さて「その2・棒の時間とローレンツ短縮の関係」: https://archive.md/ON8ER :では車の外に立つ観測者が静止系に立っている、という前提で計算をすすめました。
その結果は静止系から見るならば(=車の外からみれば)真ん中から出た光が
車の後端に届くのは0.5秒後
車の先端に届くのは2.0秒後
となっています。
この時もちろん車の中(=運動系)では
車の後端に届くのは1・0秒後
車の先端に届くのは1.0秒後
となっています。
さてそれで相対論によれば「すべての運動は相対的」であって「特別な慣性系はない」という事になっています。
そうであるならば「車の中の観測者」が「自分こそが静止系である」と主張できることになります。
つまりは「動いているのは車の外に立つ観測者の方だ」という訳です。
そのような車の中の観測者の主張はむげに否定することはできません。
なんといっても「すべての運動は相対的」であって「特別な慣性系はない」と主張するのが相対論であれば「車の中の観測者の主張」も取り上げて検討してみる事が必要になります。
さてそうであれば今度は「車の中の観測者が静止系である」として計算を行う事になります。
そうしてそれ以外の条件は前回と同じ、つまり「相対速度は0.6C」です。
ただし前回は「車=運動系」は右に動いていきましたが今回は運動系は車の外です。: https://javalab.org/ja/relativity_of_simultaneity_ja/ :
従って「運動系=車の外」は今回は左に0.6Cで動くことになります。
さて車の外の物差しはローレンツ短縮をおこして長さ L の物差しは0.8L になっています。
sqrt(1-0.6^2)=0.8 です。
で光は片道1.0Cを車の後端に向けて左方向に速度1Cで動きます。
そうであれば1秒後に光は車の後端に届きます。(静止系時間)
これを左方向に0.6Cで運動している観測者の視点にローレンツ変換しなくてはなりません。(注1)
光と同じ方向(=左方向)に0.6Cで動いている観測者には静止系時間で1秒後にはその観測者から見て光は距離0.4Cのところに到達していることになります。
0.4=1.0-0.6 です。
ただしこの距離0.4Cというのは静止系で見た時の距離です。
さてこの距離を0.6Cで運動している観測者が自分の物差しで測ると
0.4/0.8=0.5C
となります。
なぜならば「0.6Cで運動している観測者の物差しは0.8がけの割合でローレンツ短縮しているから」ですね。
その「短くなった物差しで距離をはかれば当然、距離は長くなる方向に測定される」のです。
さてそうであればこの時には「0.6Cで運動している観測者の左方向の物差しの長さ(=棒の長さ)は0.5Cである」となります。
さて「同時性の相対性の計算」によれば「進行方向に走る棒の先端の時間は遅れる方向にV*Lの割合で原点に対してずれる」のでした。
従ってこの場合の遅れ方向のずれ量は
0.6C*0.5=0.3秒です。
さて次に「0.6Cで運動している観測者の時間は静止系の時間に対して0.8がけで遅れる」のでした。
従って「静止系で1秒後に光が車の後端に届いた」というのは「0.6Cで運動している原点に立つ観測者の時間では0.8秒後に車の後端に届いた」となります。
さてそれで「0.6Cで運動している慣性系で原点から左方向に0.5Cのところにいる観測者が、そうして当該慣性系の中ではその観測者のみが車の後端に光が届いた時刻を記録できる」のです。(注2)
さてその観測者は「いったいいつ光は車の後端に光が届いた」と記録することになるのでしょうか?
それは「0.5秒後に光は車の後端に届いた」と記録することになります。
棒の原点にある時計に対して左0.5Cのところにある時計は0.3秒遅れる、したがって棒の原点に立つ観測者の時計が0.8秒後を指している時には左方向0.5Cのところにいる観測者の時計は0.5秒後を指しているからですね。
0.8秒ー0.3秒=0.5秒 です。
さて次に右方向に飛んだ光について考えます。
この光は車の先端に1秒後に到達します。(静止系時間)
これを上記と同様に左方向に0.6Cで運動している観測者の視点にローレンツ変換しなくてはなりません。
光と反対方向に0.6Cで動いている観測者には静止系時間で1秒後にはその観測者から見て光は距離1.6Cのところに到達していることになります。
0.6+1.0=1.6 です。
ただしこの距離1.6Cというのは静止系で見た時の距離です。
それでこの距離を0.6Cで運動している観測者が自分の物差しで測ると
1.6/0.8=2.0C
となります。(理由については上記参照)
さてそうであればこの時には「0.6Cで運動している観測者の右方向の棒の長さは2.0Cである」となります。
さて「同時性の相対性の計算」によれば「進行方向に走る棒の後端の時間は進む方向にV*Lの割合で原点に対してずれる」のでした。
従ってこの場合の進み方向のずれ量は
0.6C*2.0=1.2秒です。
さて次に「0.6Cで運動している観測者の時間は静止系の時間に対して0.8がけで遅れる」のでした。
従って「静止系で1秒後に光が車の後端に届いた」というのは「0.6Cで運動している棒の原点に立つ観測者の時間では0.8秒後に車の後端に届いた」となります。
さてそれで「0.6Cで運動している慣性系で原点から右方向に2.0Cのところにいる観測者が、そうして当該慣性系の中ではその観測者のみが車の先端に光が届いた時刻を記録できる」のです。(注2)
さてその観測者は「いったいいつ光は車の後端に光が届いた」と記録することになるのでしょうか?
それは「2.0秒後に光は車の先端に届いた」と記録することになります。
なんとなれば棒の原点に立つ観測者の時計が0.8秒後を指している時には右方向2.0Cのところにいる観測者の時計は2.0秒後を指しているからですね。
棒の原点にある時計に対して右2.0Cのところにある時計は1.2秒進む、したがって
0.8秒+1.2秒=2.0秒 となります。
以上をまとめますと
運動系(=車の外からみれば)真ん中から出た光が
車の後端に届くのは0.5秒後
車の先端に届くのは2.0秒後
となります。
このときもちろん車の中(=静止系)では
車の後端に届くのは1・0秒後
車の先端に届くのは1.0秒後
となっています。
まとめ
以上の事から静止系を「車の外」とした場合と「車の中」とした場合において、光が車の先端および後端に届くのに必要な時間に差は見られない、という事になります。
さてこれはアインシュタインの主張「観測者は自分が立っている慣性系を静止系として良い」を支持している様に見えます。
つまりは「アインシュタイン流の静止系の決め方とローレンツ変換を使う事で同時性の相対性の実験結果は説明できる」という訳です。
「ほらね、やっぱりアインシュタインの言ったとおりだろ。」
そんな声が聞こえてきます。
さあそうなりますと当方の「観測者の主観的な判断とは独立して静止系は客観的に存在する」という主張は成り立たなくなるのでしょうか?
アインシュタイン流の静止系の決め方が正義なのでしょうか?
さてここは落ち着いて確認しなくてはなりません。
その確認作業は次のページ以降で行うことに致しましょう。
注1:上記で使っている「ローレンツ変換を棒の時間を使って行う方法」についてはすでに「その2・棒の時間とローレンツ短縮の関係」: https://archive.md/ON8ER :で説明したものと同じです。
そうして「時間についてのローレンツ変換の結果を得る為」であるならば「この手順の方が直観的・図形的」あって「わかりやすいものである」と言えます。
注2:もちろんそれは、0.6Cで運動している慣性系の中での話であって、静止系で車の後端にいる観測者も(あるいは車の先端にいる観測者も)同時に光が車の後端に(あるいは車の先端に)届いたことを観測し「光は1秒後に届いた」と記録する事ができるのです。
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