特殊相対論、ホーキング放射、ダークマター、ブラックホールなど

・時間について特殊相対論からの考察
・プランクスケールの原始ブラックホールがダークマターの正体であるという主張
 

「時間の遅れはお互い様」成立の歴史的経緯

2023-05-30 04:52:50 | 日記

1、何時、誰が何を言ったのか? 「時間の遅れはお互い様」成立の年表

・アインシュタイン

1905年「動く物体の電磁気学について」で

『2つの時計が一緒に持ち寄られ、同期され、その後、1つの時計が移動して戻ってきた場合、移動した時計はその間に滞っている時計よりも遅れていることが推論されました。

1911年

アインシュタインはこれを特殊相対性理論の自然な結果と考えましたが、他の人々が示唆するような逆説(パラドックス)ではなく、1911年に彼は以下のように結果を再述し詳細に述べました(物理学者ロバート・レズニックのコメントも続いています)。

アインシュタイン: 生きている有機体を箱の中に入れたとしたら…その有機体は、任意の長時間の飛行の後、ほとんど変化のない状態で元の場所に戻ることができ、一方、対応する有機体は元の位置に留まっていた。すでにずっと前に新しい世代に道を譲っていました。移動する生物にとって、その動きがほぼ光の速度で行われる限り、長い旅の時間はほんの一瞬でした。

レズニック: 静止している生物が男性で、移動している生物がその双子である場合、旅行者が家に帰ると、自分よりもはるかに年老いた双子の兄弟が見つかります。このパラドックスは、相対性理論において、双子のどちらかがもう一方を旅行者とみなす可能性があり、その場合、それぞれが相手を若く感じるはずであるという主張に焦点を当てていますが、これは論理的矛盾です。この主張は、双子の状況が対称的で交換可能であると仮定していますが、この仮定は正しくありません。』

そうしてまた

1911 年ポール ランジュバン

『ローレンツ係数γ = 100で旅行する旅行者の話を説明することにより、「印象的な例」を示しました。(光の速度の 99.995%)。旅行者は 1 年間発射体の中に留まり、その後方向を反転します。帰還すると、地球では200年が経過しているのに、旅人は自分が2歳老けていることに気づくでしょう。旅行中、旅行者と地球の両方が一定の速度で相互に信号を送信し続けるため、ランジュバンの物語は双子のパラドックスのドップラー シフト バージョンの 1 つに位置づけられます。信号レートに対する相対論的効果は、さまざまな経年変化レートを説明するために使用されます。旅行者のみが加速を受けたために発生した非対称性は、なぜ違いが存在するのかを説明するために使用されます[16] [17]のは、「速度の変化や加速度には絶対的な意味がある」ためです。【A3】』(注5)

結論として

『アインシュタインもランジュバンも、そのような結果は問題があるとは考えていませんでした。アインシュタインはそれを「奇妙な」とだけ呼んだのに対し、ランジュバンはそれを絶対加速度の結果として提示しました。[A 7]

両名は、双子の物語によって示される時間の差異からは、いかなる自己矛盾も構築できないと主張した。言い換えれば、アインシュタインもランジュバンも、双子の物語が相対論的物理学の自己矛盾への挑戦であるとは考えていなかったのです。』

以上は英文ういき「双子のパラドックス」: https://archive.md/L1VhD :からの引用です。(注1)

そうして上記の情報からは「アインシュタインが直接的には『時間の遅れはお互い様』とは主張していない事」が分かります。

アインシュタインの主張はあくまで『2つの時計が一緒に持ち寄られ、同期され、その後、1つの時計が移動して戻ってきた場合、移動した時計はその間に滞っている時計よりも遅れている』という事でありました。

 

・1908年 ミンコフスキー

1908年9月21日にKo¨ln(ケルン)のドイツ自然科学者医師大会で行った講演「空間と時間」での主張。

以下「ミンコフスキーの4次元世界」 : https://archive.ph/Cvvyf :を参照します。

それで同上資料の「(7)時計の遅れ」第37図から始めます。それで第37図によってミンコフスキーは「相対運動している慣性系同士はお互いに相手の時計が遅れている事を確認する」と説明しています。(注2)

さて状況がはっきりしてきました。

記録に残っている範囲で最初に「時間の遅れはお互い様」と明言したのはミンコフスキーの模様です。

まあしかしながら1905年のアインシュタインの論文で記述された推定『2つの時計が一緒に持ち寄られ、同期され、その後、1つの時計が移動して戻ってきた場合、移動した時計はその間に滞っている時計よりも遅れている』に対しては多くの議論・反論がなされたものと思われます。

しかしながら当方の情報収集力では「その時にだれが何を言ったのか」までは残念ですがわかりません。

まあそれもありましてここでは「ミンコフスキーに一同を代表してもらう」という事にします。

つまりは1908年にミンコフスキーが初めて「時間の遅れはお互い様と言い出した」としておきましょう。

 

1951年 ランダウ、リフシッツ

ランダウ、リフシッツによる「場の古典論」は、1951年に出版されました。

その §3 固有時間 での議論で

K系とK'系が相対運動している時には、お互いが相手の時計が遅れている事を確認する」と主張しております。(注3)

 

2、「時間の遅れはお互い様」という通説の完成
・2022年~23年現在の状況

こうしてそれに続く事態はすべてミンコフスキーとランダウ、リフシッツのコピペという事になり、相対論の通説「時間の遅れはお互い様」が出来上がり現在に至った、という事になります。

たとえば ういき「特殊相対性理論」: https://archive.md/Tsk4p :の「時計のパラドックス」章では

『今、ここに一組の双子がおり、二人は慣性運動しながら次第に離れているとする。このとき兄から見ると、弟の時計は遅れてみえ、逆に弟から見ると兄の時計は遅れてみえる事が特殊相対性理論から帰結される。

