さて前のページではXプラス方向に伸びたMM干渉計の腕の先にある鏡に向かって原点から光が飛ぶ場合をまとめました。
それでMM干渉計は回転させることができ、ぐるっと180度回します。
そうすると今度は速度0.8CでXプラス方向にMM干渉計は移動するのですが、原点から出た光はMM干渉計とは反対方向に走ることになります。
そうしてこの場合にXマイナス方向に伸びた腕の先にある時計は原点に対して未来方向に0.8秒ずれる事になります。
それで今度はこの状況で前ページで行った議論を、順序を入れ替えて行うだけです。
そうするとやはり光は往復測定でも、片道測定でもその速度はCとして観測される事がわかります。
以上でX軸方向についての議論は終了です。
次にY軸方向の検討に入ります。
基準慣性系から見た時にY軸方向に飛んだ光についてはすでに 「その3・ マイケルソン・モーレーの実験とローレンツ短縮・相対論」 : http://fsci.4rm.jp/modules/d3forum/index.php?post_id=27975 :で扱っており、往復で3.3333・・・秒かかる事が分かっています。
そうしてこの時間は基準慣性系での時間ですから、例によって0.6を掛ける事でMM干渉計の時間に換算しなくてはなりません。
それで 3.3333・・・秒*0.6=2秒 となり、X軸方向に飛んだ光と同タイムで原点に戻ってくることが分かります。
そうしてまたY軸方向に飛んだ光のパスは行きと帰りの長さが同じですので、行きに1秒、帰りに1秒かかった事は自明でありましょう。
ちなみにY軸方向にはローレンツ短縮は起りませんし、同時にまたY端の時計が原点の時計に対して未来や過去にずれ込むこともありません。基準慣性系から見てもY端の時計は何時も原点の時計と同じ時刻を表示しています。
さてそうなりますとMM干渉計の原点に立つ観測者は「MM干渉計が静止していようが運動していようが、原点から出た光はX軸方向、Y軸方向ともに光速Cで伝わっていく」と判断するのは当然の事となります。
まあ基準慣性系に対してMM干渉計が静止している場合は「原点から出た光はX軸方向、Y軸方向ともに光速Cで伝わっていく」となるのは自明の事の様に思われます。
この状態ではMM干渉計が基準慣性系にあるのですから、原点から出た光は原点を中心として球面波として広がるのを観測します。
それで問題はMM干渉計が速度0.8CでプラスX方向に運動している場合です。
この場合もMM干渉計の原点に立つ観測者は「原点から出た光はX軸方向、Y軸方向ともに光速Cで伝わっていく」=「原点を中心とした球面波で伝わると観測する事」はいままでの議論で示してきた通りです。
さてこの時に基準慣性系からこれを見ますとどのように見えるのか、という事になるのです。
その状況がわかるアニメーションがあります。
ドップラー効果の原理 : https://archive.ph/R0Nku
同ページの上から7番目のアニメーションがそれを示しています。
最初はMM干渉計が基準慣性系に対して静止している状況を示します。
その時は原点から出た光は原点を中心とした同心円で周囲に広がっていきます。
しばらく見ていると光源が(ここでは音叉ですが、、、)右に移動し始めます。
そうすると光は進行方向に詰まった形で右に進むことが分かります。
この時に光源を原点としてX軸、Y軸をそこに重ねますと、光の速度が一番遅くなるのが+Xの進行方向、次にY軸方向、そうして一番速く(光速Cを超えて)観測されるのが光源の進行方向と逆方向のーX方向です。
その様にMM干渉計の原点に立つ観測者は観察するはずだ、と主張するのが「ガリレイ変換の立場」となります。
一方で「基準慣性系からみればアニメーションが示している通りの状況が観測されるが、MM干渉計の原点に立つ観測者は原点から同心円状に広がる光を観測する」と主張するのが「ローレンツ変換の立場」=「特殊相対論の立場」という事になります。
さて以上の内容が
『ローレンツはこの変換がマクスウェル方程式を不変な形で変換することを、1900年に発見した。・・・ローレンツ変換は1904年に初めて発表されたが、当時これらの方程式は不完全であった。フランスの数学者アンリ・ポアンカレが、ローレンツの方程式を、今日知られている整合性の取れた 4 つの方程式に修正した。・・・
ガリレイ変換は、等速運動をする慣性系間の座標変換であり、ニュートンの運動方程式は不変な形で変化するが、マクスウェルの方程式では満足されない古典的な座標変換である。
ローレンツ変換は、マクスウェル方程式を不変な形で変換する。』
という事の具体的な内容であります。(注1)
注1:ローレンツ変換 : https://archive.ph/3LWS5 :を参照願います。
追記:あるいは上記で示した内容は
1.4 特殊相対性原理と光速不変の原理 : https://archive.ph/zyT2J
に書かれてある
《・・・電磁気学の基本法則は4式のMaxwell方程式ですが,特殊相対性原理より全ての慣性系で同じ形式の方程式になると結論付けられます.
