特殊相対論、ホーキング放射、ダークマター、ブラックホールなど

・時間について特殊相対論からの考察
・プランクスケールの原始ブラックホールがダークマターの正体であるという主張
 

その2-6・誤解されている「Ives と Stilwellの実験内容」の2

2023-08-31 02:21:02 | 日記

さてそれで話を「Ives と Stilwellが行った実験」に戻します。

横ドップラー測定のそもそもの目的は「動くものは時間が遅れる」という特殊相対論の主張の検証にありました。

そうして横ドップラーが実現している条件では観測値の中には縦ドップラーの影響がなくなり、「時間が遅れている効果」が直接現れる事を期待したのです。

しかしながら二人は「直接的な横ドップラーの観測は難しい」として「真逆方向になる縦ドップラーを同時に観測し、その平均をとればそれが横ドップラーになるだろう」と予想しました。

これはつまり「縦ドップラーの中に特殊相対論が予想している時間遅れの効果が入っているはずだ」と予想した事になります。

「しかしながら(+)方向と(-)方向を別々に個別に測定しただけではその情報は縦ドップラーに邪魔をされて現れてこない、しかし2つの方向を同時に測定しその平均をとれば、縦ドップラーの時間遅れの測定の邪魔をする成分はお互いに打ち消し合う事が可能だろう」と考えました。

つまり「縦ドップラー成分の(+)と(-)を足し合わせれば縦ドップラーの影響はゼロにできる」と読んだのです。

 

さてそれで前のページで示しましたように横ドップラー状態から光源と観測者の距離を離す事で順次、縦ドップラー状態になっていきます。

そうしてその極限で成立している(+)方向と(-)方向の式を確認しました。

さてそれでその式は周波数表示になっています。

そうであれば「その2-4」で計算した周波数換算で起きていた事がその式2つの式を足し合わせる事で確認できます。

(-)方向は ν’(-)=ν*sqrt(1-V)/sqrt(1+V)

(+)方向は ν’(+)=ν*sqrt(1+V)/sqrt(1-V)

足し合わせると

ν’(-)+ν’(+)=ν*sqrt(1-V)/sqrt(1+V)+ν*sqrt(1+V)/sqrt(1-V)

=ν*(sqrt(1-V)/sqrt(1+V)+sqrt(1+V)/sqrt(1-V))

(sqrt(1-V)/sqrt(1+V)+sqrt(1+V)/sqrt(1-V))の部分をウルフラムに入れます。

実行アドレス

https://ja.wolframalpha.com/input?i=%28sqrt%281-V%29%2Fsqrt%281%2BV%29%2Bsqrt%281%2BV%29%2Fsqrt%281-V%29%29

「別の形」に答えがでています。

2/sqrt(1-V^2)

そうであれば

ν’(-)+ν’(+)=ν*2/sqrt(1-V^2)

「Ives と Stilwellが行った実験のやり方」に従って平均をとります。

(ν’(-)+ν’(+))/2=(ν*2/sqrt(1-V^2))/2

=ν/sqrt(1-V^2)

こうして真逆方向になっている縦ドップラーの同時測定データを周波数換算し、その平均をとった時に得られる値を計算できる式が導出できた事になります。

そうしてこの式を使った計算はすでに「その2-4」で確認しており、その結果は「Ives と Stilwellが行った実験で得られた(+)と(-)方向のデータを周波数換算し、その平均を取った場合、計算式が示す計算結果と実験結果は一致していた」のです。

くわえてその場合は「平均周波数データ」は「青方偏移を示していた」のでした。

 

さて、それに対して「Ives と Stilwellが行った実験のやり方」=「観測したデータが光の波長なので、そのまま波長で処理した場合」は

「アインシュタインの特殊相対性理論(1905年):http://fnorio.com/: https://archive.md/Gl1Hd#3-2-2 :の[補足説明2]

に詳しく説明されています。

そうしてその場合は「平均波長データ」は「赤方偏移を示していた」のです。(注1)

 

さて上記2つの場合の実際の数値を使った確認はすでに「その2-4」で終わっていて、2つの処理方法そのものには間違いはなさそうです。

そうであれば「Ives と Stilwellが行った実験」というのは「横ドップラー効果は赤方偏移した事を確認した」のではなくて「1/sqrt(1-V^2)の値を求めた」のです。

そうしてこのsqrt(1-V^2)という値が特殊相対論が予想した時間遅れ因子そのものでした。

そうであれば「Ives と Stilwellが行った実験」は「横ドップラーシフト」とは無関係であって「特殊相対論が予想した時間遅れ因子を確認した実験」という事になります。

 

ちなみに「Ives と Stilwellが行った実験でえられた2つの縦ドップラーシフトのデータの平均値」については「それをみて『赤方偏移した』とか『青方偏移した』とか判断できる『そのような評価ができるデータではない』」という事になります。

『赤方偏移した』とか『青方偏移した』とかいう評価は「不適切」なのです。

それが「Ives と Stilwellが行った実験でえられた2つの縦ドップラーシフトのデータの平均値の正体」なのでした。

 

注1:観測された波長をつかったまとめの為に、アインシュタインの提示した縦ドップラーの式(これは周波数対応のものであった)を波長対応に変換してその和と平均値を取るとこうなっています。

観測されたデータの平均周波数λ1

光源の基線波長λ0

λ1=λ0/sqrt(1-V^2)

不思議な事に、というか、当然のことに「単に振動数を波長に入れ替えただけの式」になるのです。

そうであれば「観測されたデータの平均周波数λ1>光源の基線波長λ0」となります。

 

追記:この「Ives と Stilwellが行ったタイプの実験」では静止系がどこにあるのか、光源が静止していたのか、観測者が静止していたのか、そういう事に無関係に「1/sqrt(1-V^2)の値を求める事ができる実験である」といえます。

