はやしんばんぱくの、めげてめけめけ、言論の不自由ブログ

全国各地へ飛び回り、めげてめけめけめげまくり、色々書いていましたが、ブログ終わりました。過去を読めばいい!サラバじゃ~!

『らーめん放浪記』麺51 本目。

2009年11月07日 19時07分58秒 | 連載書き物シリーズ
『らーめん放浪記』

〈2-(28)・スペースタコワールド〉


真夜中の遊園地に甲冑の軋む鈍い音が響く。

“ガッチョンッ!ガッチョンッ!
ガッチョンッ!ガッチョンッ!”

静止した無人の遊園地は死体の様だ。
まるで機能を成さない。
所々で点滅するランプは猛獣の眼。
来るハズの無い獲物をいつでも狙っている。

園内に生い茂る木々がほんのり色づき始めていた。
妖艶な桜の群れだ。
闇の黒を押し退けようと広がる桜の桃色は
夜の遊園地に根を伸ばし
華やかな宴の到来を
今か今かと待ち構えているようだった。

季節は春手前。
肌寒い。
全裸で震え甲冑に怯える『鳩山 豆郎』は身動きすらとれなかった。

“ガッチョンッ!ガッチョンッ!”

程なくして漆の香りで目覚めた鳩山
覚醒しながら必死で今自分の置かれている状況把握を試みるも
全く意味が分からない。
これは一体どういう事だ?
まず、今何故外にいる?
ついさっきまでホテルの部屋で気持ちよく眠っていたのに何故外?
そして何故“武将”にかかえられている?
かかえている“武将”は何故走っている?
こりゃ何だ?この状況は?どういう事だ?
“誘拐”!“拉致”!
自分はどこかへ連れて行かれようとしているのか!?
知らず知らずどこかに強か打ちつけたのか
それとも何者かにぶん殴られたのか
頭がジンジンと痛い。
痛い頭で考える。
えっと、うんと…
おいおいちょっと待て。
そもそも何故この“武将”は自分をさらう?
というかこの“武将”何?
何者?
冷静に考えずとも“化けもの”だ!
こいつは“武将の甲冑の化け物”だ!

「うわぁ~~~っ!!!
たたた助けて~~~っ!!!」

突然の緊張状態から全身を硬直させて鳩山は叫んだ。
そう、情けない声で。
痙攣で筋肉がピクピク言う。
離せ!離せったらぁ!と叫べども実際には
「はらへ!はらへったらぁ!」
とまるで空腹を訴えるかの様なてんで違う意味の言葉に刷り代わり
間抜けな声はヘロヘロ夜空にこだました。
嗚呼無情。
想いと現実がちぐはぐ。
上手く行かずにそのうち鳩山は“駄々っ子”となり
激しく手足をバタつかせて“甲冑”を苦しめた。

「はらへったらぁ!
いやら!いやら!こわいのいやらったらぁ!」

子供だ。
暴れる巨大魚を抱える漁師さながらな甲冑。
自由が利かず、もうなんちゅ~かこの“全裸男”を抱えているのが面倒になり
「嫌なのはこっちじゃボケッ!
ぎゃはっ!」
キキーッ!と甲冑走りを止めて急ブレーキ。
で、いきなり鳩山を地面に捨てた。

“ズドンッ!”

「フグッ!」
尻餅つく鳩山。
「はぁはぁ…
重っ!暴れっし!もうマジ限界!」
お尻を打ちつけて恐怖の感情が痛さに支配された鳩山は
身体を摩りつつフッと思う。
痛い!あれ?痛いよりも何だこれ…。
ムズムズと…痒い!?
お尻を摩るつもりが
あれ?自然に腕が身体をかきむしっている?
「か…痒い、痒い痒い痒い!」
“漆”か!?甲冑の“漆”のせいか!?
いや違う!
こ、この種の痒みは!
“良く知った”痒み!
「ぎゃはっ!ダーリンッ!」
「ひぃ~~~っ!!!」
まさかっ!ええっ!?
うそっ!?マジ!?何で!?そんな!?