よって,Maxwell方程式から導出される波動方程式も,全ての慣性系で同じ形式の方程式になります.実際に,変換後の慣性系での波動方程式を書き留めておくと,『変換後の慣性系での波動方程式<--上記アドレス参照の事』です.
ダッシュが付いているのは,変換後の座標における量であることを示しています.ここで,波動方程式には光速 C が含まれていて,同形の波動方程式から計算されるので,全ての慣性系において光速は同じ値になることが理解されます.この結論は常識とは相容れませんが,Einsteinは原理として採用しました.》
ということの具体的な内容でもあります。
追伸の1
以上の事より「地球上でいくら光速の測定をしても地球が基準慣性系であるのかどうか、光速の測定結果だけでは判断できない」という事が分かります。
何となれば「地球が基準慣性系であってもなくても、光速の測定結果は常にCとなるから」であります。
そうしてこの事はまた
地球上で言う「光速度一定の原理」というのは
「光は基準慣性系を光速Cで伝わる+ローレンツ変換が成立する」
という事と同等である事を示しています。
ちなみにこの主張が特殊相対論の主張とどこが違うのか、といいますと、特殊相対論は
「すべての慣性系は平等である」とするのですが、それに対して上記の主張は
「すべての慣性系に優先する基準慣性系が存在する」と表明しているのです。
さて前のページでは『「エーテルは存在する」+「ローレンツ短縮が起こる」という立場でMM干渉計の実験結果は完全に説明可能となる事』を見てきました。
それで次のテーマは「特殊相対論の立場で見た時にはどうなるのか」という事になります。
この立場では「エーテルの存在=光が波だからその伝達する媒質が存在するはずだ」を前提としません。
ただ単にMM干渉計が存在している慣性系で観測者が見た時、とそれからMM干渉計に対してー0.8Cで移動している慣性系に立つ観測者から見た時の2つの場合の比較・検討となります。
そうして「光速はいずれの観測者に対しても一定の値、Cである」が前提となります。
1、MM干渉計がある慣性系に立つ観測者から見た時
腕の長さがCである直交する2つの腕の先に付けられた鏡に飛んで帰ってくる光は、X軸、Y軸方向ともに2秒後に戻ってくることを観測者は観測します。
そうして、MM干渉計をどの方向に回転しようがその事はこの結果に対しては何の影響も与えない、という、「ほとんど常識的・直感的な結果」を特殊相対論は結論として出してきます。
なぜならば「MM干渉計と観測者との間の相対速度はこの時にはゼロ」であるからです。
2、MM干渉計に対してー0.8CでX軸方向に移動している慣性系に立つ観測者から見た時(注1)
相対論講義録2007年度 : http://www.phys.u-ryukyu.ac.jp/~maeno/rel2007/tokushu.pdf :の32Pの図で真ん中と右の絵がその状況を表しています。
ちなみに左の絵は1、の状況を示しています。
さてこの絵ではMM干渉計がXプラス方向に0.8Cで走っている時の状況になっています。
それはつまりこの絵が「MM干渉計に対してー0.8Cで移動している慣性系に立つ観測者から見た時の絵である」、という事になります。
その場合は「静止しているエーテルに対してMM干渉計が+X方向に0.8Cで移動している時」と全く同じ結果を特殊相対論は与えます。
つまり
T(Y軸方向)=3.333・・・(秒)
T(X軸方向)=5.555・・・(秒)
で光は原点に戻ってくる、という計算になります。
ただしこの時はまだローレンツ短縮の効果は入れてはいません。
ここにX軸方向のローレンツ短縮分を加味すると
T(X軸方向)=3.333・・・(秒)
となり、光は同時に原点に戻ってくることが分かります。
つまりは特殊相対論の前提である
