通常はローレンツ因子はγと書いて
γ=1/sqrt(1-V^2) で sqrt(1-V^2) に関係つけられています。
しかしながらこのシリーズでは sqrt(1-V^2) の事を指して「ローレンツ因子」と呼んでいますのでご注意願います。(注1)
さてそれでこの「ローレンツ因子の合成則」なのですがもともとはローレンツ変換が元になっています。
でそこから「速度の合成則が出てくる」のでした。
そのあたりの話は: https://archive.md/jydqn :(おにノート)を参照願います。
そうしてそこで示されている様に「速度の合成則には2通りの表現方法がる」=「同じ内容なのですが2つの式が出てくる」のでした。
(おにノート)によれば通常良く使われる式は
V=(V1+V2)/(1+V1*V2) ・・・(1)式
でもう一つの式は
V2=(V-V1)/(1-V*V1) ・・・(2)式
となっています。
さてそれでこの2つの式から今度は2つの「ローレンツ因子の合成則」が出てきます。
まず(1)式からは
sqrt(1-V^2)=SQRT(1-((V1+V2)/(1+V1*V2))^2)
=sqrt(1-V1^2)*sqrt(1-V2^2)/(1+V1*V2) ・・・(3)式
という(3)式が出てきます。
同様にして(2)式からは
sqrt(1-V2^2)=sqrt(1-((V-V1)/(1-V*V1))^2)
=sqrt(1-V^2)*sqrt(1-V1^2)/(1-V*V1) ・・・(4)式
と(4)式が出てきます。
ちなみに(1)式から(3)式を導出する事、(2)式から(4)式を導出する事はウルフラムの「式を簡約する機能」を使う事で確かめる事ができます。(注2)
さてそれで(3)式はいままで「時間遅れの合成則」と呼んでいたものであって、それは「ローレンツ因子の合成則=2つのローレンツ因子の掛け算則の内の一つ」でした。
それに対して(4)式は「2つのローレンツ因子の掛け算則のもう一つ」なのですがそれは「時間遅れの計算に使う」と言うよりは「ローレンツ短縮の計算に使うのに都合が良い」のです。
さてそうであれば(4)式は「ローレンツ短縮の合成則」と呼ばれる事になります。(注3)
そうしてなぜこの(4)式が「ローレンツ短縮の合成則と呼ぶのにふさわしいのか」についてはこの後に続く「誤解されているローレンツ収縮・1~3」において明らかにされます。
注1:sqrt(1-V^2)については妥当な呼び方が無いのでγと重複しますがローレンツ因子と呼ぶ事にしました。
注2:(2)式から(4)式を導出する手順については前のページを確認願います。
注3:(4)式を「ローレンツ短縮の合成則」と命名した、という事です。
それは(3)式を「時間遅れの合成則」と命名したのと同じ成り行きです。
そうしてこの2つの合成則については今まではこのシリーズで取り上げた様な説明はなされていなかったと見ています。
特に(3)式は知られてはいましたが、「それが何を意味しているのか」は論じられてきてはいませんでした。
さらには(4)式に至ってはその式を導出した例を当方は知らないのです。
さてでは何故(3)式は知られていたにも関わらず「時間遅れの合成則として(3)式についての議論がなされていなかったのか?」と言いますれば「静止系は客観的に存在する(かもしれない)という想定がなされなかった為である」と言えます。
それほどにアインシュタインの「全ての慣性系は平等である」という宣言は影響力が大きかったのであります。
まあもっとも「CMBパターンが観測され、そのパターンに対して地球がドリフトしている」という事が分かったのは1992年でありますから、それまではこのアインシュタイン宣言を疑う、という事はほぼありえない事であったかとお思われます。
ちなみに『COBE(Cosmic Background Explorer)は1989年11月18日にNASAによって打ち上げられ、そのレポートは1990年代初頭に発表されましたが、最終的な結果がまとめられたレポートは、1992年に公開された』とGPT3.5は言ってます。
: https://tenkyo.net/kaiho/pdf/2004_01/2004_01_5.pdf :2004年の報告を読むとCOBEレポートによって『CMB静止系』あるいは『CMBによって宇宙の「絶対静止系」と言うようなものが定義できる事は興味深い。』というような記述がでてきます。(5~6ページあたりです。)
そう言う訳で1992年以降は「アインシュタインはああ言っているが、ほんとうだろうか?」と疑問をもつ事が可能になったのでした。
ちなみに1955年に亡くなったアインシュタインがCOBEレポートを読む事は無かったのでした。
しかしながらもしアインシュタインが1992年のCOBEレポートを読んだら「一体それをどのように理解したであろうか?」と推測する事は興味深いものがあります。
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