これは一見奇妙に見えるため、時計のパラドックスと呼ばれることもあるが[46]、実は特に矛盾している訳ではない。なぜなら慣性運動している二人は二度と出会うことがないので、もう一度再会してどちらの時計が遅れているのかを確認するすべはないからである。』

と書かれてあり、ういきを信頼する人は「そうなんだ」となり、こうしてますます「時間の遅れはお互い様」という通説は「ネットロアとして拡散してゆく」のでした。

ちなみに[46]は「佐藤勝彦 著、長岡洋介、原康夫 編『相対性理論』岩波書店〈岩波基礎物理シリーズ〉、1996年12月18日。ASIN 4000079298。ISBN 4000079298。 NCID BN15591416。OCLC 675345203。全国書誌番号:97049882。」となっています。

加えてういき以外でのネットでの状況は以下の記事にて確認可能です。

 ・素人が正しいのか、玄人が正しいのか

 ・「時間の遅れはお互い様」を主張するネット記事一覧

 ・その2・「時間の遅れはお互い様」を主張するネット記事一覧

こうしてアインシュタインが「言外にほのめかし」そうしてミンコフスキーが明言した「時間の遅れはお互い様」という主張は確固たる通説として現在もこの業界では信じられているのでした。(注4)

 

注1:英文:「双子のパラドックス」

https://en-m-wikipedia-org.translate.goog/wiki/Twin_paradox?_x_tr_sl=en&_x_tr_tl=ja&_x_tr_hl=ja&_x_tr_pto=sc

ちなみに最後の章に次のような「基準静止系あるいはエーテル」に対する「興味深い文章」が乗せられています。ご参考までに。

『アインシュタインが行った実際の時計の時間差(または年を取る速さ)の結論によって、ポール・ランジュバンは実際には実験的に検出不可能な絶対的な基準枠を仮定しました。

1911年、ランジュバンは次のように書きました。「エーテルにおける一様な平行移動は実験的な意味を持ちません。しかし、それによって結論されるべきではありません。それが時折早まって行われることもあるが、エーテルの概念を放棄しなければならないということ、エーテルは存在しないか、実験できないということではありません。エーテルに対する一定の速度は検出できませんが、速度の変化は絶対的な意味を持ちます。」(注5)

1913年、アンリ・ポアンカレの遺著『最後のエッセイ』が出版され、彼は自身の立場を再述しました。「今日、一部の物理学者は新しい慣習を採用しようとしています。それは彼らが強制されているわけではありません。彼らはこの新しい慣習がより便利だと考えているだけです。そして、この意見に同意しない人々は合法的に古い慣習を保持することができます。」

ポアンカレとヘンドリック・ローレンツの相対性理論では、実際には実験的に識別不可能な基準枠が仮定されているため、双子のパラドックスは発生しません。時計の遅れ(および長さの収縮と速度)は実在と見なされるため、再会した時計の間には実際の時間差が存在します。

ジョン・A・ウィーラーが「エーテル理論B(長さの収縮と時間の収縮)」と呼ぶその相対性の解釈は、アインシュタインの解釈と比べてはるかに注目を集めませんでした。アインシュタインの解釈では、慣性系を超える対称的な測定の背後に深層の現実を無視しています。これらの解釈を区別する物理的なテストは存在しません。

2005年、ロバート・B・ロフリン(ノーベル物理学賞受賞者、スタンフォード大学)は空間の性質について次のように書きました。「アインシュタインの最も創造的な業績である一般相対性理論が、空間を媒体として概念化することになるとは皮肉なことです。彼の特殊相対性理論では、そのような媒体は存在しないという原則に基づいていました...「エーテル」という言葉は、それが相対性理論に対する反対意見と関連しているため、理論物理学の文脈では非常に否定的な意味を持っています。これは残念なことですが、この意味を取り除いた場合、それは実際にほとんどの物理学者が真空について実際に考えている方法をうまく捉えています... 相対性理論自体は、宇宙に普及する物質の存在または非存在について何も言っていません。ただし、そのような物質は相対性の対称性(つまり、測定による)を持たなければならないということだけです。」

1968年のA. P. フレンチの『特殊相対性』には次のように書かれています。「ただし、ここではAの加速度の実在性、およびそれに関連する慣性力の観測可能性に訴えています。固定された星や遠い銀河の枠組みがない場合、双子のパラドックスのような効果は存在するでしょうか?ほとんどの物理学者はそうではないと言うでしょう。我々の最終的な慣性系の定義は、宇宙全体の物質に対して加速度がゼロであるフレームであるかもしれません。」』

注2:この件、内容詳細につきましては「その3・ ミンコフスキー パラドックス」: https://archive.md/K5C3C :を参照願います。

ここでミンコフスキーはMN図をつかって「相対運動している慣性系同士はお互いに相手の時計が遅れている事を確認する」と主張していますが、その確認手段については明示していません。

そうしてもちろん「物理学は現物勝負」でありますからこのままではミンコフスキーの主張は実は「そのように考える事ができる」という「ひとつの仮説の提示」という状況でした。

注3:この件、内容詳細につきましては「ランダウ・リフシッツが間違えた事」: https://archive.md/UEsgW :を参照願います。

上記のミンコフスキーの主張に対してランダウ・リフシッツは「時間の遅れはお互い様」を確認する実験手順を明示しました。

そうしてそれによって「ほら、時間の遅れはお互い様だよ」と主張したのでした。

しかしながらその主張は「LLの一般解の導出」によって否定される事になりました。

そうであればランダウ・リフシッツの測定方法は否定されましたので、「K系とK'系が相対運動している時には、お互いが相手の時計が遅れている事を確認する」というランダウ・リフシッツの主張は「検証されていない仮説」という立場にもどりました。

