さてそれで話を「Ives と Stilwellが行った実験」に戻します。
横ドップラー測定のそもそもの目的は「動くものは時間が遅れる」という特殊相対論の主張の検証にありました。
そうして横ドップラーが実現している条件では観測値の中には縦ドップラーの影響がなくなり、「時間が遅れている効果」が直接現れる事を期待したのです。
しかしながら二人は「直接的な横ドップラーの観測は難しい」として「真逆方向になる縦ドップラーを同時に観測し、その平均をとればそれが横ドップラーになるだろう」と予想しました。
これはつまり「縦ドップラーの中に特殊相対論が予想している時間遅れの効果が入っているはずだ」と予想した事になります。
「しかしながら(+)方向と(-)方向を別々に個別に測定しただけではその情報は縦ドップラーに邪魔をされて現れてこない、しかし2つの方向を同時に測定しその平均をとれば、縦ドップラーの時間遅れの測定の邪魔をする成分はお互いに打ち消し合う事が可能だろう」と考えました。
つまり「縦ドップラー成分の(+)と(-)を足し合わせれば縦ドップラーの影響はゼロにできる」と読んだのです。
さてそれで前のページで示しましたように横ドップラー状態から光源と観測者の距離を離す事で順次、縦ドップラー状態になっていきます。
そうしてその極限で成立している(+)方向と(-)方向の式を確認しました。
さてそれでその式は周波数表示になっています。
そうであれば「その2-4」で計算した周波数換算で起きていた事がその式2つの式を足し合わせる事で確認できます。
(-)方向は ν’(-)=ν*sqrt(1-V)/sqrt(1+V)
(+)方向は ν’(+)=ν*sqrt(1+V)/sqrt(1-V)
足し合わせると
ν’(-)+ν’(+)=ν*sqrt(1-V)/sqrt(1+V)+ν*sqrt(1+V)/sqrt(1-V)
=ν*(sqrt(1-V)/sqrt(1+V)+sqrt(1+V)/sqrt(1-V))
(sqrt(1-V)/sqrt(1+V)+sqrt(1+V)/sqrt(1-V))の部分をウルフラムに入れます。
実行アドレス
「別の形」に答えがでています。
2/sqrt(1-V^2)
そうであれば
ν’(-)+ν’(+)=ν*2/sqrt(1-V^2)
「Ives と Stilwellが行った実験のやり方」に従って平均をとります。
(ν’(-)+ν’(+))/2=(ν*2/sqrt(1-V^2))/2
=ν/sqrt(1-V^2)
こうして真逆方向になっている縦ドップラーの同時測定データを周波数換算し、その平均をとった時に得られる値を計算できる式が導出できた事になります。
そうしてこの式を使った計算はすでに「その2-4」で確認しており、その結果は「Ives と Stilwellが行った実験で得られた(+)と(-)方向のデータを周波数換算し、その平均を取った場合、計算式が示す計算結果と実験結果は一致していた」のです。
くわえてその場合は「平均周波数データ」は「青方偏移を示していた」のでした。
さて、それに対して「Ives と Stilwellが行った実験のやり方」=「観測したデータが光の波長なので、そのまま波長で処理した場合」は
「アインシュタインの特殊相対性理論(1905年):http://fnorio.com/: https://archive.md/Gl1Hd#3-2-2 :の[補足説明2]
に詳しく説明されています。
そうしてその場合は「平均波長データ」は「赤方偏移を示していた」のです。(注1)
さて上記2つの場合の実際の数値を使った確認はすでに「その2-4」で終わっていて、2つの処理方法そのものには間違いはなさそうです。
そうであれば「Ives と Stilwellが行った実験」というのは「横ドップラー効果は赤方偏移した事を確認した」のではなくて「1/sqrt(1-V^2)の値を求めた」のです。
そうしてこのsqrt(1-V^2)という値が特殊相対論が予想した時間遅れ因子そのものでした。
そうであれば「Ives と Stilwellが行った実験」は「横ドップラーシフト」とは無関係であって「特殊相対論が予想した時間遅れ因子を確認した実験」という事になります。
ちなみに「Ives と Stilwellが行った実験でえられた2つの縦ドップラーシフトのデータの平均値」については「それをみて『赤方偏移した』とか『青方偏移した』とか判断できる『そのような評価ができるデータではない』」という事になります。
『赤方偏移した』とか『青方偏移した』とかいう評価は「不適切」なのです。
それが「Ives と Stilwellが行った実験でえられた2つの縦ドップラーシフトのデータの平均値の正体」なのでした。
注1:観測された波長をつかったまとめの為に、アインシュタインの提示した縦ドップラーの式(これは周波数対応のものであった)を波長対応に変換してその和と平均値を取るとこうなっています。
観測されたデータの平均周波数λ1
光源の基線波長λ0
λ1=λ0/sqrt(1-V^2)
不思議な事に、というか、当然のことに「単に振動数を波長に入れ替えただけの式」になるのです。
そうであれば「観測されたデータの平均周波数λ1>光源の基線波長λ0」となります。
追記:この「Ives と Stilwellが行ったタイプの実験」では静止系がどこにあるのか、光源が静止していたのか、観測者が静止していたのか、そういう事に無関係に「1/sqrt(1-V^2)の値を求める事ができる実験である」といえます。
そうしてまた後日これは明らかになる事なのでここで指摘する事は少々フライングなのですが、このやり方の場合は「光源と観測者が静止系に対して両方ともに動いていても、光源と観測者の間の相対速度Vが同じであれば同一の観測結果が得られる」という優れた特性をもっています。
そうであれば「時間遅れを確認する」という事についてはこの「Ives と Stilwellが行った実験」はとても有効なものであると言えます。
ただし「Ives と Stilwellが行ったタイプの実験は横ドップラーシフトとは無関係」であります。
そうであればやはり「横ドップラーシフトは直接測定するしかない」のです。
追記の2:一見この不思議な現象、平均値を波長で見ると赤方偏移、周波数で見ると青方偏移、という結果には驚かされます。
しかしながら元データにもどって、なおかつ「非相対論的なドップラーシフトの式」で縦ドップラーを計算し、その結果とIves と Stilwellが行った実験結果のデータを比較してもそこには何の矛盾もありませんでした。
つまりは「この実験は正常に行われた」のです。
さてこの不思議な現象について、これ以上の探究されたい方については「どうぞご自由に」という事になります。
なんとなれば「検証に必要なデータは全て公開されているから」です。