“ガチョン!ガチョン!”

来る!こっちに来る!
“痒みの元凶”が両手を広げてこちらに向かって来る!
何だ!何だこれは!
明らかに自分をハグろうとしている!
もし今の自分の直感が正解なのだとすれば
こいつはどう見ても甲冑だが、中身は怪獣だ!
“白いカラスの怪獣”だ!
あ~わわわ~~~…
嫌な予感がする、嫌な臭いがする…。
あぁ…痒い…
身体が…痒いぃ~…!
何を思ったか甲冑、広げた両腕で自らの頭をむんずと掴みおもいきり兜を脱いだ!

“カッポーン”

「ぎゃはっ!脱げた!」
「!!?」
「ダーリン!スミレちゃんだぞっ!」
中から現るは『白烏』!
「やっぱりっ!!!」
「ダ~リ~ンーーーッ!」
ガシーンと鳩山を抱きしめブッチューと接吻!
「ひぃーーーっ!
オバケ!妖怪!怪獣!オカマッ!ごめんなさ~いっ!」
鳩山拒否!
「カイカイカイカイカイカイカイカイ!」
身体中をかきむしりながら接吻箇所を必死で拭っている。
「…ちょっと!
久々に会ってなにその態度!
チョー気に入らない!みたいなっ!」
「ごめんなさい!ごめんなさい!カイカイカイ…」
白烏は身体中をかきむしる鳩山を半ば哀れみの眼で見つめていた。

ひと度視線を少しずらすと様々なアトラクションが目に飛び込んできた。
目の前には“タコツボ”みたいな形の巨大なコーヒーカップがある。
“タコーヒーカップ”とペイントされているから
こりゃ乗り物“コーヒーカップ”なのだろう。
全く可愛くない!
がむしゃらに走り
リゾート施設から随分と遠くまで来たようだ。
こんな“格好”で
こんな“重い物”を持って。
再び視線を鳩山へ移す。
「ごめんなさい!カイカイ!
ごめんなさい!カイカイ!」
まだ謝り掻いている。
男のクセに情けない。
情けないが愛しちゃったんだもん仕方ない。
鳩山の仕草ひとつひとつが“乙女”の“母性本能”をくすぐるのだ。
白烏、ため息の後言葉を続けた。

「ダーリン何でこんなトコにいるのよ!?
そっちも過剰に驚いてるみたいだけど
こっちの方がビックリしたんだから!
ちょー意味不明みたいなっ!?」
「ごごごめんなさいぃ!源さん(犬山)が行けって言うから」
「ぎゃはっ!出た!イヌの言いなり!忠実なハト!
弱っ!ダーリン自分の意思無し!みたいなっ!
ま、そんなドM的なトコがダーリンの魅力なんだけどね!みたいな!
で、何ここ?」
タコーヒーカップを指差し首を傾げる白烏。
「遊園地ですごめんなさいぃ!」
「ぎゃはっ!
何で謝んのよ!
あのさ遊園地は分かるんだけどさ。
何の遊園地よここ?
変なタコばぁ~っかり!
ぎゃはっ!
んでさっきのあの部屋の奴ら
何で皆全裸?
そうそう!
ダーリンもほら全裸だし!
げへへ。
ジュルル…食べちゃうゾッ!」
「!!!」
鳩山慌てて片手で股間を隠し守り
「NO!NO!
ごごごめんなさぁいっ!
許してカイカイカイ!」
謝りつつもう片方の手で身体をかきむしる。
「ぎゃはっ!ウケる!」
「あぁカイカイカイ…」
「で、ここ何よ!」
「ス、スペースタコワールドです!
『タコインターナショナルKK』が経営するタコ遊園地リゾートです!
カイカイ!ごめんなさい!」
「ウケる。
裸は何の集まりよ?
新興宗教?変態の集い?裸族?
何故かワンちゃん(犬山)や猫顔の屋台兄ちゃんが絡んでるっぽいけど。
あっ!そうそう!
っちゅうかそもそもワンちゃん何よあれ!?
あんたの上司、非常におかしな事になってんですけど!
何で九州にいてラーメン屋で働いててダーリンにスパイ命令なんてしちゃってんのよ!
ちょー意味不明なんですけど!」
「ごめんなさいカイカイ…
僕もよくは知らないんだけどカイカイ…
源さんに関してはその…
なんとも複雑で訳分からずでカイカイ…
『らーめん放浪記』っちゅう小説がノンフィクションで…
えっと…カイカイ…
全てに関して何からどう説明したら良いやらカイカイ…
まずここは宗教とかじゃなくてカイカイ…
なんつぅかそのタコっちゅうかあの…
イカイカ…
カイカイカイ…」
「ぎゃはっ!ちょー意味不明。
まぁ良いわ。
ダーリン説明下手だし。
どうせそのうち分かるし。
良い良い」
「ごごごめんなさいぃカイカイ…」

