特殊相対論、ホーキング放射、ダークマター、ブラックホールなど

・時間について特殊相対論からの考察
・プランクスケールの原始ブラックホールがダークマターの正体であるという主張
 

その4・ランダウ、リフシッツ パラドックス

2023-02-26 03:08:34 | 日記

さて、前回までの検討結果に基づいて数値計算をしてみましょう。

それで舞台設定はこうします。

慣性系αが左から右に速度V1で慣性系βに向かって動きます。

と同時に慣性系βが右から左に慣性系αに向かって速度V2で動きます。

この時に速度V1と速度V2を合成した相対速度Vは0.8Cとします。

それから

慣性系αでは時計Bを先頭にして時計Cが距離0.8C離れて続きます。

慣性系βでは時計Aを先頭にして時計Dが距離1.6C離れて続きます。

そうしてもちろん時計Aと時計Dは同期していて、時計Bと時計Cは同期しています。

そうして観測者は今回は4名登場させ、4つの時計のところにそれぞれ

慣性系αでは観測者①Bと観測者①C

慣性系βでは観測者②Aと観測者②D

を立てます。

次に観測者①B@慣性系αは「動いている時計」として時計Aを選択します。

同様にして観測者②A@慣性系βは「動いている時計」として時計Bを選択します。



さて観測者①Bの視点では

まずは時計Aが時計Bとすれ違います。

この時には時計Aと時計Bは同じ時刻を示していました。

その事実は観測者②Aによっても同時に確認されます。

次に時計Aは時計Cとすれ違います。

この時に観測者①Cの視点では「時計Aが時計Bとすれ違ってからここまで来るのに1秒かかった」と言う事を時計Aが時計Bとすれ違った時の時刻を基準として時計Cの時刻から計算します。

それは又観測者①Cにとって時計Aは相対速度0.8Cで距離0.8C(=時計Bと時計Cとの間の間隔)を走ったのだから1秒かかって当然、という事でもあります。

そうしてこの時に観測者②Aも同じ事実を確認します。

つまり時計Cは1秒経過を示していた、と言う事を認めます。

さてこの時、観測者①Cは時計Aの時刻を確認すると時計Aが時計Bとすれ違った時を基準として0.6秒経過したという時刻を指していました。

この事もまた観測者①Cにとっては当然の結果であります。

sqrt(1-0.8^2)=0.6 でありますから、「0.8Cで動いている慣性系βの時間(=時計Aの時間経過)が慣性系αの時間経過の60%でしか進まない。したがってこちらが1秒経過を確認したのであれば慣性系βでは0.6秒経過となる。」という特殊相対論の予測計算結果でしたから。

そうしてまたこの時に観測者②Aも同じ事実を確認します。

つまり「自分の手元にある時計Aの経過時間は0.6秒である」と言う事を観測者②Aは目視確認します。

さて以上より

ΔT(A)=0.6秒

ΔT(C-B)=1秒

従って

ΔT(A)<ΔT(C-B)

であると観測者①Cおよび観測者①Bと観測者②Aは結論を出します。



さて今度は観測者②Aの視点です。

観測者②Aの視点では時計Bが左から0.8Cでこちらに向かってきます。

それでまずは時計Bと時計Aがすれ違います。

この時には時計Aと時計Bは同じ時刻を示していました。

その事実は観測者①Bによっても同時に確認されます。

(この時の状況は観測者①Bの視点で考察した上記の場合と全く同じ事を言っています。)



それで次に時計Bは時計Dとすれ違います。

時計Aと時計Dとの間の距離は1.6Cでした。

その距離を時計Bは0.8Cで走りますから2秒かかります。

そうであれば観測者②Dは時計Dの時刻を確認すると時計Bが時計Aとすれ違った時を基準としてここまで来るのに2秒経過したという事を確認します。

そうしてまたその事実は観測者①Bによっても同時に確認されます。

つまり ΔT(D-A)=2秒 と言う事を観測者②Dと観測者①Bは確認するのです。



さてそれで問題なのはこの時に観測者①Bが自分の時計を見た時に時計Aとすれ違った時からどれほど時間が経過していたか、と言う事になります。

つまり ΔT(B) はいくつであったのか、と言う事になります。



ランダウとリフシッツの主張する所によれば「動いているのは時計B(=慣性系α)と観測者②A@慣性系βによって指定されましたから時間の進み方が60%に減速するのは時計Bである」となります。