つまりはミンコフスキー提示の仮説と同じ位置に戻った、という事になります。

さてそうなりますとこの勝負はやはり「実物勝負」つまりは「実験して白黒つける」という事になりそうです。

ちなみに個人的には横ドップラー効果の存在そのもの、そうしてまた静止衛星における時間の遅れの存在がすでに基準慣性系の存在を示しているととらえております。

そうであれば「観測者が勝手に静止系を決めれる」という「時間の遅れはお互い様」と言う主張は「すでに実験的な検証によって否定されている」となります。

くわえてランダウ・リフシッツの測定方法が「LLの一般解の導出」によって否定されましたので、基準慣性系の存在に対する確信はさらに増えたと言えます。

まあしかしながら「それらの事実を確認してもまだ通説が主張されている」のであれば「もっと明白にこのテーマに白黒つける実験が必要である」という事になりそうです。

注4:アインシュタインは今にして思えば「奇妙な事に」なのか「賢明な事に」なのか分かりませんが「時間の遅れはお互い様」とは明言していません。

但しアインシュタインの立てた前提とそうして特殊相対論の結論からロジックによって導き出される主張は「時間の遅れはお互い様」とならざるを得ず、それゆえにミンコフスキーもランダウ・リフシッツも「時間の遅れはお互い様」と主張し、それぞれが独自の思考実験によって「時間の遅れはお互い様を立証できた」としたのです。

ここでミンコフスキーが始めたMN図による表示方法についてコメントが必要でしょう。

その方法は「状況を目に見える様にした」という事ではとても大きな貢献でした。

しかしながら同時にそれによって「距離が離れているにも関わらず、比較が必要な2つの時計の指し示す時刻を『ちょうど神の目の様に俯瞰的に瞬時に2つの時計の指し示す時刻を確認できる』様な誤解」を招きました。

そうしてその様な比較は現実には不可能なのですがミンコフスキーは「ほら、こうやって比較できる」と示しました。

その結果はミンコフスキーの後に続く者達はすべてその『間違った比較方法』を「これでいいのだ」として来たのです。

それからもう一つ、ミンコフスキーが示したのは「計算の途中で、問題を検討している途中で(自分に都合の良いように?)静止系を切り替える事が出来る」という事でした。

これによって「時間の遅れはお互い様」となりさらには「光の速度を超える通信が起こると因果律違反が起きる」という事になってしまったのであります。

しかしながらこのミンコフスキーの主張に対してアインシュタインは「そこまでは言ってはいない」、「静止系は主観的に決めてよい」とは言いましたが「計算の途中で静止系を切り替えてもよい」とは言ってはいないのであります。

そうであれば「計算途中で静止系を切り替える、というやり方を始めたのはミンコフスキーである」という事になります。

注5:ポール ランジュバンの主張する所は「加速度が時間の遅れを引き起こす」と言うもの。

しかしながら「横Gも縦Gも時間の遅れを引き起こさない」と言うのは実験的な事実です。

 

PS:相対論・ダークマターの事など 記事一覧

https://archive.md/wBAdd

https://archive.md/WHcRX

 


「時間の遅れはお互い様」は成立するのか?

2023-05-27 15:01:52 | 日記

1、「時間の遅れはお互い様」は成立するのか?

2つのすれ違う慣性系の間で時間の遅れを観測した時に、お互いが「相手の慣性系の時間が遅れている」と主張する事が「時間の遅れはお互い様」の内容です。

そうして通説においては「時間の遅れはお互い様」となっています。

 

ところがここにきて「LLの一般解」が導出されました。

それでこの「LLの一般解」によれば「2つの慣性系の時間の遅れを知るために3つの時計A,B,Cを使った方法で得られた測定値の解釈方法は無限にある」という事が明らかになりました。

なぜ「無限にあるのか」といいますれば「特殊相対論を使って時間遅れの計算をする時には、まずは静止系がどこにあるのかを決めなくてはなりません。」

そうして「LLの一般解」によればその静止系は時計Aの位置にあってもよく、時計Bの位置でもよく、さらには時計Aと時計Bのあいだのどこにあってもよい、と言うのが「LLの一般解の結論」でした。

そうしてもちろん、そうやって指定した任意の位置にある静止系に対して、それに応じた特殊相対論の計算があり、その結果はいつも測定によって得られたデータを再現できるのでした。

 

それに対して従来の「時間の遅れはお互い様」の解釈では「慣性系αの時計Aの横に立つ観測者」が「自分が立っている慣性系αが静止系である」と決めて、相手の慣性系βが「相対速度Vで動いている」という事を前提にしていました。

そうしてその前提に立ってローレンツ変換を時計Bに行う事で時計Bの時間経過が時計Aの時間経過よりも観測値に一致した値で遅れている事を見出していました。

「静止系は自分が立っている慣性系αである」というものは時計Aの横に立った観測者の主観的な判断にすぎないものなのですが、それに基づいて特殊相対論で計算すると計算値と観測値がぴったりと一致する、従って「静止系は慣性系αである」という自分の前提は正しくそうして「慣性系βの時間が遅れているのだ」と結論を出していました。

 

しかしながらその時に「観測によって得られたデータの解釈の仕方が他にもある」という事は今までは知られておらず、したがってその様な事は考慮されませんでした。(注1)

しかしながら実状は「LLの一般解が示す状況になっている」のです。

つまりは観測によって得られた時計の固有時の解釈方法は無限にあり、その中の一つが「時計Aが静止系にあるという解釈にすぎない」のでした。

それはまたコトバを変えますれば「観測によって得られた時計のデータによっては慣性系αと慣性系βでどちらの時間が遅れていたか、決定できない」という事を示しています。

さらにまた違う表現をするならば「静止系に対して慣性系が動いている事によって起きる慣性系の時間の遅れは3つの時計を使った方法では測定できない」という事でもあります。(注2)

 

さて「時間の遅れはお互い様」という主張は「慣性系の時間の遅れは3つの時計を使った方法で測定可能である」という前提にたったものであります。

しかしながらその前提は「時計Bの指摘」そうしてまた「LLの一般解」で否定されました。

従いまして従来、通説で言われてきた「時間の遅れはお互い様」という主張はその主張の根拠がなくなりましたので「意味をなさない主張である」という事になります。

それは「3つの時計による測定結果に対する誤解に基づくものである」と言えます。(注3)

 

2、ランダウ・リフシッツが示した方法は一体何を計る方法なのか?

