さてそれで本題はこれからになります。
といいますのも当方は「客観的な静止系は存在する」ものの「それは地球ではない」という立場を取りますので、そうなると「それじゃ地上で観測されている前のページの「実験的検証」の項にあげられている1~5までの事実をどのように説明できるのか?」という事になるのです。
ちなみにもし地球が静止系であったならば1~5の項目についての説明は「10-1・誤解されているローレンツ収縮」で示した方法でOKです。
しかしながら実際の状況は: https://archive.md/32DeU :で示した「黒座標=静止系」を地球上で実現するのは不可能なのです。
と言いますのもどうやら地球はCMBパターンで示される静止系に対して0.001C程度の速度でドリフトしているからですね。
しかしながら地上の実験に於いて、地上での観測結果では「相対速度Vで動いている物体はsqrt(1-V^2)の割合で短縮している」が成立している模様です。
さてこれは一体どうしたものでしょうか?
「全ての慣性系は平等である」論が復活するのでしょうか?
「客観的な静止系は存在する。それはCMBパターンで指定可能である。」は誤りなのでしょうか?
そういう事がここでのテーマとなります。(注1)
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
1、どちらか一方の慣性系が静止系である場合
アインシュタイン説明のイラスト: https://archive.md/7tQaB :によれば「相対速度V=0.6Cで離れつつある2つの慣性系でどちらか一方が静止系にあった場合はその静止系から相手の慣性系に置かれた棒の長さを測定すると0.8掛けで縮んでいる事がわかる」のでした。
この状況は「10-1・誤解されているローレンツ収縮」の1、で説明した「本来のローレンツ収縮がそこで起こっているからである」となります。
他方でその時に静止系ではないもう一方の運動している慣性系から静止系に置かれた棒の長さを観測するとこれもまた0.8掛けで縮んでいるのが分かるのですが、この場合の短縮が起こる理由は上記「10-1」の2、で示した様に「運動している方の慣性系の時計が0.8掛けで遅れている為」でした。
そうであればこれは本来は「ローレンツ短縮とは呼べないもの」なのですが、通説ではこの2つは区別されずに両方ともに「ローレンツ短縮」と現状では呼ばれています。
2、両方ともに静止系でない2つの慣性系の場合
慣性系①、②がX軸上を任意の方向にそれぞれ固有速度 a,b をもって離れていきます。
ここで固有速度とは「静止系に対するそれぞれの慣性系の相対速度」を言います。
ちなみに速度は何時もの様にC=1で規格化しておきます。
それでその場合に①から②を見た時の相対速度V12はこうなります。
V12=(b-a)/(1-b*a) ・・・(1)式
逆に②から①を見た時の相対速度は
V21=(a-b)/(1-a*b) ・・・(2)式
(1)式と(2)式は絶対値は同じで方向が真逆となります。
で、この状況は静止系の原点がX軸上のどこにあっても成立しています。
さてそれでアインシュタインのイラストに準じてV12=0.6Cとします。
そうであればとうぜん(1)式から b>a と想定している事になります。
つまりは「慣性系②が慣性系①より右側に在って、慣性系①から相対速度0.6Cで右側に離れていく状況である」と言っています。
それで問題なのは(1)式によって2つの慣性系の間の相対速度は0.6Cときまるのですがそれぞれの慣性系がもつ固有速度 a,b については「相対速度0.6Cを満たす固有速度 a,b には無限の組み合わせがある」という所にあります。
それで「その無限にある組み合わせを全部を調べるのはムリな話」ですのでまずは2つの慣性系の中間のどこかに静止系があった場合を考えます。
そのうえでまずは前提としてb=0.3Cとします。
そうすると(1)式から
0.6=(0.3-a)/(1-0.3*a) ・・・(3)式
が成立している事になります。
手計算して答えは
a=-15/41≒-0.365853・・・
これを(3)式に代入して検算します
(0.3+15/41)/(1+0.3*15/41)=0.6 になっているか?