従って「時計Dでは2秒経過でしたから時計Bでは1.2秒経過となる」がランダウとリフシッツの結論です。

つまり

ΔT(B)=1.2秒

従って

ΔT(B)<ΔT(D-A)

がランダウとリフシッツの結論となります。



さて、しかしながらこの結論を出す前に観測者①B(=観測者①C)は時計D(=時計A)が時計B(=時計C)より遅れている、という事実に同意しています。

従って時計Bが1.2秒経過でしたら時計Dは1.2秒未満を指していないといけない事になります。

逆に時計Dが2秒経過を認めるならば(=観測者②Dと観測者①Bは認めています)、時計Bは2秒をこえる秒数を指していなくてはいけないのです。

そうでなくては自分(達)が前に認めた事実を今度は否定する事になるからであります。

そうして自分が前に認めた事実を後になって否定する、と言う事は人間としてはどうかな、と思われる行為であります。



そう言う訳で当方の見る所、時計Bは 2秒÷0.6=3.3333・・・秒をさす、と言う事になります。

つまり

ΔT(B)=3.3333・・・秒

従って

ΔT(B)>ΔT(D-A)

が成立している、と言う事になります。

こうであれば観測者①Bと観測者①Cは「前に事実だ、として認めた事を今度は否定した」と観測者②Aと観測者②Dからそしられる事もありません。

万事が丸く収まり、まことにめでたい事であります。

そうして又「4人の観測者は同じ観測データを共有できた」=「客観的な事実がそこに存在した」という事になります。(注1)



さてそれで以上が「時間遅れはお互い様ではない」と言う事の証明でもあります。



注1:4人の観測者が観測し入手したデータはローレンツ不変となります。

つまり「どの慣性系からみてもその様に見るしかないもの」となります。


PS:相対論の事など 記事一覧

https://archive.md/MmvMk

 


その3・ランダウ、リフシッツ パラドックス

2023-02-23 11:01:04 | 日記

以下、前々回のページからの続きとなります。

まずは2つの系にある時計の遅れを比較する手順には問題はなさそうです。

ただしランダウとリフシッツは観測者を1名だけにしていますが、今度はそれぞれの慣性系で1名ずつ、合計で2名の観測者を立てる事にします。

そうして最初の観測者①が立つ慣性系αについてはランダウとリフシッツの設定した通りに時計BとCを置きます。

但しもう一つの慣性系βには新たな観測者②を立て、従来どうりの時計Aに加えて時計Dも置きます。

さてこの様に舞台を設定しますと、その状況は対称的にできます。

しかしながらこの舞台設定の変更によって観測者①の観測結果が替わる事はありません。

これは観測者①の観測行為にとって観測者②の存在と時計Dの存在は何の影響もあたえないのでありますから、当然の事であります。

そうであればランダウとリフシッツの主張する様に「慣性系αに立つ観測者①はΔT(A)<ΔT(C-B)となる事を観測する」事になります。

そうしてその事をまずは認めます。

つまり「慣性系βの時間が遅れている」という結論に同意するのです。

その理由は現実に存在している3つの時計の針の位置を確認しそのデータから客観的に計算した結果、ΔT(A)<ΔT(C-B)となっていたからですね。



ここでもう一度今回の舞台設定をレビューしておきます。

慣性系αが左から右に慣性系βに向かって動きます。

と同時に慣性系βが右から左に慣性系αに向かって動きます。

慣性系αでは時計Bを先頭にして時計Cが続きます。

慣性系βでは時計Aを先頭にして時計Dが続きます。

そうしてもちろん時計Aと時計Dは同期していて、時計Bと時計Cは同期しています。

観測者①@慣性系αは「動いている時計=相手の慣性系にある時計」として時計Aを選択します。

同様にして観測者②@慣性系βは「動いている時計=相手の慣性系にある時計」として時計Bを選択します。



観測者①の視点では

まずは時計Aと時計Bがすれ違います。

次に時計Aは時計Cとすれ違います。

その時の客観的な観測データから観測者①@慣性系αは

ΔT(A)<ΔT(C-B)

であると結論を出します。

つまり「慣性系βの時間は慣性系αより遅れている」が観測者①の結論です。



同様にして観測者②の視点では

まずは時計Bと時計Aがすれ違います。

次に時計Bは時計Dとすれ違います。

その時の客観的な観測データから観測者②@慣性系βは

ΔT(B)<ΔT(D-A)

であると結論を出します。

つまり「慣性系αの時間は慣性系βより遅れている」が観測者②の結論です。



さてランダウとリフシッツの主張する所によれば「こういう状況がこの宇宙では成立している」と言う事になります。

ところで観測者①は観測者②の結論を受け入れるでしょうか?

