特殊相対論、ホーキング放射、ダークマター、ブラックホールなど

・時間について特殊相対論からの考察
・プランクスケールの原始ブラックホールがダークマターの正体であるという主張
 

その9・車を静止系とし車の外を運動系とした計算

2024-08-21 02:21:24 | 日記

さて「その2・棒の時間とローレンツ短縮の関係」: https://archive.md/ON8ER :では車の外に立つ観測者が静止系に立っている、という前提で計算をすすめました。

その結果は静止系から見るならば(=車の外からみれば)真ん中から出た光が

車の後端に届くのは0.5秒後

車の先端に届くのは2.0秒後

となっています。

この時もちろん車の中(=運動系)では

車の後端に届くのは1・0秒後

車の先端に届くのは1.0秒後

となっています。

 

さてそれで相対論によれば「すべての運動は相対的」であって「特別な慣性系はない」という事になっています。

そうであるならば「車の中の観測者」が「自分こそが静止系である」と主張できることになります。

つまりは「動いているのは車の外に立つ観測者の方だ」という訳です。

そのような車の中の観測者の主張はむげに否定することはできません。

なんといっても「すべての運動は相対的」であって「特別な慣性系はない」と主張するのが相対論であれば「車の中の観測者の主張」も取り上げて検討してみる事が必要になります。

 

さてそうであれば今度は「車の中の観測者が静止系である」として計算を行う事になります。

そうしてそれ以外の条件は前回と同じ、つまり「相対速度は0.6C」です。

ただし前回は「車=運動系」は右に動いていきましたが今回は運動系は車の外です。: https://javalab.org/ja/relativity_of_simultaneity_ja/ :

従って「運動系=車の外」は今回は左に0.6Cで動くことになります。

 

さて車の外の物差しはローレンツ短縮をおこして長さ L の物差しは0.8L になっています。

sqrt(1-0.6^2)=0.8 です。

で光は片道1.0Cを車の後端に向けて左方向に速度1Cで動きます。

そうであれば1秒後に光は車の後端に届きます。(静止系時間)

これを左方向に0.6Cで運動している観測者の視点にローレンツ変換しなくてはなりません。(注1

 

光と同じ方向(=左方向)に0.6Cで動いている観測者には静止系時間で1秒後にはその観測者から見て光は距離0.4Cのところに到達していることになります。

0.4=1.0-0.6 です。

ただしこの距離0.4Cというのは静止系で見た時の距離です。

さてこの距離を0.6Cで運動している観測者が自分の物差しで測ると

0.4/0.8=0.5C

となります。

なぜならば「0.6Cで運動している観測者の物差しは0.8がけの割合でローレンツ短縮しているから」ですね。

その「短くなった物差しで距離をはかれば当然、距離は長くなる方向に測定される」のです。

さてそうであればこの時には「0.6Cで運動している観測者の左方向の物差しの長さ(=棒の長さ)は0.5Cである」となります。

さて「同時性の相対性の計算」によれば「進行方向に走る棒の先端の時間は遅れる方向にV*Lの割合で原点に対してずれる」のでした。

従ってこの場合の遅れ方向のずれ量は

0.6C*0.5=0.3秒です。

 

さて次に「0.6Cで運動している観測者の時間は静止系の時間に対して0.8がけで遅れる」のでした。

従って「静止系で1秒後に光が車の後端に届いた」というのは「0.6Cで運動している原点に立つ観測者の時間では0.8秒後に車の後端に届いた」となります。

さてそれで「0.6Cで運動している慣性系で原点から左方向に0.5Cのところにいる観測者が、そうして当該慣性系の中ではその観測者のみが車の後端に光が届いた時刻を記録できる」のです。(注2

さてその観測者は「いったいいつ光は車の後端に光が届いた」と記録することになるのでしょうか?

それは「0.5秒後に光は車の後端に届いた」と記録することになります。

棒の原点にある時計に対して左0.5Cのところにある時計は0.3秒遅れる、したがって棒の原点に立つ観測者の時計が0.8秒後を指している時には左方向0.5Cのところにいる観測者の時計は0.5秒後を指しているからですね。

0.8秒ー0.3秒=0.5秒  です。

 

さて次に右方向に飛んだ光について考えます。

この光は車の先端に1秒後に到達します。(静止系時間)

これを上記と同様に左方向に0.6Cで運動している観測者の視点にローレンツ変換しなくてはなりません。

光と反対方向に0.6Cで動いている観測者には静止系時間で1秒後にはその観測者から見て光は距離1.6Cのところに到達していることになります。

0.6+1.0=1.6 です。

ただしこの距離1.6Cというのは静止系で見た時の距離です。

それでこの距離を0.6Cで運動している観測者が自分の物差しで測ると

1.6/0.8=2.0C

となります。(理由については上記参照)