2つの慣性系に置かれた3つの時計を使う事で2つの時計の固有時を入手する方法です。

そうしてその固有時の値から

①、2つの慣性系の相対速度Vが分かります。

②、ローレンツ変換による時間の遅れが実在している事が分かります。

あるいは

②、ローレンツ因子sqrt(1-V^2)の値がわかります。

「いや、そんな事は前もって分かっているだろう?」ですって?

いえいえ、「物理的な状況と言うものは測定して初めて分かるもの」ですよ。

ちなみに残念な事に2つの慣性系の間の時間の遅れはこの測定では分かりません。

「この測定により2つの慣性系でどちらが時間が遅れているか分かるはずだ」というのは「あなた方の思い違いに過ぎない」と特殊相対論はそう言っているのです。

 

注1:通説の元になったランダウ・リフシッツもその事を見逃していました。

注2:注意していただきたいことは「静止系に対して慣性系が動いている事によって起きる慣性系の時間の遅れは測定できない」とは当方は主張していない事です。

但しその方法は「ランダウ・リフシッツが示した方法では無理だ」と主張します。

それに対してたとえばローレンツは「客観的な静止系は存在するがそれは観測できない」=「静止系に対して慣性系が動いている事によって起きる慣性系の時間の遅れは測定できない」という立場でした。

しかしながら当方はローレンツの主張にも関わらず「客観的に存在している静止系に対して慣性系が動いている事によって起きる慣性系の時間の遅れは測定できる」と主張致します。

注3:ランダウ・リフシッツが間違えた原因がここにあります。

「2つの慣性系の間に生じている時間の遅れを3つの時計を使った測定で観測できる」とし、その測定結果は「2つの時計を置いた方の観測者」が「自分が静止系である」と「主観的に判断」して「動いていると判断した方の慣性系に置かれたもう一つの時計の遅れを計算すると測定値を説明できる。」

したがって「そのように観測者が主観的に静止系を決める事は正しい」とし、その結果から出てくる結論、「常に相手の慣性系の時間が遅れているという解釈は正しい」としたのでした。

しかしながらその時に残念な事にはランダウ・リフシッツは時計Bの主張を知らなかったのであります。

行われた測定結果についての解釈の方法は実は無限にあったのです。

それが「LLの一般解の出した結論」でした。

そうであれば、ランダウ・リフシッツの主張はたまたま「観測者の主観判断で決めた静止系を前提とした計算で結果が説明できていた」という事にすぎないのです。

しかしながら残念な事にランダウ・リフシッツは「それが唯一の測定値の解釈方法である」と勘違いしていたのであります。

 

PS:相対論・ダークマターの事など 記事一覧

https://archive.md/9si0L

 

 


ランダウ・リフシッツが間違えた事

2023-05-24 01:33:54 | 日記

「LL(ランダウ、リフシッツ)の一般解」の意味とランダウ・リフシッツの主張の相違点。

それを考えるにあたり、まずはランダウ、リフシッツの説明に戻る所から再出発しましょう。

1、ランダウ、リフシッツによる「時間の遅れはお互い様」の説明

それでこのページでは具体的に『ランダウ、リフシッツ著「場の古典論(増訂新版)」東京図書(1964年刊)1章§3“固有時間”(p9~11)』から再度本文を引用し、その内容を検討したいと思います。(注1)

さて§3“固有時間”の章より

『与えられた対象と一緒に動いている時計の示す時間をこの対象の固有時間という。(3.1)および(3.2)は、運動を観察するのに準拠する基準系の時間によって固有時間を表すための式である。(注2)

(3.1)および(3.2)から分かる様に,動いている物体の固有時間は、常に、静止系における対応する時間間隔よりも短い。

いいかえると動いている時計は静止している時計よりもゆっくりと進むのである。



慣性系Kに対していくつかの時計が一様な直線運動をしているとしよう。これらの時計に結び付けられた基準系K'も慣性系である。

さてK系の観測者からすると、K'系の中の時計は遅れる。逆にK'系の立場から見ればKの中の時計が遅れる。

しかし、次の事に注意すればここに矛盾が無い事が確認される。

K'系の時計がK系の時計より遅れている事を言うためには、次のような操作をしなくてはならない。

ある瞬間にK'の時計がKの時計のそばを通り過ぎ、その瞬間には2つの時計の読みが一致していた、とする。KとK'の2つの時計の歩みを比較するには、もう一度、動いている時計の歩みをKの中の時計の歩みと比較しなければならない。

しかし、今度動いている時計の歩みと比較できるのはKの先ほどとは別の時計ーーこの比較の瞬間にK'の時計とすれ違う時計である。

そうしてK'の時計は今それと比較したKの時計と比べて遅れている、と言う事をみいだすのである。

2つの基準系の時計を比較する為には、一方の基準系では数個の時計、他方の基準系では一個の時計を必要とする事が分かる。

従ってこの操作は両方の系について対称ではない。遅れると判断される時計は常に同一で、それが他の系の異なったいくつかの時計と比べられるのである。・・・』

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

ええとまずは「一方の基準系では数個の時計」と言ってますが、これは「2個の時計」で十分です。

それでランダウとリフシッツの主張は「遅れている、と判断されるのは、常に『観測者が動いていると判断した系=相手の系』にあるたまたま注目した一個の時計(=時計B)の方」であって、その時計を『観測者が静止していると判断した系=自分が立っている系』にある2個の時計(=時計Cと時計A)と比較する事で、BがAに対して遅れている事を見出す、と言っています。