観測者①は観測した客観的なデータから「慣性系βの時間は慣性系αより遅れている」と結論を出しました。

そうして観測者②も観測者①と全く同じ手順に従って観測を行い、そうして観測した客観的なデータから「慣性系αの時間は慣性系βより遅れている」と結論を出したのです。

その時に観測者①は観測者②の結論を受け入れる以外の選択肢はなく、同様にして観測者②は観測者①の結論を受け入れる事になるのです。

何故ならば両者共に観測によって得られた観測データは客観的なものであり、つまり慣性系αにいても慣性系βにいても同じデータを観測する事になるからです。(二人の観測者の間で観測データの共有が可能です。)

つまり「二つの時計がすれ違う時のそれぞれの時計の針の位置」が観測すべき対象になりますが、その時計の針の位置は慣性系αからみても慣性系βからみても同じ位置にあるからです。

そうであればランダウとリフシッツの主張する手順とその結論によれば「慣性系αの時間は慣性系βより遅れている」、と同時に「慣性系βの時間は慣性系αより遅れている」が今回の測定結果と言う事になります。



さてそれで、実際問題として「慣性系αの時間は慣性系βより遅れている」、その時同時に「慣性系βの時間は慣性系αより遅れている」と言う状況はありうるのでしょうか?

ランダウとリフシッツの提唱する物理学では「そういう状況がある」と言う事になります。

つまり「そのような結論に至る客観的な観測データが得られる」と言っているのです。



他方で当方が認める物理学では「そのような事は起りえない」となります。

つまり「そのような矛盾した結論に導かれる客観的な観測データが得られる事はない」と主張します。



さてそれで、皆さんが同意される物理学ではどちらの主張を支持する事になるのでしょうか?



追伸:「客観的な観測データ」というものの正体:このお話のポイントについて

観測者①がすれ違う2つの時計の針の位置を読み取った値については観測者②もただちに同意する、という意味です。

あるいは観測者①がすれ違う2つの時計の針の位置を読み取る時にその場所に同席した観測者②がそのすれ違う2つの時計の針の位置を読み取ると、その値は観測者①の観測データと同一のものになる、という意味でもあります。

つまり2つの慣性系にそれぞれ一つづつある時計とその時計のある場所にそれぞれ同席している2人の観測者は、存在している慣性系が異なっているにも関わらず、2つの時計が同じ場所に到達した時に(=すれ違う時に)それぞれの時計が示す時刻を読み取ることが出来、その値は2人の観測者が異なる慣性系に立っているにも関わらず同じ値となる、ということが「すれ違う2つの時計が示す時刻の読み取り」という観測行為の大きな特徴になっているのです。

この事が我々が暮らす宇宙では成立している為に「時間の遅れはお互い様」という認識は成り立つことが不可能であり、その様な認識は却下される事になります。



追伸の2:ローレンツ短縮について

ローレンツ短縮についてはまさに「縮んで見えるのはお互い様」が成立している模様です。

2つの慣性系がすれ違う時、同じ長さの1mの二つの物差しとそこに立っている二人の観測者がいて、それぞれが相手の物差しを観測すれば相手の物差しが1m未満になっている事を観測する、と言うものです。

そうであればこの場合はこの二人の観測者が観測する2つの物差しの長さについては合意する事はなく、したがって「測定データは客観的ではない」と言う事になります。

それはつまり、ローレンツ短縮については測定データの共有ができない=それぞれの観測者が観測したものは、それぞれの慣性系の内部でしか通用しない観測データである、という事であります。

この点が時計の針の位置の観測と基本的に異なる点になります。

さてそういう意味では「ローレンツ短縮は主観的である」と言えそうです。

他方で「時間の遅れは客観的である=物理的な実在の状況がそこにある」と言う事になります。


PS:相対論の事など 記事一覧

https://archive.md/edN3M

 


その2・ランダウ、リフシッツ パラドックス

2023-02-20 02:13:02 | 日記

前ページで紹介したランダウ、リフシッツの「時間の遅れはお互い様」という説明を詳細に展開された記事がありましたので、以下、参考までに紹介いたします。

それで理論物理学のサイト "J Simplicity(ジェイシンプリシティ)" : http://www.jsimplicity.com/index.html : より「Report 相対性理論 JS0.5」の「Chapter3 特殊相対性理論の世界」・「3.2 時間の遅れ」: https://archive.ph/xoT9k#Section3_2 :を参照します。

