はやしんばんぱくの、めげてめけめけ、言論の不自由ブログ

全国各地へ飛び回り、めげてめけめけめげまくり、色々書いていましたが、ブログ終わりました。過去を読めばいい!サラバじゃ~!

『らーめん放浪記』麺106本目・汰和史の場合。

2011年01月08日 12時16分41秒 | 連載書き物シリーズ
ワーーーーーッ!!!

『らーめんバトル』挑戦者がいっせいに麺を握った!
司会の『勝男(かつお)』が指で銅鑼を“チーン”と弾く。

「はじまりぃ~」


『らーめん放浪記』純情旅情編。

〈3-(52)・汰和史の場合〉


「帰って来て早々ごめんね」
「うん」
「座って」
「ああ」
「お父ちゃん今出かけてるから」
「うん」
「で、あなたが電話で言っていた事なんだけどね、汰和史(たわし)」
「そう
それをさ
ちゃんと話に来た」
「そう」
「結論はとりあえず置いといて
幾つか順をおって話したいんだけどね
まず」
「まず、四国の…それも高松じゃラーメン屋なんてなりたたないでしょうに」
「はぁ…知ってる。
もう、母ちゃん
とりあえず俺の話を最後まで聞いてよ」
「ああ、そうね」
「俺さ、実家がうどん屋だってぇの
子供の頃
実はすっごく嫌だったんだ」
「何で、讃岐でうどん屋ってとっても誇れる事なのよ。
それを汰和史あなた…」
「だから最後まで」
「……」
「最後まで、母ちゃん
とりあえず
息子の話を聞いてっての」
「はいはい」
「確かにさ
俺は讃岐のうどんが大好きだし
大好きな讃岐うどんを作るおやじの事も尊敬“は”していた。
周りの友達ん家もうどん屋、多かったし
それにほれ、小学や中学の学校給食にうどん、出まくってたしさ。
知らず知らずに讃岐で暮らす俺らは
ほれ、讃岐っぽく洗脳されてる感があったわけだ」
「あなた洗脳って」
「洗脳イコール尊敬なんじゃないか?なんて、ひねくれて思いだして。
周りのうどん屋の友達らも同じように思っていたみたい。
そんな中でさ、当然だけど普通のサラリーマンの家庭の子ってのもいたわけね。
スーツ着て、仕事して、土日祝日は遊んでくれたりしているわけよ。
ああ、なんか良いな~ってさ。
サラリーマン家庭に憧れちゃってさ。
そしたらうどん屋ってのが、何故だろう、とっても恥ずいモノに思えちゃって。
その頃俺、子供ながらになんとなくだけど感じていたのね
多分将来家業である『亀の子うどん』を継ぐ事になるんだろうなってさ。
恥ずい!恥ずい!って赤面しながら
毎日家の裏口から出て学校へ通ってた。
ちっちゃい頃は、喜んで店から出入りしていたのにさ。
母ちゃん知ってたよね。
あれはつまり、思春期のそういった気持ちの表れだったわけ。
本当、嫌~な気分だったんだ」
「………」
「無理言って関西の大学へ行かせてもらったのも
讃岐のコンプレックスから抜け出す為だった。
それ以上も以下も無いの。
そこでの4年間は俺にとっちゃ天国だったね。
だってさ、香川には無いものが、おったまげる程仰山有るんだもの!
事、『食』に関しては度肝抜かれっぱなしだったね。
あちこちスペシャルな食への『こだわり』ってのを感じたね。
知らなかった物事を知れば知るだけ
自分の故郷の遅れを感じて、自分の遅れもね、ここでも恥ずい思いをしたんだ。
足りてない、讃岐は全く足りてないと思ったね。
もう…一生帰りたくないってさ、そう思ったさ」
「汰和史…」
「そんな満ちたり過ぎて快感がこぼれ落ちまくっていた毎日にさ
水をさすかのように送られ続けて来ていたのが
母ちゃんの、荷物だった」
「…あ…あな…た…」
