特殊相対論、ホーキング放射、ダークマター、ブラックホールなど

・時間について特殊相対論からの考察
・プランクスケールの原始ブラックホールがダークマターの正体であるという主張
 

その2-14・ドップラーシフトの一般式の検証の4(+ういきの間違いの件)

2023-09-28 02:35:31 | 日記

4、さてそれで、通説にしろアインシュタインにしろ、ドップラー効果の式を導出する前提では「光源と観測者のいずれかを動かし、他方を静止させておく」となっています。

つまりは「式の導出の前提条件は2つの異なる場合がある」としているのです。

そうしてまた不可解な事にその2つの場合に対応してそれぞれが異なる形の式が導出されるのです。(通説の式とアインシュタインの式の事を言っています。)(注1)

それでこれは相対性原理から言えば「これはまことにおかしな状況である」と言えます。

なぜならば「光源が動いて観測者が静止している場合」と「光源が静止していて観測者が動いている場合」と言うのは従来のアインシュタイン流の特殊相対論の立場から言えば「同じ一つの物理的な状態=光源と観測者の相対速度がVである」と言えるからです。

その状況に対して観測者は『自分こそが静止系である』と主張できるし、また同様にして光源の横に立つ観測者は『光源こそが静止系である』と主張できる、それは「観測者の立つ慣性系と光源の置かれた慣性系は平等であり、どちらかが他方に対して優先するという事はない」と言うものが相対性原理の主張だからです。(注2)

 

しかしながら実際は「観測者が『自分こそが静止系である』」と主張した場合の式(通説の式)と『光源こそが静止系である』と主張した場合の式(アインシュタインの式)は異なる形をしており、それゆえに横ドップラーシフトを計算すると異なる値が出てきます。

通説の式では横ドップラーシフトは赤方偏移を示すのに対してアインシュタインの式では青方偏移を示すのです。

さてこれは相対性原理の主張からみると「致命的におかしな事」です。(追記の1)

従って通説では今までの横ドップラー効果の実験結果に合わせる形で「赤方偏移する式」を「一般式として採用している」のです。(注3)

そうしてこれは後述する事になるのですが、「実験的には実はどちらも正しい式」なのです。

つまりは横ドップラーシフトでは「光源を動かせば赤方偏移が観測され、観測者を動かせば青方偏移が観測される」のです。

 

さてそうなりますと「実は相対性原理そのものの成立が怪しい」という事になります。

横ドップラーシフトの実験結果はそのように主張しているのです。(注4)

さてそれで「いいや、そんなことはない」、「相対性原理は確かに成立している」といわれるのであれば、「相対速度Vのみを使って(1)式を導出して見せて下さい」という事になります。(注5)

それはつまり「光源と観測者の両方が動いている」「但しその2者のあいだの相対速度はVである」という前提条件で「相対速度Vのみで記述されたドップラーシフトの一般式を導出せよ」という事になります。

 

注1:「前提条件が違うのだから、出てくる式が違うのは当たり前」という見方もありますが、さてそれは「相対性原理」に反する見方の様に当方には思えるのです。

注2:「相対性原理」を「観測者の立つ慣性系と光源の置かれた慣性系は平等であり、どちらかが他方に対して優先するという事はない」と主張しているととらえた場合はそうなります。

しかしながらアインシュタインの言い方は「どの慣性系でも同じように物理法則は成立している」です。

したがって「アインシュタインの主張の解釈、あるいは理解の仕方」という事で言うならば「上記の認識の仕方は少し違っている」とも言えそうです。

まあしかしながら一般的には「相対性原理によれば観測者の立つ慣性系と光源の置かれた慣性系は平等であり、どちらかが他方に対して優先するという事はない」と認識されているのも事実であります。

注3:日本語版ういき「ドップラー効果」: https://archive.md/MNLxG :の「光のドップラー効果」で示されている式は、以上のことより「ドップラー効果の一般式ではない」という事になります。

そうしてそのような「一般式ではない式」をあたかも「これが光のドップラー効果の一般式である」かの様に表示しているういきのやり方は本当に困ったものです。

ちなみに通説の式では「光源と観測者の両方が動いている場合」については計算する事ができないのです。

そうであればその事もまた「通説の式は一般式ではない」という事を示しています。

注4:このことはもっとはっきり言うならば「静止系は客観的な存在である」という事を示しており、それは同時に「相対性原理は破れている」という事になるのです。

さてこれはとんでもない事です。

何故ならば「相対性原理」=「全ての慣性系は同等である」は特殊相対論を導出するのにつかわれた前提条件の一つであるからです。

そうであればこそ多くの方々が『横ドップラーシフトでは赤方偏移する』にこだわっていて、「横ドップラーシフトでは青方偏移する場合がある」を認めようとはしないのです。

したがって「そのとばっちりを受けたアインシュタインの式」はなんだかんだと理屈をこねられて通説の示す式にむりやり統合されている、というのが現状です。

しかし本来であればそんな事をする必要は全く無くて、「素直にアインシュタインの式をそのまま認めればよい」のです。

注5:以前のページで示した(1)式はこうなっています。

f1=f0*(1-Vr*cos(Θ1))/(1-Vs*cos(Θ2))*sqrt(1-Vs^2)/sqrt(1-Vr^2) ・・・(1)式

ここでVrは静止系に対する観測者の相対速度(=固有速度)、Vsは静止系に対する光源の相対速度(=固有速度)を示します。

但しVr、Vsの方向はお互いが近づく方向をプラスに取ります。

f1は観測される周波数、f0は光源の周波数です。

角度についてはこれまでと同様の取り方になります。

Θ1=π、Θ2=0がお互いが近づく方向、Θ1=0、Θ2=πがお互いが離れる方向です。

但しこの時 Θ2=abs(Θ1-π) の関係が成立しています。それで

(1-Vr*cos(Θ1))/(1-Vs*cos(Θ2)) の項が古典的なドップラー効果を表す部分で

sqrt(1-Vs^2)/sqrt(1-Vr^2) の項が相対論的な効果(=時間遅れの効果)を表します。

 