そうしてまた後日これは明らかになる事なのでここで指摘する事は少々フライングなのですが、このやり方の場合は「光源と観測者が静止系に対して両方ともに動いていても、光源と観測者の間の相対速度Vが同じであれば同一の観測結果が得られる」という優れた特性をもっています。

そうであれば「時間遅れを確認する」という事についてはこの「Ives と Stilwellが行った実験」はとても有効なものであると言えます。

ただし「Ives と Stilwellが行ったタイプの実験は横ドップラーシフトとは無関係」であります。

そうであればやはり「横ドップラーシフトは直接測定するしかない」のです。

 

追記の2:一見この不思議な現象、平均値を波長で見ると赤方偏移、周波数で見ると青方偏移、という結果には驚かされます。

しかしながら元データにもどって、なおかつ「非相対論的なドップラーシフトの式」で縦ドップラーを計算し、その結果とIves と Stilwellが行った実験結果のデータを比較してもそこには何の矛盾もありませんでした。

つまりは「この実験は正常に行われた」のです。

さてこの不思議な現象について、これ以上の探究されたい方については「どうぞご自由に」という事になります。

なんとなれば「検証に必要なデータは全て公開されているから」です。

 

PS:相対論・ダークマターの事など 記事一覧

https://archive.md/qyOhn

 


その2-5・通説の式とアインシュタインの式

2023-08-28 03:13:32 | 日記

まずは通説が示しているドップラーシフトの式を示します。(注1)

ν’=ν*sqrt(1-V^2)/(1-V*Cos(Θ)) ・・・(1)式

但し静止している観測者に対して光源が動く場合: Θ  : 観測者から見た光源の動く方向(Θ  =0 :観測者に向かってくる場合)

 

それに対してアインシュタインが示した式は次のものです。(注2)

ν’=ν*(1-V*Cos(Θ))/sqrt(1-V^2) ・・・(2)式

但し静止している光源に対して観測者が動く場合: Θ  :光源から見た観測者の動く方向(Θ  =π :光源に向かってくる場合)

 

両者を比較すると分かるのですが、角度の取り方が真逆になっています。

まあその事に注意が必要です。

それで両者ともに光源と観測者が離れていく場合を(-)で示すこととします。

そうしますとその極限(=光源と観測者の距離が無限大)では(1)式ではΘ=πであり(2)式ではΘ  =0です。(注3)

これをそれぞれの式に代入しますと

(1)式(-)=ν*sqrt(1-V^2)/(1-V*Cos(Θ))

=ν*sqrt(1-V^2)/(1+V)

=ν*sqrt(1-V)/sqrt(1+V)

(2)式(-)=ν*(1-V*Cos(Θ))/sqrt(1-V^2)

=ν*(1-V)/sqrt(1-V^2)

=ν*sqrt(1-V)/sqrt(1+V)

これはつまり「光源が動いても観測者が動いても、その間の距離が離れる方向であれば距離が無限大になった最後には同じ式になる」という事を示しています。(注4)

あるいは逆に言いますと「この2つの式に違いが現れるのはΘ=π/2、つまりは光源と観測者がすれ違う時である」となっているのです。

そうであれば「横ドップラーの時にはこの2つの式は違う計算値を返す」のです。(注5)

 

さてそれで「離れる方の極限」の反対、2つの間の距離は無限大ですがお互いが近ずく方向に動く場合を確認しておきます。

そうしてその場合の符号は(+)で示します。

Θは今度は(1)式ではΘ=0であり(2)式ではΘ  =πです。

(1)式(+)=ν*sqrt(1-V^2)/(1-V*Cos(Θ))

=ν*sqrt(1-V^2)/(1-V)

=ν*sqrt(1+V)/sqrt(1-V)

(2)式(+)=ν*(1-V*Cos(Θ))/sqrt(1-V^2)

=ν*(1+V)/sqrt(1-V^2)

=ν*sqrt(1+V)/sqrt(1-V)

はい、この場合も両者はおなじ式になります。

そうしてその式の形は「離れる方向に動いた場合の式の分子、分母を入れ替えた形」になっています。

 

さてこうして2つの式の挙動が見えましたので、それをグラフ化しておきます。

但しΘの扱いが2つの式で逆になっていますので、これについては通説の角度の取り方を基準として示します。

そうしてこの例では相対速度VはV=0.5Cで計算します。

y=sqrt(1-0.5^2)/(1-0.5*cos(x)),y=(1+0.5*cos(x))/sqrt(1-0.5^2),y=1000000*(x-pi/2),y=1 プロット  0<x

実行アドレス

https://ja.wolframalpha.com/input?i=y%3Dsqrt%281-0.5%5E2%29%2F%281-0.5*cos%28x%29%29%2Cy%3D%281%2B0.5*cos%28x%29%29%2Fsqrt%281-0.5%5E2%29%2Cy%3D1000000*%28x-pi%2F2%29%2Cy%3D1%E3%80%80%E3%83%97%E3%83%AD%E3%83%83%E3%83%88++0%3Cx%3Cpi+%2C-0.1%3Cy%3C2

表示はΘが0からπまで、上のカーブがアインシュタインの式、下のカーブが通説の式になっています。

横線はいわゆるドップラー係数が1、つまり周波数が変化しない位置をしめしており、それより上は青方偏移を下は赤方偏移する事を示しています。

そうして横ドップラーの起きる場所はΘ=π/2≒1.57であり、その位置は縦棒が示していますがアインシュタイン条件、つまりは光源が静止していて観測者が動いている場合と通説の条件=観測者が静止していて光源が動いている場合のそれぞれのドップラー係数が読み取れます。