「母ちゃんの色んな思いが詰まった、ただでさえ無駄に感情揺さぶる荷物をだよ
『クロネコ戦艦ヤマト』の宅配便が届けに来るたびにさ、思うわけよ
なんで『フグさん便』じゃねーんだよ!ってさ。
ローカル便で荷物送ってさ、故郷を思いださせまいと
俺の感情を逆撫でしないようにと、大手の宅配業社を使う。
これは、そんなん母ちゃんの気遣いだって息子だもの直ぐ分かるさ。
余計なおせっかいだって、本当、余計だったさ」
「………」
「余計なんだよ。
余計な程中身がパンパンに詰まった荷物…。
毎回必ず、必ず入っている『讃岐うどん』の乾麺と、生麺と、ダシつゆ…」
「汰和史、父ちゃんのうどん大好きだったから…」
「子の心、親、知らず。
正直切なかったよ。
うどん見て、何度も吐いた。
感情がぐちゃぐちゃになってさ、辛かったよ。
母ちゃんを思うと、切なくてたまらなかった。
それが、その感情がたまらなく邪魔だった。
夢から…醒めちまうんだよ。
荷物を開けるたび
解き放たれた翼を、毎度、もぎ取られる思いさ。
余計な事しやがってってさ
開けた荷物をそのまま手付かずで放置したり、捨てたりしていた」
「…そう」
「そんなこんなで日々過ぎて
ついこの間
神戸元町の南京町でおどろきのラーメン屋を見つけたのさ。
絶品の美味さだった。
これ以上も以下もない美味さだ。
そこのラーメンを食べて、俺は『こだわり』って一体何だろうって考えちまった。
このラーメン屋のこだわりと、俺のおやじのこだわりは別物だ。
おやじのは、ただただ頑固に、意固地になっているだけ。
柔軟性も無ければ、冒険性もない、あるのは自分の信念だけ。
揺るぎ無いってのは見事だと思うけど
正直俺にはおやじのこだわりがガキのわがままに思えて仕方なかった。
こだわりって、もっと深いものなんじゃないのかってね。
それで思ったのね、ラーメン屋やりたいって。
俺流のこだわりをみせた、ラーメン屋をさ」
「あなた…汰和史の思うこだわりって
それってのも母ちゃんからしたら薄いんじゃないかって
そう思うよ」
「その通りなんだよ、母ちゃん」
「え」
「実はさ、そのラーメン屋ってのが
俺の彼女の実家でね」
「か、彼女?」
「我子(ガーコ)ってんだけど」
「ガ、ガーコさん?」
「うん
ガーコが教えてくれたんだ。
俺のこだわりの、味の薄さをね。
ガーコが俺の部屋にはじめて来た時さ
放置された母ちゃんからの荷物を見て言ったんだ。
なんてあたたかいんだってね。
呆然としちまった俺にガーコが
その讃岐うどん、作って、食べさせてってさ、言ったのよ。
こんな他愛もないものを食べたいのかって
食べたって、何の感動もしねーし
こいつに
こだわりなんて、これっぽっちも無いもんなんだぜって言ったんだけどさ
それでも食べたいって頼んでくるもんだからさ
しぶしぶ作ったさ。
時計見ぃ見ぃうどん湯がいて、途中1本食って具合見て
ダシとって、ネギ刻んで、しょうが摩り下ろして
麺を冷水でしめて、ダシぶっかけてさ。
そんな俺を見てガーコが言うのね
きっと、それが汰和史のお父さんの仕事姿なのねって。
かっこいいって言うのよ。
そんで俺の作ったうどんをおもむろにすすってさ
美味い美味いってさ
泣くのよ。
美味いって、俺の実家のうどんが、美味いって
母ちゃんが送って来てくれた
おやじの『亀の子うどん』のうどんは天下一美味いって。
すすり、泣くんだよね
俺が天下一美味いと証したラーメン屋の娘のガーコが
ガーコのおやじさんの冷たいこだわりにうんざりしていたんだって。
俺は打ちのめされた。
こだわりに、境界線なんて、無かったんだ」

ガラガラ!