追記の1:ここで話している内容は「時間の遅れはお互い様」論争と一見同じ様にみえます。

しかしながら「時間の遅れ」論争では「現れている式は一つ」なのです。

そうしてその式の使い方についての論争でした。

それは結局の所「2つの慣性系がすれ違う時に、どちらの慣性系を静止系に取るのか」という話になります。

そうして「時間の遅れはお互い様」論者は「いずれの慣性系も『自分こそが静止系である』としてよい」、つまりは「常に相手の時間が遅れている様に観測できる」と主張したのです。

たとえばランダウ・リフシッツはそのように主張しました。

しかしながらその主張は「LLの一般解の導出」によって否定されました。

あるいは「時計Bの主張によって論破された」といっても良いでしょう。

2つ+1つの時計を使った時間遅れの測定結果からでは「どちらの慣性系が静止系であるか」が決定できないのです。

つまりは「得られた一組の時計の観測されたデータセットからは、どちらの慣性系の時間が遅れていたのか分からない」のです。

 

それに対して横ドップラーシフトでは「観測されたデータは一つ」であってそれは「赤方偏移している」のか「青方偏移している」のか、いずれかの値しかとりえません。

そうしてそうやって得られた横ドップラーシフトの観測結果を解釈する方法は1つだけになります。

それはつまり「アインシュタインの式が成立している」のか「通説の、ういきの式が成立しているのか」、「そのどちらかの状況がそこに在った」という事です。

そうであれば「ここでは時計Bのクレームは効かない」: https://archive.md/9WKOy :のです。

いつもの相対性原理に基づいた「動いているのはお前の方だ」という主張が通用しません。

こうして「横ドップラーシフトの観測結果によってどちらの慣性系が静止系であるのかを決める事が出来る」という次第であります。

 

PS:相対論・ダークマターの事など 記事一覧

https://archive.md/rj7NV


その2-13・ドップラーシフトの一般式の検証の3

2023-09-25 03:29:08 | 日記

3、さてそれで、ここまでのページではドップラー効果を表す一般式の縦ドップラーと横ドップラーを検証しました。

再確認になりますが、その一般式は次の形をしています。

f1=f0*(1-Vr*cos(Θ1))/(1-Vs*cos(Θ2))*sqrt(1-Vs^2)/sqrt(1-Vr^2) ・・・(1)式

ここでVrは静止系に対する観測者の相対速度(=固有速度)、Vsは静止系に対する光源の相対速度(=固有速度)を示します。

但しVr、Vsの方向はお互いが近づく方向をプラスに取ります。

f1は観測される周波数、f0は光源の周波数です。

角度についてはこれまでと同様の取り方になります。

Θ1=π、Θ2=0がお互いが近づく方向、Θ1=0、Θ2=πがお互いが離れる方向です。

但しこの時 Θ2=abs(Θ1-π) の関係が成立しています。それで

(1-Vr*cos(Θ1))/(1-Vs*cos(Θ2)) の項が古典的なドップラー効果を表す部分で

sqrt(1-Vs^2)/sqrt(1-Vr^2) の項が相対論的な効果(=時間遅れの効果)を表します。

 

それでこのページでは相対速度V=0.5Cに限定しますが、その時の一般式が示すドップラー係数の状況を3Dプロットして確認しておきます。(注1)

それで(1)式は

f1=f0*(1-Vr*cos(Θ1))/(1-Vs*cos(Θ2))*sqrt(1-Vs^2)/sqrt(1-Vr^2)

となっていますが、ここで

Θ2=π-Θ1

の関係があり、Θ2をxにおきかえてそれでcos(Θ1)を表しますと

cos(Θ1)=-cos(x)

となります。

従って(1)式は

f1=f0*(1+a*cos(x))/(1-b*cos(x))*sqrt(1-b^2)/sqrt(1-a^2) ・・・(2)式

となります。ここで

b=(0.5-a)/(1-0.5*a) ですからこれをbに代入します。(注2)

そうすると(2)式は

f1=f0*(1+a*cos(x))/(1-((0.5-a)/(1-0.5*a))*cos(x))*sqrt(1-((0.5-a)/(1-0.5*a))^2)/sqrt(1-a^2) ・・・(3)式

となります。したがってこの(3)式のドップラー係数の部分は

(1+a*cos(x))/(1-((0.5-a)/(1-0.5*a))*cos(x))*sqrt(1-((0.5-a)/(1-0.5*a))^2)/sqrt(1-a^2)

となります。ここで3Dプロットの為にaをyに置き換えます。そうすると

(1+y*cos(x))/(1-((0.5-y)/(1-0.5*y))*cos(x))*sqrt(1-((0.5-y)/(1-0.5*y))^2)/sqrt(1-y^2) 

となります。

以上で3Dプロットの準備はできました。

 

ウルフラムを呼んで

(1+y*cos(x))/(1-((0.5-y)/(1-0.5*y))*cos(x))*sqrt(1-((0.5-y)/(1-0.5*y))^2)/sqrt(1-y^2)  プロット 0<x<pi,0<y<0.5 

実行アドレス

https://ja.wolframalpha.com/input?i=%281%2By%EF%BC%8Acos%28x%29%29%2F%281-%28%280.5-y%29%2F%281-0.5*y%29%29%EF%BC%8Acos%28x%29%29%EF%BC%8Asqrt%281-%28%280.5-y%29%2F%281-0.5*y%29%29%5E2%29%2Fsqrt%281-y%5E2%29%E3%80%80%E3%80%80%E3%83%97%E3%83%AD%E3%83%83%E3%83%88%E3%80%800%3Cx%3Cpi%2C0%3Cy%3C0.5%E3%80%80