・すべての慣性系は平等である
と
・光速はいつもCである
という条件だけではMM干渉計の結果を説明できないのです。
そうしてこの事は「エーテルが存在する」という前提での検討状況と同じです。
そうであれば特殊相対論の立場からしても「MM干渉計の結果を説明する為にはローレンツ短縮が必要となる」という事であって、その事は「エーテルが存在するとした場合となんら変わらない」と言えます。
ちなみに、1、の計算結果と2、の結果を比較する事で2、においては「0.8Cで移動しているMM干渉計の時間は遅れる」という事も分かります。
この「時間が遅れる」という結果は「エーテルに対していつも光は光速Cで伝わる」という前提からは出てきません。
「光の速度はどうやって計っても光速Cである」という「特殊相対論の前提から出てきている」様です。
そうであれば「時間が遅れる」という観測結果が示されれば「エーテルに対していつも光は光速Cで伝わる」という前提・仮定は否定されると考えてよさそうです。
但しMM干渉計の結果のみではまだそこまでの事は言えません。
なんとなればMM干渉計はX軸方向に飛んだ光とY軸方向に飛んだ光が戻ってきた時の時間差のみを検出する装置であるからです。
さてそうであれば、世間一般に言われれいる様に「MM干渉計の結果を持ってエーテルは存在しないという事の証明になっている」という立場は間違いであると言えます。
それは「エーテルは存在する」+「ローレンツ短縮が起こる」という立場でMM干渉計の実験結果は完全に説明可能となるからであります。
追伸:上記2、の説明の中に「特殊相対論の双子のパラドックス(加速度運動なし)」がすでに潜んでいる件
2、の説明で観測されている干渉計を干渉計①とします。
そうしてそのMM干渉計①に対してー0.8CでX軸方向に移動している慣性系に立つ観測者の観測によって、干渉計①がある慣性系の時間が遅れている事がわかりました。
それでその時に同時に「ー0.8CでX軸方向に移動している慣性系にもMM干渉計②をすえつける事が可能」です。
そうしてその干渉計②を干渉計①が据えられた慣性系から観測する事も可能です。
それで、その様な観測を行いますと今度は干渉計②がある慣性系の時間が遅れている事が分かります。
それは2、で行った説明を今度は立場を入れ替えて干渉計②に行えばよいだけですから、「干渉計②がある慣性系の時間が遅れている」という結論に到達します。
それでこれは特殊相対論の前提
・すべての慣性系は平等である
と
・光速はいつもCである
という前提から当然の結末として出てくる結果です。
こうして『特殊相対論は「双子のパラドックス(加速度運動なし)」を必然的に内包することになる系である』という事が分かるのでありました。
そうしてもちろん当方の立場は、といえば「お互いが相手の時計を遅れていると観測する様な状況は現実には成立しない」と言うものになります。
追伸の2:MMさんたちはもちろん「エーテルに対して地球はたいていの時間、移動している」と判断し、そうであれば「光の到達時間差を検出できる」として実験を始めたのでした。
しかし自然はローレンツ変換を用意していました。
従ってMMさん達は「どうやっても光の到達時間差を検出できなかった」という結果に終わったのであります。
そうしてその事は逆に言えば「MM干渉計の実験はローレンツ変換が存在するということの糸口を始めて確認した実験であった」という事ができます。
注1:MMは運動しながらMM干渉計を見てはいない、という突込みが出来そうです。
確かにMMはMM干渉計に対して静止した状態で干渉縞の移動があるかないかを確認したのでした。
そうしてその結果は、「干渉縞の移動は見当たらなかった」であります。
さてこの状況にあるMM干渉計を0.8Cで移動している観測者が見た時に、干渉計の縞模様は移動するでしょうか?