そこでは「時間の遅れはお互い様」についてランダウ、リフシッツの主張・説明をベースとして図解を挟んで具体的に計算が行われています。



さて「Figure3.7: 時間の遅れ3」では静止系Mに対して運動系M’を想定し、静止系Mに設置された2つの時計と運動系M’にある一つの時計が示されています。

そうして運動系M’は速度Vで右方向に移動しています。

ここまでの舞台設定はまさに「ランダウ、リフシッツの教科書にある通りのもの」です。(注1)

そうしてそれに続いて諸式展開が続き、最終的には

Δt’=Δt*sqrt(1-β^2)<Δt

を得ます。

ここでΔt’は運動系M’での時間の経過、Δtは静止系Mでの時間の経過、βはいつもの β=V/C です。

そうであれば運動系M’の時間は静止系Mよりも遅れる、となります。

まあ、ここまでは何時もの話ですね。


さてそれで著者はここで「Figure3.8: 時間の遅れ4」としてMN図を登場させます。

ちなみにMN図はミンコフスキー図と読みます。

そうしてこれはランダウ、リフシッツにはない、著者のオリジナルな説明の為の工夫ですね。


次に著者は『特殊相対性原理より, M(ct,x) と M'(ct',x') は完全に同等のはずです.

M(ct,x) に対して, M'(ct',x') が等速直線運動しているということは, M'(ct',x') を基準にして, M(ct,x) が逆方向に等速直線運動していると考えることもできますね.

この場合,時間が遅れるのは M(ct,x) の方になってしまいます.

これは,明らかに時間が遅れるのは M'(ct',x') の方であるという,上記の主張と矛盾しているように思えます.

この矛盾を時間のparadoxといいます.

しかし,両方とも正しいのです.

立場によって,主張は異なるのは,慣性系が完全に同等であることを意味します.』と完全にランダウ、リフシッツ持ちの主張を展開されます。

そうしてその主張を裏付ける計算が続きます。


それでまずは今回の計算の舞台設定ですが、それは「Figure3.9: 時間の遅れ5」に示されています。

今度はM’系が静止系となり、運動系がMとなります。

従って運動系Mは左側に速度Vで動いていると静止系M’に立つ観測者から認識されます。

さてそれで、この舞台設定で諸式展開をしますと最終的に

ΔT=ΔT’*sqrt(1-β^2)<ΔT’

を得ます。

ここでΔTは運動系Mの時間経過、ΔT’は静止系M’の時間経過を示します。

そうして著者は次のように宣言するのでした。

『事象 A,B と C,D は違いますので,主張の相違があっても問題はありません.

Section 前半の議論で出てきた不等式と比較するため,ΔT'=Δt' としてみましょう.このとき,

ΔT< ΔT'= Δ t'< Δt
が成立し,矛盾していません.』

ちなみにここでダッシュ(’)が付いているのがM’系の時間の経過を示し、ダッシュ(’)ナシがM系の時間の経過をしめしています。

そうしますとこの記事の著者は「M’系の時間経過を同一にするとM系の時間経過は観察者の立つ位置(=M系に立つのかM’系に立つのか)によって2つの値にわかれるのだが、それで矛盾はない」と宣言している事になります。


さて皆様方はこの著者の説明でご納得いただけたでありましょうか?

まあしかしながら以上が伝統的な特殊相対論の解釈である「時間のおくれはお互い様」という主張に対する、従来から行われている説明である、とみてほぼ間違いはないと思われます。


注1:ただしこの著者の場合ちょっと違うのは静止系Mと運動系M’にそれぞれ観測者を立てている事です。

しかしながら時間遅れの観測を行う観測者は常に静止系に立つ観測者を指定しています。



追伸:ちなみに申し添えますれば、この記事を書かれたJ Simplicity氏は特殊相対論に相当詳しい方の様です。

といいますのも、特殊相対論についての記述が

Chapter1 特殊相対性原理と光速不変の原理
Chapter2 ローレンツ変換とミンコフスキー時空
Chapter3 特殊相対性理論の世界
Chapter4 ローレンツ不変性とローレンツ共変性
Chapter5 特殊相対論的電磁気学
Chapter6 特殊相対論的力学