今は一体何時くらいなのだろう。
丑三つ時だろうか。
じき夜が明ける?
そんな頃合いか。

「あのぉ…そろそろホテルに戻っても良いですか?
カイカイ…」
白烏はタコーヒーカップに腰を下ろしながら訝しげにしかめっ面。
「はぁ!?
何でよ!ダーリン馬鹿じゃないの!?
得体の知れぬ集いから助け出してあげたってのに
何ウケる事言ってんのよ!
ダーリン連れ出せってワンちゃんや猫君からも頼まれてたし
感謝してもらいたいくらいだっちゅうの!」
「いや、あのぅ
白烏さんがここにいる理由の方が僕からしたらかなり謎めいてる気がしますが
カイカイっすよカイカイ…
とりあえず今はそれよりセミナーが取り込んでおりまして
カイカイ…」
「はぁ?
ダーリン何かウケる事言おうとしてる?」
「いやカイカイ…ウケるかウケぬか言われたら
つまりはセミナーウケてる訳ですがカイカイ…
このセミナーの素晴らしい事!
自己を知る事で他己を知る!
己のタコツボをぶち破り!
ぬめり気をもってタコ達共に吸い付き吸収しあおうタコ他己の輪!
もう少しなんです!
あと2日でこの僕も立派な他己になれるんです!」
オドオドしていた鳩山が
いきなり解き放たれたかの様に流暢に話しだしたではないか。
「こうしちゃいられないのです!
今日に備えてパワーを充電しなければ!
タコのルールは絶対!
裏切りは禁物!
急がねば!急がねば!
ぽぽぽぽぽぽっ!」
呆気に取られる白烏
ついには鳩山歌い出す始末。
両手を広げ身体を左右に揺らし
歌声喫茶さながら愉快に歌う鳩山。
一緒におちんちんも左右にぷるぷる揺れる。
「♪We Are The ミート
We Are The チルドで
We Are The ボーン
今日の良き日に 良き人の為に
あちこちチョイスされ
新たに生まれ変わる
それが我々の理想郷♪
どうですか!
あなたもタコになりませんか!」

「ぎゃっはっ!」

「んっ!!!?」
鳩山の顔面が真っ赤に染まった!
目玉ひんむき身体をヒクヒク痙攣させている。
ひんむいた目玉を下へ向けた。
目線の先では
有らんことか白烏の手が自分の股間をむんずと掴み
思い切りゴリゴリと握り潰しているではないか!
「ウッ!ケッ!るっ!」
「んんん!?…ぐっ!」
白烏握力が増してゆく。
「結局宗教じゃねーかっアホンダラッ!」
「んごっ!…めん…な…さ」
今にも鳩山の“金の魂”が
プライド諸とも潰れそうだ。
「あたしはね
生憎あたししか信じてないのよ!
ふんぐっ!」

“ゴリッ”

