今まで取り上げてきた「時間遅れの合成則」は
V=(V1+V2)/(1+V1*V2)・・・(1)式
という速度の合成則から出てきたものでした。(注1)
そうしてこの合成則の導出については: https://archive.md/jydqn :(おにノート)を参照願います。
それで(おにノート)にあります様に「もう一つの速度の合成則がある」のです。
といってもそれは実は(1)式の表現方法を変えただけのものであって、見かけは異なりますが示している内容は同じなのです。
でその式を(おにノート)から引用します。
V2=(V-V1)/(1-V*V1)・・・(2)式
但しここでは速度は光速Cで規格化しています。
この式は速度VとV1が分かっている場合に不明な速度V2の値を求める、と言うものになっています。
それでこの時に注意すべきは「慣性系 K0」を静止系として、その静止系から測定した「慣性系 K1」の相対速度をV1とし「慣性系 K2」の相対速度をVとしている、という所にあります。
そうして相対速度V2というのは「慣性系 K1」から見た「慣性系 K2」の相対速度の事です。
さてこの時にsqrt(1-V2^2)の値はどのように計算されるか、と言うのがここでのテーマです。
前例にならって(2)式を(V1->a,V2->b)と書き直します。
b=(v-a)/(1-v*a)
でもとめるものは sqrt(1-b^2) です。さてそうであれば
sqrt(1-b^2)
=sqrt(1-((v-a)/(1-v*a))^2)
ウルフラムを呼んで
https://ja.wolframalpha.com/input?i=sqrt%281-%28%28v-a%29%2F%281-v*a%29%29%5E2%29
「別の形」に答えがでています。
0<a<1,0<v<1 ですので
(a^2-1)*(v^2-1)=(1-a^2)*(1-v^2) です。
そうしてまた
0<a*v<1 ですので (a*v-1)<0 ですが
(a*v-1)^2>0 です。
そうであれば
(a*v-1)^2=(1-a*v)^2
従って「別の形」は次のように整理できます。
sqrt(1-a^2)*sqrt(1-v^2)/(1-a*v)
こうして
sqrt(1-b^2)=sqrt(1-a^2)*sqrt(1-v^2)/(1-a*v) ・・・(3)式
変数名を戻すと
sqrt(1-V2^2)=sqrt(1-V1^2)*sqrt(1-V^2)/(1-V1*V) ・・・(4)式
となります。(注2)
これが「もう一つの時間遅れの合成則」あるいは「タイプ2の時間遅れの合成則」となります。
ちなみに「時間遅れの合成則」と呼んでいるものは実際には相対速度V、V1、V2の値から計算される3つのローレンツ因子である(注3)
sqrt(1-V^2), sqrt(1-V1^2), sqrt(1-V2^2)
の3つの数値の間に成立している関係式であって、それを「時間の遅れ」という現象に適用した場合には「時間遅れの合成則」と呼んでいるのです。
しかしながらもともとはこれらの関係式は上記の3つの数値の間に成立している関係式ですので本来の呼び方は
「ローレンツ因子の合成則」
というのが妥当なのです。
さて、「なぜわざわざこのような注釈を言っているのか?」といいますれば(3)式あるいは(4)式で表された関係式が驚くべき事に「実はローレンツ短縮を表す一般式になっているから」なのです。(注4)
・・・というわけで、ここでこのページの記述は終わって、以降は次のページにつながります。
注1:「速度の加法則と時間遅れの合成則の関係」: https://archive.md/OIZ79 :参照のこと。
注2:「速度の加法則と時間遅れの合成則のMN図による表現・確認」: https://archive.md/hbGGO :の数値を使って(4)式の成立を確かめておきましょう。
sqrt(1-V2^2)=sqrt(1-V1^2)*sqrt(1-V^2)/(1-V1*V) ・・・(4)式
sqrt(1-V2^2)=0.8216446・・・
sqrt(1-V1^2)=0.4930517・・・
sqrt(1-V^2)=0.8146164・・・
V1=0.87C
V=0.58C
sqrt(1-V1^2)*sqrt(1-V^2)/(1-V1*V)
=0.4930517*0.8146164/(1-0.87*0.58)
ウルフラムを呼んで
https://ja.wolframalpha.com/input?i=0.4930517*0.8146164%2F%281-0.87*0.58%29
答えは
0.810755・・・
sqrt(1-V2^2)=0.8216446・・・でしたので
「タイプ2の時間遅れの合成則」もMN図上で「まあそれなりに成立している」と言えそうです。
注3:通常はγ=1/sqrt(1-V^2)で計算されるγに対してローレンツ因子と言う呼び方をしています。
しかしながらここではsqrt(1-V^2)そのものを指してローレンツ因子と呼んでいますのでご注意の程を。
ちなみにこの相対速度V、V1、V2の値から計算される3つのローレンツ因子の間に成立している関係式なのですが、この3つの相対速度の間の関係については: https://archive.md/jydqn :(おにノート)を参照願います。
そこで示されているイラストの説明に従ってV、V1、V2は定義されていることに注意が必要です。(つまりはこれは3体論になっている3つの物体あるいは3つの慣性系の間に成立している関係式なのです。)
注4:さて今まではだれも「こんな事=(3)式あるいは(4)式で表された関係式が実はローレンツ短縮を表す一般式になっている」などと主張する事はありませんでした。
そうであればこれが事実だとすると「本当にびっくり仰天」であります。
そうしてまたなぜローレンツ変換から「ローレンツ因子の合成則」がでてくるのか、その理由もよりはっきりします。
つまりは「ローレンツ短縮という現象を記述する為」には「ローレンツ因子の合成則が必要不可欠」なのであります。
-------------------------------