 

さてそうであればこの時には「0.6Cで運動している観測者の右方向の棒の長さは2.0Cである」となります。

さて「同時性の相対性の計算」によれば「進行方向に走る棒の後端の時間は進む方向にV*Lの割合で原点に対してずれる」のでした。

従ってこの場合の進み方向のずれ量は

0.6C*2.0=1.2秒です。

 

さて次に「0.6Cで運動している観測者の時間は静止系の時間に対して0.8がけで遅れる」のでした。

従って「静止系で1秒後に光が車の後端に届いた」というのは「0.6Cで運動している棒の原点に立つ観測者の時間では0.8秒後に車の後端に届いた」となります。

さてそれで「0.6Cで運動している慣性系で原点から右方向に2.0Cのところにいる観測者が、そうして当該慣性系の中ではその観測者のみが車の先端に光が届いた時刻を記録できる」のです。(注2

さてその観測者は「いったいいつ光は車の後端に光が届いた」と記録することになるのでしょうか?

それは「2.0秒後に光は車の先端に届いた」と記録することになります。

なんとなれば棒の原点に立つ観測者の時計が0.8秒後を指している時には右方向2.0Cのところにいる観測者の時計は2.0秒後を指しているからですね。

棒の原点にある時計に対して右2.0Cのところにある時計は1.2秒進む、したがって

0.8秒+1.2秒=2.0秒  となります。

 

以上をまとめますと

運動系(=車の外からみれば)真ん中から出た光が

車の後端に届くのは0.5秒後

車の先端に届くのは2.0秒後

となります。

このときもちろん車の中(=静止系)では

車の後端に届くのは1・0秒後

車の先端に届くのは1.0秒後

となっています。

 

まとめ

以上の事から静止系を「車の外」とした場合と「車の中」とした場合において、光が車の先端および後端に届くのに必要な時間に差は見られない、という事になります。

さてこれはアインシュタインの主張「観測者は自分が立っている慣性系を静止系として良い」を支持している様に見えます。

つまりは「アインシュタイン流の静止系の決め方とローレンツ変換を使う事で同時性の相対性の実験結果は説明できる」という訳です。

 

「ほらね、やっぱりアインシュタインの言ったとおりだろ。」

そんな声が聞こえてきます。

さあそうなりますと当方の「観測者の主観的な判断とは独立して静止系は客観的に存在する」という主張は成り立たなくなるのでしょうか?

アインシュタイン流の静止系の決め方が正義なのでしょうか?

 

さてここは落ち着いて確認しなくてはなりません。

その確認作業は次のページ以降で行うことに致しましょう。

 

注1:上記で使っている「ローレンツ変換を棒の時間を使って行う方法」についてはすでに「その2・棒の時間とローレンツ短縮の関係」: https://archive.md/ON8ER :で説明したものと同じです。

そうして「時間についてのローレンツ変換の結果を得る為」であるならば「この手順の方が直観的・図形的」あって「わかりやすいものである」と言えます。

注2:もちろんそれは、0.6Cで運動している慣性系の中での話であって、静止系で車の後端にいる観測者も(あるいは車の先端にいる観測者も)同時に光が車の後端に(あるいは車の先端に)届いたことを観測し「光は1秒後に届いた」と記録する事ができるのです。

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「相対論・ダークマターの事など 記事一覧」

「その2:ダークマター・相対論の事など 記事一覧」

 

 

 

 


閑話休題・棒の時間を使ったガリレイ変換について

2024-08-19 01:24:56 | 日記

棒の時間を使って変換することはガリレイ変換を行うことと同等である事の再確認です。

ただしこの場合に使う棒の時間は「ガリレイ変換用の棒の時間」となります。

 

さてそれで物体mが左から右に静止系に対して速度0.8Cで動いています。

それを左から右に静止系に対して速度0.6Cで動く慣性系Kから観測する事を考えます。

静止系時間で0秒で静止系原点、K系原点、物体mが同じ場所にいました。

で1秒後にどうなっているか、それをまずは考えます。

物体mは距離0.8Cの所まで移動しました。

慣性系Kは距離0.6Cの所まで移動しました。

そうであれば慣性系Kの原点から物体mまでの距離は

0.8Cー0.6C=0.2C です。

それでこの物体mを慣性系Kはどのように観測するのか?という事になります。

慣性系Kの原点から物体mまでの距離は0.2Cですが慣性系Kの棒=物差しの長さは移動する事では変化しません。

従って慣性系Kの原点に立つ観測者は「物体mまでの距離は0.2Cだ」と見ます。

これが棒の長さになります。

 