角度xは横軸Xで範囲が0<x<pi

固有速度y(=観測者側の固有速度)が縦軸Yで範囲が0<y<0.5 

高さ方向Z軸がドップラー係数の値になっています。

それでy=0のXZ断面に現れているカーブが通説の式が表すカーブで、それに対してy=0.5のXZ断面に現れているのがアインシュタインの式が表すカーブです。

このドップラー係数の値は角度xがゼロの時は光源と観測者が近づく場合の縦ドップラー状態を表していてその時のドップラー係数の値は1.732です。

つまり青方偏移しているのです。

それでその時には固有速度y(=観測者側の固有速度)の値が0<y<0.5の範囲内でどこにあってもドップラー係数の値は1.732のままで一定に保たれている事が目視確認できます。(注3)

同様にして

角度xがπの時は光源と観測者が離れる場合の縦ドップラー状態を表していてその時のドップラー係数の値は0.577です。

つまり赤方偏移しているのです。

そうしてこのときにも0<y<0.5の範囲内でどこにあってもドップラー係数の値は0.577のままで一定に保たれている事が目視確認できます。

 

ちなみにこの3DプロットのグラフをXZ平面側(y=0)からY軸プラス方向をみると次のように見えるのでした。

もちろん相対速度VはV=0.5Cで計算しています。

『y=sqrt(1-0.5^2)/(1-0.5*cos(x)),y=(1+0.5*cos(x))/sqrt(1-0.5^2),y=1000000*(x-pi/2),y=1 プロット  0<x

実行アドレス

https://ja.wolframalpha.com/input?i=y%3Dsqrt%281-0.5%5E2%29%2F%281-0.5*cos%28x%29%29%2Cy%3D%281%2B0.5*cos%28x%29%29%2Fsqrt%281-0.5%5E2%29%2Cy%3D1000000*%28x-pi%2F2%29%2Cy%3D1%E3%80%80%E3%83%97%E3%83%AD%E3%83%83%E3%83%88++0%3Cx%3Cpi+%2C-0.1%3Cy%3C2

表示はΘが0からπまで、上のカーブがアインシュタインの式、下のカーブが通説の式になっています。』

 

さてそれで上記の3Dプロットでは横ドップラーの状況がよく分かりません。

それで角度xの値をπ/2で分けてプロットします。

まずは左半分のプロット。

(1+y*cos(x))/(1-((0.5-y)/(1-0.5*y))*cos(x))*sqrt(1-((0.5-y)/(1-0.5*y))^2)/sqrt(1-y^2)  プロット 0<x<pi/2,0<y<0.5 

実行アドレス

https://ja.wolframalpha.com/input?i=%281%2By%EF%BC%8Acos%28x%29%29%2F%281-%28%280.5-y%29%2F%281-0.5*y%29%29%EF%BC%8Acos%28x%29%29%EF%BC%8Asqrt%281-%28%280.5-y%29%2F%281-0.5*y%29%29%5E2%29%2Fsqrt%281-y%5E2%29%E3%80%80%E3%80%80%E3%83%97%E3%83%AD%E3%83%83%E3%83%88%E3%80%800%3Cx%3Cpi%2F2%2C0%3Cy%3C0.5%E3%80%80

角度xがπ/2のYZ断面が横ドップラー状態を表しています。

そのYZ断面に現れている、一見直線に見える曲線が前のページで示したグラフの曲線になっています。

奥がアインシュタインの式での計算値でドップラー係数は1.155。

手前が通説の式の値での計算値でドップラー係数は0.866です。

 

以下、前のページで示した角度xがπ/2のYZ断面に現れるカーブを再掲示しておきます。

『y=1.155,y=sqrt(1-((0.5-x)/(1-0.5*x))^2)/sqrt(1-x^2),y=100000(x-0.5),y=100000(x-0.2679),y=1,y=0.866 プロット 0.8<y<1.2 ,0<x<=0.55

実行アドレス

https://ja.wolframalpha.com/input?i=y%3D1.155%2Cy%3Dsqrt%281-%28%280.5-x%29%2F%281-0.5*x%29%29%5E2%29%2Fsqrt%281-x%5E2%29%2Cy%3D100000%28x-0.5%29%2Cy%3D100000%28x-0.2679%29%2Cy%3D1%2Cy%3D0.866%E3%80%80%E3%83%97%E3%83%AD%E3%83%83%E3%83%88%E3%80%800.8%3Cy%3C1.2+%2C0%3Cx%3C%3D0.55

横軸はaがゼロから0.5Cまで動く事を示しています。』

 

ちなみに右半分の3Dプロットはこうなっています。

(1+y*cos(x))/(1-((0.5-y)/(1-0.5*y))*cos(x))*sqrt(1-((0.5-y)/(1-0.5*y))^2)/sqrt(1-y^2)  プロット pi/2<x<pi,0<y<0.5 

実行アドレス

https://ja.wolframalpha.com/input?i=%281%2By%EF%BC%8Acos%28x%29%29%2F%281-%28%280.5-y%29%2F%281-0.5*y%29%29%EF%BC%8Acos%28x%29%29%EF%BC%8Asqrt%281-%28%280.5-y%29%2F%281-0.5*y%29%29%5E2%29%2Fsqrt%281-y%5E2%29%E3%80%80%E3%80%80%E3%83%97%E3%83%AD%E3%83%83%E3%83%88%E3%80%80pi%2F2%3Cx%3Cpi%2C0%3Cy%3C0.5%E3%80%80

 