ローレンツ短縮を入れていない特殊相対論の2つの前提条件にたてば答えは「移動する」となります。
しかし現実には干渉縞は0.8Cで移動しながらMM干渉計をみても移動しないのでした。(従ってこの事からも、特殊相対論においては「ローレンツ短縮はマストとなるのでした。)
なぜならその時すでにMM干渉計に対して静止している観測者が「干渉縞の移動は起きてはいない」と報告しているからです。
そのように状況が決定されている物理状態を0.8Cの移動している観測者が見ると「違う結果が見える」という事はありえません。
したがって「0.8Cで移動している観測者が見た時」=「-0.8CでMM干渉計が移動している時」にも干渉縞の移動は確認されない事になるのです。
コメント:MMさん達がやった「エーテルの風探し」は今の時代においては「ダークマターの風探し」に通じるものがあります。
両方ともに「目には見えないもの」ではあるが「確かに地球に吹き付けている」と想定され、探されたものであります。
そうして残念ながら「エーテルの風」は見つかりませんでしたが、さて「ダークマターの風」はとらえる事ができますやら。
要注目であります。
その4・ マイケルソン・モーレーの実験とローレンツ短縮・相対論 https://archive.ph/xDfrM
PS:相対論の事など 記事一覧
相対論講義録2007年度 : http://www.phys.u-ryukyu.ac.jp/~maeno/rel2007/tokushu.pdf :の32Pの図は宇宙空間の中に存在しているエーテルに対して地球に据えられたMM干渉計がたとえば地球が太陽の周りを公転する時にエーテルの中を移動している時の状況を表しています。
この時光は静止しているエーテルに対して光速Cで全ての方向に伝わります。
従って講義録にあるように
Y軸方向に進んだ光が戻ってくる時間は
T(Y軸方向)=2*L/sqrt(C^2-V^2)
同様にしてX軸方向では
T(X軸方向)=2CL/(C^2-V^2)
但しLは干渉計の腕の長さです。
それで前のページの計算ではL=CでV=0.8Cでした。
これを代入すると
T(Y軸方向)=3.333・・・(秒)
T(X軸方向)=5.555・・・(秒)
こうしてX軸方向の腕の長さがローレンツ短縮を受けない場合の計算結果が再現されます。(前述:その3参照)
そうであれば常に
T(X軸方向)>T(Y軸方向) となり
太陽慣性系では光は同時に原点には戻っては来れない事になります。
同様にしてP33の図では今度は地球上に立つ観測者から見た時の状況が説明されています。
MM干渉計の原点から出た光はこの場合もエーテルに対して全ての方向に光速Cで伝わります。
しかしMM干渉計からみれば「球面波として伝わる光の輪はエーテルに流されている様に見える事」になります。
特にY軸方向にある鏡に届く光は干渉計の原点から真上の方向(=Y軸方向)に飛んだのでは鏡に到達する事が出来ないので、エーテルの流れに逆らう形で少し前方向に飛ばなくてはなりません。
したがってY軸方向へ飛ぶ光の速度(Y軸方向成分)はその分低くなる、と説明されます。
その結果としてT(Y軸方向)及びT(X軸方向)の計算式は太陽慣性系で出したものと形の上では同じになるのです。
従ってこの場合は、地球の観測者から見ても太陽慣性系の観測者から見ても同じ状況が見える事になります。
つまりローレンツ短縮で地球の観測者から見た時にT(Y軸方向)=T(X軸方向)が成立し、X軸とY軸方向に飛んだ光が同時に原点に戻ってきたならば、太陽慣性系からみても「光は同時に原点に戻ってくる」のです。
そうであれば「エーテルは存在する」+「ローレンツ短縮が起こる」という解釈でMM干渉計の実験結果は完全に説明可能となります。
但しこの場合は光の速度Cはエーテルに対しては一定の速度を保つために、逆にMM干渉計から見た時には「光速は進む方向によって変化する様に見える」のです。
つまり「光速はどの観測者から見ても一定不変のC」にはなってはいない、という事です。
そうして、その事を認めた上で「エーテルは存在する」+「ローレンツ短縮が起こる」という解釈でMM干渉計の実験結果は完全に説明可能となるのです。
そうしてこれがローレンツさんが到達した結論である、と言えます。
しかしながらこの結論はMM干渉計の見かけ上の結論「光は全ての方向に同じ速度で伝わる」とは一致していない様に見えます。(注1)
注1:同じ長さの直交させた腕の先につけた鏡との間を往復する光が何時も同時に原点に戻ってきた、と言うのがMM干渉計の「見た目の結果」でした。
それをそのまま解釈するならば「光は全ての方向に同じ速度て伝わる」となります。
しかしながら「光の媒質はエーテルである論」を支持するならば、「光は全ての方向に同じ速度て伝わる」は否定される事になります。