胡桃が割れるよな鈍い音がした。
「ギャーーーッ!」
股間を押さえ叫びのたうち回る鳩山を巨大タコーヒーカップに押し倒し
白烏は全身で怒鳴った。
「おい!
あんたの神はあたしじゃなかったのかよ!
あんたにとっての教祖は死ぬまであたしオンリーのハズだろうが!」
「ひぃ!ひぃ!ごごごごごめんなさぁいぃぃぃ!」
鼻水やらよだれやらダッラダラ流して泣き叫ぶ鳩山を抱きしめ
甲冑のオカマは思い切り全裸の男に覆い被さった。
「ウケない浮気はしないでよダーリン!
ねえ!浮気はしないでよ!」
「はぃうっ!」
真っ赤な顔面が真っ青に変わる!
どうやら夕飯の“フグ”がここに来て猛威を奮いだしたようた!
「めっちゃ好っきやねんっ!ダーリンッ!
めっちゃ好っきやねん!」
それどころではない!
フグ…当たった!
あぁ死ぬ!
色んな意味死んじゃうよーっ!
鳩山は心で絶叫していた。

さぁまさにこれから
可笑しな肉弾戦が始まろうとしていたその瞬間!
四方八方突如としてライトが
“カッ!カッ!カッ!カッ!”
と灯り
2人を乗せたタコーヒーカップがグルグルと回転を始めたではないか!
「え!?何これ動き出したみたいな!?」
「ふぐっ!ごめんなさい!」
スピーカーからは
喜歌劇『天国と地獄』序曲がまるで運動会の様に忙しなく流れ出した!
コーヒーカップの回転数が増す毎に
曲もまた狂ったアナログ盤の様に回転数が増してゆく。
グルグルグルグル…
音はコミカルに
まるで全てを嘲笑うかのように。
つられて鳩山の痛みも痒みも増してゆきもうグチャグチャだ。
「カイカイカイカイイタイイタイ!
カイカイイタイシヌー!シヌー!」
「ダーリンうるさい!
何これ意味分かんない!
はっ!
目が…回る?
げはっ!
気持ち悪ぅ~っ!」

途端!

回転しながら動き回るタコーヒーカップが床から分離!
“シャーーーッ”と滑りだした!
「!?」
そして!
ボード盤野球ゲームのフォークさながら
床の一部に穴が開き
2人はカップごと回転しながら底無しの穴に落ちて行ってしまったのだ!

「ぎゃひゃ~!」
「ごめんなさい~!」

闇に包まれた。





見たか見ぬか分からぬ夢から醒めた白烏は
薄明かり漏れる部屋の中
“焼豚”のように縄で縛られ天井付近から吊るされていた。

理解出来ない。
状況が掴めない。

隣にはやはり同様に吊し上げにあう全裸の鳩山が見える。
全身真っ青で動かない。
気を失っているようだ。
全裸で縛られSMプレイか!
何となく突っ込んでみる。
全裸…
はっ!
もしや自分も裸に!?
目玉を身体に向ける。
甲冑は“剥ぎ取られていた”ものの
元々の“ボディコンスーツ”はそのまま健在。
辱しめは受けずに済んでいるようだ。
良かった!
だって“レディ”ですもの!
「ぎゃはっ!」
っと笑おうとしたが無理なようだ。
口にサルグツワをくわえさせられている。
一体誰に
いつの間にこんな状態にされたのだろう。

薄暗さに目も慣れてきた。
冷静さを若干取り戻しつつ
周りの様子を観察しだす。

周囲には他にも数人同じ状況にさらされた人間がいるようだ。
天井から垂れた数本の縄と吊られた塊はまるで蜘蛛の様。
隙間から漏れた一筋の光もまた蜘蛛の糸に見える。
白烏はそんな“明かり糸”にすがるよう目を凝らしていた。
数匹の蜘蛛。
大人しい者もいれば
騒がしい者もいる。
もがいた反動でゆらゆらと揺れ
隣にぶつかり弾かれて
アメリカクラッカー状態の者もいる。
全てをひっくるめ一種異様な光景だ。

何がどうしてどうなってこうなっちゃっているのか白烏にはサッパリである。
遊園地にて自分らが乗った巨大タコーヒーカップが
それより巨大な穴に落下したって所までは覚えている。
勝手に動き出し勝手に回転して勝手に落ちたのだ。
しかしそこから先の記憶がまるで無い。
あちこち痛いしオツムが朦朧とする。
やっぱり理解に苦しむ状況だ。