以上の事から分かります様に「通説の式とアインシュタインの式は連続的につながっていてそれがドップラー係数を表す一般式を構成している」のです。

さてそうであれば「どちらか一方が正しい」のではなく「両方とも正しいが、但しそれは3Dで表現される一般式の中のそれぞれの切断面での話でしかない」という事になるのです。(注4)

 

注1:ドップラー係数は原子力関連で用いられているコトバですが、その呼び方を拝借します。つまりは

観測される周波数=光源の周波数*ドップラー係数(固有速度、角度)

で表現できる事とします。

注2:相対論的な速度の加算則から相対速度V=0.5Cは固有速度a,bを使って

0.5=(a+b)/(1+a*b)

となります。

これを変形すると

b=(0.5-a)/(1-0.5*a) となります。

注3:もちろんa=0の時はb=0.5(通説の計算条件)で、a=0.5の時はb=0(アインシュタインの計算条件)になっています。

そうしてその中間は 0.5=(a+b)/(1+a*b) という相対論的な速度の加算則を満たしています。

注4:それぞれの条件でドップラー係数を具体的に計算出来る式の集合全体がドップラー係数の一般式を作っています。

そうして通説の式もアインシュタインの式も、その全体集合の中の部分集合に過ぎない、という事になるのです。

したがってアインシュタインの式はそれをそのまま素直に認めればよいのであって、多くの方々がやっているような「アインシュタインの式を無理やりに通説の式に変形させる必要などはない」のです。

そのように変形させる事は正しくはない、間違っているのです。

 

PS:相対論・ダークマターの事など 記事一覧

 


その2-12・ドップラーシフトの一般式の検証の2

2023-09-22 01:31:46 | 日記

2、さてそれで、前のページではドップラー効果を表す一般式の縦ドップラーを検証しました。

再確認になりますが、その一般式は次の形をしています。

f1=f0*(1-Vr*cos(Θ1))/(1-Vs*cos(Θ2))*sqrt(1-Vs^2)/sqrt(1-Vr^2) ・・・(1)式

ここでVrは静止系に対する観測者の相対速度(=固有速度)、Vsは静止系に対する光源の相対速度(=固有速度)を示します。

但しVr、Vsの方向はお互いが近づく方向をプラスに取ります。

f1は観測される周波数、f0は光源の周波数です。

角度についてはこれまでと同様の取り方になります。

Θ1=π、Θ2=0がお互いが近づく方向、Θ1=0、Θ2=πがお互いが離れる方向です。

但しこの時 Θ2=abs(Θ1-π) の関係が成立しています。それで

(1-Vr*cos(Θ1))/(1-Vs*cos(Θ2)) の項が古典的なドップラー効果を表す部分で

sqrt(1-Vs^2)/sqrt(1-Vr^2) の項が相対論的な効果(=時間遅れの効果)を表します。

さてこの式をみますれば

Vr=0、Vs≠0で通説の式(=光源が相対速度Vsで動く場合の式)

ν’=ν*sqrt(1-V^2)/(1-V*Cos(Θ1)) ・・・(2)式に 

そうしてまた 

Vr≠0、Vs=0でアインシュタインの式(=観測者が相対速度Vrで動く場合の式)

ν’=ν*(1-V*Cos(Θ2))/sqrt(1-V^2) ・・・(3)式になる

・・・という事も確認しました。

 

そうして又今度はVr≠0、Vs≠0の場合、つまりは「光源と観測者の両方が動く場合」を確認しました。

ただしここで相対速度Vについては

V=(b+a)/(1+b*a)

が成立しているものとします。

くわえてここではVr=a、Vs=bと置き換えています。

さらにΘ1=π、Θ2=0の場合を考えます。

つまり「光源と観測者がお互いに近づく方向」です。

これを確認すると驚くべき事に「固有速度を使って表された(1)式を縦ドップラーの条件で解きますと固有速度が消えて相対速度Vだけの式になる」のです。

しかもその「相対速度Vだけの式」は前もって確認されていた縦ドップラーを表す式、そのものになっていました。

---------------------------------

さてそれで、次はVr≠0、Vs≠0の場合、つまりは「光源と観測者の両方が動く場合」でなおかつ「横ドップラーシフトの場合」を確認しましょう。

上記に倣って相対速度Vについては

V=(b+a)/(1+b*a)

が成立しているものとします。

また同様にVr=a、Vs=bと置き換えます。

さらにΘ1=π/2、Θ2=π/2の場合を考えます。

つまり「光源と観測者が相対速度Vですれ違う、その瞬間の場合」です。

この時光源から出る光は光源の運動方向とは直角の方向に出て(但し観測者が運動している方向に出る)、そうしてまた運動している観測者もその運動方向に対して直交する方向からの光を検出するのです。

こうして平行線上をお互いが近づいて離れていく、光源と観測者が両方動きながらまさにすれ違う時に観測者が光源からの光を観測するとどうなるのか、と言うのが「横ドップラーシフトの一般解のテーマ」です。

 

そうすると(1)式は

f1=f0*(1-Vr*cos(Θ1))/(1-Vs*cos(Θ2))*sqrt(1-Vs^2)/sqrt(1-Vr^2)

=f0*(1)/(1)*sqrt(1-b^2)/sqrt(1-a^2)

=f0*sqrt(1-b^2)/sqrt(1-a^2) ・・・(4)式

となります。

ここで注目すべき部分は

sqrt(1-b^2)/sqrt(1-a^2)

です。

 

そうしてまた相対速度Vは

V=(b+a)/(1+b*a)

でした。

従って

b=(V-a)/(1-V*a)

となっています。

ここでV=0.5Cとします。

そうしますと

b=(0.5-a)/(1-0.5*a)

となります。

これを(4)式の注目すべき部分

sqrt(1-b^2)/sqrt(1-a^2)