(エーテルの立場に立てば「光は全ての方向に同じ速度て伝わる」は真ですが、MM干渉計の立場からは上述したように偽となります。但しここでの議論は「ローレンツ変換が成立する、という特殊相対論の主張」はまだ考慮されてはいません。)
ちなみにここでの議論での相対速度はエーテルとMM干渉計の間で定義されています。
追伸
ローレンツさんが提示した「ローレンツ短縮」はアドホックな、場当たり的なものでしたが、それはまた本質を見抜いたものでもありました。
それに対して「地球につねにエーテルが絡みついているので、エーテルは地球に対して静止している=エーテルの風は検出できない」というアドホックな考え方は「何もそこからは生まれてこない」「全く意味のない主張」なのでした。
PS:相対論の事など 記事一覧
さてパズルの回答です。
X軸方向に飛んだ光が戻ってくるのに3.333・・・秒と言うのは正解です。
但しこの数値はX軸方向の腕の長さが0.6倍になった=ローレンツ短縮した、という事が前提の数字です。
それで間違っているのはY軸方向に飛んだ光の戻ってくるまでの時間、2.56125(秒)です。
それで何を間違えているのか、と言いますと「絵の描き方が違う」のです。
『さてY軸方向に飛んだ光の状況を絵にかくとX軸方向に0.8C、でY軸方向の腕の長さがCだから光の光路は直角三角形の斜辺となり、その斜辺の長さをLとすれば
L=sqrt(C^2+(0.8C)^2)
となります。』
↑こんな風に「しらっと書かれる」と「ああそうだね」となりますよね。(ならなかった人は偉い。当方はなりました。)
『X軸方向に0.8Cで進む』、と言うのは前提条件ですから、それはそのままでいいのです。
そして静止系からMM干渉計(マイケルソン・モーレー干渉計)を見た場合は光は斜めに進んでいる事になり、『そこには斜辺の長さLの直角三角形が現れる』というのも正しいのです。
但し、光は斜辺Lに沿って走りますから、光がMM干渉計の原点からY方向に出てY端にある鏡に届いた時に干渉計はX軸方向に0.8L移動している、というのが『X軸方向に0.8Cで進む』、というコトバ=前提の内容になるのです。
従ってそこに現れる直角三角形は底辺が0.8L、斜辺がL、高さがCなのですよ。
そうであればピタゴラスさんがいう様に
L^2=(0.8L)^2+C^2
だから L=1.6666・・・*C (注1)
従って鏡までは光は1.6666・・・秒でとどく、と。
行って帰って往復で3.3333・・・秒となります。
こうしてめでたく0.8CでX軸方向に移動するMM干渉計の原点からY軸とX軸方向に出た光は同タイムでまた原点に戻ってくる事になります。
・・・と言う様にする為にローレンツさんは「X軸方向の干渉計の腕の長さが0.6倍に縮んだのだよ」と主張したのでした。(注2)
それでようやく「なるほど」と当方は納得したのです。
注1:底辺が0.8LでL=1.6666・・・*C だとすると
0.8L=1.33333・・・*C になり
「X軸方向に0.8Cで移動する、を満足できないのでは?」に対する答えは
「MM干渉計が1.33333・・・*Cの距離を移動するのに必要な時間は静止系で計って1.66666・・・秒。
従って静止系で観測されるMM干渉計のX軸方向移動速度Vは
V=0.8L/1.66666・・・(秒)
=1.33333・・・*C割る1.66666・・・秒
=0.8Cとなる」が回答となります。
ちなみにこの時同様にして干渉計の原点に立つ観測者は静止系がーX方向に0.8Cで移動している事を観測しなくてはなりません。
つまり静止系の観測者は干渉計が+X方向に0.8Cで移動している、と観測し、干渉計に立つ観測者は静止系がーX方向に0.8Cで移動しているとみるのです。
そうしてその事が「相対速度については全ての慣性系が平等である」という事の内容になります。
注2:この時のローレンツ短縮計算は : その2・ マイケルソン・モーレーの実験とローレンツ短縮 :を参照願います。
追伸
とはいえ上記の説明の仕方はMM干渉計の実験と解析をそのままは再現していません。
実際の所MM干渉計は地上に据え付けられ、0.8Cで移動する事は出来なかったのです。
逆にMMさん達は「エーテルの風がMM干渉計に吹き付けている」という前提で実験し解析しています。
2つ目に「どのような光源から出た光でもその速度は光速Cである」という前提を説明の中で使っています。
この前提は特殊相対論が提示した以降、認められる様になったものであって、MMさん達が実験した当時は「光は媒質であるエーテルの中を光速Cで伝わる」と言うのが一般的な認識であったと思われます。