とChapter4~Chapter6まで及んでいる事から、その力量が知れるというものであります。

そうしてまた氏の態度『本サイトでは,制作者の理解している理論物理学をそのまま公開し,思考と同期させて更新しています.』あるいは『そして,Groupには合計8個のReportが含まれていて,段階的に,できるだけ丁寧に説明しています.』に見られるような宣言をされておられる事からもその状況がわかります。

そうであれば本記事を書くことによってそのようなJ Simplicity氏個人について批判する、と言う様な意図はどこにもない事をまずは明らかにしておく必要があります。


そのうえで特殊相対論についての従来の理解の仕方・解釈について「その解釈は誤りである」というのならその相手は「アインシュタインでありミンコフスキーでありランダウ、リフシッツである」という事になりますので、その点につきましてはくれぐれもお間違いの無いようにお願いいたします。


PS:相対論の事など 記事一覧

https://archive.md/aIfFl

 


ランダウ、リフシッツ パラドックス

2023-02-17 02:01:52 | 日記

 ・素人が正しいのか、玄人が正しいのか:では以下の様に述べました。

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追伸の2
ランダウ、リフシッツ著「場の古典論(増訂新版)」東京図書(1964年刊)1章§3“固有時間”(p9~11)
http://fnorio.com/0160special_theory_of_relativity/Landau_Lifshitz_classical_field_1-7/Landau_Lifshitz_classical_field_1-7.html#01-003


§3 固有時間
での議論

「K系とK'系が相対運動している時には、お互いが相手の時計が遅れている事を確認する」と書かれてあります。

さてあのランダウとリフシッツさえもその様に言うとは!

ま、もっともおおもとのアインシュタインがそう言っている模様ですから、無理もありませんか。

しかしながらここでもこのランダウとリフシッツの宣言を確認できる実験結果は今のところは報告されていないのであります。

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それでこのページでは具体的に『ランダウ、リフシッツ著「場の古典論(増訂新版)」東京図書(1964年刊)1章§3“固有時間”(p9~11)』から本文を引用し、その内容を検討したいと思います。

さて§3“固有時間”の章より

『・・・(3.1)および(3.2)から分かる様に,動いている物体の固有時間は、常に、静止系における対応する時間間隔よりも短い。

いいかえると動いている時計は静止している時計よりもゆっくりと進むのである。



慣性系Kに対していくつかの時計が一様な直線運動をしているとしよう。これらの時計に結び付けられた基準系K'も慣性系である。

さてK系の観測者からすると、K'系の中の時計は遅れる。逆にK'系の立場から見ればKの中の時計が遅れる。

しかし、次の事に注意すればここに矛盾が無い事が確認される。

K'系の時計がK系の時計より遅れている事を言うためには、次のような操作をしなくてはならない。

ある瞬間にK'の時計がKの時計のそばを通り過ぎ、その瞬間には2つの時計の読みが一致していた、とする。KとK'の2つの時計の歩みを比較するには、もう一度、動いている時計の歩みをKの中の時計の歩みと比較しなければならない。

しかし、今度動いている時計の歩みと比較できるのはKの先ほどとは別の時計ーーこの比較の瞬間にK'の時計とすれ違う時計である。

そうしてK'の時計は今それと比較したKの時計と比べて遅れている、と言う事をみいだすのである。

2つの基準系の時計を比較する為には、一方の基準系では数個の時計、他方の基準系では一個の時計を必要とする事が分かる。

従ってこの操作は両方の系について対称ではない。遅れると判断される時計は常に同一で、それが他の系の異なったいくつかの時計と比べられるのである。・・・』

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ええとまずは「一方の基準系では数個の時計」と言ってますが、これは「2個の時計」で十分です。

それでランダウとリフシッツの主張は「遅れている、と判断されるのは、常に『観測者が動いていると判断した系=相手の系』にあるたまたま注目した一個の時計(=時計A)の方」であって、その時計を『観測者が静止していると判断した系=自分が立っている系』にある2個の時計(=時計Bと時計C)と比較する事で、AがBとCに対して遅れている事を見出す、と言っています。

それでまずはAがBとすれ違います。

この時に観測者はAの時計の針の位置とBの時計の針の位置を記録します。

それでランダウとリフシッツの前提では「この時にAとBの時計の針は同じ時刻を指していた」となっています。

そうして次にAはCとすれ違います。

この時も観測者はそれぞれの時計の針の位置を記録します。

こうして時計AについてはBとすれ違った時からCとすれ違う時までの時間経過=時間間隔が分かります。

それでその時間間隔をΔT(A)とします。

他方で時計Bと時計Cは同一慣性系内にありますから、アインシュタイン ポアンカレ同期の規則によって同期させてあります。(つまりAとBの時計の針は何時も同じ位置を示します。)