に代入します。そうすると

sqrt(1-b^2)/sqrt(1-a^2)

=sqrt(1-((0.5-a)/(1-0.5*a))^2)/sqrt(1-a^2)

となります。

これをウルフラムでプロットして挙動を確認します。

ただしプロットの都合上aをxに置き換えています。

 

y=1.155,y=sqrt(1-((0.5-x)/(1-0.5*x))^2)/sqrt(1-x^2),y=100000(x-0.5),y=100000(x-0.2679),y=1,y=0.866 プロット 0.8<y<1.2 ,0<x<=0.55

実行アドレス

https://ja.wolframalpha.com/input?i=y%3D1.155%2Cy%3Dsqrt%281-%28%280.5-x%29%2F%281-0.5*x%29%29%5E2%29%2Fsqrt%281-x%5E2%29%2Cy%3D100000%28x-0.5%29%2Cy%3D100000%28x-0.2679%29%2Cy%3D1%2Cy%3D0.866%E3%80%80%E3%83%97%E3%83%AD%E3%83%83%E3%83%88%E3%80%800.8%3Cy%3C1.2+%2C0%3Cx%3C%3D0.55

横軸はaがゼロから0.5Cまで動く事を示しています。

もちろんこの時にはbは b=(0.5-a)/(1-0.5*a) を満足しています。(相対論的な速度の加算則を満たす。)

それはつまり

a=0.5の時はb=0

b=0.5の時はa=0

そうしてa=bの時は相対論的な速度の加算則に従って

a=b≒0.2679

となります。

この時にはグラフから分かりますように

sqrt(1-b^2)/sqrt(1-a^2)=1

つまりは「横ドップラーシフトは赤方偏移も青方偏移もせず、元の光の周波数を観測者は観測する」のです。

 

それに対してa<0.2679では徐々に赤方偏移を観測するようになります。

aは観測者側の固有速度を表していますから、a<0.2679ではb>0.2679となり

つまりは「観測者が静止方向であり、対して光源が運動する方向」となります。

そうしてその極限が b=0.5の時はa=0 でありこれは通説の式が表す状況となります。

その時には

sqrt(1-b^2)/sqrt(1-a^2)=0.866

となり、これは(2)式で計算した値と同じになります。

 

それに対してa>0.2679では徐々に青方偏移を観測するようになります。

後の議論は上記と同様に進み、a=0.5の時はb=0 でこれはアインシュタインの式の条件になります。

その時には

sqrt(1-b^2)/sqrt(1-a^2)=1.155

となり、これは(3)式で計算した値と同じになります。

以上、こうして(1)式は一般式として「光源と観測者の両方が動いている場合でも横ドップラーシフトを計算出来ている」という事が分かるのです。(注1

 

ちなみに以前に通説の式とアインシュタインの式を比較してプロットさせました。

その時の条件もV=0.5Cでした。

以下、それを再掲示しておきます。

 

『・・・そうしてこの例では相対速度VはV=0.5Cで計算します。

y=sqrt(1-0.5^2)/(1-0.5*cos(x)),y=(1+0.5*cos(x))/sqrt(1-0.5^2),y=1000000*(x-pi/2),y=1 プロット  0<x

実行アドレス

https://ja.wolframalpha.com/input?i=y%3Dsqrt%281-0.5%5E2%29%2F%281-0.5*cos%28x%29%29%2Cy%3D%281%2B0.5*cos%28x%29%29%2Fsqrt%281-0.5%5E2%29%2Cy%3D1000000*%28x-pi%2F2%29%2Cy%3D1%E3%80%80%E3%83%97%E3%83%AD%E3%83%83%E3%83%88++0%3Cx%3Cpi+%2C-0.1%3Cy%3C2

表示はΘが0からπまで、上のカーブがアインシュタインの式、下のカーブが通説の式になっています。

横線はいわゆるドップラー係数が1、つまり周波数が変化しない位置をしめしており、それより上は青方偏移を下は赤方偏移する事を示しています。

そうして横ドップラーの起きる場所はΘ=π/2≒1.57であり、その位置は縦棒が示していますがアインシュタイン条件、つまりは光源が静止していて観測者が動いている場合と通説の条件=観測者が静止していて光源が動いている場合のそれぞれのドップラー係数が読み取れます。

さてそうしますと横ドップラーシフトの観測ではアインシュタイン条件では青方偏移を観測し、通説条件では赤方偏移を観測する事になるのが確認できます。

ここでΘ=π/2の時のそれぞれの式の形を確認しておきます。

(1)式(π/2)=ν*sqrt(1-V^2)

(2)式(π/2)=ν/sqrt(1-V^2)

V=0.5を代入すると

(1)式(π/2,0.5)=ν*sqrt(1-V^2)≒0.866ν

(2)式(π/2,0.5)=ν/sqrt(1-V^2)≒1.155ν』

となっていました。

このグラフの横ドップラーの起きる場所はΘ=π/2≒1.57なのですがそこで通説のカーブとアインシュタインのカーブで挟まれた縦軸部分を横軸に置き換えてプロットしたのが今回提示したグラフとなっています。

 

注1:通説の式もアインシュタインの式も「光源と観測者のどちらか一方が必ず静止していなくてはならない」という前提で導出されています。

つまり「その2つの式は光源と観測者の両方が動いた場合の横ドップラーシフトは計算できない」のです。

 

追記:さてそうであれば「光源と観測者の相対速度V=0.5Cで横ドップラーシフトを観測出来た」のでれあば、その情報は sqrt(1-b^2)/sqrt(1-a^2) を表している事になります。

そうしてその値をRとするならば

sqrt(1-b^2)/sqrt(1-a^2)=R

V=(b+a)/(1+b*a)=0.5

からaとbの値が計算できる、つまりは多くの方々が「静止系は存在していたとしてもその位置は検出できない」と主張しているにも関わらず事実は「客観的に存在している静止系の位置が分かる」のです。