さてそうしますと横ドップラーシフトの観測ではアインシュタイン条件では青方偏移を観測し、通説条件では赤方偏移を観測する事になるのが確認できます。

ここでΘ=π/2の時のそれぞれの式の形を確認しておきます。

(1)式(π/2)=ν*sqrt(1-V^2)

(2)式(π/2)=ν/sqrt(1-V^2)

V=0.5を代入すると

(1)式(π/2,0.5)=ν*sqrt(1-V^2)≒0.866ν

(2)式(π/2,0.5)=ν/sqrt(1-V^2)≒1.155ν

さてページか尽きました。続きはまた後日。

 

注1:ういき:ドップラー効果: https://archive.md/MNLxG :の「光のドップラー効果」章によれば、

ν’=ν*sqrt(1-V^2)/(1-V*Cos(Θ))

ここで、ν’:観測者が観測する振動数、ν  : 光源の出す光の振動数、V: 観測者から見た光源の速さ、但しここでは 光速を1とする単位系を採用、Θ  : 観測者から見た光源の動く方向(Θ  =0 :観測者に向かってくる場合)

重要なのは、光の場合には光源が観測者の視線方向に対して垂直に運動しており、視線方向の速度を持っていない場合(Θ  =90°)でも光の振動数が変化して見えることである。これを横ドップラー効果という。

ここでΘ  =90°とすると諸式はCos(Θ)=0より

ν’=ν*sqrt(1-V^2)/(1-V*Cos(Θ))

=ν*sqrt(1-V^2)/(1-V*0)

=ν*sqrt(1-V^2)

となる。

注2:「アインシュタインの特殊相対性理論」(1905年):https://archive.md/Gl1Hd#3-2-2 :を参照のこと。

特に光源と観測者の移動方向と角度Θの取り方については[補足説明1]にある図を確認してください。

注3:ここで注意すべきは「横ドップラーの観測を行う為には光源と観測者はどちらが動くにせよ、すれ違う時に両者の間の間隔Dが有限の値を持っていなくてはならない、という事です。

間隔Dがゼロであれば「すれ違い」ではなく「衝突」がおこります。

そうであれば「横ドップラーを考える時」はD≠0です。

しかしながら、通常の縦ドップラーを簡略的に取り扱う時はこの衝突コース(D=0)で計算します。

そうして間隔Dがゼロである、という事は角度Θに変換すると「Θ=0」か「Θ=π」になっている、という事です。

つまりは「光源と観測者の距離が無限大」=「間隔Dがゼロである」という事なのです。

さてそうであれば実際の場面では「光源と観測者の距離が無限大」とされても、無限大の距離に離すのではなくて間隔Dをゼロにするのです。

注4:「静止系にあるのが光源なのか観測者にあるのか」その情報は縦ドップラーの観測値の中には含まれない、ということです。

但し次ページで示すように「時間遅れの情報は入っている」模様です。

そうしてそれを取り出す事に成功したのが「Ives と Stilwellが行った実験」という事になります。

ちなみに上記の諸式変形では

sqrt(1-V^2)=sqrt((1-V)*(1+V))=sqrt(1-V)*sqrt(1+V)

(1+V)=sqrt(1+V)*sqrt(1+V)

(1-V)=sqrt(1-V)*sqrt(1-V)

Cos(0)=1, Cos(π)=-1

と言う関係を使っています。

注5:それに対して横ドップラーの観測値の中には「静止系にあるのが光源なのか観測者にあるのか、判別可能な情報が含まれている」という事になります。

加えて「時間遅れの情報も入っている」という事です。

ただしその情報を取り出すのにはそれなりに工夫された実験計画が必要となります。

 

追記:「Ives と Stilwellが行った実験」では上でしめしたグラフがどうなっていたのか、確認しておきます。

V=0.005Cでしたので、この部分が上記の場合からの変更点となります。

y=sqrt(1-0.005^2)/(1-0.005*cos(x)),y=(1+0.005*cos(x))/sqrt(1-0.005^2),y=1000000*(x-pi/2),y=1 プロット  0<x

実行アドレス

https://ja.wolframalpha.com/input?i=y%3Dsqrt%281-0.005%5E2%29%2F%281-0.005*cos%28x%29%29%2Cy%3D%281%2B0.005*cos%28x%29%29%2Fsqrt%281-0.005%5E2%29%2Cy%3D1000000*%28x-pi%2F2%29%2Cy%3D1%E3%80%80%E3%83%97%E3%83%AD%E3%83%83%E3%83%88++0%3Cx%3Cpi+

通説の式とアインシュタインの式がほとんど、横ドップラー状態を含めて重なっている事がわかります。

そうして縦軸がx=π/2の位置を示しています。

つまり「この位置が横ドップラーシフトの位置」なのです。

それでその時のドップラー係数はほとんど1です。

つまり「このおそい相対速度V=0.005Cでは横ドップラーの直接観測はムリである」という事になります。

この理由の為に「Ives と Stilwell」は測定の仕方を変更したのでした。

(注意):ブログの表示機能の不具合の為、ウルフラムへの入力文に一部、欠落が生じています。そうであれば入力文については実行アドレスでウルフラムを参照されそちらで確認するようにお願いします。

 

PS:相対論・ダークマターの事など 記事一覧

 

 


その2-4・誤解されている「Ives と Stilwellの実験内容」の1

2023-08-25 04:59:15 | 日記

「アインシュタインの特殊相対性理論(1905年):http://fnorio.com/: https://archive.md/Gl1Hd#3-2-2 :

fnorio氏のまとめによれば「2.ドップラー効果」の章にてアインシュタインのドップラー効果についての論文の説明をされています。

そうしてその本文に続く[補足説明2]に「Ives と  Stilwellの実験内容詳細」が載っています。

それでそこで提示されている(11.21)式はアインシュタインが最後に提示した式と同じ、つまり「光源と観測者が速度Vで離れていく時のドップラーシフトを表すもの」になっています。