従って時計Aが時計Bとすれ違った時の時計Bの針の位置から時計Aが時計Cとすれ違った時の時計Cの針の位置を比べる事で、時計BとCが存在している慣性系での時間で計った時に、時計Aがどれだけの時間をかけて時計Bの位置から時計Cの位置まで移動したかが分かります。

それでその時間間隔をΔT(C-B)とします。

そうしてランダウとリフシッツの主張は「常に時計Aの方が遅れている事を観測者は見出す」つまり「ΔT(A)<ΔT(C-B) となる」となります。


そうしてこの話に矛盾がない=「時間のおくれはお互い様である」が成立する理由は「この操作は両方の系について対称ではない、という所にある」と主張しています。

つまり「観測者は動いていると認識している相手の慣性系から一つの時計を選び出して時計Aとすることができ、そうして自分の慣性系にある時計Bおよび時計Cと時計Aは順次すれ違う事になるのだが、そのときに相手の時計(=A) の針の位置と自分の時計(=BとC) の針の位置を記録することでΔT(A)とΔT(C-B)の値を計算することが出来、その結果はいつも「ΔT(A)<ΔT(C-B) となる」と主張しています。

そうしてこの観測者はK系に立つ事もK'系に立つ事もでき、そのたびに「自分が立っている慣性系よりも相手の慣性系の時間が遅れている事を見出すのだ」としているのです。(注1)

さて以上の話、特に「時間の遅れはお互い様」が成り立っている理由が「この操作は両方の系について対称ではない、という所にある」というランダウとリフシッツの主張は妥当なものだったでしょうか?

以上の説明でご納得いただけたでしょうか?


さて以上の主張についての当方の検討内容詳細については次回以降にしたいと思います。



注1:この言い方を認めるならば「特殊相対論は主観物理学である=観測者の存在が物理的な状況を決める」となってしまいます。

そうして確かに量子力学ではそのような事が起こりうる様でありますが、相対論で「観測者の存在が物理的な状況を決める」という様な事は無いのであります。


PS:相対論の事など 記事一覧

https://archive.md/VQKl3

 


「時間の遅れはお互い様」を主張するネット記事一覧

2023-02-13 18:15:50 | 日記

ネット上にある全ての記事を取り上げても仕方がないので、「当方の目に留まったものだけ」というまことに個人的な状況に依存した一覧ではありますが、「無いよりはまし」かと思いますので、ご参考までに。
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・御存知「Yahoo知恵袋」にあった「時間の遅れはお互い様」についての標準的なやりとり: https://archive.ph/X3pD3 :

Q:『宇宙では絶対速度が速ければ速いほど時間の進行がゆっくりだそうですが・・・』

A:『・・・Aさんから見てBさんが高速で移動している時、Bさんに流れる時間が遅くなっているように見えますが
Bさんから見れば自分が基準ですからAさんが高速で移動しているように見え、Aさんに流れる時間が遅くなっているように見えます。
相対性理論ではそういうことになります。』

魚拓版では1番目の回答しか見れませんが全部で回答は9つあります。全部見るには以下のアドレスからどーぞ。

https://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q14195720999


「ベックさん」2018/9/5 23:44の回答(上から数えて7番目の回答になる=>さらに返信を表示X2+別の回答を見る、をポチる事)を見ると、この時点でこの方はすでにアインシュタインの表明に間違いがある事に気が付いておられた模様です。

さすがですね、ベックさん。(注1)


上記でQ:『宇宙では絶対速度が速ければ速いほど時間の進行がゆっくりだそうですが・・・』と質問者が聞いている内容の基になった記事がありました。: https://archive.ph/FGWQs :

Q:『現代の科学では、時間について解明されてないというのは本当ですか?・・・』

3番目の回答:『・・・アインシュタインのいう「時間の遅れはお互い様」は間違いです

絶対速度の速いほうが時間の進みは遅くなりますが、その逆は起きません』


ほほう、そうですか。しかしながらこの様な主張をネット上で見たのはこれが初めてです。(非常に珍しい事。)


この回答者の方の別の所での回答で、上記回答に対して補足されている部分。: https://archive.ph/6DTRL :