 

PS:相対論・ダークマターの事など 記事一覧

https://archive.md/6AjAy

 


その2-11・ドップラーシフトの一般式の検証の1

2023-09-18 03:15:06 | 日記

1、さてそれで、前のページではドップラー効果を表す一般式を示しました。

それでここではこの一般式の示す挙動を調べてみます。

f1=f0*(1-Vr*cos(Θ1))/(1-Vs*cos(Θ2))*sqrt(1-Vs^2)/sqrt(1-Vr^2) ・・・(1)式

ここでVrは静止系に対する観測者の相対速度(=固有速度)、Vsは静止系に対する光源の相対速度(=固有速度)を示します。

但しVr、Vsの方向はお互いが近づく方向をプラスに取ります。

f1は観測される周波数、f0は光源の周波数です。

角度についてはこれまでと同様の取り方になります。

Θ1=π、Θ2=0がお互いが近づく方向、Θ1=0、Θ2=πがお互いが離れる方向です。

但しこの時 Θ2=abs(Θ1-π) の関係が成立しています。それで

(1-Vr*cos(Θ1))/(1-Vs*cos(Θ2)) の項が古典的なドップラー効果を表す部分で

sqrt(1-Vs^2)/sqrt(1-Vr^2) の項が相対論的な効果(=時間遅れの効果)を表します。

さてこの式をみますれば

Vr=0、Vs≠0で通説の式(=光源が相対速度Vsで動く場合の式)

ν’=ν*sqrt(1-V^2)/(1-V*Cos(Θ1)) ・・・(2)式に 

そうしてまた 

Vr≠0、Vs=0でアインシュタインの式(=観測者が相対速度Vrで動く場合の式)

ν’=ν*(1-V*Cos(Θ2))/sqrt(1-V^2) ・・・(3)式になる

・・・という事までは確認しました。

 

そうしてこの2つの式((2)式と(3)式)はΘ1=π、Θ2=0では光源と観測者が近づく方向に動く場合であって、その場合はこの2つの式は縦ドップラーを表すのでした。

くわえてその時にはこの2つの式は最終的には

ν’=ν*sqrt(1+V)/sqrt(1-V)

となる事は「その2-5」で確認した事でもあります。

-------------------------------------

さてそれで今度はVr≠0、Vs≠0の場合、つまりは「光源と観測者の両方が動く場合」を確認して見ます。

ただしここで相対速度Vについては

V=(b+a)/(1+b*a)

が成立しているものとします。

くわえてここではVr=a、Vs=bと置き換えています。

さらにΘ1=π、Θ2=0の場合を考えます。

つまり「光源と観測者がお互いに近づく方向」です。

そうすると(1)式は

f1=f0*(1-Vr*cos(Θ1))/(1-Vs*cos(Θ2))*sqrt(1-Vs^2)/sqrt(1-Vr^2)

=f0*(1+a)/(1-b)*sqrt(1-b^2)/sqrt(1-a^2)

=f0*sqrt(1+a)/sqrt(1-b)*sqrt(1+b)/sqrt(1-a)

となります。

 

さてそれで

sqrt(1+a)/sqrt(1-b)*sqrt(1+b)/sqrt(1-a)

の部分に注目します。

そうしてまた相対速度Vを

V=(b+a)/(1+b*a)

としました。

従って

b=(V-a)/(1-V*a)

となっています。

それを注目している部分式のbに代入しますと

sqrt(1+a)/sqrt(1-b)*sqrt(1+b)/sqrt(1-a)

=sqrt(1+a)/sqrt(1-(V-a)/(1-V*a))*sqrt(1+(V-a)/(1-V*a))/sqrt(1-a)

ウルフラムを呼んで

https://ja.wolframalpha.com/input?i=sqrt%281%2Ba%29%2Fsqrt%281-%28V-a%29%2F%281-V*a%29%29%EF%BC%8Asqrt%281%2B%28V-a%29%2F%281-V*a%29%29%2Fsqrt%281-a%29

答えは「別の形」になります。

2番目の形が整理しやすいでしょう。

分子のルートの中の(a-1)の符号をかえて(1-a)にします。

同時に分母のルートの中の(V-1)の符号をかえて(1-V)にします。

この変更で式そのものの値は変わりません。

それでこの操作のあとで式の分子、分母をにらんで同じ項を消しますと残るのは

sqrt(1+V)/sqrt(1-V)

となります。

 

さてこれは光源と観測者がお互いに近づく場合の縦ドップラーの式になっています。

そうしてまたこれはVr≠0、Vs≠0の場合、つまりは「光源と観測者の両方が動く場合」ですので静止系に対する光源と観測者のそれぞれの固有速度がゼロではない値を持っている場合です。

それで通常はそのような場合は固有速度VrとVsの値は不明、つまり「静止系がどこにあるのかは不明」なのです。

しかしながらその2つの固有速度から計算される相対速度Vの値は観測可能です。

そうして驚くべき事に「固有速度を使って表された(1)式を縦ドップラーの条件で解きますと固有速度が消えて相対速度Vだけの式になる」のです。

しかもその「相対速度Vだけの式」は前もって確認されていた縦ドップラーを表す式、そのものになっています。

 

さてこれはつまり「固有速度を使って表された(1)式」というのは「確かに縦ドップラーを表す式になっている」という事を示しています。

しかもその「相対速度Vで表された縦ドップラーを表す式」は「客観的な静止系が存在し、それに対して光源と受信側が任意の固有速度をもって動いていても、光源と受信側の間の相対速度Vが同じであれば常に同じ縦ドップラーの値が観測される」という事を表しています。(注1)

さてそうであれば「(1)式こそがドップラー効果を表す一般式である」という事になるのです。(Q.E.D)

 

注1:これが「Ives と Stilwellの実験」がとてもうまくいった理由です。

加えて「静止系はどこにあっても構わないが、どこかに一つ『客観的に存在する静止系がある』」という事を「Ives と Stilwellの実験」と上記解析結果が示しています。

そうしてそれは又「確かに時間の遅れは実在している」という事も示しています。

 

PS:相対論・ダークマターの事など 記事一覧

https://archive.md/tXrzj

 


閑話休題・横ドップラーシフトの静止系は誰が決めるのか?