そうであれば「 Ives と Stilwellは赤方偏移を観測した」と通説では認識されています。

ちなみにこの実験内容と結果の具体的な詳細については:https://en.wikipedia.org/wiki/Ives%E2%80%93Stilwell_experiment :にあります。

さてそうであればここではこの2つの資料に基づいて話を進める事になります。

そうして以下は前のページからの引用です。

『まずは「 Ives と Stilwellの実験では横ドップラー効果を測定していない」という事から始めましょう。

この実験では縦ドップラー効果で生じるプラス方向(=周波数が上がる方向)とマイナス方向(=周波数が下がる方向)を同時に測定し、その和をとって「特殊相対論が予測した時間の遅れを検出した」と言うものです。(注1)

そうであればアインシュタインが希望した「特殊相対論の予測=運動するものは時間が遅れる」はこの実験で確認できたのですが、横ドップラーシフトそのものの確認はこのタイプの実験では確認はできてはいないのです。

さてそうであれば「 Ives と  Stilwellの実験では横ドップラー効果を測定しその結果は赤方偏移を示した」と言う認識は誤りなのです。』

 

前のページでは「 Ives と  Stilwellの実験では横ドップラー効果を直接、測定したのではない」という事を指摘しました。

そうしてこのページでは「その実験結果の解釈=赤方偏移を示した」というのは「実験結果について2つある見方の一つの解釈でしかない」という事を示します。

はい、それはつまり「もう一つの解釈方法(=青方偏移を示した)がある」という事です。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

さてそれでまずは今まで行われてきた解釈方法を以下に示します。

英文のういきから1938年の実験結果を引用します。

測定水素ガスの速度 0.005C

基本輝線波長 4861Å(オングストローム)

赤方偏移波長 4885.18Å ・・・観測データ①

青方偏移波長 4836.94Å ・・・観測データ②

(①+②)/2 の波長 4861.06Å

2方向の真逆の縦方向ドップラーシフトを同時観測しています。

赤方偏移は観測者から遠ざかる方向、青方偏移は観測者に近づく方向に電離水素原子が動いた時に発する光を見ています。

そうして基本輝線波長は動いていない水素原子が発する光の波長です。

さてそうであればデータ①と②の平均をとると確かに基本波長より伸びている様に見えます。(=赤方偏移している

基本輝線波長 4861Å<(①+②)/2 の波長 4861.06Å

そうしてまたその波長伸び分は横ドップラーシフトで光源が動いている場合の計算式に測定対象のガスの速度0.005Cをいれて計算した値になっている、と「Ives と Stilwellは結論を出している」のです。

その場合の横ドップラーシフトの計算式は元の波長をλ0とし、観測される波長をλ1とするならば

λ1=λ0/sqrt(1-V^2)

=4861/sqrt(1-0.005^2)

=4861.06076・・・≒4861.06

と計算できます。

こうして「Ives と Stilwellは横ドップラーシフトを観測し、その結果は赤方偏移であり、特殊相対論からの予測値になっていた」とされてきました。

 

さて、以上の実験結果と計算のストーリーだてでいきますと、「Ives と Stilwellの出した結論は妥当なものである」と言えそうですし、事実、いままでそうみなされてきました。(注1)

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

さてそれで次は上記で得られたデータを周波数換算します。

この実験の測定は光の分光測定ですから、得られたデータは波長です。

しかしながら当然 光速C=波長*周波数 が成立しています。

そうであれば下記の様に周波数換算が可能となります。

ここで光速は30万キロ/毎秒とします。

そうして換算しますと次の様になります。

基本輝線周波数 6.1715696*10^14Hz

赤方偏移周波数 6.1410224*10^14Hz ・・・観測データ③

青方偏移周波数 6.2022683*10^14Hz ・・・観測データ④

(③+④)/2 の周波数 6.17164535*10^14Hz

 

そうしてその様に周波数換算して見ますと驚くべきことに今度は平均周波数が青方偏移している事が確認できます。

基本輝線周波数 6.17157<(③+④)/2 の周波数 6.17165

さて元の周波数をf0,観測された周波数をf1とするならば

f1=fo/sqrt(1-V^2)

=6.1715696/sqrt(1-0.005^2)

=6.171646746・・・≒6.17165

と今度は青方偏移をしめす横ドップラーの計算式からの計算結果に観測されたデータは一致するのです。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

さて以上、見てきましたように「Ives と Stilwellが行った実験結果」は特殊相対論が予想する時間の遅れ(=赤方偏移)、あるいは進み(=青方偏移)を検出している事には間違いなさそうです。

しかしながら得られたデータについての解釈方法は2通りあり、どちらも数式の計算上には間違いがありません。

しかしながら「赤方偏移している」と「青方偏移している」では結論が真逆であり、これでは一見パラドックスが発生している様に見えます。(注2)

 

さてそれで、ここまでの「Ives と Stilwellが行った実験」についての結論です。

1、それは横ドップラーシフトの直接観測にはなっていない。

2、縦ドップラーシフトの2つの方向の同時測定で得られたデータの平均については「赤方偏移している」という見方が可能であるのと同時に「青方偏移している」という見方も出来る。

そうであればその「観測データの平均値が何を意味しているのか」は今の所はよく分からない。

しかしながら特殊相対論が予想する「運動するものは時間が遅れる」という事に関連している値である事は間違いなさそうである。

3、以上より「Ives と Stilwellが行った実験によって横ドップラー効果が測定され、それは赤方偏移を示していた」という通説の認識は「2重の意味で間違っている」という事がわかるのです。(注3)

