(V/C)^2))/(SQRT(1-(V1/C)^2))=0の解を求めればよい、という事になります。

それでウルフラムの出番です。

入力欄に

sqrt(1-((V2)^2/C^2))ー(SQRT(1-(V/C)^2))/(SQRT(1-(V1/C)^2))=0

をコピペしてポチると実数根を表示してくれます。

https://ja.wolframalpha.com/

V2=±sqrt(ーC^2(V1^2-V^2) /(C^2-V1^2))

整理して

V2=±sqrt((V^2-V1^2)/ (1-V1^2/C^2 ) )

この式で計算したアリスからボブをみた時の相対速度V2を了解するのであれば、時間の遅れについての不整合はなくなります。(注1)



しかしながらえられた式は相対論がいう加算式

V2=(V-V1)/ (1-V*V1/C^2)

とは似てはいますが、それ以外の挙動はどうでしょうか?

相対論の式のV1にCを入れますとV2=ーCと値が出ます。

他方で得られた式のV1にCを入れますとV2は発散してしまいます。



次は加算式を確認するためにVについて解いてみましょう。

Vの代わりにXをその位置に置きます。

sqrt(1-((V2)^2/C^2))ー(SQRT(1-(X/C)^2))/(SQRT(1-(V1/C)^2))=0

コピペしてポチると実数根を表示してくれます。

https://ja.wolframalpha.com/

X=V=±(sqrt(C^2*V1^2+C^2*V2^2-V1^2*V2^2))/ C

しかしながらえられた式は相対論がいう加算式

V=(V1+V2)/ (1+V1*V2/ C^2 )

とは一致しませんし似てもいません。



こうして「時間の遅れについての不整合を無くす式」は得られますが、その式は相対論のロジックから得られる通常の速度の合成式とは全く違うものになる、という事が分かるのです。



さて、以上の事をまとめますと

時間の遅れについての特殊相対論の中に起きている不整合を無くすためには3、を認める、

という結論に至るのであります。



注1:確認しておきましょう。

V2=sqrt((V^2-V1^2)/ (1-V1^2/C^2 ) )

SQRT(1-V2^2/ C^2)
に代入すると

SQRT (1-(sqrt((V^2-V1^2)/ (1-V1^2/C^2 ) ))^2/C^2)

ウルフラムにコピペしてポチると整理してくれます。

https://ja.wolframalpha.com/

「別の形」から整理した式として

SQRT((C^2-V^2) / ( C^2ーV1^2 ) )

その式は

=(SQRT(1-(V/C)^2))/(SQRT(1-(V1/C)^2))

となります。

Q.E.D.


追記
相対論がいう加算式

V2=(V-V1)/ (1-V*V1/C^2)

についてはレーダーを使ったアリスによるボブ号の速度測定値がV2になる、という事は確認済でした。

http://fsci.4rm.jp/modules/d3forum/index.php?topic_id=3815#post_id26950

つまり「現実の宇宙の中でリアルに測定可能な速度である」という事になります。

他方で今回出てきた

V2=±sqrt((V^2-V1^2)/ (1-V1^2/C^2 ) ) ・・・①式

という式が与えるV2の値が現実の宇宙の中で何に対応するのか、それはこれからの検討課題であるように見えます。


追記の2
①式はO君がボブとアリスを観察して得たそれぞれに対する相対速度VとV1の値から、時間の遅れに対する不整合が起きないようにした場合の速度V2を算出するものであれば、「時間の遅れ」という観点に立った場合に「O君にはアリス号とボブ号がどう見えるのかを与えている」と言えそうです。

追記の3
時間の遅れの式も相対論的な加算式も両方ともにローレンツ変換式から出てくる様です。

であればなぜその両者間で整合性が取れなくなるのか、解かれなくてはならない謎がそこにはあります。

ちなみに相対論と言うのはそのコトバ通りに「私とあなたの関係を問うもの」ですが、速度の加算式はそこに第三者が登場するのです。

そうして速度についての加算式に登場するK0慣性系は加算式の中では自分自身の慣性系については特別な優先度を主張してはいない様に見えます。

しかしながら同じK0慣性系が時間の遅れを考慮する場合は、自分自身の優先度を主張する様に見えます。

この状況はコトバを変えますと「速度と言うものは本質的に相対的であるが、時間はそれほど相対的ではない」と言えます。

そうしてこの事の認識は相対論においては結構大事であると思われます。

PS:相対論の事など 記事一覧

https://archive.fo/HonZz
https://archive.fo/rNFzt
https://archive.fo/u31rT