『絶対速度は観測不可能なので、物理方程式は相対速度を使用しますが、物理事象は絶対速度で起きています

したがって時間の進度の違いはあっても時間の遅れはお互い様ではなく

時間を数直線のように捉えた場合、数直線上のとある点を現在とすれば、数直線の大小は未来・過去に該当します

ただし、空間ごとに時間の進度が違うので、どの空間であっても現在は現在ですが、時間経過は空間ごとに異なります』

次第に回答内容が難解に、哲学的になっていきます。


さらに質問は続きます。

Q:『時間とは一体何なのか、詳しく教えて頂きたいです。』: https://archive.ph/aW1Ia :

5番目の回答(上記までの回答者と同じ方):『時間について哲学的に認識論で語る類のモノは一旦全て忘れてください
時間は物理的な事象ですから、認識論で捉えても無駄です
・・・
例えば、物質が移動すれば、物質の振る舞いとしての軌道に移動も加わり、軌道距離が冗長となるため、単位あたりの時間の進みは遅くなります

これが時間の進みが遅くなるカラクリです
移動速度の速いほうが時間の進みは遅くなりその逆は起きません
・・・
相対的な見方は便利ですがそれを真理にしてしまうと冒頭の認識論の罠に陥ります

時間の遅れはお互い様でないことについては、地球と人工衛星間でどのように時間を補正しているかを調べればすんなり理解できるかと思います』


人工衛星の時間の遅れ、あるいは進みについて調べると「時間の遅れはお互い様でないことがすんなり理解できる」」というこの方の主張は「すんなり理解できる」と言う部分を除けば同意できるものであります。

そうしてまた
>これが時間の進みが遅くなるカラクリです
と言う部分は一考するに値する指摘のように思われます。

以上、Yahoo知恵袋 でした。

知恵袋、玉石混交ではありますが、それはそれで楽しいものでもあります。



・相対性理論「時間の遅れはおたがいさま」「同時」理屈:square_pants さん2014/07/19

https://archive.ph/XPLQ4

https://qa.oshiete.goo.ne.jp/qa/view/8684873?page=2&sort=3

uen_sap さんの回答

『これは考える問題ではありません。
古典力学は不変、不動の枠組として、空間と時間がありました。
ある時刻は全宇宙共通の時刻として、組み立てられている力学体系です。

それをアインスタインがどう測定しても光速が変わらない、と言う実結果を基準にして、組み立てた力学体系が相対論です。
ここでは、空間と時間は不動の枠組みではありません。不動なのは光速。
その結果として、時間の遅れはお互いさまとなるのです。・・・』



・相対論講義録2007年度
前野昌弘
平成 19 年 7 月 24 日 : http://www.phys.u-ryukyu.ac.jp/~maeno/rel2007/tokushu.pdf :ページ43~44:「4.1 同時の相対性」から

『このように「互いに相手の時間を短く感じる」という一見矛盾した結果が出る。』のだが『この章では、「光速度が誰から見ても(どんな慣性系から測定しても)同じである」という事実から
1. 物体の長さは見る立場によって違って見える(長さのスケールは絶対ではない)。
2. 見る立場によって二つの事象が同時かどうかは変わってくる(同時性も絶対ではない)。
3. 経過する時間は見る立場によって違って見える(時間のスケールも絶対ではない)。
ということが帰結されることを説明した。』と主張しています。

つまり『3、経過する時間は見る立場によって違って見える』ので『「互いに相手の時間を短く感じる」という一見矛盾した結果が出る。』のだが、「それで問題はない」と主張している事になります。

ちなみに上記の記述に続いて

『これは日常的な感覚からすると非常識に聞こえる。しかし、我々の「日常的な感覚」は、飛行機に乗ったとしてもせいぜい 3 × 102m/s つまり光速度の 100 万分の1の速度でしか運動しない生活で培われたものであることを忘れてはいけない。・・・

このような話を「そんな常識はずれな!」「感覚に合わない。なんかおかしい」と批判し受け入れない人は多い。しかし、だが、我々の “常識” は、光速よりも遙かに遅い運動でしか運動しない生活の中で作られたものだということを忘れてはいけない。現実の世界は、そういう狭い経験しか持っていない人間の常識から来る感覚とはずれたところにある2。

