はやしんばんぱくの、めげてめけめけ、言論の不自由ブログ

全国各地へ飛び回り、めげてめけめけめげまくり、色々書いていましたが、ブログ終わりました。過去を読めばいい!サラバじゃ~!

クリスマスにこんな話。

2009年12月25日 17時39分08秒 | 読書・書物シリーズ
『栗須マスオの聖なる夜は
苦しみが益々増すばかりだったという。
南無阿弥陀仏・苦離巣魔巣
完』

「ボツ」
駄目か。

自称小説家の『クリス増男』は落胆していた。
才能の無い自分が情けないと
ホトホト呆れ自らに失望していた。
たった今出版社にて
渾身の新作『南無阿弥陀仏・苦離巣魔巣』を持ち込み
すんなり“ボツ”を喰らって来た所だ。
2009年の年末にお先真っ暗
未来が…途絶えた。

編集の端くれみたいな若者につまらないと“罵られ”
田舎に帰れと“ドヤされ”てしまった。
勿論それはクリスの思い込み。
編集の若者は“罵り”“ドヤして”などいない。
そこまでエネルギーを使ってあげる程の小説ではない。
言うなれば“糞”
正直どうでも良かったのだろう。
出版社の編集に軽くあしらわれただけで世界の終わりだくらい凹む。
万年鬱気味な性格はクリスの悪いトコロである。

クリスはアメリカ人の父と秋田県民の母との間に生まれたハーフである。
どちらかといえば秋田美人の母よりも
ダンディなアメリカ人の父寄りに出来上がった顔付きだ。
残酷かなそいつが仇となり
幼少時代のクリスはしっかりイジメの標的になっていた。

「英語の喋れない外人!
クリス増男!」

呪文のように日々浴びせかけられるナンセンスな言葉。
しかもどいつもこいつも強い東北なまりの秋田弁でだ。
標準語もろくに使えないくせに英語がどうとか何を言えた事か!
辛い秋田生活の日々。
僕の国籍は日本だ!
日本に生まれ日本で育った純日本人の僕が
父の遺伝をついでちょっぴりアメリカンな顔立ちなだけで
何故に英語が話せなければ駄目みたいな事になっちゃうんだ!
そんなナンセンスな話の方が駄目じゃないか!
ふざけるな!

この件でクリスは言葉に対し異常にコンプレックスを抱き
そいつを克服する為に小説家を志す。
皆が僕を傷付けた“言葉”を敢えて武器にして
イジメた奴らに復讐するんだ!
なんとも複雑で病んだ心情構成だ。

それからクリスは猛勉強をし
ついでにルックスと言葉のギャップに悩み葛藤しながら
間違って文系でなく理工系の大学に進学。
屈折したまま秋田を離れ上京を果たす。
勿論すぐ退学。
小説家を目指して理工系て遠回りっちゅうか意味ないべ。
入学してから気付く。

無一文のクリスは持ち前のルックスで歌舞伎町のホステス宅に転がり込み
上手い事ヒモしながら今日まで“駄作の小説”を書き続けてきた。
編集の若者が言うように
田舎に帰って真っ当に暮らせば良かったものを
頑なに拒み中途半端な孤独に浸かって
ただただヒモとして認められない小説だけを書き続ける堕落の日々。

“田舎に帰れ”と言われても
クリスには帰れる田舎などもう無かった。
上京時ついでに親子の縁を切ってしまったのだ。
自分がこんなに屈折したのも元々はアメリカ人の親父のせいだ!
母さんも母さんだ!
秋田って!
せめて仙台で産んでけろ!
そんなん含めて過去とは全面絶縁だ!
これまた屈折した縁切り。
上京し故郷は想えど帰るは全てに負ける事なり。
クリスの信念は強かった。

これまでに
一体何本の駄作小説を書いたろう。
書いた数と同じだけ“ボツ”と言われ
ボツと同じ数の墓石が小説墓場に建ち
自分の産んだ小説達がそこに永眠る。
これからも…その繰り返しか。
いつもそんな事ばかり考えていた。

この日もそうだった。
死んだ小説達の事を想って憂鬱になっていた。
ボツは自分じゃないかとさえ思い
そんな出来損ないは死んだ方が良いのではとすら考えた。
実際クリスは疲れ果てていた。
疲労困憊の中クリスは幻を見た。
サンタが寺でお経をあげている幻だ。
ポクポク打つは木魚でなくトナカイの頭蓋骨。
サンタは唱える。
「南無阿弥陀仏・苦離巣魔巣」

これだ!

クリスは急いで居候先のマンションへ帰り
一心不乱に小説を書き殴った!
まるで何ものかにとり憑かれてしまったかのように
数日間寝ずに無我夢中で
机に向かい原稿と格闘した!
そしてついに
大作は完成した!