 

さてでは一体何がこの実験で起こっていたのか、それについての検討はページを改めて行う事と致しましょう。

 

注1:上記であげた「アインシュタインの特殊相対性理論(1905年):http://fnorio.com/: https://archive.md/Gl1Hd#3-2-2 :の[補足説明2]もおおむね、そのストーリーになっています。

そうしてこのストーリーが載っているのは「バークレイ 物理学コース1(下巻)」であるとなっています。(日本語版:丸善1975年 P417)

注2:計算上のミスはありませんので、「真逆方向の2つの縦ドップラーの測定値については波長平均と周波数平均での検討結果では見方が逆転する」という事になります。

そうであれば「波長平均のみの結果をもって測定データは赤方偏移していた」とするのは「判断ミス」という事になります。

ちなみにこの話のポイントは「波長平均したものを周波数変換して周波数平均とする」のではなく「測定された2つの波長データを周波数変換してからその平均を取る」という所にあります。

注3:まずは「Ives と Stilwellが行った実験は横ドップラーシフトを測定していない」、にもかかわらず「横ドップラーシフトを測定した」と主張する事が一つ目の間違い。

そうしてもう一つは「測定結果が赤方偏移を示していた」と結論を出している事が二つ目の間違いとなります。

 

追記:まあこんな風に「Ives と Stilwellが行った実験結果を周波数換算して確認してみる」などという事はたぶん「どなたもしていない事」なのでありましょう。

「そんな事をしても何も変わらない」とは普通、考えることでありますから。

そうであればこれは「コロンブスのたまご」であって「史上初の計算結果の公表」となります。

 

PS:相対論・ダークマターの事など 記事一覧

https://archive.md/kxUew

 

 


その2-3・横ドップラーシフトは青方偏移する(場合もある)の2

2023-08-22 01:39:20 | 日記

さてまえのページの説明で物事が終われば話は簡単なのですが、なかなかそうはいきません。

まずは「 Ives と Stilwellの実験(1941年)では横ドップラー効果を測定していない」という事から始めましょう。

この実験では縦ドップラー効果で生じるプラス方向(=周波数が上がる方向)とマイナス方向(=周波数が下がる方向)を同時に測定し、その和をとって「特殊相対論が予測した時間の遅れを検出した」と言うものです。(注1)

そうであればアインシュタインが希望した「特殊相対論の予測=運動するものは時間が遅れる」はこの実験で確認できたのですが、横ドップラーシフトそのものの確認はこのタイプの実験では確認はできてはいないのです。

 

さてそうであれば「 Ives と Stilwellの実験(1941年)では横ドップラー効果を測定しその結果は赤方偏移を示した」と言う認識は誤りなのです。

しかしながら今ではこの実験結果を横ドップラーシフトの代表例として取り上げ「横ドップラーシフト=赤方偏移」と認識されているのです。(注2)

それに対してアインシュタインは「いいや、静止光源からみれば横ドップラーシフトは青方偏移である」と主張しているのです。

しかしながら今まで「横ドップラーシフトを観測したら青方偏移した」という実験結果は一つも報告されていません。(注3)

これは「光源を静止させて観測者を高速で動かす」という実験方法が技術的にとても難しい、という事に起因しています。

それに対して「光源を高速で動かし、観測者は静止させておく」と言うのははるかにたやすい方法、実際にはいままで行われてきた多くの横ドップラーシフトの測定は、そうやって行われたものでした。

そうしてその結果といいますれば「全て赤方偏移を観測した」のでした。(注4)

 

さてそうではありますが、だからといって「横ドップラーシフトは赤方偏移である」という主張が正しい、という事にはなりません。

すくなくともアインシュタインは「光源を静止させて観測者を動かした場合、横ドップラーシフトは青方偏移となる」と主張しているのですから。

そうして数少ない観測者を動かす実験では確かに青方偏移を確認しているのです。

そのあたりの話は「相対論的ドップラー効果」 : https://en.wikipedia.org/wiki/Relativistic_Doppler_effect :の「横ドップラー効果」にまとめられています。(注5)

 

さてそれで「 Ives と Stilwellの実験結果(1941年)」についてはもう一つ指摘しなくてはならない事があります。

ですがページが尽きた様ですので、その話は又次回、という事にしましょう。

 

注1:この件、詳細につきましては

「アインシュタインの特殊相対性理論(1905年):http://fnorio.com/: https://archive.md/Gl1Hd#3-2-2 :の「2.ドップラー効果」の[補足説明2]および[補足説明3]の下段の記事『実際、Einsteinは1907年に陽極線(カナル線)を用いれば横ドップラー効果を検証できるかもしれないと提案した・・・』以降の記事内容を参照ねがいます。

特に[補足説明2]の(11.23)式はプラス方向とマイナス方向のドップラーシフトの和をとると時間遅れを表す因子sqrt(1-V^2)が現れる事が示されています。

ちなみにこの計算はウルフラムで確認できます。

sqrt(1-x)/sqrt(1+x)+sqrt(1+x)/sqrt(1-x)

https://ja.wolframalpha.com/input?i=sqrt%281-x%29%2Fsqrt%281%2Bx%29%2Bsqrt%281%2Bx%29%2Fsqrt%281-x%29

「別の形」に答えがでています。

注2:上記(注1)で示したアインシュタインの記事をまとめたfnorio氏も[補足説明3]において『ν’はνよりも小さくなり“赤方偏移”を生じる。これが真の“横方向のドップラー効果”です。』と主張されています。