さて次に静止系時間で1秒経過でした。

そうであれば慣性系Kの原点時間でも1秒経過です。

これはガリレイ変換では棒の原点の時間は静止系の原点の時間に対して変化しないからです。

そうして長さ0.2Cの棒が速度0.6Cで右に動いていますがその棒の先端の時刻は棒の原点時刻に対して遅れる事はありません。

これは静止系で成立していた時間軸が「ニュートンの時間(NT)」である事は前述しましたが、ガリレイ変換では変換後の時間軸も「ニュートンの時間(NT)」のままである事によります。

従って長さ0.2Cの棒の先端に立つ観測者は「物体mは1秒で距離0.2Cを動いた」と報告する事になります。

1.0-0=1.0秒だからですね。

 

さて以上で静止系座標で(t、x)=(1秒、0.8C)の点が0.6Cで動いている慣性系Kの座標(t’、x’)=(1秒、0.2C)に「棒の時間を使って変換できた」事になります。

そうして上記で示した様に「ガリレイ変換で使う棒は短縮する事はなく、そうしてまた棒の原点にある時計の時刻は静止系の時間に対して遅れず、棒の先端にある時計の時刻も棒の原点にある時計に対してずれる事はない」のです。

それで上記の変換結果はガリレイ変換

x’=x-v*t

t’=t

を使った場合と同等になっています。

x’=x-v*t=0.8-0.6*1=0.2

t’=t=1

だからですね。

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「相対論・ダークマターの事など 記事一覧」

「その2:ダークマター・相対論の事など 記事一覧」

https://archive.md/VdLJH

 


その2:ダークマター・相対論の事など 記事一覧

2024-08-18 02:40:27 | 日記

第2ページ:ダークマター・相対論の事など 記事一覧

前のページはこちら:「相対論・ダークマターの事など 記事一覧」

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・速度の加法則と時間遅れの合成則

 ・閑話休題・ういきの特殊相対論の説明が無駄に分かりにくい件

 ・速度の加法則と時間遅れの合成則のMN図による表現と確認

 ・速度の加法則と時間遅れの合成則の関係

 ・もう一つの時間遅れの合成則

 ・「ローレンツ因子の合成則」あるいは「ローレンツ因子の掛け算則」

・ローレンツ短縮

 ・10-1・誤解されているローレンツ収縮

 ・10-2・誤解されているローレンツ収縮

 ・10-3・ローレンツ短縮の合成則

 ・棒の時間

  ・その1・棒の時間とローレンツ短縮の関係

  ・その2・棒の時間とローレンツ短縮の関係

  ・その3・棒の時間とローレンツ短縮の関係

  ・その4・ローレンツ変換と棒の時間

  ・その5・棒の時間からのローレンツ変換の導出

  ・その6・ニュートンの時間(NT)と棒の時間(BT)の1

  ・その7・ニュートンの時間(NT)と棒の時間(BT)の2

  ・閑話休題・棒の時間を使ったガリレイ変換について

  ・その8・「同時性の相対性実験」と相対性原理と静止系の必要性

 

 

 

 

閑話休題・宇宙では特殊相対論は通用しない(?)件

閑話休題・アインシュタインが泣いて喜ぶ(?)チャットGPTとの会話

 

 

 ・ローレンツ、ポアンカレそうしてアインシュタイン

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「相対論・ダークマターの事など 記事一覧」

「その2:ダークマター・相対論の事など 記事一覧」

 

 


その7・ニュートンの時間(NT)と棒の時間(BT)の2

2024-08-15 00:25:02 | 日記

1、ローレンツ変換とガリレイ変換の違いについて違う表現をしてみましょう。

ガリレイ変換の場合は変換前の時間空間を表す直交座標の時間軸はNT(ニュートンの時間)でした。

そうして速度Vでガリレイ変換した先の直交座標の時間軸もNT(ニュートンの時間)のままです。

その様な2つの慣性系(変換前と変換後)の間で変換前の座標値(x、t)を変換後の座標値(x’、t’)に変換する手順を示したのがガリレイ変換の式でした。

ここでガリレイ変換は

x’=x-V*t

t’=t

で2つの慣性系のあいだの座標値を結びつけます。

 

それに対してローレンツ変換では次のようになります。

ローレンツ変換の場合は変換前の時間空間を表す直交座標の時間軸はNT(ニュートンの時間)でした。

しかしながら速度Vでローレンツ変換した先の直交座標の時間軸はNT(ニュートンの時間)からBT(棒の時間)に変わります。

その様な2つの慣性系(変換前と変換後)の間で変換前の座標値(x、t)を変換後の座標値(x’、t’)に変換する手順を示したのがローレンツ変換の式でした。

ここでローレンツ変換は

x’=(x-v*t)/sqrt(1-V^2)

t’=(t-V*x)/sqrt(1-V^2)