実験技術の進歩と物理学そのものの発展が、我々の日常の生活では実感できないような現象を理解するためには、「新しい常識」を作っていかなくてはいけないことを教えてくれた。今や相対論や量子論の助けなしには様々な機械がちゃんと動かない世界に我々は生きている。

「相対論って感覚に合わないから間違っているのでは?」「量子論って常識はずれだからどこかに嘘があるのでは?」と考えるのは、「地球が丸いなんて信じられない、平らなはずだ」と言っていた昔の人と同様に、今となっては愚かなことである。』とこの著者は「進歩的な意見=今日的な意見=業界の常識的な意見」を述べておられます。(注2)



・理論物理学のサイト "J Simplicity(ジェイシンプリシティ)" : http://www.jsimplicity.com/index.html : より「Report 相対性理論 JS0.5」の「Chapter3 特殊相対性理論の世界」・「3.2 時間の遅れ」: https://archive.ph/xoT9k#Section3_2 :

『特殊相対性原理より, M(ct,x) と M'(ct',x') は完全に同等のはずです.

M(ct,x) に対して, M'(ct',x') が等速直線運動しているということは, M'(ct',x') を基準にして, M(ct,x) が逆方向に等速直線運動していると考えることもできますね.

この場合,時間が遅れるのは M(ct,x) の方になってしまいます.

これは,明らかに時間が遅れるのは M'(ct',x') の方であるという,上記の主張と矛盾しているように思えます.

この矛盾を時間のparadoxといいます.

しかし,両方とも正しいのです.

立場によって,主張は異なるのは,慣性系が完全に同等であることを意味します.』



・特殊相対性理論入門
立川 崇之
公開用 第 1 版
2012.8
http://www2.yukawa.kyoto-u.ac.jp/~tatekawa.takayuki/Note/SRelativity-v1.pdf


3.7 特殊相対性理論のパラドックス
3.7.1 時計のパラドックス
によれば

『・・・確かにロケットに積まれた時計は,ロケットの外に置かれた時計よりも進み方が遅くなる.ところが相対性原理を考えると,特別な慣性系は存在しないはずである.
つまり,ロケットの乗っている人から見たら,外に置かれた時計の方が速く動いているという事になり,ロケットの外に置かれた時計の方が進みが遅いのではないだろうかという訳である.
この問題は 時計のパラドックス と呼ばれている.果たしてどちらが正しいのだろうか.・・・』

と問題設定され、検討が続きます。

そうしてその結果は
『結論をいうと,「ロケットの外にいる人,ロケットの中にいる人のどちらからでも相手の時計を見ると,進み方が遅くなっている.」という訳である.』



・ランダウ、リフシッツ著「場の古典論(増訂新版)」東京図書(1964年刊)1章§3“固有時間”(p9~11)
http://fnorio.com/0160special_theory_of_relativity/Landau_Lifshitz_classical_field_1-7/Landau_Lifshitz_classical_field_1-7.html#01-003


§3 固有時間
での議論

「K系とK'系が相対運動している時には、お互いが相手の時計が遅れている事を確認する」と書かれてあります。



・「ミンコフスキーの4次元世界」の「2.二次元時空 (7)時計の遅れ」: https://archive.ph/Cvvyf#2-7 :

ミンコフスキーは「座標系KとK’はお互いに相手の時間が遅れていると見る。」と主張しています。



・アインシュタイン(参照:ういき「時間の遅れ」: https://archive.ph/5YPwu :)

アインシュタインの宣言:「特別な慣性系はなく、全ての慣性系は平等である」

『時空の性質の結果として[2]、観測者に対して相対的に動いている時計は、観測者自身の基準系内で静止している時計よりも進み方が遅く観測される。』(上記ういき参照)=「運動していると観測者から認識される慣性系の時間は遅れる」

従って「アインシュタインの宣言」+「時間の遅れについてのういきの記述」=「時間の遅れはお互い様」となります。



注1:Yahoo知恵袋で「ベックさん」という「当方の認識とは少し違いはあります」が、「アインシュタインの時間の遅れはお互い様が間違っている」という事については当方と同様の認識に達しておられた先輩が存在している事が確認できたのは、興味深い事であります。


注2:まあしかしながらこの「時間の遅れはお互い様」に関しては「本当に愚かなのは玄人なのでは」というのが当方の見たてとなります。

つまりは「従来からの業界の常識にとらわれて宇宙に向けられた望遠鏡をのぞかないのは誰なんだ?」という事になりますか。


PS:相対論の事など 記事一覧

https://archive.md/nJZZe