何故氏が「真の“横方向のドップラー効果”です。」と「真の」と言うような注釈をつける必要があったのか、といいますれば「横ドップラーシフト=赤方偏移である」という認識が氏にあったからであると思われます。

つまりは「横ドップラーの観測では青方偏移を観測する事はない。そうしてもし青方偏移を観測した」のであれば「それは実験のやり方がおかしい」とまで主張できるとする立場に立っておられます。

さて「何故そのよな認識になっているのか?」といいますれば「 Ives と  Stilwellの実験(1941年)では横ドップラー効果を測定しその結果は赤方偏移を示していた」し、くわえて「その後の直接、横ドップラー効果を測定した実験でも赤方偏移を示していた」ので「横ドップラー効果を測定すれば必ず赤方偏移を観測する」となっているのです。

注3:実は「青方偏移をという報告はあるのですが、その実験を「横ドップラー効果の実験」と認める事には異論があるのです。

従って「誰もが認める横ドップラー効果の実験」という条件を付けますと「横ドップラー効果の実験ではいまだ青方偏移は観測されていない」となるのです。

注4:同上「相対論的ドップラー効果」 : https://en.wikipedia.org/wiki/Relativistic_Doppler_effect :の「横方向ドップラー効果の直接測定」にまとめられています。

以下、そこからの引用となります。

『横方向ドップラー効果の直接測定
粒子加速器技術の出現により、アイブスとスティルウェルが利用できたものよりもかなり高いエネルギーの粒子ビームの生成が可能になりました。これにより、アインシュタインが最初に想定した方法に沿って、つまり粒子ビームを 90° の角度で直接観察することによって、横ドップラー効果のテストを設計することが可能になりました。

たとえば、ハッセルカンプら。(1979) は、 2.53×10^8  cm/s から 9.28×10^8 cm/sの範囲の速度で移動する水素原子によって放出されるH α 線を観察 し、相対論的近似における 2 次項の係数が 0.52±0.03 であることを発見しました。 、理論値 1/2 と見事に一致しています。[10ページ]

回転プラットフォーム上での TDE の他の直接テストは、核ガンマ線の放出と吸収のための非常に狭い共鳴線の生成を可能にするメスバウアー効果の発見によって可能になりました。[17]

メスバウアー効果の実験では、2×10^4  cm/s程度のエミッターとアブソーバーの相対速度を使用して TDE を簡単に検出できることが証明されています。

これらの実験には、Hayらによって行われた実験が含まれています。(1960)、[p 11] Champeney et al. (1965)、[p 12]、およびクンディッヒ (1963)。[p 3]』

注5:以下、「相対論的ドップラー効果」の引用となります。

『発信元と受信機の両方が、衝突しない経路に沿って均一な慣性運動で互いに接近していると仮定します。横ドップラー効果(TDE) は、

(a)送信機と受信機が最接近点にあるときに発生する、特殊相対性理論によって予測される名目上の青方偏移を指します。または

(b)受信機が送信機が最接近しているとみなしたときに、特殊相対性理論によって予測される名目上の赤方偏移。[5]

横ドップラー効果は、特殊相対性理論の主な新規予測の 1 つです。

科学報告書が TDE を赤方偏移または青方偏移として説明するかどうかは、関連する実験計画の詳細によって決まります。

たとえば、1907 年のアインシュタインによる TDE の最初の説明では、実験者が「運河線」(特定の種類のガス放電管によって生成される陽イオンのビーム)のビームの中心(最も近い点)を観察していると説明されています。特殊相対性理論によれば、移動するイオンの放出周波数はローレンツ係数で減少し、受信周波数も同じ係数で減少 (赤方偏移) します。[p 1] [注 1]

一方、Kündig (1963) は、メスバウアー吸収体が中央のメスバウアーエミッターの周りで高速の円形経路で回転する実験について説明しました。[p 3]

以下で説明するように、この実験的な配置により、クンディッヒによる青方偏移の測定が行われました。』

この説明文は何を言っているのか、といいますれば「横ドップラー効果を青方偏移と計算するか赤方偏移と計算するかは舞台設定による」もっと端的にいえば「光源を動かす」と赤方偏移が出てきて、「観測者を動かす」と青方偏移が計算結果として出てくる、と言っています。

そうしてまた、実際の実験結果もその通りとなっています。

従って「特殊相対論は実験結果を予測し説明できる」という限りにおいて正しい、という事になります。

ちなみに「光源を動かしての横ドップラーテストでは全て赤方偏移を観測した」のですから、前のページで示した「宇宙船Aは赤方偏移を観測する」という結論に変わる所はありません。

前のページでは「横ドップラー効果の実験的な裏付け」として「 Ives と  Stilwellの実験結果」を示しましたが、その実験は実は「横ドップラー効果の実験にはなっていなかった」と言うのは上記で示した通りです。

しかしながら「本来の光源を動かした場合の横ドップラー効果の実験結果」も「確かに赤方偏移を観測した」のですから「前のページで示した結論に変わる所はない」のです。

 

PS:相対論・ダークマターの事など 記事一覧

https://archive.md/2wZhV

 

 


その2-2・横ドップラーシフトは青方偏移する(場合もある)の1

2023-08-19 05:01:46 | 日記

驚くべきことに「横ドップラーシフトは青方偏移する(場合もある)」と最初に指摘したのはアインシュタインでした。

「アインシュタインの特殊相対性理論(1905年):http://fnorio.com/: https://archive.md/Gl1Hd#3-2-2 :

fnorio氏のまとめによれば「2.ドップラー効果」の章にてアインシュタインのドップラー効果についての説明を以下の様に引用されています。

『ω’の式から次の事がでてくる:・・・

ν’=ν*(1-V*Cos(φ))/sqrt(1-V^2) ・・・(1)式

これは任意の速度に対するDopplerの原理である。

この式はφ=0の時、次のように見通しの良い形をとる:

ν’=ν*sqrt((1-V)/(1+V))』

但しアインシュタインの原典では光速Cを明示していますが、当方のシリーズではC=1の単位系を使っていますので、式の速度表示についてはそれに合わせています。

さてそれで、φ=0の時の式の形は今ではよく知られた「光源と観測者が速度Vで離れていく時のドップラーシフトを表すもの」になっています。

 

fnorio氏によればその時にアインシュタインが想定していた舞台設定はアインシュタインの説明文の下に載せられた[補足説明1]で明示されています。

K系は静止系でその静止系のY軸の相当に上の方に光源が置かれています。(注1)

そのK系に対して観測者がいるk系は相対速度Vで右方向に移動しています。

そうであれば「光源から出た光は観測者の上方から角度φをもって観測者に届くことになる」のです。(注2)

 

さてそれでその次の[補足説明2]は飛ばして[補足説明3]に行きます。

そこでfnorio氏はφ=π/2の時、つまりは「横ドップラーの時」にはアインシュタインが示した式によれば「観測者は青方偏移を観測する」と明示しています。

はい「赤方偏移ではなくて青方偏移」です。

大事な事なので2度言いました。

そうしてV=0.5でφ=π/2の時を確認しておきます。

(1)式より

ν’=ν*(1-V*Cos(φ))/sqrt(1-V^2)

=ν*(1-0.5*Cos(π/2))/sqrt(1-0.5^2)

=ν*(1)/sqrt(1-0.5^2)

≒ν*(1)/0.8660=ν*1.1547

はい、確かに元の光源の周波数よりも高い周波数を観測しています。

つまりこの場合は「横ドップラーシフトは青方偏移した」のです。

 

「なんてこった。アインシュタインは Ives とStilwellの実験を知らなかったのか?」と言いたくなりますね。(注3)

世の中の通説では「 Ives と Stilwellは横ドップラーシフトを観測し、それは赤方偏移だった」となっています。

そうして今では通説では「横ドップラーシフト=赤方偏移」という事になっています。

そうであれば「横ドップラーシフト=青方偏移だ」などというと「業界ののけものにされそうな状況」であります。

しかしながら「横ドップラーシフト=青方偏移だ」と言ったのがアインシュタインの最初の論文ですから「これを否定する」という事は誰にもできない事でしょう。

 

まあ余談はこれくらいにして、さてそれでは「何故横ドップラーシフトが赤方偏移だったり青方偏移だったりするのか?」という事になります。

そうしてその答えは簡単です。

アインシュタインの最初の論文では光源は静止していて観測者がその光源から離れる様に動いていました。

そうしてその観測者がφ=π/2の時、つまりは「横ドップラーの時」にはアインシュタインが示した式によれば「観測者は青方偏移を観測する」のです。

 

他方で「Ives とStilwellは横ドップラーシフトを観測し、それは赤方偏移だった」のは「光源が動いていて観測者が静止していたから」です。

そうして今ではこの「 Ives とStilwellの実験結果に迎合する」かのように、「横ドップラーシフトの導出計算では光源を動かして観測者は静止している条件」となっています。

そうしてその計算結果では「横ドップラーシフトは赤方偏移する」となっています。(注4)

こうして現在通説の「横ドップラーシフト=赤方偏移」が完成したのです。(注5)

 

さてそうであれば前回「その2・静止系が客観的な存在だと何が困るのか?(W横ドップラーテスト)」で提案したW横ドップラーテストの答えはすでにアインシュタインによって1905年と1907年に分けて理論的に回答されていた、という事になります。(注6)

W横ドップラーテストではお互いが光源と受光部をもってすれ違います。

そうしてすれ違いざまにお互いが相手の光源の光の周波数を観測します。

その2つのすれ違う宇宙船をAとBとしましょう。

AとBは相対速度Vをもってすれ違います。

さてその時に宇宙船Aが「当方は静止していて貴方が速度Vでこちらに接近してきている」と宣言します。

そうであれば「宇宙船Aの光源は静止していた」となります。

 

他方で「動いているのはそちらだ」と指定された宇宙船Bの光源は宇宙船Aに対して動いています。

そうであれば「宇宙船Aの受光部は動いている光源Bの光をすれ違いざまに観測する」のです。

その結果は「Ives とStilwellの実験結果が示した」様に「宇宙船Aは赤方偏移を観測する」のです。

 

さて他方で「宇宙船Bは止まっている光源Aを観測する」のですから「アインシュタインが示した(1)式に従って青方偏移を観測する」のです。(注7)

 

以上が「W横ドップラーテストが与える事になる結果」です。

「W横ドップラーテストでは一方の観測者が赤方偏移を観測したならば、他方の観測者は青方偏移を観測する」のです。(注8)

 

さてそうであれば「時間の遅れはお互い様」ではなく「時間の遅れは一方的である」がこの宇宙の現実である事になります。

そうして「時間の遅れが一方的である」ならば「客観的な静止系は存在する」がその結果として出てくる合理的な答えなのです。

さてそうなりますと「客観的な静止系は存在する」がアインシュタインが意図せずに(あるいは自分の主張とは反する事になるのではありますが)与えた答えになっていた、という事になります。(注9)

ページが尽きた様です。続きはまた後日としましょう。

 

注1:アインシュタインはここで『観測者が振動数νの無限に遠い光源に対して速度Vで運動し、・・・』と説明していますが、光源とK系原点との距離が無限に遠い場合はφは常にπ/2になるものと思われます。