2023-09-15 02:04:01 | 日記

ういき:ドップラー効果: https://archive.md/MNLxG :の「光のドップラー効果」章によれば、

『ν’=ν*sqrt(1-V^2)/(1-V*Cos(Θ))

ここで、ν’:観測者が観測する振動数、ν  : 光源の出す光の振動数、V: 観測者から見た光源の速さ、但しここでは 光速を1とする単位系を採用、Θ  : 観測者から見た光源の動く方向(Θ  =0 :観測者に向かってくる場合)

重要なのは、光の場合には光源が観測者の視線方向に対して垂直に運動しており、視線方向の速度を持っていない場合(Θ  =90°)でも光の振動数が変化して見えることである。これを横ドップラー効果という。』

ここでΘ  =90°とすると諸式はCos(Θ)=0より

ν’=ν*sqrt(1-V^2)/(1-V*Cos(Θ))

=ν*sqrt(1-V^2)/(1-V*0)

=ν*sqrt(1-V^2)

となる。

 

さてここまでは何時もの話です。

そうしてこの式の導出の前提は「観測者が静止していて光源が動いている場合」というものです。

それはつまり「観測者は常に静止系にある」と前提している事になります。(注1)

そうしてこの式によれば「横ドップラー効果を測定すると常に赤方偏移が観測される」となります。

何故かと言えば「静止している観測者の時間に対して動いている光源の時間は常に遅れるから」であります。

そのために「観測者は常に赤方偏移を観測する」と主張しているのです。

さてそれで、ここで小話を一つ。

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”私”の部下である観測者Aがある時、横ドップラー効果を測定した。

そうしてその結果「ういきの式が示す通りの結果が得られた」と報告をしてきた。

そこで”私”は測定のやり直しを指示した。

なんとなれば「”私”と観測者Aは異なる慣性系に暮らしている」。

それでもちろん「上司である”私”こそが静止系である慣性系に住んでいる」のである。

そうして”私の部下”である観測者Aは大抵、私の暮らす慣性系の周りを相対速度V=0.5Cぐらいで時々方向を変えては飛び回っている。

そうであれば「静止系ではない観測者Aが暮らす慣性系で横ドップラーシフトを測定しても、ういきの式が示す通りの結果が得られるはずはない」のである。

従って”私”が「観測者Aが例によって実験をミスった」と判断した事は妥当である。

さてそれで「何故”私”の暮らす慣性系が静止系であると言えるのか」といえばもちろん「上司である”私”の方が部下である観測者Aよりも偉いから」である。

つまりは「上司権限によって静止系は”私が暮らす慣性系である”と決めた」のである。

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アインシュタイン、あるいはミンコフスキーによれば「すべての慣性系に立つ観測者は自分が立っている慣性系を静止系としてよい」という事になっています。

したがって「自分に対して相対速度Vを持つ相手の慣性系の時間はsqrt(1-V^2)の割合で常に遅れる」とされています。

それでこれが「時間の遅れはお互い様」論者が主張する根拠となっています。

 

そうであれば上記小話の観測者Aは「時間の遅れはお互い様」論に従って「自分の慣性系を静止系と見なし、それに対して運動している光源の時間は遅れる、したがって横ドップラーシフトを観測すればういきの式が示す結果が得られると予想し、実際、そのような観測結果を得た」のでした。

しかしながらその上司である”私”は「自分の住んでいる慣性系こそが優先されるべき静止系である」と信じており「自分以外の慣性系は静止系ではない」と主観的に判断しています。

そうではありますがその様な「上司の主観的な判断」に「横ドップラーシフトの測定結果が左右される事はなく」従って2回目の測定でも初回の測定と同じ結果が得られるのです。

さてでは何故、観測者Aの主観的な判断はその上司である”私の主観的な判断”よりも優先しているのでしょうか?

「観測という仕事」はその上司である”私の主観”を否定出来るほどの「権限がある仕事」なのでしょうか?

 

さてここでこの上司である”私”の主張は理不尽ではありましたが唯一見るべきは「この近傍エリアでは静止系となっている慣性系は一つしかない」という主張を含んでいる所にあります。

つまりは「横ドップラーの観測によってういきの式通りの結果が得られた」のであれば「観測者Aが暮らす慣性系が静止系である」という事になり、従って「”私”が暮らす慣性系は静止系ではない」という事になるのです。

 

他方で「時間のおくれはお互い様」論者の主張が正しければ「”私”が暮らす慣性系で横ドップラーシフトを測定してもういきの式が示す通りの結果が得られる」という事になります。

なんとなれば「時間のおくれはお互い様」論によれば「すべての慣性系に立つ観測者は自分が立っている慣性系を静止系としてよい」という事になっているからです。

さてもしそのように「”私”が暮らす慣性系で横ドップラーシフトを測定してもういきの式が示す通りの結果が得られた」とすると、ここで重大なパラドックスが発生します。

それはつまり「時間のおくれはお互い様」論者の主張が正しい、という事になりそれはつまり「すべての慣性系に立つ観測者は自分が立っている慣性系を静止系としてよい」が成立している、という事になるからです。

 