『南無阿弥陀仏・苦離巣魔巣』

出来た!出来たぞ!
最初の読者はお前だ!
どうだ、凄いだろう!
同居人のホステスに見せる。
「あんたも小説もどうでも良いわ。
もうあんたのSEXは飽きた。
それに英語の喋れない外人キモいし。
さよなら」
クリスはフラれた。
ヒモ生活の終焉である。

しかし!
この時のクリスは強かった!
何故なら今の彼には大作があるからだ!
絶対イケる、これは売れると確信出来る大作だ!
こいつで自分の過去を
そして糞どもを見返してやる!
「お前もか!
後悔させてやるからな!」
捨てセリフ吐いて
マンションから出版社へと急ぎ足で向かい
渋々出て来た編集の若者に
原稿突き付けふんぞりかえって評価を待つクリス。
どうだ!あまりの面白さに言葉も無しか!
さぁ僕を大先生と呼べ!
遠慮はいらん!
さぁさぁ!
「クリスさん。
これ、ボツだよ」
え?何?
よく聞こえなかったが?

「ボツ」

ボツ?ボツ?
えぇ!?
ボツーーーッ!?

駄目か。
クリスは全てを失った。

街をゾンビの様にうろつくクリス。
就職でもするか。
自分が35歳になっている事に
今更ながら気付いて呟く。
「駄目だ…遅すぎる」
それに
「あぁ不景気だ…」

日も暮れた。
イルミネーションが綺麗だ。
威勢良くケーキを売る売り子の声。
街はプレゼントを抱えたカップルで溢れかえっている。
今日は…クリスマスか。

うつむき加減で立ち止まり
足元に落ちていた紙切れを拾い上げるクリス。
「福引き…券?」
ふと見る目の前で
スーパーの歳末ガラポン福引き大会が
大盛り上がりを見せているではないか。
いつの間にかクリスはそんな輪に引き寄せられ
福引きを待つ行列に並んでいた。

いよいよ次はクリスの番だ。
前の家族は末等の白い玉しか出ず
スーパーの割引券200円分を貰っている。
「1枚ですか。
1回どうぞ」
係の若者に促され
クリスはレバーを握りしめた。
グルリ回す。
ガラガラ…ポトッ

“赤玉”

♪カランカラ~ン♪
「おめでとうございま~す!
1等賞世界一周旅行!」
会場が一気に沸いた!
唖然とするクリス。
ゆらゆらと前の家族にすがりつき叫んだ。
「こんなのいらないんだ!
頼む!
こいつとお宅の割引券200円分を
交換してくれ!」
びっくり仰天な家族から割引券を奪い
代わりに世界一周旅行の目録を手渡して
クリスは一目散にスーパーへ駆け込み
200円券でおむすび2個購入し
あっちゅう間に貪り食べたのだった!

あぁ涙がとまらない!
最高なプレゼントだ!
最高に幸せだ!
僕は今生きている!

クリスは聖夜の星空に向かって大声で叫んだ。
「It's delicious!」
とっても流暢な発音で。

価値観なんて
そんなもん?

クリスマスにこんな話。
いかがでしょうか。
何なに?

「ボツ」

めけめけ~。

写真。実際昨日近所のスーパーで福引きしまして
見事末等!
その割引券。。。
今日はそんな話でした。


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4 コメント

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クリスって… (みぃ)
2009-12-25 18:23:10
なんだか知らんが
ウェンツの顔が思い浮かんでしまった…

それにしても、こういう短編が
すらすらと浮かんで書けるとしたら。

まったくすごいだと思う。
うらやましいデス
返信する
しかーし (まけいぬ)
2009-12-25 20:31:50
そんな価値観の違いに
振り回されるのが人だわな。

「あなたとは価値観が合わないわねー、
別れましょう」

めけめけ!!
返信する
みぃさん。 (ばんぱく。)
2009-12-26 15:55:02
実は途中から
ウェンツを浮かべつつ書きました(笑)
マジで。
そんなつもりは無かったのですが
いつの間にか頭ん中でウェンツになってた。
最初は英語の喋れんクリスペプラーだったのに。
嘘(笑)

そういやこのブログ
このくだらん短編は
時々登場しますねぇ。
クリスマスネタも2度目。
何となく思いついたら書いてます(笑)
返信する
まけいぬさん。 (ばんぱく。)
2009-12-26 15:58:39
振り回されるね~(笑)
で無理して合わせたりするね~。
人付き合いって大変ね~。
価値観
理解できんもんは
全くできんしな。

うんち好き?嫌い?
大好き!
えぇ
別れましょ(笑)
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