それでまずはBとCがすれ違います。

この時に観測者はBの時計の針の位置とCの時計の針の位置を記録します。

それでランダウとリフシッツの前提では「この時にBとCの時計の針は同じ時刻を指していた」となっています。

そうして次にBはAとすれ違います。

この時も観測者はそれぞれの時計の針の位置を記録します。

こうして時計BについてはCとすれ違った時からAとすれ違う時までの時間経過=時間間隔が分かります。

それでその時間間隔をΔT(B)とします。

他方で時計Cと時計Aは同一慣性系内にありますから、アインシュタイン ポアンカレ同期の規則によって同期させてあります。(つまりCとAの時計の針は、その慣性系内での観測では何時も同じ位置を示します。)

従って時計Bが時計Cとすれ違った時の時計Cの針の位置から時計Bが時計Aとすれ違った時の時計Aの針の位置を比べる事で、時計CとAが存在している慣性系での時間で計った時に、時計Bがどれだけの時間をかけて時計Cの位置から時計Aの位置まで移動したかが分かります。

それでその時間間隔をΔT(AーC)とします。

そうしてランダウとリフシッツの主張は「常に時計Bの方が遅れている事を観測者は見出す」つまり「ΔT(B)<ΔT(A-C) となる」となります。



そうしてこの話に矛盾がない=「時計のおくれはお互い様である」が成立する理由は「この操作は両方の系について対称ではない。」という所にある、と主張しています。

つまり「観測者は動いていると認識している相手の慣性系から一つの時計を選び出して時計Bとすることができ、そうして自分の慣性系にある時計Cおよび時計Aと時計Bは順次すれ違う事になるのだが、そのときに相手の時計(=B) の針の位置と自分の時計(=CとA) の針の位置を記録することでΔT(B)とΔT(A-C)の値を計算することが出来、その結果はいつも「ΔT(B)<ΔT(A-C) となる」と主張しています。

そうしてこの観測者はK系に立つ事もK'系に立つ事もでき、そのたびに「自分が立っている慣性系よりも相手の慣性系の時計が遅れている事を見出すのだ」としているのです。

「そうであるから」とランダウとリフシッツは言います。

「時間の遅れはお互い様なのだよ」と。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

2、ランダウとリフシッツの主張に対する「LLの一般解」の回答

観測者が立つ慣性系αの方に時計Cと時計Aを距離Lだけ離して設定し、それに接近してくる相手の慣性系βの中に時計Bを置いておく。

そうして時計Bと時計Cがすれ違うイベントをイベント①とし、次に時計Bと時計Aがすれ違うイベントをイベント②とする。

時計Cと時計Aは同一慣性系内では時刻合わせが済んでいて、時計Bと時計Cがすれ違う時にはランダウとリフシッツが主張するように「その瞬間には2つの時計の読みが一致していた」とします。

そうであればイベント①からイベント②に至るまでに2つの時計、時計Bと時計Aはそれぞれ固有時間、経過します。

そうしてその値は「LLの一般解」で計算ができます。

そうしてその結果と言えばランダウとリフシッツが主張するように「時計Bの固有時間は時計Aの固有時間よりも短くなる」というものです。

そうしてまたこの状況はランダウとリフシッツが主張するように「慣性系αに時計Bをおき、慣性系βに時計CとAを置いた場合も時計Bの固有時間は時計Aの固有時間よりも短くなる」という事になります。



さてそれで、この時に注意しなくてはならない事は「時計Bの固有時間<時計Aの固有時間」であったとしてもその事が「時計Bが属している慣性系の時間が遅れている、という事にはならない」という事です。

しかしながらランダウとリフシッツは「動いている物体の固有時間は、常に、静止系における対応する時間間隔よりも短い」という主張の証明として「動いている、と観測者が認識している慣性系にある時計Bの固有時が、観測者が立つ慣性系にある時計Aの固有時よりも常に短く観測される」という事を上げています。

でもこの事実はランダウとリフシッツが動いていると観測者が認識している慣性系の方にいつも時計Bを置く事により生じている結果である、と言えます。

「LLの一般解」によれば「観測者が動いている、と認識した慣性系に時計Cと時計Aを置き、観測者が立つ慣性系に時計Bを置いても、時計Bの固有時間<時計Aの固有時間となる」となる事が分かります。

つまりは時計Bの固有時間の大きさと時計Aの固有時間の大きさを決めているのは、観測者が「そちらの慣性系が動いている様に見える」とか「こちらの慣性系が止まっている」とかいう「観測者の主観的な判断とは無関係」であり「それ以外の要因ですでに決まってしまっている」という事です。(注3)

そうであれば時計Bの固有時間と時計Aの固有時間を比較する事からは、それぞれのその時計の属している慣性系の時間の遅れは把握できない、という結論にいたるのです。



注1:ランダウ、リフシッツ著「場の古典論(増訂新版)」東京図書(1964年刊)1章§3“固有時間”(p9~11)
http://fnorio.com/0160special_theory_of_relativity/Landau_Lifshitz_classical_field_1-7/Landau_Lifshitz_classical_field_1-7.html#01-003