で2つの慣性系のあいだの座標値を結びつけます。

 

さてこうして見ると分かります様にローレンツ変換は変換する座標値の組に作用してその値を変えるだけではなくて、慣性系の時間軸そのものまで一緒に変化させてしまうのです。

しかしながら通常は我々はローレンツ変換もガリレイ変換の場合と同じ様に「慣性系の時間軸はNTのままで変化しない」と思っています。

つまりはしかしながら速度Vでローレンツ変換した先の直交座標の時間軸はNT(ニュートンの時間:ニュートン タイム)からBT(棒の時間:棒タイム)に変わります。と言う様な事は想定してはいないのです。

所が実際は時間軸はNTからBTに変わってしまうのです。

さてそうであれば「ローレンツ変換というのは座標値を変えるだけではなくて慣性系の時間軸まで変えてしまう変換である」という事になるのです。(注1

 

2、NTとBTの具体的なイメージ

X軸を考えます。但し距離は光速Cで規格化すみ。

NTの場合(つまり静止系の場合:あるいはガリレイ変換の場合の時間軸)

X座標値 ーー>   0(原点) 1  2  3  4  5  6・・・

その位置に置かれた  0    0  0  0  0  0  0・・・     
時計が示す時刻t(sec) 1    1  1  1  1  1  1・・・      
           2    2  2  2  2  2  2・・・     
           3    3  3  3  3  3  3・・・     
           ・     
           ・     
           ・     

NTの場合はx座標各点に置かれた時計の時刻は原点に置かれた時計の時刻と正確に一致しています。

 

BTの場合(静止系に対して相対速度V=0.6Cを持つ慣性系の時間軸)

X座標値 ーー>   0(原点) 1    2    3    4 ・・・

その位置に置かれた  0  -0.6 -1.2 -1.8 -2.4・・
時計が示す時刻t(sec) 1   0.4 -0.2 -0.8 -1.4・・      
           2   1.4  0.8  0.2 ー0.4・・     
           3   2.4  1.8  1.2  0.6・・     
           ・     
           ・     
           ・     

BTの場合はx座標各点に置かれた時計の時刻は原点に置かれた時計の時刻と相対速度V*X座標値の値だけマイナス方向に正確にずれます。

ここでマイナスは原点時刻に対して距離Xにある時計の時刻が遅れている事を示す。

ちなみに0.6Cでこの慣性系は左から右に動いています。

でその時に上記時計の秒数はその慣性系内の各座標値Xに置かれた時計の時刻を示しています。

もちろんこの時にこの慣性系内で光を使って原点と距離Xに置かれた時計の時刻合わせ状況を確認したならば「いずれの距離Xにある時計の時刻も原点の時計と同じ時刻を示している」という結果を得る事になります。

つまりは「全てX軸上の時計は原点の時計と同期がとれていて、時刻合わせOK」となるのです。(注2

さてそうであれば「この慣性系内に立つ観測者には自分の時間軸はNT時間軸に見える」のです。

ただし「実は静止系から見れば距離Xに置かれた時計の時刻は上記の様になっている」のです。

そうしてそれが相対速度Vで静止系に対して移動している棒がsqrt(1-V^2)の割合で短縮して観測される理由になっています。

 

注1:そのようにとらえますとアインシュタイン流の静止系の設定、つまりは「観測者は自分が立っている慣性系を常に静止系として設定してよい」という考え方と上記の説明との間に矛盾が生じる事になります。

つまりはアインシュタインは「観測者は常に自分の立っている慣性系の時間軸はNTであると認識している」し「それが正しい」、つまりは「観測者は自分が立っている慣性系を常に静止系として設定してよい」と主張しているのですが、「実は観測者の立っている慣性系の時間軸はBTであった」という状況が起こり得ます。

そうしてここで想定している「観測者が立っている慣性系の時間軸」が「NTであると同時にBTである」と言う様な事は物理的に起りえないのです。

さてそうであればここでまたしても「アインシュタイン流の静止系のとらえ方、設定の仕方は正しいのか?」と疑問符がつく事になるのです。

ちなみにここでいうBTとはもちろん「座標原点にある時計が示す時刻と位置xにある時計の時刻との間にずれが生じている」と言う事を表しています。

ところで「ローレンツ変換というのは座標値を変えるだけではなくて慣性系の時間軸まで変えてしまう変換である」という表現は少し妥当性を欠きます。

というのも「ローレンツ変換が慣性系の時間軸を変えてしまう」のではなくて実際には「静止系に対して運動している慣性系の時間軸は最初からそのような棒の時間になっている」と見る方が自然であるからです。