「おい!汰和史!
彼女を外で待たせて何やっとるかバカモノ!」
「お父ちゃん!」
「おやじ!?」
「ささ、入った、入った」
「どうも、はじめまして、こんにちは
えっと、阿比留 我子(あひる ガーコ)です」
「何だか良くわからんが
この子、ずっと立ってたからよ!
おい、聞いたら汰和史!
お前の彼女だっていうじゃねーか!
おい!」
「あ・の・さ!」
「!?」
「………」
「あのさ
遠回りしたけど
母ちゃん
おやじも
やっと
結論を言うよ。
子供が出来た。
結婚する。
香川に戻って
店を継ぐ。
ガーコも一緒だ。
今までごめん!
これから、よろし!
よろし!
く…くく…
よろしくお願いします!」
「お、お願いします!」
「な!?
なんだいこれは突然!
おいおい!どうなってんだ!?おい!お前!」
「フフフ
スーーー…
♪さくらぁ
胸のつぼみ開くわ
あなたへひらり舞い降りて
素敵な大人になるの
さくらぁ
お願いそっと受け止めて
少し背伸びしたわたしを
抱きしめてKISSして
Darling 今わたしはあなただけのもの
……♪」
「な、なんだいお前!いきなり歌いだしやがって
おい!何だってんだ!
何だこりゃ!」
「汰和史
これがあなたのこだわりなのね」

「こちらこそよろしく」

亀屋の
『亀の子うどん』の
おやじの作るうどんは
天下一品だ。
でもおやじ
おやじ
それって!?
その麺て!?

おやじ!?


ジャッヂ!


♪パララ~ララ
パラララララ~~~♪

街に夜鳴きの音(ね)が響く。

めけめけ~。

『らーめん放浪記』つづく。


(注)この物語はフィクションです。

写真。高松丸亀商店街にてKAMEYA。


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4 コメント

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日本の伝統 (達ちゃん)
2011-01-09 12:02:04
四国の讃岐うどんといえば、日本では由緒ある歴史ある麺。
昨今の日本じゃ、何処行ってもラーメンブーム。
このラーメンブームっていったいいつ頃から始まったんすかね。
福島県なんかにゃ喜多方なんて街自体ラーメンなとこもあるし、、、、
ただ、冷静に考えると決して安くは無いすよね。
ラーメンはラーメンでも、さなちくと薄いチャーシューとメンマが乗ってる醤油味なラーメン。。。。
そんなラーメンを最近見かけなくなったような。
返信する
達ちゃんさん。 (ばんぱく。)
2011-01-09 13:14:15
そう!
いわゆる中華そばっちゅうか
そんなラーメンを探すのが
最近難しくなっておりますね。
あるにはあるんだと思いますが
食べてみたらやっぱ、余計な事しちゃってる
みたいな(笑)
この間、会社でそんな↑世間話してました。

喜多方ラーメン美味いじゃないっすか!
年始に食べましたよ!新宿で(笑)
結構好きです。

ラーメンブームはいつ頃からなんでしょうね。
「なんでんかんでん」やら「一風堂」やら
「ラーメン博物館」やら
その頃なのかなー。
て事は俺が、大学1、2年頃か。

今のラーメンは
やりすぎ(笑)
返信する
亀の子ガーコさん (ぴゅあこ)
2011-01-10 14:05:14
あひるガーコて
いつも思うんだけど登場人物の名前はひらめき?
おもしろい名前をつけるよねー。
ガーコとタワシの、かわいい子どもの名前も気になるわ
返信する
ぴゅあこさん。 (ばんぱく。)
2011-01-10 16:58:40
名前は
行き渡りバッタリの感覚です(苦笑)
計算してつけたものもありますが
大抵はそんときつけてます。
キャラ設定からふさわしい動物を探してつけてます(笑)
変なんもあり(笑)
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