何やら隙間の向こう側が騒がしいご様子。
♪ゴォ~~~ン!♪
遠くから?近くから?
銅鑼の音と
~~~~~~~♪
愉快な音楽が聞こえる?
「ニーハオッ!諸君!」
あれ?
幻聴なのか?
何故かワンちゃんの声まで聞こえてきた。
知りたい!
知りたいよ!
ここはどこ?
「ぎゃ…はっ…
あたしの今置かれている状況って…何…?」
そんな吐き捨てるような白烏のモゴモゴ呟きをかき消すように叫び声が!
「ギャーーーーーーーーーーーーーーーーッ!」
ぎゃはっ!
ど、どした?どした!?
眼を見開いたところで何も状況は変わらない…。
そりゃそうか
声は隙間の向こう側からだもんな。
「…あお…はる…さん……」
向こう側がザワザワ騒がしい。
「ん?何じゃ?
青春さんは美味しいぞ!
それ!」
あれあれ?
またワンちゃんの声。
“ドポーーーン”
「もう、爺さん大人しくしてろよぉ!」
はっ!
今度は猫君?
「ガッハハハハハ!」
“ニャーーーッ”
こりゃあの屋台の猫だ!

ぎゃはっ!
混乱してきた!
把握出来ない!
脳味噌痛い!
こりゃややこしいぞぅ!

「さぁ皆さん!
身震いするよな絶妙な良い香りがしてまいりました!
本日は特別に!
らーめん屋台『黒猫』さんをお呼びいたしまして!
タコタコらーめんシェフのお2人に!
存分に腕を奮っていただきたく思っております!」
興奮気味なおっさんがマイクで喋ってる?
“向こう側”は異様な盛り上がりをみせているようだ。
「ニーハオッ!ニーハオッ!
今日はね、良い材料が“数体”入ってるアルよ!」
またまたワンちゃん!
材料?
「みんなにも見せたいからね
見た上で存分舌で味わってもらいたいからね
ここに持って来たアル!
お披露目するネ!
これアルよっ!」

♪ゴォ~~~ン!♪
とまた銅鑼の音!

“シャーーーッ!”
『犬山』と『猫田』の背後に垂れた分厚いカーテンが一気に開かれた!

と同時に白烏の瞳に多量の光の糸が束になって飛び込んだ!
「うっ!」
まぶしい!
真っ白だ!
糸は絡みあいながら
脳の中枢に突き刺さる!

何じゃこりゃ~っ!!!

全てが鮮明に見えた!
しかしそれは
まるで複雑な蜘蛛の巣模様を紐解くように
白烏にとってより一層の混乱を招いていた!

そして
会場側は騒然と化した!
セミナー受講者の目の前に縄でグルグル巻きにされ吊し上げられた
数体の人間が現れたからだ!

これが
これが材料か!?

悲鳴!
絶句!
失神!
失禁!
仰天!
拍手!
喝采!
歓迎!
感激!
賛否!
両論!
雨アラレの嵐!

吊し上げられていたのは
そう勿論ご存知『白烏』と『鳩山』!
そして落語家『熊猫家 康康』!
ロバさんベーカリーの『老婆 味美』!
秋翔の彼女コケ子の兄『地頭鶏 燻』!
その友人『ブータン』!
全ては“焼豚”ならぬ“焼人”状態である!

急に明るい場所へ出された為か
気を失っていた各々“材料”が目覚め混乱し慌てふためく!
コケ子に気づき叫ぶ燻とブータン!
「!?
んんがんがんんっ!」
しかし口は塞がって言葉は喉に逆流だ!
味美もまた目玉飛び出すくらい唖然としている!
鳩山は目覚め
そして
嘔吐し下痢便を漏らした!
「ね、鼠先輩!?」
秋翔が叫ぶ!
会場に悪臭と悲鳴が溢れ出す!
そんな光景を見てもどす者!
つられて漏らす者!
グループ『砂かけ』の面々は昨晩の“フグ”に当たったか
この期に及んで腹抱え
皆上から下から大噴射だ!

そんな中