注2:さてその事は「この慣性系の中で光速を測定すればCという結果が得られる」という事の別の形の表現であります。

ちなみにこの0.6Cで動いている慣性系が静止系に対する相対速度を落としてその値がゼロになればもちろんこの慣性系の時間軸は何もしなくても自動的にBTからNTになるのです。

 

追記:BT時間軸はその慣性系での最高到達距離を制限している件

上記のNTとBTについての簡単な表時から以下の事が分かります。

原点位置に置かれた物体mを原点時刻0秒から1秒の間、力Fを加えて加速度運動させます。

そうすると物体mは加速度運動を始めて原点から+X方向に動き出します。

さてそれで、その場合に原点時刻1秒で物体mはどこまで移動可能でしょうか?

 

NT時間軸が成立しているガリレイ変換の場合は物体mは加える力Fの大きさ次第でどこまでも到達距離を延ばす事が出来ます。

なんとなればNT時間軸では原点時刻1秒でX軸上の全ての時計は1秒を指しているからですね。

したがって物体mがどの位置にあってもその位置の観測者は「物体mは1秒でここまで来た」と記録できるのです。

 

さてそれで問題はBT時間軸の場合です。

この場合も物体mは原点時間0秒を起点に右方向に所定の運動方程式に従って運動を始めます。

そうして原点時間1秒でX軸上のどこかの位置にその物体mは存在している事になります。

さてそこでBTを示した本文の表示をみますと

X座標値 ーー>   0(原点) 1    2    3    4 ・・・

その位置に置かれた  0  -0.6 -1.2 -1.8 -2.4・・
時計が示す時刻t(sec) 1   0.4 -0.2 -0.8 -1.4・・ 

となっています。

ここで注目すべきは原点時刻1秒では原点から距離2Cの位置にある時計の時刻はマイナスになっている、という所です。

つまりは物体mが原点時刻1秒の時に距離2Cの所にあった、としたらその位置の観測者は『原点時刻0秒より0.2秒前に物体mはこの位置にあった』と報告する事になるのです。

つまり「原点から物体mが動き出す前に物体mは距離2Cの所にあった」と言う事です。

そうしてそんな事はこの宇宙では起こり得ません。

従って物体mは原点時刻1秒では原点から距離2Cの位置に到達する事はできないのです。

さてそのように考察するならば、物体mは原点時刻1秒では原点からどの位置にまで到達可能となるのでしょうか?

それは「原点時刻1秒の時に物体mが到達したその場所にある時計の時刻がプラスになっている所まで」となります。

さてその条件を満たす座標Xの値はいくつでしょうか?

時間のずれ量は棒の長さ掛ける相対速度Vでした。

求めているずれ時間の量は1秒です。

従って

一秒=距離X 掛ける 0.6C

距離X=1/0.6=5/3=1.6666・・・C

こうしてこの簡単な考察からBT時間軸になっている慣性系ではこの物体mの原点時刻1秒の時の最大到達距離は原点から1.6666・・・Cである事がわかるのです。

 

ちなみに相対論の世界では一番早いものが光でした。

その速度は1Cです。

ならば原点を0秒で通過した光は原点時間で1秒後にはx座標で1Cの所に到達しているのか、と言いますればBT時間軸ではそうはなりません。

BT時間軸でも等速運動している物体mの速度は物体mが到達したそのx座標値をその座標値の所にある時計が示している時刻で割れば求まるのでした。

で今はこの物体mの速度が光速Cである、としたのです。

そうして原点時間で1秒後にはx座標値でx1の所に到達したとしましょう。

その時の棒の長さはx1で慣性系の相対速度は0.6Cです。

従って時間のずれ量は 0.6*x1

原点時刻が1秒でしたから座標値x1での時刻は 1-0.6*x1

距離はx1ですから等速運動の速度は x1/(1-0.6*x1)

この値が1Cですから

1=x1/(1-0.6*x1)

(1-0.6*x1)=x1

1=x1+0.6*x1=(1+0.6)*x1

従って

x1=1/(1+0.6)=1/1.6=0.625

こうして相対速度0.6CのBT時間軸では原点時間で1秒後に光はx座標値0.625の所にいる事が分かるのでした。

そうしてもちろんその場所にある時計の時刻は0.625秒を指しています。

 

さてでは一体いつ光はx座標値で1Cの場所に到達するのでしょうか?