https://ja.wolframalpha.com/input?i=%280.3%2B15%2F41%29%2F%281%2B0.3*15%2F41%29
はい、答えが0.6になってましたのでOKです。
a=-15/41 つまりは慣性系①は左方向に0.365853・・・Cで動いていて、慣性系②は右方向に0.3Cで動いている。
その時に静止系は慣性系①と②の間にある、と言う状況です。
さてその時に「慣性系①から観測した場合、慣性系②に置かれた長さ5の棒の長さはどのように観測されるのでしょうか?」という事になります。
この問題の解き方は次のようになります。
まずは慣性系②に置かれた棒に注目します。
この棒は静止系からみると右方向に相対速度0.3Cで走っています。
そうであれば本来のローレンツ短縮効果によってその棒の長さは
sqrt(1-0.3^2) の割合で収縮している事になります。
次に慣性系①を考えます。
この慣性系は静止系に対して相対速度15/41Cで左方向に走っています。
従ってこの慣性系①の時間は
sqrt(1-15/41^2) の割合で遅れているのです。
さて「時間が遅れた慣性系から相手の慣性系を見ると時間が遅れた分だけ相手の慣性系の空間の長さが短縮して観測される」のでした。(注2)
そうであれば「慣性系①から慣性系②を観測すると慣性系②のX軸方向長さは縮んで観測される」のです。
そうしてその割合は sqrt(1-15/41^2) です。
あとはこの2つの短縮効果を合成すればそれが答えになります。
で、ここで単純にこの2つのローレンツ因子の積をとれば良いのか、と言いますとそうはならないのです。
「ローレンツ因子の掛け算を行う時にはローレンツ因子の合成則を使う」と言うのがルールだからですね。
この辺りの状況は「時間の遅れ合成則」でみた時と同じです。
「時間の遅れ合成則」では使っている速度の加法則が
V=(a+b)/(1+a*b) という形をしていました。
この場合は2つのローレンツ因子の積を取る時には、修正係数としてその積の値に
1/(1+a*b) という値を掛ける必要がありました。
そうであればこの場合は
sqrt(1-V^2)=sqrt(1-a^2)*sqrt(1-b^2)/(1+a*b) となります。
それに対してローレンツ短縮で使う合成則は「もう一つの時間遅れの合成則」: https://archive.md/1H9XP :で導出しておいたものになります。
なんとなればこの場合に使っている相対論的な速度の合成則から出てくるのがこの「ローレンツ短縮の合成則」であるからです。
つまりは今回の速度の加法則は
V=(b-a)/(1-b*a) という形になっています。
この場合は2つのローレンツ因子の積を取る時には、修正係数としてその積の値に
1/(1-b*a) という値を掛けるのでした。
そうであればこの場合は
sqrt(1-V^2)=sqrt(1-b^2)*sqrt(1-a^2)/(1-a*b) ・・・(4)式
となります。
さてその合成則を使いますと「慣性系①から慣性系②を観測すると慣性系②のX軸方向長さは縮んで観測される」、その割合は
sqrt(1-0.3^2)*sqrt(1-(15/41)^2)/(1-0.3*(-15/41)) ・・・(5)式
となります。
ウルフラムを呼んで
答えは 0.8
そうして慣性系①から慣性系②を見た時の相対速度は0.6Cでした。
そうであれば sqrt(1-0.6^2)=0.8 となっています。
つまりは「単に相対速度V12=0.6C」と言う値を使ってローレンツ因子を計算すればその値が驚くべき事に「慣性系①から慣性系②を観測した場合に観測される短縮割合を示している」という事になっているのです。
そうであれば「何故単に2つの慣性系の間の相対速度V12を使ってsqrt(1-V12^2)の値を計算すればそれが慣性系①から慣性系②を見た時に起きている短縮の程度を示すことができているのか」という答えがここにあるのです。
つまりは「観測対象になっている相手の慣性系に発生している本来のローレンツ短縮効果」と「観測している自分の慣性系に発生している時間遅れによる相手の空間の短縮効果」を合成するとそれが常に「2つの慣性系の間の相対速度Vを使って計算したローレンツ因子sqrt(1-V^2)の値に等しくなる」のです。
さらに慣性系②から慣性系①を観測した場合にも最終的に合成式は(5)式と同じになることは明らかです。
というのも今度は時間が遅れる効果が発生するのは慣性系②ですが、その時間遅れ効果によって慣性系①の空間短縮が起こりその値は sqrt(1-0.3^2) となります。
つぎに観測対象となっている慣性系①に発生する本来のローレンツ短縮分は sqrt(1-15/41^2) です。
そうして上記と同様にこの2つの短縮効果を合成するのですがその結果は