そうしてまたローレンツさんもこの認識であったかと思います。(注:ただしこれは個人的な推察であって、史実は違っている可能性があります。)
このあたり、地上に設置されたMM干渉計に対してエーテルの風が吹き付けている時にX軸方向とY軸方向に飛んだ光が戻ってくる時の時間差の計算詳細は
相対論講義録2007年度 : http://www.phys.u-ryukyu.ac.jp/~maeno/rel2007/tokushu.pdf :33P~ 実験装置が静止している立場 : にありますのでそちらでご確認願います。
そうしてこの場合は光はエーテルの風に乗ったり逆らったりしますので光速は一定ではなく変化しますが、その変化した速度で光源から鏡までの距離を割って出す往復時間の計算式を見ると、結果的に形の上では特殊相対論の前提となっている「光速Cは何時も一定である」とした場合の式と同じになっている事が分かります。
それはつまりMM干渉計の実験とローレンツ短縮を加えた結果の解釈だけでは「光速Cは何時も一定である」のか「エーテルが存在して光速はエーテルに対して一定の速度Cで走る」のか見分けがつかない、という事であります。
ちなみにこの講義録の著者はMM干渉計の実験を『「マイケルソン・モーレーの実験は「光の速度は観測者によって変わるはず」ということを確認するための実験であったが、その結果は失敗に終わり、光の速度が変化しないことが確認されてしまったのである。』と述べているが、この認識は違っていると思われます。(注3)
MM干渉計の実験は「エーテルの風を検出する事を目指したもの」であって「光の速度が一定かどうか」については上記のように「何も語ってはいない」のです。
加えてこの件につきましては、ういきの「マイケルソン・モーリーの実験」: https://archive.fo/ENUqB :も参照願います。
注3:同講義録P31 下段に記述有
また英文ういきの別の記事の記述では「MM干渉計の結果は方向によって光速が変わらない事が証明されたのである」となっています。
これは「同じ長さの直交する2本の腕の先につけた鏡に反射して戻ってくる光は何時も同時に原点に返ってきた」という結果の言いかえになっています。
しかしながら「異なる観測者=干渉計の上に立つ者とエーテルの風の上に立つもの」とが「光の速度を測定したら同じ値であった」とはどこにも書いては無いのです。
さて話しを続けましょう。
腕の長さがCであるマイケルソン・モーレーの干渉計を考えます。
腕はX軸とY軸方向にのびています。
干渉計は静止系に対してX軸方向に0.8Cで移動している。
その時にY軸方向に原点からでた光は干渉計に立っている観測者からみれば1秒でY端にある鏡に到達し合計2秒で原点まで戻ってくる事を確認します。
同様にしてX軸方向に原点からでた光は1秒でX端にある鏡に到達し合計2秒で原点まで戻ってくる。
干渉計に立つ観測者にとっては「それは当たり前の事」であります。
それで問題はこれを静止系から見た時にはどう見えるか、ということですね。
さてY軸方向に飛んだ光の状況を絵にかくとX軸方向に0.8C、でY軸方向の腕の長さがCだから光の光路は直角三角形の斜辺となり、その斜辺の長さをLとすれば
L=sqrt(C^2+(0.8C)^2)
となります。
そうすると光路長は2Lですから、光の走行時間Sは
S=2L/C
=2*sqrt(C^2+(0.8C)^2)/C
=2.56125(秒)
さて次はX軸方向です。この計算は前のページにあったように光が進行方向に進む時(原点を出た光がX端の鏡に向かう時)は走行時間はC/(C-0.8C),鏡に反射して原点に戻る時はC/(C+0.8C)となります。
C/(C-0.8C)=5
C/(C+0.8C)=0.555・・・・
従って合計で5.555・・・(秒)
それで、このままでは原点を出てX軸とY軸に分かれて進んだ光は同時に原点に戻っては来ません。
つまり「実際には確認されなかった干渉縞が現れる事」になります。
それでこれでは実験結果を説明できませんから、ローレンツ短縮の導入となります。
それで0.8Cに対応するローレンツ短縮は
sqrt(1-0.8^2)=0.6
ですから、X軸方向の光の走行時間は行きが
0.6C/(C-0.8C)=3
戻りが
0.6C/(C+0.8C)=0.333・・・
となり合計で3.333・・・(秒)となります。
さてそれで、残念な事にはこの数値では
3.333・・・(秒)≠2.56125(秒) であり
上記計算のY軸に飛んだ光の走行時間と合わないのです。
まあそういう訳でこれがマイケルソン・モーレー干渉計の計算で当方が迷い込んだパズルとなります。
さてそれで、それでは上記の議論のどこに誤りがあったのでしょうか?
時間がある方はどうぞトライしてみて下さい。
PS:相対論の事など 記事一覧