の §3 固有時間 での議論

「K系とK'系が相対運動している時には、お互いが相手の時計が遅れている事を確認する」と書かれてあります。

注2:ここで「運動を観察するのに準拠する基準系」=観察者が立っている慣性系=「静止系として扱う」=「静止系である」とランダウ・リフシッツは宣言しています。

注3:「ランダウ・リフシッツが見逃していた=間違えた」のはまさにこの事実です。

ランダウ・リフシッツは「慣性系に属する時計の時刻を観測しその時間経過を比較する事で慣性系の時間の進み方を把握できる」という立場でした。

しかしながらその事は「LLの一般解」によって否定されてしまいました。



追伸:互いにすれ違う2つの慣性系の間の時間の遅れの測定について

ランダウとリフシッツがいう様に、2つの慣性系に置かれた時計の遅れを測定するには原理的に3つの時計が必要となる様です。

ただし、同一の慣性系内に置かれた2つの時計はその慣性系内で時刻合わせを済ませておきます。

そうして一方に一つ、他方に2つの時計を設置し、それぞれの時計がすれ違う時にお互いの時計の針の位置を記録しあう。

これで時計の時間の経過が計算できます。

しかしながら「LLの一般解」が主張している事は「確かに時計の経過時間には差が生じるが、それはそれぞれが属している慣性系の時間の遅れをそのまま直接には表してはいない」と言う事であります。

「LLの一般解」によれば「2つの慣性系に置かれた時計の経過時間に差が生じるのは静止系に対する2つの慣性系の運動により、2つの慣性系に置かれた時計の時刻がローレンツ変換される事に起因している」という事になります。

その結果は「確かに時計の経過時間には差が生じる」のですが「それは2つの慣性系の時間の遅れを直接には表現しない」=「時計の経過時間を比較しても、その時計が属している慣性系の時間の遅れは把握できない」と言うのが結論となります。

しかしながら静止系に対する2つの慣性系の運動によって、それぞれの慣性系の時間が静止系の時間に対して遅れを生じている事は確かなのであります。

さてそう言う訳で「ここでもまた自然は、宇宙は巧妙に静止系を隠す」と言う事ができます。



追伸の2:ランダウ・リフシッツが説明した「すれ違う2つの慣性系の間で時間の遅れを3つの時計を使って観測する方法」は一番原理的でシンプルであると思われます。

そうしてその方法はミンコフスキー図をつかって動いている対象物の時間の遅れを説明しようとすると自然に・自動的に行き着く方法でもあります。

従って従来の考え方によれば「この方法で2つの慣性系の間の時間の遅れは測定できる」とされていました。

しかしながら「LLの一般解」によれば「そうやって測定された時計の固有時は慣性系そのものの時間の遅れを表してはいない」と言う事でした。

さてその状況を強く表現しますと「すれ違う2つの慣性系の間でランダウ・リフシッツの方法で時間の遅れを測定する事は原理的に不可能である」となります。(注4)

それで以上のような内容は「LLの一般解」によって初めて知る事が出来た重要な認識であると言えます。



注4:すれ違い距離がゼロでの横ドップラー効果を測定できれば「2つの慣性系の内でどちらの時間が遅れているか」判別可能となりそうです。

但し2つ+1つの時計をそれぞれの慣性系に設置してそれで慣性系の時間の遅れを測定する、と言う方法は「LLの一般解によって不可能である」とされる為に却下されます。



追伸の3:ランダウ・リフシッツのもう一つの主張

それは「時間の遅れはお互い様」という主張です。

さてこの主張に対しては「LLの一般解」は「それは単なる誤解だ」と言っています。

まあそうなのではありますがこの件、ページを改めて再検討する事と致します。


PS:相対論・ダークマターの事など 記事一覧

https://archive.md/UEsgW

https://archive.md/RG3zQ

 


「LLの一般解」のさらなる一般化

2023-05-21 07:14:38 | 日記

「LLの一般解の検証」では相対速度V=0.8Cという一つの値に固定した場合を扱いました。

その結果 相対速度VaとVbからなる2つの関数の値が定数になる事が確認できました。

LLの一般解は以下の通りです。

TA@イベント②=L*(Va+(1-Va^2)/(Va+Vb)) 秒 ・・・①式

TB@イベント②=L*sqrt(1-Va^2)*sqrt(1-Vb^2)/(Va+Vb) 秒 ・・・②式

ちなみにここでは

0.8=(Va+Vb)/(1+Va*Vb)

という相対論的な速度の加算式を前提にしています。

つまり、ここまでの「LLの一般解」では慣性系αとβの間の相対速度は0.8Cで固定されていました。



それでここでは相対速度V=0.8CをV=d と一般化した場合を検討します。

それでもちろん

1≧ d ≧0 が条件となります。



さてここでVa=x、Vb=yとおいてこの関数を表すと次のようになります。

1、①式からTA@イベント②の場合は

(Va+(1-Va^2)/(Va+Vb))

=(x+(1-x^2)/(x+y))=z

そうして

d=(x+y)/(1+x*y)

が相対論的な速度の加算式の条件

従ってウルフラム入力式は

z=(x+(1-x^2)/(x+y)),d=(x+y)/(1+x*y)

で連立方程式を解く事になります。

実行アドレス

https://ja.wolframalpha.com/input?i=z%3D%28x%2B%281-x%5E2%29%2F%28x%2By%29%29%2Cd%3D%28x%2By%29%2F%281%2Bx*y%29

解の所に答えがあります。

Z=1/d

解の条件は

d*x≠1  これはVa≠1、つまり「測定対象の慣性系は光速で移動しない」という条件です。

d ≠ 0  これは「測定対象の2つの慣性系は相対速度を持つ」と言う事です。

この2つの条件は通常は満足されます。したがって

TA@イベント②=L*(Va+(1-Va^2)/(Va+Vb)) 秒 ・・・①式



TA@イベント②=L*1/d=L/d=L/ V ・・・③式

となります。

つまり「時計Aの固有時は時計Aと時計Cが設置された間隔Lを2つの慣性系の間の相対速度Vで割った値になる」ということです。

そうしてこの式から分かります様に「2つの慣性系の間のどこに静止系があるのか」という事には③式は感度を持たないのです。



2、②式からTB@イベント②の場合

sqrt(1-Va^2)*sqrt(1-Vb^2)/(Va+Vb)