原点時間で1秒後にx座標値0.625でしたから1Cに到達するのは原点時間で

1/0.625=1.6秒後です。

さてその時の棒の長さは1Cですから1Cの所にある時計は1C*0.6Cだけ原点時間に対して遅れています。

そうであれば1Cの所にある時計は原点時間で1.6秒経過した時にはちょうど1秒を指している事になります。

こうして距離1Cの所に立つ観測者は「1秒で光は原点からこの場所に届いた」と記録しその様に報告できるのです。

つまり「光速は1Cである」となります。

 

ちなみに光についての以上の説明はMN図によっても確認する事が出来ます。

参照MN図: https://archive.md/ND6P3 :

このMN図は相対速度がほぼ0.58Cの時のローレンツ変換の状況をしめしています。

まあそうであれば多少の誤差はありますがこれを0.6Cでのローレンツ変換のMN図の代用にしましょう。

それで光はもちろん45度の青ラインで示されています。

変換前の静止系は黒座標、変換後の慣性系は赤座標になっています。

で、静止系で1秒の間に(Y軸方向1ブロック)光が進んだ距離はX軸方向に1ブロックです。(ちなみにイラストは拡大して見て下さい)

でその黒座標(t,x)=(1,1)の点の赤座標読み値はえいやあの目視で(0.6,0.6)あたりになっています。

そうしてこの数値は上記計算では(0.625,0.625)として求められた点に相当しています。

さて次に赤座標で(1,1)の点の黒座標読み値はえいやあの目視で(2,2)あたりになっています。

つまり静止系で2秒ほど経過すると赤座標での光の到達距離が1Cになっている、という事になります。

さて静止系で2秒と言うのは赤座標原点時刻では何秒でしょうか?

2秒*sqrt(1-0.6^2)=2*0.8=1.6(秒)が答です。

さてこれも上記計算で示した値「原点時間で1秒後にx座標値0.625でしたから1Cに到達するのは原点時間で1/0.625=1.6秒後です。」の再確認になっています。

さてこうして「棒の時間を使った変換はMN図の表示とも整合性が取れている」という事が確認できるのでした。

以上の事よりイラストでの黒座標系はNT時間軸であり赤座標系はBT時間軸である、という事がわかります。

そうしてその事については今まではだれも気がついてはいなかった事であろうかと思われます。

つまりは「NT時間軸とBT時間軸というテーマ」については従来の相対論の検討項目の中には入っておらず、「見落とされてきたテーマである」という事になります。

 

追記の2:速度の測定について

所で物であれ光であれその速度を測定する、という行為は出発点と到着点とのあいだの距離Lとその距離を移動するのに必要だった時間間隔ΔTを測定する、という事です。

そうして速度VはV=L/ΔTで決まります。

この関係は使っている時間軸がNTであれBTであれ変わる事はありません。

であればΔTは到着点に置かれた時計がしめす時刻T2から出発点に置かれた時計の時刻T1を差し引く事で決まります。

つまり ΔT=T2-T1 です。

それ以外の手順によってΔTが決まる事はありません。

ちなみに「任意の慣性系においてこの時に使われる2つの時計は光を使って時刻合わせが終了している」という事は相対論に於いては大前提となっています。

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「相対論・ダークマターの事など 記事一覧」

「その2:ダークマター・相対論の事など 記事一覧」

https://archive.md/FMViE

 


その6・ニュートンの時間(NT)と棒の時間(BT)の1

2024-08-11 01:19:24 | 日記

さてそれでローレンツ変換はローレンツがMMの干渉計の実験結果を説明しようとする中で登場してきたものです。

そうして当初はミスがあったそのローレンツの変換式を修正したのがポアンカレでした。

その際にローレンツもポアンカレも「求めている座標変換はマクスウエルの方程式を不変に保つであろう」ということを想定して発見的な手順でローレンツ変換にたどり着いた模様です。

さてそのローレンツ変換を2つの原理を最初に設定する事でトップダウン的に再導出して見せたのがアインシュタインでした。

ローレンツ変換の導出についての大まかな歴史的な経緯としてはそんな所でしょうか。(注1

 

さてそれで、前のページで示した様に実は棒の時間を使ってもローレンツ変換を導出できるのです。

まあこれは「当然と言えば当然の事」でありましょう。

ローレンツ変換の結果としてローレンツ短縮、時間の遅れ、そうして時間のずれが起きると通常は説明されています。

そうであればこの3つから逆にローレンツ変換が導出できてもそこには何の不思議もありません。

とはいいながら「ローレンツ変換の実体が実は棒の時間であった」という事が明示できた事は大きな事であります。(注2

 