sqrt(1-0.3^2)*sqrt(1-(15/41)^2)/(1-0.3*(-15/41)) ・・・(6)式
となり、この式は全く(5)式と同じものになっています。
そうであれば「慣性系①から慣性系②を観測した場合に観測される短縮割合」と「慣性系②から慣性系①を観測した場合に観測される短縮割合」は常に等しくなるのです。
これがローレンツ短縮の秘密であって従って2つの慣性系の間では「相手の慣性系の棒が常に短く見え」そうしてまた「その短縮割合は同じになる」のです。
しかしながらその現象は本来のローレンツ短縮のみでは説明できず、「観測している自分の慣性系に発生している時間遅れによる相手の慣性系に発生する空間短縮の効果」をそこに合成する事でようやく理解できる事なのでありました。
注1:まあもっとも「静止系からのずれ量が0.001C程度だから地球はほぼ静止系として扱ってよい」という立場も取れない事は無いのですが、たぶんそれではファインマンは許してくれないと思われます。
注2:当然、観測している相手の棒の長さは動いている棒の背景になっている空間が収縮して見えるのと同じ割合で収縮して見える事になります。
追記:(4)式はそのままで2つの慣性系のうちどちらかが静止系である場合にも成立している事に注意が必要です。
たとえば慣性系①が静止系であった場合は a=0 となります。従って(4)式は
sqrt(1-V^2)=sqrt(1-b^2)*sqrt(1-a^2)/(1-a*b)
=sqrt(1-b^2)*sqrt(1-0^2)/(1-0*b)
=sqrt(1-b^2)
となります。
そうであればこの(4)式は本文1、で示した「どちらか一方の慣性系が静止系である場合」も表現できている事になります。
この理由をもって(4)式は「ローレンツ短縮の一般式である」と言う事ができるのです。
そうしてまたこの状況はローレンツ短縮を説明する為に通説が行っている様な「観測者は自分を常に静止系であるとしなくてはならない=静止系を決めるのは観測者の主観である」という様な「不可解な立場を不要にするもの」であります。
あるいはもっと平たく言えば「客観的な静止系が存在してもローレンツ短縮は困らない」となります。
追記の2:「ローレンツ収縮の一般式」によれば「宇宙空間で亜光速ですれ違う2台の宇宙船はそれぞれの船が同じ割合で短縮しているのを観測します。」
但しその場合に相手の宇宙船が走っている宇宙空間の短縮程度は自分の船がどれだけの相対速度で静止系に対して≒宇宙空間に対して走っているかによって異なってきます。
そうであれば「自分の船の速度は自分のまわりの宇宙空間の短縮程度を観測する事で分かる」のです。
さてそのようにして「2つの船はそれぞれが宇宙空間に対して異なる速度で走っている」にもかかわらず「お互いの船を見た時に相手の船に観測される短縮割合は2つの船の間で同じになる」のでした。
・・・おっと大変な事に気が付いてしまいました。
宇宙船地球号が静止系に対して0.6Cで動いていたとしたら、これはつまり「銀河系全体が静止系に対して0.6Cで動いている、ということです」が「その場合はほかの渦巻き銀河を地球から観測した場合はその銀河の形状は円形にはならず円形を押しつぶした様な形に見える」ということです。
そうしてその偏平率から銀河系が静止系に対してどれほどの速度で動いているのかが計算できるのです。
・・・ということは、「遠方の渦巻き銀河が円形に見える程度の速度でしか天の川銀河系は静止系に対しては動いていない」という事になります。
ちなみに「月の偏平度を観測しても銀河系の静止系に対する固有速度はわからない」という事は自明のことであります。
追記の3:通常は相手の慣性系との間の相対速度Vを使って計算した値sqrt(1-V^2)は相手の慣性系のローレンツ短縮を表します。
そうして「自分の慣性系が客観的に存在する静止系と一致している、という特別な状況にある時のみ」、「sqrt(1-V^2)の値は相手の慣性系の時間の遅れ割合も表す」のです。
そうであれば「時間の遅れは一方的である(=お互い様ではない)」にもかかわらず「相手の船の長さが短縮して観測される割合は常にお互い様になっている」という所に「この宇宙のなんともいえない巧妙さを当方は感じる」のであります。
さてファインマンは「ローレンツ短縮を用いて2本の平行電線に電流を流した時に生じている、電線が引きあう力を磁気力ではなくてクーロン力を用いて説明」しました。
このファインマンの説明はローレンツ短縮を用いているのですが「静止系が客観的な存在」であっても従来通りのローレンツ短縮の解釈の仕方が成立している為、その説明方法は何の影響も受けずにそのまま成立しています。
そうであれば「ファインマンは静止系が客観的な存在であった」としても「特に困る事はないのでは?」というのは当方の個人的な感想であります。
-------------------------------ー