=sqrt(1-x^2)*sqrt(1-y^2)/(x+y)

で、上記と同様に

d=(x+y)/(1+x*y)

が条件です。

ウルフラム入力文は

z=sqrt(1-x^2)*sqrt(1-y^2)/(x+y),d=(x+y)/(1+x*y)

実行アドレス

https://ja.wolframalpha.com/input?i=z%3Dsqrt%281-x%5E2%29*sqrt%281-y%5E2%29%2F%28x%2By%29%2Cd%3D%28x%2By%29%2F%281%2Bx*y%29

解の条件は同上です。

解の表示からzの解を抜き出しますととても見通しが悪いものになります。

それでz=・・・の分子を1>dx≧0 に注意して整理するとこうなります。

まずは分子から(1-dx)の項を消します。

sqrt((dx-1)^2)=sqrt((1-dx)^2)でこれは(1-dx)の絶対値の事です。

そうして(1-dx)>0 ですから(1-dx)/((1-dx)の絶対値)=1となり整理すると分子から(1-dx)の項が消えます。

次に

分子=sqrt((d^2-1)*(x^2-1))

1>d^2>0、1>x^2≧0 ですから

0>(d^2-1)、0>(x^2-1)

従って(d^2-1)*(x^2-1)>0

ここで分子を書き変えます。

sqrt((d^2-1)*(x^2-1))=sqrt((1-d^2)*(1-x^2))>0

分母は分母=d*sqrt(1-x^2)>0 です。

こうして

z=分子/分母

=sqrt((1-d^2)*(1-x^2))/(d*sqrt(1-x^2))

=sqrt(1-d^2)*sqrt(1-x^2)/(d*sqrt(1-x^2))

=sqrt((1-d^2))/d

=sqrt(1-V^2)/V  

TB@イベント②=L*sqrt(1-Va^2)*sqrt(1-Vb^2)/(Va+Vb) 秒 ・・・②式



TB@イベント②=L*sqrt(1-V^2)/V ・・・④式

となります。

つまり「時計Bの固有時は時計Aと時計Cが設置された間隔Lを2つの慣性系の間の相対速度Vで割った値にsqrt(1-V^2)を掛けた値になる」ということです。

そうしてこの式から分かります様に「2つの慣性系の間のどこに静止系があるのか」という事には④式も感度を持たないのです。(注1)


結果を再掲示しておきます。

TA@イベント②=L/ V ・・・③式

TB@イベント②=L*sqrt(1-V^2)/V ・・・④式


こうしてランダウ・リフシッツが説明した手順、それは「すれ違う2つの慣性系の間の時間の遅れを3つの時計をつかって測定する」というものでしたが「それはうまく機能しない」と言う事になるのでした。

それにしてもローレンツ変換を考慮しながら導き出した「LLの一般解」がこれほどに簡単な形にできる、と言う事は驚きであると同時に、この式の正しさを示している様にも見えます。

 

注1:「LLの一般解」は「2つの慣性系の間のどこに静止系があるのか」という事には確かに感度を持たないのですが、その事は「静止系は必要ない」という事を示していません。

LLの一般解の導出の過程で見てきた様に「静止系は一つ、必要なのです」。

但しその静止系がどこにあるのかは「ランダウ・リフシッツの方法で得られた測定結果からは判断できない」という事であります。

この点、くれぐれも誤解なきようにお願い致します。


追伸
さて以上の結果から任意の観測者は「自分こそが静止系に立っていて、すれ違う相手の慣性系との間の時間の遅れの測定をしている」と思い込むことが可能となるのでした。

そうしてその思い込みから「時間の遅れはお互い様の認識が出てきていた」という事になります。

しかしながらそれはあきらかに「誤解」でありました。

ちなみにその誤解はこうして導出された「LLの一般解の最終式」がランダウ・リフシッツが「時間の遅れはお互い様であるという主張を正当化するのに使った式と結果的に同じ形になっているからである」と言えます。

追伸の2
Geant4(その6) 特殊相対論 虎の巻:光速度不変の原理,相対性原理,慣性系: https://archive.md/8Bapb :によれば

『特殊相対論のもうひとつの前提はもちろん「相対性原理」です.
物理法則は慣性系によらない形でなければなりません.…とは?
Einsteinの原論文(の岩波文庫の邦訳)を読むと,この用語は主に電磁気学でのMaxwell方程式の不変性を指していて,運動学での使われ方は抽象的・限定的です.

(運動学においては)慣性系間の本質的な関係は相対速度だけで決まる,ということだけで足ります.

「慣性系」とは慣性の法則が成り立つ系のことです.外力が働かない「慣性運動」イコール等速直線運動であり,等速直線運動はどの慣性系から見ても等速直線運動です.』とされています。

そうして事実、ランダウとリフシッツによる時間遅れの測定の結果は2つの慣性系の間の相対速度Vの関数として記述される事が「LLの一般解が導出された事」によって明らかになりました。

追伸の3:時計のパラドックス: https://archive.md/8ggjL :ういき「特殊相対論」の「時計のパラドックス」章で説明されているのはまさに「ランダウとリフシッツによる時間遅れの測定の話」です。

そうしてそれが「LLの一般解の導出で解決された」事によって同様に「時計のパラドックスも解決された」となります。

 

PS:相対論・ダークマターの事など 記事一覧

https://archive.md/AhgnG

https://archive.md/7d0Q2 

https://archive.md/Mld0O

 