といいますのもローレンツ変換は不思議な形をしていて、ローレンツ変換が実は何をやっているのか、それを言葉で説明することはできてはいなかったからです。

ただ「慣性系Kから相対速度Vで動いている慣性系K’に座標変換するにはローレンツ変換を行えばよい」という事が分かっていただけでした。

ちなみにその時のローレンツ変換の式はこうでした。

x’=(x-v*t)/sqrt(1-V^2)

t’=(t-V*x)/sqrt(1-V^2)

その状況に対して棒の時間を使う事でローレンツ変換が何をやっているのか、その具体的な内容が明らかになりました。(注3

それは簡単に言えば「ローレンツ変換もガリレイ変換と基本的には同じことをやっていた」という事です。

「車の外で行われている運動を車の中からみたらどう見えるのか」という事を「棒を使って車の中の座標に移し替えること」それがこの2つの座標変換がやっている内容でした。

その事についてはガリレイ変換もローレンツ変換も同じであります。

そこには何の違いもないのです。

但しガリレイ変換で使った棒は短縮する事はなく、そうしてまた棒の原点にある時計の時刻は遅れず、棒の先端にある時計の時刻も原点に対してずれる事はない、そういう棒の時間を使っていました。

それに対してローレンツ変換の棒は短縮し、そうしてまた棒の原点にある時計の時刻は遅れ、棒の先端にある時計の時刻は原点の時計に対してずれる、そういう棒の時間を使った変換がローレンツ変換なのです。

そうであればガリレイ変換とローレンツ変換の相違は「どちらの棒をつかったのか?というだけの事になります。

それ以外には何の違いもなく同じように棒の時間を使って変換していたのです。

 

さて座標変換という手順についてはこのようにガリレイ変換とローレンツ変換での違いはありません。

しかしながら実はガリレイ変換とローレンツ変換では変換された後の時間軸に大きな違いが生じているのです。

ガリレイ変換では変換後の慣性系での時間軸は変換前と同じ「ニュートンの時間」になっています。(注4

それに対してローレンツ変換では変換前の時間軸は「ニュートンの時間」であったものが変換後の慣性系での時間軸は「棒の時間」に変わってしまっています。(注5

つまり「ローレンツ変換後の慣性系では座標原点にある時計の時刻とそこから距離xだけ離れた場所にある時計の時刻はずれる」のです。

しかしながらこのずれは今まで指摘してきましたように「慣性系K’に立っている観測者には認識できないずれ」なのです。

そうであればこの観測者は「自分が立っている慣性系の時間軸はニュートンの時間である」と認識します。

それはつまり「自分は静止系に住んでいる」と認識する事と同じことです。

さてそのように認識してしまう為に「棒の時間の重大さ」については「今までは十分に理解されてきてはいなかった」と言えます。

違うコトバで言いますれば「自分は常に静止系に住んでいて棒の時間が支配しているような慣性系K’で暮らした事などは無い」と思っているのです。

 

注1:ローレンツ変換を導出する手順としてローレンツやポアンカレの様なheuristicな試行錯誤を重ねる、発見的な方法とアインシュタインの様に公理を設定してトップダウンで行う方法と2通りの方法があった訳です。

そうして「どちらの方法がより優れている」と言うものではなく、それはただ「それぞれの担当者のやり方がそうであったと言う事にすぎない」というのが当方の認識となります。

注2:「ローレンツ変換と棒の時間を使った変換が数学的に同等のものであった」という事は個人的には驚きであります。

注3:残念な事にはその2つの式に対してそれとそのままいくらにらめっこしてもその式のやっている事は当方には解読できませんでした。

そうであれば「その式を解読できた」という事は「長い間解けなかったパズルが解けた」という事になります。

注4ニュートンの時間(ニュートン タイム:NT

ガリレイ変換が支配しているニュートン力学の世界では全ての慣性系の時間軸はニュートンの時間になっています。

それで通常の物体mの運動を表す時に使う表示方法ですがそれは横軸に時間軸tをとり縦軸にx軸の原点からの移動距離xを取った場合にそこに現れる直線、あるいは曲線で物体mの運動の軌跡を表現します。

で、ここで命名した「ニュートンの時間(NT)」というのはその時に横軸に取った時間軸で示されている時刻表示の事になります。

その「ニュートンの時間」による時刻表示はガリレイ変換では変化する事はありません。

「ニュートンの時間」はガリレイ変換に対しては不変なのです。

他方で距離Xはガリレイ変換で変化します。

というよりも「距離xのみを変化させるものがガリレイ変換である」といえます。

さてそうであれば「ニュートンの時間」という呼び方を新たに登場させましたがそれ以外の内容については「よく知られた事」であり、我々にとっては「ほとんど自明のことである」といっても良い内容です。

 