秋翔は堪えていた!
フグの痛みとこの状況に堪えていた!
吐き出すものか!
漏らすものか!
意味は分からぬが
出したら負けの様な気がする!
「チッ!」
腹に気を集中する秋翔!

ここにもう1人コケ子もまた
痛みに腹を抱え…
抱え…?
え?
笑っている?
コケ子が愉快に
豪快に笑っている!?
「コケ…子ちゃん?」
「ぎゃーはっはっはっはっはっ!
毎度馬鹿馬鹿しい茶番だせっ!
ぐへっへっへっへっ!」
大噴射ならぬ大爆笑だ!
「!?」
落語家康康はそんなコケ子に仰天だ!
“この娘!飛飛の!”

犬山が何かを抱え上げた!
“ギュッイィィィーーーンッ!”
チェンソーだ!
猫田はダルそうに肉斬り包丁を持っている!
犬山狂い怒鳴る!
「謝謝!謝謝!
美っ味ぁいらーめんご馳走するアルっ!
ガッハハハハハッ!
イッツァ人肉解体ショ~タ~イムッ!」
「っとその前に」
タコトレーナーがマイクで解体をさえぎった。
振り下ろしかけたチェンソーを慌ててかわしよろめく犬山。
「何ぃもうっ!」
「実は!
是非私らも絶品らーめんを食べたいという
超ビッグなスペシャルゲストの方々が
本日この会場へお越しになっております!」
「なにぬ?」
「登場していただきましょう!
どうぞ!」

♪We Are The ミート
We Are The チルドで
We Are The ボーン
今日の良き日に 良き人の為に
あちこちチョイスされ
新たに生まれ変わる
それが我々の理想郷♪

『We Are The ミート』が高らかに流れ
後方扉がゆっくりと開いた。

「チャオ!」

そこにはなんと!
第2婦人である味美の姉『老婆 花』と
第3婦人である瓜坊の母『シシ代』をはべらかした
『タコインターナショナルKK』社長『晴流屋 禿蛸』の姿が!

味美絶句!
秋翔絶句!
拝む者、泣き叫ぶ者、倒れ込む者
すがろうとする者、強烈に拍手する者
様々な者々、様々な反応が津波の様に押し寄せる!
騒然だ!

「おう!
ハゲオカマのおっさん!
良ぅ来た良ぅ来た!
ガッハハハ!」
「しらじらしい。
爺さんの“筋書き”通りだろうが」

狂喜と乱舞と混乱の中
コケ子がこの状況に似つかわしくないゆっくりとした摺り足で
3人のスペシャルゲストに近づいて行った。
「コケ…ちゃん…?」
晴流屋の前で片膝をつくコケ子。
「チューチュー」
下から舐めるように両手の指をクネクネと晴流屋の首筋めがけて優しく這わす。
両腕を晴流屋首筋後ろになまめかしく回して
ベチャベチャ音をたてて明太子唇に濃厚なディープキスだ!
「チュ~ッ!チュ~ッ!」
互いに猛烈な吸引!
コケ子の瞳は“死んだ鯖”のそれのようだった。

そんなコケ子の姿を見て
たまらず秋翔が叫ぶ。

「コケちゃぁぁぁんっ!」

叫びを受けて
コケ子くるり振り返り
秋翔めがけて言葉の槍を放った。

「黙れ小僧っ!
粗チン野郎がっ!
あたしゃ晴流屋様の第1婦人だぞボケッ!」
「え………」
「ケッケッケッケッコケッコッ!」

そんな中
白烏はすこぶる混乱しながらも
すこぶる興奮していた。

ぎゃはっ!
カメラ欲しい!


♪パララ~ララ
パラララララ~~~♪


街に夜鳴きの音(ね)が響く。

めけめけ~。

『らーめん放浪記』つづく。

(注)この物語はフィクションです。

写真。札幌の鳩使い?


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