従って『無限に遠い光源』は「それなりに遠い光源」と理解されなくてはなりません。

ちなみにこの図のY軸は空間軸を表していて、時間軸を表すMN図ではない事に注意が必要です。

注2:この[補足説明1]でfnorio氏が示した図によってようやくアインシュタインが何を考えていたのか、わかりました。

(1)式に出てくる相対速度Vは2つの慣性系の間の相対速度を示していて、決して観測者と光源との間の相対速度(観測者の視線方向の速度)を表したものではない、という事でした。

しかしながら通常は特殊相対論に登場する観測者は対象物に対しては視線方向の相対速度をもってVとしていますので、混乱するのも無理からぬ事であります。

注3:HE Ives と GR Stilwell、「移動原子時計の速度に関する実験的研究」、J. Opt. JOSA 31ページ 369–374 (1941)。
この古典的な実験では、移動する原子の横方向のドップラー効果を測定しました。

先ほど飛ばした[補足説明2]にその実験内容詳細が載っています。

そうして、そこで提示されている(11.21)式はアインシュタインが最後に提示した式と同じ、つまり「光源と観測者が速度Vで離れていく時のドップラーシフトを表すもの」になっています。

そうであれば「Ives と Stilwellは赤方偏移を観測した」と通説では認識されています。

ちなみにこの実験の詳細については:相対論的ドップラー効果 : https://en.wikipedia.org/wiki/Relativistic_Doppler_effect :の「アイブスとスティルウェルタイプの測定」: それからhttps://en.wikipedia.org/wiki/Ives%E2%80%93Stilwell_experiment :にあります。

注4:横ドップラー効果が「赤方偏移する場合もあれば青方偏移する場合もある」と公平に記述しているのは上記のfnorio氏のまとめと上記(注4)で示した英文のういきぐらいなものです。

日本語のういき「ドップラー効果」を始めとしてその他の横ドップラーシフトの説明、あるいは式の導出では全て「動くのは光源で観測者は静止している」という条件になっています。

つまり「横ドップラーシフト=赤方偏移」と主張しているのです。

以下そのように主張している代表例を示します。

・光のドップラー効果 (横方向): https://archive.md/cbVVE :

・第 11 回 相対論における諸現象(波動・光)
https://www2.yukawa.kyoto-u.ac.jp/~norihiro.tanahashi/pdf/SR/note_SR-11.pdf

・特殊相対論入門
https://opac.ll.chiba-u.jp/da/curator/900121237/rel.pdf

・2 相対論的ドップラー効果
https://www.astr.tohoku.ac.jp/~chinone/Compton/Compton-node2.html

注5:物理業界の都市伝説並みの話ですね、これは。

あるいは「物理学は客観的なものだ」とはいいますが、それをやっているのは人ですから「心理的な思い込みというものは必ずある」という事の良い例であります。

注6:『特殊相対性理論を導入した 1905 年の独創的な論文で、アインシュタインは、無限に遠い光源に対して任意の角度で移動する観察者によって知覚されるドップラー シフトの式をすでに発表していました。アインシュタインが 1907 年に導出した TDE(横ドップラー効果) は、彼が以前に発表した一般式の些細な結果を表していました。』: 相対論的ドップラー効果 : https://en.wikipedia.org/wiki/Relativistic_Doppler_effect :から引用。

ちなみに1905年では「青方偏移を観測する条件」で1907年では「赤方偏移を観測する条件の報告」となっている模様です。

注7:さてこの時に宇宙船Bが「いや、動いているのはあなたの方だ」と宇宙船Aに主張した場合にこのW横ドップラーテストの観測結果は変わるのでしょうか?

たぶん「観測された事実は宇宙船Bの主張を却下する事になる」と思われます。

それはつまりは「W横ドップラーテストでいう所の静止系は主観的静止系ではない」という事です。

そうして「その事実が確認できる」という事が「横ドップラーシフトが持つ特筆すべき性質」なのであります。

まあその前提は「観測結果が宇宙船Aの主張通りであったなら」という前提条件は付きますが、、、。

そうしてまたそうやって一度観測されたW横ドップラーテストのデータがローレンツ不変であるというのは、「静止系が客観的に存在する事によって得られた横ドップラーテストのデータは同じように客観的なものである」という事を示しています。

注8:この結果は特殊相対論のたてまえ「全ての慣性系は平等である」という主張に反しています。

「全ての慣性系は平等である」を認めるならば「宇宙船Aが赤方偏移を観測したのであれば、宇宙船Bも赤方偏移を観測しなくてはならない事になります」ので。

なんとなれば「宇宙船Aと宇宙船Bとは全く同じであるから」ですね。

特殊相対論のアインシュタイン解釈の立場からはそういう事になるのです。

つまりは「宇宙船Aが自分が静止系だ」と主張する事が可能であるならば、同様にしてまた「宇宙船Bが自分が静止系だ」と主張する事が可能となるからです。

注9:「客観的な静止系は存在する」という答えをアインシュタインは出したかった訳ではなく、「動くものは時間が遅れる」という「特殊相対論の結論の実験的な検証をして欲しかった」ので「横ドップラー効果=横ドップラーテストを提案した」のでした。

しかしながらその理論的な解析の結果はアインシュタインの意図とは違ってはいますが「客観的な静止系が存在する」という事の理論的な裏付けにもなっていたのでした。

ちなみに「時間の遅れはお互い様」を言い出したミンコフスキーは「ドップラー効果の検討」をしていない模様です。

そうであればもちろん「横ドップラー効果の話」には興味はなかったと思われます。

このあたり「物理やとしてのアインシュタイン」と「数学者としてのミンコフスキー」の差が出ていると思われ、興味ぶかい所であります。

 

PS:相対論・ダークマターの事など 記事一覧

https://archive.md/KhK5M