さて前に導出した「LLの一般解」は以下の通りです。
TA@イベント②=L*(Va+(1-Va^2)/(Va+Vb)) 秒 ・・・①式
TB@イベント②=L*sqrt(1-Va^2)*sqrt(1-Vb^2)/(Va+Vb) 秒 ・・・②式
それでこの式を見ると分かりますように時計Cと時計Aが付いている棒の長さLに静止系に対する相対速度VaとVbからなる関数を掛けたものが一般解を与えています。
そうしてもちろん、棒の長さLはVaとVbとは独立に決める事が出来る値です。
従ってTA@イベント②とTB@イベント②の実際の値を決める時にややこしいのは相対速度VaとVbからなる関数の値の計算である事になります。
さてここでVa=x、Vb=yとおいてこのややこしい関数を表すと次のようになります。ちなみに相対速度VはV=0.8Cと固定します。
1、①式からTA@イベント②の場合については
(Va+(1-Va^2)/(Va+Vb))
=(x+(1-x^2)/(x+y))=z
そうして
0.8=(x+y)/(1+x*y)
が相対論的な速度の加算式の条件です。
従ってウルフラム入力式は
z=(x+(1-x^2)/(x+y)),0.8=(x+y)/(1+x*y)
としてこの連立方程式を解く事になります。
実行アドレス
https://ja.wolframalpha.com/input?i=z%3D%28x%2B%281-x%5E2%29%2F%28x%2By%29%29%2C0.8%3D%28x%2By%29%2F%281%2Bx*y%29
解の所に答えがあり
z=5/4
解の条件は
x=Va≠5/4、およびx=Va≠1
この条件は我々の住む宇宙ではいつでも満たされているため、問題はありません。
従って相対論的に加算された時計Cと時計Bの相対速度VがV=0.8Cの場合は
TA@イベント②=L*5/4
がV=0.8Cを満たす全てのVaとVbの組み合わせについて成立している事になります。
2、②式からTB@イベント②の場合については
sqrt(1-Va^2)*sqrt(1-Vb^2)/(Va+Vb)
=sqrt(1-x^2)*sqrt(1-y^2)/(x+y)
で、上記と同様に
0.8=(x+y)/(1+x*y)
が条件です。
ウルフラム入力文は
z=sqrt(1-x^2)*sqrt(1-y^2)/(x+y),0.8=(x+y)/(1+x*y)
実行アドレス
https://ja.wolframalpha.com/input?i=z%3Dsqrt%281-x%5E2%29*sqrt%281-y%5E2%29%2F%28x%2By%29%2C0.8%3D%28x%2By%29%2F%281%2Bx*y%29
解の表示からzの解を抜き出しますと
-3/4*(4x*sqrt(-(x^2-1)/(4x-5)^2)-5*sqrt(-(x^2-1)/(4x-5)^2))/sqrt(1-x^2)
解の条件は
x=Va≠5/4、およびx=Va≠1 で同上です。
これをそのまままたウルフラムに入れます。
実行アドレス
https://ja.wolframalpha.com/input?i=-3%2F4*%284x*sqrt%28-%28x%5E2-1%29%2F%284x-5%29%5E2%29-5*sqrt%28-%28x%5E2-1%29%2F%284x-5%29%5E2%29%29%2Fsqrt%281-x%5E2%29
「xを実数と仮定した場合の別の形」が答えになっています。
3/4*sgn(5-4x)
ここでsgn(数値)は数値の符号のみを取り出す操作を示します。
従ってz=3/4*sgn(5-4x) が答えであり、その状況はウルフラムが表示しているグラフそのものになります。
そうしてグラフから分かりますように
1.0 ≧ x ≧ 0 で (これは1.0 ≧ Va ≧ 0を意味します。)
z=3/4
が答えになります。(注1)
従って
TB@イベント②=L*3/4
となるのです。
さてL=4ですから
TA@イベント②=L*5/4=5(秒)・・・③式
TB@イベント②=L*3/4=3(秒)・・・④式
です。
以上で導出した一般解①式と②式が相対速度V=0.8Cの時に想定できる全てのVaとVbの組み合わせについては③式と④式になる事が確認できました。
従ってこれでこの一般解を導出した目的「時計Cと時計Bの間のどこに静止系の原点があっても観測結果は常に
TA@イベント②=5(秒)でTB@イベント②=3(秒)
になってしまうという事を確認する」という事ができました。
さてこの事の意味は時計AとBの観測された秒数は時計AとCの間に最初に設定された間隔Lと、対象としている2つの慣性系の間の相対速度Vのみで値が決まってしまい、当初の観測目的であった慣性系そのものの時間の遅れは表わしていない=慣性系の時間の遅れは測定できていない、という事になるのでした。(注2)
注1:それにしても
-3/4*(4x*sqrt(-(x^2-1)/(4x-5)^2)-5*sqrt(-(x^2-1)/(4x-5)^2))/sqrt(1-x^2)
というややこしい式が±3/4という定数になる事は驚きであります。
追伸
ややこしい式のウルフラム表示を確認したら、手計算でも±3/4になっていました。
失礼しました。
注2:あるいはもう少し丁寧に言うならば、それぞれの慣性系が静止系に対して持っている相対速度VaとVbに対応してそれぞれの慣性系の時間は
sqrt(1-Va^2)とsqrt(1-Vb^2)の割合で静止系の時間の進み方に対して遅れを生じているのですが、その遅れは時計Aと時計Bの観測された秒数には反映されない、観測された秒数の中から静止系に対する相対速度VaとVbの値を分離して取り出す事はできない、と言う事になります。
これはつまりは時計Bの主張「2つの慣性系の間の時間遅れはランダウ・リフシッツの方法では検出できない」の証明になっています。