その2・「LLの一般解」の検証

2023-05-18 03:22:58 | 日記

さて前に導出した「LLの一般解」は以下の通りです。

TA@イベント②=L*(Va+(1-Va^2)/(Va+Vb)) 秒 ・・・①式

TB@イベント②=L*sqrt(1-Va^2)*sqrt(1-Vb^2)/(Va+Vb) 秒 ・・・②式

それでこの式を見ると分かりますように時計Cと時計Aが付いている棒の長さLに静止系に対する相対速度VaとVbからなる関数を掛けたものが一般解を与えています。

そうしてもちろん、棒の長さLはVaとVbとは独立に決める事が出来る値です。

従ってTA@イベント②とTB@イベント②の実際の値を決める時にややこしいのは相対速度VaとVbからなる関数の値の計算である事になります。



さてここでVa=x、Vb=yとおいてこのややこしい関数を表すと次のようになります。ちなみに相対速度VはV=0.8Cと固定します。

1、①式からTA@イベント②の場合については

(Va+(1-Va^2)/(Va+Vb))

=(x+(1-x^2)/(x+y))=z

そうして

0.8=(x+y)/(1+x*y)

が相対論的な速度の加算式の条件です。

従ってウルフラム入力式は

z=(x+(1-x^2)/(x+y)),0.8=(x+y)/(1+x*y)

としてこの連立方程式を解く事になります。

実行アドレス

https://ja.wolframalpha.com/input?i=z%3D%28x%2B%281-x%5E2%29%2F%28x%2By%29%29%2C0.8%3D%28x%2By%29%2F%281%2Bx*y%29

解の所に答えがあり

z=5/4

解の条件は

x=Va≠5/4、およびx=Va≠1

この条件は我々の住む宇宙ではいつでも満たされているため、問題はありません。

従って相対論的に加算された時計Cと時計Bの相対速度VがV=0.8Cの場合は

TA@イベント②=L*5/4

がV=0.8Cを満たす全てのVaとVbの組み合わせについて成立している事になります。



2、②式からTB@イベント②の場合については

sqrt(1-Va^2)*sqrt(1-Vb^2)/(Va+Vb)

=sqrt(1-x^2)*sqrt(1-y^2)/(x+y)

で、上記と同様に

0.8=(x+y)/(1+x*y)

が条件です。

ウルフラム入力文は

z=sqrt(1-x^2)*sqrt(1-y^2)/(x+y),0.8=(x+y)/(1+x*y)

実行アドレス

https://ja.wolframalpha.com/input?i=z%3Dsqrt%281-x%5E2%29*sqrt%281-y%5E2%29%2F%28x%2By%29%2C0.8%3D%28x%2By%29%2F%281%2Bx*y%29

解の表示からzの解を抜き出しますと

-3/4*(4x*sqrt(-(x^2-1)/(4x-5)^2)-5*sqrt(-(x^2-1)/(4x-5)^2))/sqrt(1-x^2)

解の条件は

x=Va≠5/4、およびx=Va≠1 で同上です。

これをそのまままたウルフラムに入れます。

実行アドレス

https://ja.wolframalpha.com/input?i=-3%2F4*%284x*sqrt%28-%28x%5E2-1%29%2F%284x-5%29%5E2%29-5*sqrt%28-%28x%5E2-1%29%2F%284x-5%29%5E2%29%29%2Fsqrt%281-x%5E2%29

「xを実数と仮定した場合の別の形」が答えになっています。

3/4*sgn(5-4x)

ここでsgn(数値)は数値の符号のみを取り出す操作を示します。

従ってz=3/4*sgn(5-4x) が答えであり、その状況はウルフラムが表示しているグラフそのものになります。

そうしてグラフから分かりますように

1.0 ≧ x ≧ 0 で (これは1.0 ≧ Va ≧ 0を意味します。)

z=3/4

が答えになります。(注1)

従って

TB@イベント②=L*3/4

となるのです。



さてL=4ですから

TA@イベント②=L*5/4=5(秒)・・・③式

TB@イベント②=L*3/4=3(秒)・・・④式

です。

以上で導出した一般解①式と②式が相対速度V=0.8Cの時に想定できる全てのVaとVbの組み合わせについては③式と④式になる事が確認できました。

従ってこれでこの一般解を導出した目的「時計Cと時計Bの間のどこに静止系の原点があっても観測結果は常に

TA@イベント②=5(秒)でTB@イベント②=3(秒)

になってしまうという事を確認する」という事ができました。


さてこの事の意味は時計AとBの観測された秒数は時計AとCの間に最初に設定された間隔Lと、対象としている2つの慣性系の間の相対速度Vのみで値が決まってしまい、当初の観測目的であった慣性系そのものの時間の遅れは表わしていない慣性系の時間の遅れは測定できていない、という事になるのでした。(注2)



注1:それにしても

-3/4*(4x*sqrt(-(x^2-1)/(4x-5)^2)-5*sqrt(-(x^2-1)/(4x-5)^2))/sqrt(1-x^2)

というややこしい式が±3/4という定数になる事は驚きであります。

追伸
ややこしい式のウルフラム表示を確認したら、手計算でも±3/4になっていました。

失礼しました。


注2:あるいはもう少し丁寧に言うならば、それぞれの慣性系が静止系に対して持っている相対速度VaとVbに対応してそれぞれの慣性系の時間は
sqrt(1-Va^2)とsqrt(1-Vb^2)の割合で静止系の時間の進み方に対して遅れを生じているのですが、その遅れは時計Aと時計Bの観測された秒数には反映されない観測された秒数の中から静止系に対する相対速度VaとVbの値を分離して取り出す事はできない、と言う事になります。

これはつまりは時計Bの主張「2つの慣性系の間の時間遅れはランダウ・リフシッツの方法では検出できない」の証明になっています。

 

PS:相対論・ダークマターの事など 記事一覧

https://archive.md/LgB2g

https://archive.md/TLsc5