注5:棒の時間(棒タイムBT

さてそれに対してローレンツ変換が支配している相対論の世界では「全ての慣性系の時間軸は棒の時間(BT)」になっています。

そうして「棒の時間については今まで十分に説明してきたもの」であればここで改めてそれを繰り返す必要はないと思われます。

とはいいながら一つだけ付け加える内容があります。

それは「相対論においては静止系とされた慣性系の時間軸は棒の時間であると同時にニュートンの時間にもなっている」という事です。

あるいはその様に「棒の時間」=「ニュートンの時間」となりうる唯一の慣性系が相対論で言う静止系なのです。

従って相対論に於いては静止系以外のすべての慣性系の時間軸は「棒の時間」ではありますが「ニュートンの時間」にはなってはいない、なる事ができないのです。

 

さてそれで「棒の時間」と「ニュートンの時間」の大きな違いはなんでしょうか?

その違いは通常は「棒の時間」では「静止系に対して動いている慣性系の時間は遅れる」とされます。

これはローレンツ変換が距離xと時間tを同時に変化させる為です。

そうであれば相対論に於いては時間tは不変ではなくなる、それがガリレイ変換が支配しているニュートン力学の世界とは違う所になっています。

 

さてしかしながらここで通常は忘れ去られて振り返えられる事がない大きな違いがもう一つ「棒の時間」と「ニュートンの時間」の間にはあるのです。

それは「棒の時間では距離xに置かれた時計が示す時刻表示tx原点にある時計の時刻表示toからずれる」という事です。

その様な事は「ニュートンの時間」では起こってはいません。

「ニュートンの時間」では常に tx=to が成立しているのです。

「ニュートンの時間」についてはそのことは自明な事でありましょう。

しかしながら「棒の時間」については「今までとは違う状況になっている」のです。

そうして我々はどうやらその事の重大さを十分には認識してはいなかった模様です。

なんとなればそれは「方程式がローレンツ不変である、という事は一体どういう事なのか?」と問う事につながるからです。

あるいはそれは「棒の時間に変わってしまった慣性系K’の時間軸においてローレンツ不変であるとされた方程式が実際の所は一体何を意味しているのか?」と問う事でもあります。

 

追記:ニュートンの時間と棒の時間

この2つの時間の具体的な姿、ありようについては具体的な例を挙げた説明を聞かないとよく分からないと思われます。

そうしてその具体例を使った説明はこの後の別のページで展開される事になります。

従ってここではたとえば『速度グラフを描いた時に横軸になっている時間軸には実は2通りの具体的な実体と言うものがある。

その一つが従来から使われている時間軸でそれは「ニュートンの時間」と言うものを表している。

そうしてもう一つがローレンツ変換の登場と共にこの世界に登場した「棒の時間」と言うものになっている。』(注6

そういう「2つの異なる時間軸と言うものが存在している」という事を認識しておいていただければまずは十分であります。

 

注6:速度グラフの具体例: https://archive.md/YiYTt :

最初に「等速直線運動のv-tグラフ」と言うのが出てきていますがこのグラフの横軸がここで話題にしている時間軸のことです。

そうしてこの場合は横軸は「ニュートンの時間(NT)」になっています。

つまりは「グラフで時刻が3秒の時にはx軸の座標原点に置かれた時計も3秒を指している」のです。

もちろんその時に対象物体はx軸の座標原点からv*3秒の位置にいます。

そうしてその位置に置かれた時計も3秒を指している、これが「ニュートンの時間(NT)」です。

つまりは対象物体が速度vで移動している時に常に

t(原点位置の時計の表示時刻)=t(その時に対象物体が存在しているその場所に置かれた時計の時刻表示)

となっているのが「ニュートンの時間(NT)」なのです。

そうしてこれがローレンツ変換を行うと変換された慣性系では原点の時刻と物体が到達している場所に於かれた時計の時刻がずれるのが「棒の時間(BT)」になります。

さてそれで「我々は通常は地球上の時間軸はニュートンの時間(NT)だ」と思っていますが「それは本当ですか?」という疑問が浮かんできます。

あなたが「地球上の時間軸はニュートンの時間(NT)だ」という証拠は何でしょう?

まあもっともポアンカレを除いてアインシュタインが1905年に特殊相対論を提案していらい120年間に渡って「棒の前後で時間がずれる」という事は了解されていましたが「それがそんなに大事な事なのか?」と言う状況でした。

そうであれば大方の方々は「地球上の時間軸はニュートンの時間(NT)であると何故言えるのか?」などと言う様な疑問は抱いてはこなかったのです。

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「相対論・ダークマターの事など 記事一覧」

「その2:ダークマター・相対論の事など 記事一覧」

https://archive.md/YU7xD