「ん、それのどこが問題か?」ですって。

最初に観測者Aが自分の慣性系で動いている光源の横ドップラーを測定し、それが赤方偏移している事を確認しました。

しかしながらこの時に「動いている光源」は「その速度で動いている慣性系を代表している」のです。

つまりは「動いている光源も一つの、観測者Aの慣性系とは独立の別の慣性系」なのです。

そうしてその「動いている光源も一つの慣性系」であれば「その慣性系は静止系である」となります。

何となれば「すべての慣性系に立つ観測者は自分が立っている慣性系を静止系としてよい」が成立しているからです。(動いている光源の横に立っている観測者にとっては、自分が立っている慣性系を静止系にしてよいのでした。時間の遅れはお互い様論はそういいます。)

従って「静止系にある光源の時間が遅れるハズはなくそうであれば赤方偏移は観測されない」という事になります。

 

さあそうなりますと「観測者Aがういきの式通りの観測結果を得た」ということは、「時間のおくれはお互い様」が成立していない、という事を表している事になります。

加えてその結果は「静止系は唯一の存在」であって「全ての慣性系が静止系となれるのではない」という事も示しています。

さらには「その静止系は観測者、あるいは”私”の主観的判断=自分が立っている慣性系こそが静止系である」とは無関係に独立して存在している、つまりは「静止系は客観的な存在である」という事もしめしています。

 

さて結論です。

横ドップラーシフトの静止系は誰が決めるのか?

それは人間の主観的判断が決めるのではありません。

宇宙それ自体がすでに決めているのです。

 

いや「観測者Aの主観的な判断で静止系を決めて実験したらういきの式通りの結果が得られた」のだろう?

そうであれば「観測者Aの主観的な判断が静止系を決めたのではないのか?」という声が聞こえます。

いえいえそうではありません。

静止系はすでにきまっていて、そこに存在していた。

それで横ドップラーシフトの測定の時にたまたま「観測者Aが立っていた慣性系の、静止系に対する相対速度が観測者Aが行った横ドップラーシフトの測定精度と比較して十分に小さかった」に過ぎないのです。

そのために「横ドップラー測定の測定精度範囲内で観測者Aが暮らす慣性系が静止系と見なせる」という実験結果が得られたという訳です。(注2)

 

注1:ういきの表現方法では「V: 観測者から見た光源の速さ」となっていてあたかも「観測者は静止系にある」という条件は無いように書いていますが、これは読者をミスリードするものです。

それは式の導出の前提となっている条件「観測者が静止していて、光源が動いている」を明示していないからです。

そうして実際はこのういきの式は「観測者が静止系ある場合にしか使えない式」なのです。

注2:横ドップラーシフトがういきの式の通りに観測された、という事が「特殊相対論がいう、時間の遅れの証明になっている」という主張は良く聞きます。

そうして歴史的な経緯もそうなっています。

しかしながらこの時に見落とされてきたのはもう一つの事実、それは「横ドップラーシフトの測定の精度範囲内では、地球は静止系と見なせる」という内容です。

なぜならば「実験室系で測定した光源の相対速度Vで観測データがういきの式の通りに説明出来る為には、実験室系=地球が静止系である事が必要であるから」です。

こうして「横ドップラーシフトの測定がういきの式の予測通りであった」という事は、同時にこの2つの事実、「特殊相対論の時間遅れは成立している」と「地球は(宇宙の中を動いているにもかかわらず)ほぼ静止系と見なせる」を証明している事になるのです。(追記の2)

 

追記:以上の話は「W横ドップラーテストを待たずに、単なる横ドップラーシフトで赤方偏移が確認された」という事実だけで「時間の遅れはお互い様」は否定され、「静止系は客観的な存在である」が立証されている事を示しています。

なんとなれば「赤方偏移が確認された」その時に同時に「移動している光源の横に立つ観測者」にとっては「光源の時間は遅れておらず」、「受光側観測者の時計が遅れている事を見出す」と主張するのが「時間の遅れはお互い様論者の主張であるから」です。

それでもしその主張が成立しているならば「赤方偏移は観測されず青方偏移が観測される事になる」のです。

しかしながら「実際は赤方偏移が観測された」のですから事実は「動いている光源の横に立つ観測者は受光側観測者の時計が光源側の時計よりも早く動いているのを見出す」のです。

というのも「動いている光源側の観測者が見たら、受光側で測定された赤方偏移のデータがその瞬間に青方偏移を示すデータに変わる」などという事は起こらないからです。

つまりは「動いているのはお前の方だ」という「相対論での何時ものクレームは横ドップラーシフトには通用しない」という事です。

そうしてそういう事をドップラーシフトの一般解は教えているのです。

さてそうなりますと「ドップラーシフトはローレンツ不変である」という事になります。

 

追記の2:「 Ives と Stilwellの実験方法によらない横方向ドップラー効果の直接測定」

「相対論的ドップラー効果」 : https://en.wikipedia.org/wiki/Relativistic_Doppler_effect :の「横方向ドップラー効果の直接測定」にまとめられています。

以下、そこからの引用となります。

『横方向ドップラー効果の直接測定
粒子加速器技術の出現により、アイブスとスティルウェルが利用できたものよりもかなり高いエネルギーの粒子ビームの生成が可能になりました。これにより、アインシュタインが最初に想定した方法に沿って、つまり粒子ビームを 90° の角度で直接観察することによって、横ドップラー効果のテストを設計することが可能になりました。

たとえば、ハッセルカンプら。(1979) は、 2.53×10^8  cm/s から 9.28×10^8 cm/sの範囲の速度で移動する水素原子によって放出されるH α 線を観察 し、相対論的近似における 2 次項の係数が 0.52±0.03 であることを発見しました。 理論値 1/2 と見事に一致しています。[10ページ]』

 

PS:相対論・ダークマターの事など 記事一覧

https://archive.md/vObrs